未練が力なり
もう先に書いておくと、2019年上半期のベスト1です。
まだご購入されてない方は、是非読んで欲しい1冊です。
解散!
というと、元も子もないので、何故この本がベストかというのを、ネタバレに触れない程度でやんわり書くと、もうね、こんな凄い不幸エンターテイメントがあるのか、というぐらい壮絶な人生なんですよ。五社監督も娘で著者である五社巴さんも。
第1章の最初の小題が「母の失踪」からですからね。
始まって4行で著者のお母さんが失踪します。
お母さんが失踪する二日前に、五社監督の家に誰からか分からない電話がかかってきて、あるホストクラブに行けというんですね。それで、監督が半信半疑で行くと、一番奥のVIPルームで甲高い声を挙げて笑っている妻の姿があったんですね。
見たこともない妻の姿に、普段なら激昂して詰め寄るであろう監督は、意気消沈して店を出ます。家にも帰れず、監督は飲んだくれてその日は過ごしたそうです。
そして、次の小題が「膨れ上がった借金」。
なんと億を超える借金を著者のお母さんは、作ってしまっていたわけです。
ガンガンかかる取り立ての電話、遠慮なく入ってくる取り立て業者。
ただね、この第1章でもう一つ、「ええっ!」と声を挙げたくなるようなことが起こります。
もう読みながら、逆境につぐ逆境なんですね。
肉体的にも精神的にも。
ただ、その中で「なめたらいかんぜよ!」と実際に日常生活で言いながら乗り越えていくわけです。元ネタが分からない人は「鬼龍院花子の生涯」を今すぐ観てください。
もうね、とにかく監督の性格もあって、クラクラするような事件がどんどん起こるわけです。それをくじけずに乗り越え続ける監督の姿。ときおり見せる父親としての姿も、不器用ながらも良くてね。今まで通説として語られてきたことも、結構ここで別の視点が入ってくるので、五社英雄ファンも必読の1冊だと思います。
僕も現在、人生の中でどん底の状態ですが、この本を読んでいると、ボーナスステージとしか思えないです。人生の逆境を乗り越える胆力をもらえる1冊です。
ちなみに、五社監督入門編として春日太一さんが書いた「鬼才 五社英雄の生涯」が超おススメです。「鬼龍院花子の生涯」の脚本の写真があるんですが、スタッフのそれぞれの役割のところに線を引いて「仲間」と書いてるところが、めちゃくちゃカッコよくて、会社の企画書で同じことをしたら、却下された思い出があります。
五社監督の映画は、あらすじを追っていると、えっ、今何がどうなってるの、ということも多いですが、とてつもないインパクトを観る人に与えます。脳裏から離れないあのインパクト、特に死にざまへのこだわりは凄いと思います。何故なら、監督自体も死にざまへの強いこだわりを持っていたからだということも「映画極道」の中では分かります。
これを超えるノンフィクションが今年出てくるのか、というぐらい強烈な1冊なので、まだ未読の方は、是非!