所属から離れるということ
三島由紀夫の小説で何が一番好きですか?
僕は「雨の噴水」という短編が一番好きなんですが、「命売ります」という変わったタイトルの小説があります。ミュージカルAKB49でも、吉永が勘で選んだ本として、タイトルが出てきたあれです。
この作品、自殺に失敗した青年が、自分の命を売るよ、という広告を出すところから始まる小説です(現代だと、youtuberでこういう人いるんですんかね?)。で、物語が進んでいくうちにある場面で、人間はいかにどこかに所属したがるか、集団の中に自分を置きたがるか、ということが浮き彫りになってくるシーンがあるんですね。
会社で働いていた頃は、「そうだよねえ、なんだかんだ言って、団体とか集団とかにいると安心するもんね。長い物には巻かれよう」みたいな感じだったんです。ところが、結果的に「HIGH&LOW END OF SKY」での九龍グループに対するコブラみたいな感じで組織を飛び出した今、改めてこの作品を読むと違った味わいがありますね。
今回、紹介する「FLASH BACK」は、SKE48を卒業した出口陽さんの1stシングルなんですね。ちょっと聴いてみましょう。
https://youtu.be/S7ZQf5Zkob4
うーむ、なんともカッコいい曲でしたね(音楽知識ゼロの感想)。
「FLASH BACK」というのは、「光が照り返す」という意味と「記憶などが突然過去に戻す」という意味があるんですね。歌詞の世界もまさにそうですよね。
「『あそこにあるよ』と右へならえしてた あの日」とこれまでの日々から「もっともっと遠くへ そっとそっと あの向こうまで」という願いが生まれます。この曲、サビ終わりの「泣いて笑った欠片が まるでフィルムのように 繋がって 光の粒に変わった 明日をそっと照らすよ」という部分が未来への希望を感じられて好きなんですね。
最終的に「逃げたりしない」、「光の中」と曲の主人公が自分がこれまで積み上げてきたものを糧にして希望の中に入って行くのを感じさせます。
サビ終わりの少しラジオがかすれたようなボイスも、「光の中」という今までいたところとは違う場所に向かっている感じがします。
過去を思い出し、その過去が自分のこれからを照らしていくという。今までいた時間も消して無駄ではなかった、大事な蓄積になっていたと思うと、なんか泣けてきますね。
所属していた場所を離れ、集団から個人で夢に向かって新しい場所で歌っていくことを決めた出口陽さんの名曲だと思います。ちなみに「ハジマリノオト」も良い曲なので、いつか書けたらなあと思います。
※あきすんと言えば、2013年のあれを忘れてないか?という方、まあ、そう焦らずお茶でも飲んでまっていてください。