愛おしい物語
映画って不思議なもので数年に一度、何度も見返したくなる名作に出会うことがありましてね。たとえば、僕は市川崑監督の「悪魔の手毬唄」や深作欣二監督の「魔界転生」なんかがそれにあたるんですが、今回観た「メランコリック」もそんな作品でしてね。
「アベンジャーズ・エンドゲーム」以来の興奮なので、箇条書きで良かったところを書いて行きますよ!
予告はこちら!
【ここからはネタバレあり】
① 人生の中の美しい瞬間
いきなりラストの話をして申し訳ないんですが、あのラストが凄く好きでしてね。なんか、生き残った若者たちがほんのひと時、笑顔に満ち溢れた時間を過ごすというね。それぞれが辛い目にあってきただけに良かったなあ、と僕は劇場で涙しましたよ。
そのシーン意外でも百合と初めてお酒を飲みに行った帰り道。
あのシーンも凄い幸せな感じがして良かったですね。
思わず、自分にとっての瞬間を考えてしまいましたよ。
② みんな少しずつ嘘をついている
中心となる登場人物が、実は少しずつ嘘をついているというのも良くてね。裏の面があるといいますか。百合ちゃんまで実は嘘をついていたのか、とでも、そういうところも人間味があってよくてね。最初の印象と少しずつ一人一人の人物像がずれていく感じがとてもスリリングでした。
東さんが最後に裏切るのは、予想がつきませんでした。
偽ってないのは、実は田中だけかも?
③ 主人公
もうね、この主人公が凄く応援したくなる主人公でしてね。
そりゃ、なんで百合ちゃんがアプローチしてくんのよ、とか、両親がなんでこんなに優しいのよ、とかツッコミどころはあるかもしれませんが、徐々に主人公に感情移入していきましてね。頼む、幸せになってくれ、頼むから「ボーイズ・オン・ザ・ラン」みたいにならないでくれ、と祈りながら観ていましたよ。
受動的に銭湯で働くことを百合に言われて選んだり、松の湯の二人に迫られて百合と別れることを選んだりと、誰かに言われて行動してた主人公が、最後に松本の為に田中と東さんを撃つところは、初めての自分の意志での行動という感じがしてとても良かったです。
また、その後のキレながら、車を運転しようとするシーンも良かったです。最終的に銭湯を経営するために、ちょっと距離を感じていた田中にまで知恵を借りるところは成長だな、と感じて、我が事のように嬉しかったですよ。
④ 松本がカッコ良すぎる
最初は、コイツ、チャラいなあと思ってたのが松本でしてね。
なんか主人公に掃除をお願いする時も、本当は嘘をついてるんじゃないか、サボりたいだけなんじゃないか、とかなり穿った見方をしてたんですが、すまん、オジサンが悪かった。疑って本当に申し訳ない、実はめちゃくちゃ良いヤツだったと。
ずっと人を殺す仕事をしていたからこそ、欠落してる部分もあるのかも知れませんが、和彦と飲みに行った時にチラッと見せる人間くささも良いですね。
小寺さんとのコンビネーションの時のハンドサインのカッコよさと和彦とハンドサインの練習をする時のほっこり具合が、同じことでも相手が変わると全然印象が違うんだなあ、と感じましたよ。
「ノリでいうなよ!俺がなんとかしてくれると思ってんだろ!」という一言は、観客の僕にも言われてるようで、観ていてドキッとしました。
⑤ 近年稀にみる素晴らしいヒロイン
はっきり言って、こんなトントン拍子に行くかね、と思いますが、あくまで和彦目線のストーリーなので、ひょっとしたら、百合は高校の頃から和彦のことが少し気になっていたのかな、なんて思ってしまいます。
こういう素敵な人、いそうで居ないんですよね。
いやあ、幸せなシーンもいいんですが、別れのシーンの表情がとても良くてね。
電気・ガス・水道のどれかが止められるって、ちょっと大丈夫か、と思う部分もありますが、そういうとこも込みで素敵なんでしょうね。最後は復縁したっぽい終わり方で本当にほっとしましたよ。
なんというか、人がガンガン死ぬし、ダーティーな内容の筈なのに、観終わった後は優しい気持ちになっている不思議な作品でした。筋が分かったうえで、再度観てもきっと面白いでしょう。いやあ、こういうのに出会えるから、映画鑑賞はやめられません。パンフレットも読みごたえ抜群なので、
絶対に買うことをお勧めします。
もう、大人になってしまった僕は、もっと仕事を頑張って、和彦みたいな子が相談に来た時に、資金や知恵を援助できる田村くんみたいな人になっていたいな、と考えています。
※「アベンジャーズ・エンドゲーム」の感想はこちら!
https://oboeteitekure.blogspot.com/2019/04/blog-post_60.html