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2020年5月31日日曜日

前のめり③

引き算の魅力


 
 推しメンの魅力を考える時に皆さんは、足し算引き算、どちらで考えますかね?
 「こういう技能を持っている」とか「こういう曲の選抜に選ばれた」とか、足し算で考えていくか?
 それとも、「色々な要素をそぎ落として、一つだけ残すとしたらこういうところが凄い」という引き算で考えていくか?

 先日、AKB映像倉庫の「ソーユートコあるよね?」の選抜コンサートで、もの凄く気になるメンバーがいました。古畑奈和の「本性」、松井珠理奈の「Hwo are you?」、だーすーの「わるりん」等、それぞれの魅力が爆発したソロユニットブロックが特に印象に残っていますが、その中で一番印象に残っていたのが、さきぽんこと竹内彩姫が唄った「前のめり」でした。
 彼女は「前のめり」を2番から唄いました。
 僕は「前のめり」がSKE48のシングルの中で一番好きなこともあるんですが、何故彼女は2番から唄ったんだろう、ということが気になりましてね。

 彼女の公式ブログを追っていくと、コンサート当日のもので2番を選んだのは彼女のこだわりであるということ、そして、今の気持ちとリンクしていると語っていました。
 そこから、「今の気持ち」とは何なのか、考えていくことにしました。
 色々と辿っていきましたが、その中で気になったのが、2019年12月4日に行われた生誕祭での言葉です。

 「20歳の1年の目標は私のレギュラー番組をもらうことです。
 アイドルとして一歩先に行きたいと思って。
 私じゃなきゃダメな場所ってそんなにないんじゃないかなって。
 20歳の1年は私が必ず必要となる場所を探して作れたらいいなというのが目標です。
 総選挙や選抜の先にSKE48の竹内彩姫じゃない場所があったらいいなと」

 まず、さきぽんが20歳になっているという時の流れの早さに驚きますが、「SKE48の竹内彩姫じゃない場所」という表現。「SKE48」という大看板なしでどこまで自分一人の力で勝負できるか?
 その一つとして、彼女が挙げたのがレギュラー番組です。
 今、ラジオ番組「岐阜県だって地元です」でサブパーソナリティを務めていますが、それ以外にも何か彼女のレギュラー番組が出来ないかということですね。
 チアドラをしていた経験から、ドラゴンズ関係の仕事が真っ先に思い浮かんだんですが、この仕事はわりと激戦区だと思います。ドラゴンズに詳しいメンバーは他にもいますし、一人で呼ばれるということもこれまでのラジオなどの中継でSKE48のメンバーが二人で呼ばれることが多いので、ソロと言うと難しいかもしれません。
 趣味の読書に関することか? 
 しかし、SKE48の中には読書家のメンバーも多いです。
 ダンスか?
 しかし、ダンスが得意なメンバーも沢山いる。
 グラビアか?
 でも、SKE48にグラビアの仕事が来たのは、最近だといつだ?
 演技の仕事?
 運営がいちいちゲームと連動させる状況で、果たしてそれは「SKE48」から外れたものか?
 今、僕は「SKE48」という大分類で書いていますが、「芸能界」というものに置き換えると、さらに競争率が上がっていくと思います。
 じゃあ、何があるんだ?
 僕は行き止まりに達しました。
 そこから、彼女に関するブログだけでなく、ドキュメンタリーの映像を見返すことにしました。
 そして、一昨日の朝方に気が付きました。
 「何が出来るで考えるんじゃなく、何が残るかだ」と。
 
 様々な要素をそぎ落としていった結果、彼女の魅力として浮き上がってくるものは何かと。
 
 僕考えたのは、誰とも似ていないその美しい声と、フェアな視線でした。

 まず、声に関しては、本当に綺麗で2016年のソロコンサートで行われた朗読劇はとても素晴らしかったです。朗読をしたことがある人なら分かると思うんですが、「読む」と「伝える」では全くスピードが違います。彼女は持ち前の声を活かして「伝える」朗読が出来ていると僕は感じました。
 そして、「フェアな視線」。
 入ってきたドラフト1期生が置かれていた状況でも、きちんとダンスを教えていたこと。大組閣で当時腫物に触るような感じだったみるきーに公演のダンスを教えて、2015年の総選挙のバックヤードでは抱き合っていたこと。
 これは簡単なようでなかなか出来ることではありません。
 「あなたが居てくれたから」の記事で書いた、長い研究生生活や怪我を体験したからこそ、人の気持ちが分かる弱い者の側に立てる、うまく行かない人に寄り添えるのかも知れません。
 
 この二つの要素を合わせて、何かないかなと考えた時に、ドキュメンタリーのナレーションや、彼女自身が自分から遠く離れた場所旅をする番組はどうでしょう?

 起こっている事象を映像を通して伝え、時には自分の意見も語っていく、そんなドキュメンタリーのナレーションはどうでしょう?
 そして、彼女が旅をする番組なんですが、前田敦子が主演の「旅のおわり世界の始まり」という映画を皆さんご覧になったことはありますでしょうか?


 
 僕のイメージはあの感じです(黒澤清監督作品は、いつも考えさせられますね)。
 彼女の眼からみたら、世界はどう映るんだろと考えてしまいます。
 勿論、ちゅりのような朗読の仕事も。

 色々と話が飛躍してきましたが、この数か月間止まっていたSKE48の時間の針が、また再び動きだす時に、彼女は必ず必要になる存在です。後輩たちから見たら頼れる先輩の一人だと思いますし、公演や選抜を引っ張っていける存在です。
 そして、SKE48を飛び出した時の彼女のことを考えると、様々な想像が膨らんでいくんですよね。在籍している間に、「未来の可能性につながる仕事」という視点で沢山チャンスが獲得できないかな、と思っています。
 彼女も自粛期間中に様々なことを考えているのかも知れません。

 強制的に一旦止められてしまった今、再び、走り出す時の彼女は、きっと前のめりに地を蹴って走り出すでしょう。
 
※さきぽんについて書いた「あなたがいてくれたから」の記事はこちら!
https://oboeteitekure.blogspot.com/2018/12/blog-post_8.html

2018年11月29日木曜日

前のめり①

走り続けた二人の物語

 前の職場でSKE48をほんとんど知らないジャニーズの追っかけのおばちゃんと話す機会がありましてね。「SKE48が好きなんです」というと、「ああ、W松井さんね。あの子たちは可愛いわね。姉妹?」と言ってもらったことがありました。
 また、別の武田真治さんのおっかけをしてるおばあちゃんは、「AKB48なんて!」とまるでいじめや戦争のように48グループを見る目は厳しかったですが、「でも、松井玲奈ちゃんは好きよ。あの子は上品」とほめてくれました。
 そして、12歳年下のK-POP大好きな後輩も「SKE48好きなんだよね」と話すと、「あたし、SKEなら松井玲奈ちゃんが好きですよ」と言ってもらったことがあります。
 僕の狭い人間関係の中ですら松井珠理奈、松井玲奈のコンビは有名で、SKE48の入り口になっていました。
 AKB48の選抜でもしっかり入り続けた二人。玲奈があえて珠理奈を甘やかせないように接する姿勢は、本当に珠理奈のことを考えているんだなあ、と思うんですね。なんでも「いいんだよ」みたいな感じで甘やかしてしまうと、まだ幼かった珠理奈は勘違いをしてしまう恐れもあったんでしょう。
 珠理奈がダンスなどでグイグイ攻めていくのに対して、玲奈はブログやメールなど言葉の人だなあ、というのが僕のW松井像でした。しかも内面は表面とは逆で玲奈の方が絶対に強気な気がするのもいいですね。
 そして、いつしか二人はライバルのようにも見られていました。
 きっとこの二人にしか走れないスピードで走ってきたのではないでしょうか。

 そんな松井玲奈の卒業というとりあえず理不尽な暴力に走りそうになるニュースを聞いた時、一つの時代が終わりに近づいていると感じました。
 僕みたいなプロテ星人もペロリンガ星人もスカウトを躊躇うレベルの奴でも不安を感じたんですから、珠理奈の心情はどれほどだったんでしょう(知らない人はウルトラセブンを観よう)。


 松井玲奈センターのSKE48シングル「前のめり」。
 ここまで物語性を背負ったMVはないんじゃないでしょうか。 
https://youtu.be/m9e1oHhZhRY

 

 時報とともに「オールナイトニッポン」の松井玲奈卒業発表会が流れるんですね。
とても緊張しているので、うまく皆さんにお伝えできるか、分からないんですけれども。私はですね。8月いっぱいでSKE48を卒業することになりました

 この曲は、とにかく沖縄の美しい海と空がいい。
 まず、MVをざっと説明すると、沖縄の海で松井玲奈の卒業を祝うパーティの準備をするメンバーから始まります。調べたら、リゾート用の島みたいですね。もうこの舞台設定が素晴らしい。いろんな海PVの中で一番好きです。
 で、玲奈も遅れてやってきて、ここで少しだけW松井が走っている描写が出るんですね。これがあとあと利いてきます。玲奈が少し珠理奈の前を走っていて。

 
 2番では、玲奈が島へ向かうところから始まります。到着していよいよ、島へ向かう桟橋を歩いていくシーンの前に玲奈が海を走っているシーンがあるんですが、ここでは、一人で走っているんですね。何か、卒業や旅立ちを暗示させるようなシーンです。
 そして、浜辺を歩くシーンの前と後に、今度は珠理奈のソロで走るカットが入ります。あれ、二人は走っている距離に少し差が出来たのかな、と感じさせられます。特に珠理奈の足が止まった後の「弾む息も」のところで珠理奈のリップカットが入るんですが、そこで珠理奈の顔は泣いています。どうやら、玲奈は走ってどうこうできないくらい離れてしまった、つまり、いなくなってしまったのかもしれません。この演出がうまい。
 で、優しいどっきりの後に、一人一人のメンバーが玲奈にお別れを言っていくんですが、みんなに慕われてたんだなあ、と感じるカットが沢山でてくるわけです。ちなみにここいらあたりで、MVはオレンジがかった映像になります。夕暮れが来ているというのを感じさせるわけです。一瞬だけ珠理奈が頷いているリップカットが、入るんですが、玲奈の卒業をなんとか祝いたいという気持ちが伝わってきます。
 そして、海でみんなで遊ぶんですが、なんというか、ここが夏の儚い最後の思い出を感じさせてすごくいいんですね。メンバーの楽しそうな顔。
 その後のぽつんといる珠理奈の背中と広大な海。その先には、海しかなくて、もう玲奈はいないんですね。

 もうここでわたくし、号泣ですよ。玲奈のことを一瞬、思い出して振り返った時の顔は、勝手ですが「ああ、珠理奈は一人になってしまったんだなあ」というさみしい気持ちになりました。

 もちろんこの時、同期の大矢真那や先輩の宮澤佐江、支えてくれる後輩達はいたんですが、なんていうんでしょう。同じレベル、いや自分以上の速さで走れるライバルであり仲間がSKE48からいなくなった感じでしょうか。 
 もうこの背中のシーンで僕の中ではナンバー1MVになりました。
 凄くここまで丁寧に走るシーンを置いてきたからこそのこの背中ですよ。
 やがて、島からメンバーは去っていくんですが、夏の終わりを感じさせる寂しさなんですね。最後は玲奈と珠理奈の船の中のカットの後、ダンスシーンの玲奈のアップで終わります。

 このMVは何回みても、あの背中のシーンで泣いてしまうぐらい、思い入れのあるMVです。ダンスシーンが明るく楽し気であればあるほど、その陰にある寂しさを感じさせる名作だと思います。
 次のシングル「Stand by you」のMVはある意味、このMVのアンサーとなるようなシーンがあるんで、とても気になる1作に今なっています。
 これまで走ってきた二人の物語に思いを馳せながら、ぜひ「前のめり」のMVをチェックしてください。