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2019年3月21日木曜日

舞台「猩獸」の感想



強い想い 強い愛


※演劇知識0のSKE48のファンが書いたものですので、勉強不足の点はご容赦ください。ブログ後半からネタバレがあるので、是非、ご覧になってから後半は読んでください。

 本日、2019年3月21日は、大阪梅田のヘップホールに劇団壱撃屋さん「猩獸」を観に行きました。きっかけは、SKE48のよこにゃんこと、北川愛乃ちゃんだったんですね。「SKEBINGO! 」を観ていて、素敵な演技を彼女がされているのを知りましてね。それで、関西で舞台に出るらしいということを知って、チケットを買ったんですね。
 
 ただ、舞台を「能動的に観に行ったこと」がないんですね。テレビとかでやってるのを観たり、友人から2.5次元の舞台のDVDを借りたりということはあるんですがね。なので、ろくに知識がないのに観に行って大丈夫かなあ、とドキドキしていたんですが、結果から言うと、凄く楽しめました。

 なんでしょうね。ワードレスにすることによって、表情・動作は勿論なんですが、照明や音楽、衣装や小道具までが声の代わりになっていると感じましてね。そして、「この人は今、どんな意図でこの行動をしたんだろう」とか「この照明の色は、今どんな気分を表してるんだろう」と能動的に楽しむことが出来ました。多分、表方さんだけでなく、裏方さんも含めた劇団全体の努力の賜物なんでしょうね。凄かった。
 また、約60分という時間も、ダレずに集中して観ることが出来て良かったです。
 
 まず、「猩獸」って何じゃいというところから行きますか。
 こちらの公式動画をご覧あれ。

 

 実はこの作品、過去に「猩獣」という作品をやってるんですね。そちらの再演も今回やってます。



  うーん、こっちも面白そう。
 どっちもポスタービジュアルがカッコいいですね。

  ちなみに、劇団の公式チャンネルには、よこにゃんも出てますよ。よこにゃんが着てるTシャツ!




 さて、まず梅田のヘップファイブまで行きましてね。



 ビルの中はタピオカドリンク片手に歩く女の子だらけでしたよ。本当に持ち歩いてるんですね。「ファイナルファンタジー」世代の人間としては、肩手に剣でも盾でもなくタピオカを装備する不用心さが心配になりますよ(余計なお世話)。まあ、僕も剣も盾も持たずにヘップの8階まで登って行ったんですがね。

 8階には幟が!上の段やこの横にも出演される方々のものがありました。


 ちなみに物販もありまして、僕は新作「猩獸」のラバーストラップと、前日に「観劇三昧」という演劇が観られるアプリで前作「猩獣」を観ていたので、新旧2作の脚本を購入しました。正直、こんな良い内容の脚本をこんな低価格で手に入れられていいのか、と思いました。それぞれこんな感じ。写真が影になっててごめんなさいよ。





 ついでにTwitterで優しいコメントを下さった観劇三昧さんの紹介動画も貼っておきますね。個人的には、前作も観ておくと、今作と比較できて楽しいと思いますよ(更に再演を観るとなお良いかと)。


 


 さて、劇場に入ると、かなり見やすい感じになってましてね。
 僕は前の方で下手側の席でしたが、ストーリーを追っていくのには、不自由しなかったです。
 仮面からしたたり落ちる汗まで見えました。
 よこにゃんの表情の変化もよく見えましたよ。
 衣裳も素敵でした。
 壱劇屋さんの公式Twitterでの画像も貼っておきますね。



 この素敵な3人家族の生活から始まっていくんですが、もう、このシーンで既に僕は泣いてるっていうね。マジで「オードリーのオールナイトニッポン」における頑張ってる女の子を観ると泣くサトミツぐらい涙腺が緩くなってます。

 舞台が好きな方やよこにゃん推しの方にもお勧めなんですが、どちらも平成特撮ファンの方にもお勧めしておきたい。特に平成仮面ライダー好きの方にはお勧めしておきたいですね。観たら、なんで僕が勧めたか分かると思います。特に再演版はお勧めかと。


【この辺からネタバレあり】

 さて、「猩獸」なんですが、観終わった感想としては、「愛」の話だなあ、と思いましてね。なんなら「愛と憎しみって表裏一体」の話だなあ、と時間が経ってからは思ってるんですがね。

 ストーリーに関しては、到地対天化で行くのかなあ、と思いきや、疏芭さん対天化という構図に到地が加わるという三極の構図になっていくのが面白くてね。

 到地の娘である愛への「愛」と疏芭さんの天化への秘めていた「愛」がそれぞれある。その間に天化がいるんですね。彼がキーマンとして、前半は到地からの「憎しみ」を、後半は疏芭さんからの「憎しみ」を受けていくことになります。まあ、はっきり言って、前半の「憎しみ」に関しては、「受けて当たり前だよね」というのが僕の感想なんですね。前半は「なんだよ、天化、マジで死ねよ」と思ってたんですが、後半からは「なんだよ、天化、マジで死なないで!」と願うようになりましてね。
 

 天化を変えるきっかけが、よこにゃん演じる愛なんですが、原田泰造もびっくりなぐらい曲がったことが大嫌いで、王様でも容赦なく「それ、間違ってるぞ!」とビンタするわけです。でね、「愛」って、いいんだよ、オッケーだよ、というだけじゃないんだよなあ、と感じましてね。怒ってあげるのも「愛」だなと。それが出来る身近な人って家族だなと。
 作中に天化の家族って誰も出てこないんですね。傍にいるお姫様たちや部下たちはいるのに。何が原因か分かりませんが、ひょっとしたら、ここが彼の不幸の始まりかもな、と思います。

 で、この舞台の見どころの一つに殺陣があります。
 よく東映の時代劇に関する本や、殺陣師の方のインタビューを観ていると、緩急だったり間だったりが重要であること、そして、切られ役が上手でないといけない、ということが語られています。
 どんな感じかなあ、と思って観てたんですが、観客が息を飲んでみるところ、息を吐きだすところがしっかり作られてましてね(詳しくは『13人の刺客』の松方弘樹さんのインタビュー参照)。前作が「子連れ狼 親の心子の心」の武器が変われば殺陣も変わって行くラストバトルをイメージさせるのに対して、今作はケレン味たっぷりの殺陣になってましてね。特にTwitterにぴあ関西さんがアップされていた麩夛姫との殺陣が衝撃的でね(1枚目の写真)。


  なんじゃあ、こりゃあ!と叫びそうになりましたよ。
 こんな自由な闘い方ありかよ!という良い意味で衝撃でした。
 多分、映画とかでしようと思ったら、大変になると思うんですが、演劇ならではの表現で一番素敵な殺陣でした。
 到知さんが、猩獸パワー(?)全開になってから、殺陣に足技が混じり始めたのも良くてね。ああ、この人は今、獸になってるんだなあ、と感じました。
 また、疏芭さんの敵の攻撃をかわす時に、ぴょんとジャンプするのも手練れ感があって良かったですね。

 斬られている方々も良くてね。
 特に倒れたり退場するタイミングがずれると、邪魔になることもあるのに、違和感なくそれぞれのキャラクターが今、強いのか疲れているのか、どんな気持ちなのかを分からせてくれましたよ。この辺りは、日々の練習の賜物なんでしょうね。

 あと、前作は幕みたいなのが、場面の転換などに使われてたのが、今回は障子戸なんですね。これが、村のお家感を出す時もあれば、大きな建築物の中を感じさせたり、障子戸開けたら2秒で敵演出とか、新しい工夫が凝らされたなあと感じました。また、高低差がある舞台も良くてね。果たして、再演版だとどうなってるんだろう、と考えさせられましたよ。

 終わり方も良くてね。
 愛と天化が到知に向かっていくところ、そして、ふたりをポンポンと叩くところは、号泣ですよ。隣りの席のオジサンも泣いてましたよ。その隣の席のオジサンも。多分、その隣りのビルのオジサンも。
 最後のご飯の場面で、家族の幸せが取り戻されたんだなあ、なんなら増えたんだなあ、としみじみ感じました。


 作品全体から、考えていくと、大事なものが離れてしまった心の隙間に魔は忍び込んでくるのかなあ、とも思いましてね。愛という娘が離れてしまった時に、「憎しみ」に走りつつも、二人の思いを得て変わった到知さんと、天化が離れてしまった時に、「憎しみ」のままだった疏芭さんの最後を考えるとね。もちろん、到知さんに関しては、天化さんの因果応報だとは思うんですけどね。「愛」と「憎しみ」どちらも強い想いなのに、使い方によってこんなにも変わるのか、と。「愛と憎しみって紙一重」だな、と感じましたよ。「家族愛」があった到知だからこそ、「憎しみ」から離れられたのかなとも。さらに言うと、愛のまっすぐな強い気持ちも天化を変えていくことが出来たのかなと。この辺りはもう一度観て考えたいな、と思ってますよ。


 終演後、集合写真を買いましてね。

 ある役者の方に少しだけ感想もお話することが出来ましたよ。

 で、家に帰って脚本を読みましてね。
 そうか、前半の疏芭さんのシーンが変わる時の行動はああいうことだったのか、めちゃ丁寧に描かれてるじゃんと分かりましてね。
 実は二人は、差異はあれど鏡像関係なのかな、とも考えさせられましたよ。そして、2作を比べると、「恋」の話から「愛」の話になったのかな、とも思います(この辺は自信なし)。
 登場人物の心情も書いてあるので、是非、復習や2回目の観劇のお供に購入をお勧めです。

 次は千秋楽を観に行く予定です。
 今度は脚本が頭に入ってるからまた、見方が変わるかなと。
 本当に良い作品、良い劇団だと思ったので、観劇三昧にある他の作品も観てみようと思います。

 そして、よこにゃんの成長が一人のSKE48ファンとして楽しみです。
 また良い出会い作品、良い方々との出会いがあるといいなあ、と願っています。
 この作品、新作・再演を交互に1日3公演という、どうかしてるぜ!というスケジュールなんですが、演者の方、スタッフの方のトラブルなく千秋楽を迎えられることを、一観客として応援しています。