光を灯す人
元SKE48のみきてぃこと矢方美紀さんの乳がんが発表されたのは、2018年4月13日のことでした。
あまりのことに、衝撃が走りました。
僕とみきてぃの個人的な思い出としては、平成仮面ライダーをよく観ているということを知ったので、全国握手会でライダーの質問をした思い出が印象的でしてね。
「みきてぃ、平成ライダーで誰が好き?」
「王蛇」
で、できる!
という読者の皆さんからしたら、どうでも良いかも知れませんが、アイドルで龍騎観てるのが当時は嬉しかったんです。
さて、そんなみきてぃが乳がんの闘病生活を本にしたということで、早速読んでみたんですがね。
これがまあ、素晴らしかった。
まず「はじめに」の章でアイドルになるまでとアイドル時代に少しふれてます。
アイドルとして芸能界で活動していた自分をどう思っていたのか、が書かれています。特にリーダーになってからは、辛さを自分の中に閉じ込めていたのかなあ、と感じるところもありました。
そして、いよいよ本編では乳がんが分かるまでから始まっていきます。
25歳という若さで乳がんになったみきてぃなんですが、この病気が分かるまでのどきどき感が辛い。何故なら我々は結果を先に知っているから。けれども、この悪い結果じゃなければいいな、という気持ちは人生の色々な場面で感じるのではないでしょうか。
読んでいて思ったのは、乳がんについて何も知らないこと。
そして、病気になった人達への誤解。
病気になったらその病気に人生が支配されてしまうわけではないことを感じましてね。
本書の97ページの表現があまりにも素晴らしいので引用させていただくと、こんな感じです。映画「君の膵臓を食べたい」を観た感想を書いているところです。
「やっぱり人生の中で、すべてが病気で悲しいとかではなくて、病気は生きている中のごく一部でしかないし、病気以外の人生だって、いっぱいあって、その中で考えているんだなということにとても感動しました。それで、同じところに共感している人がいないか探したのですが、私の周りにいませんでした。でも、ここに共感した人は、絶対にいると思います」
そうなんですよね。
病気になったから人生は、全てそっちに持っていかれるのではなくて、一時的に停滞しても、ちゃんと楽しいことも続けていけるはず、というのを感じましたよ。
その為には周りの理解も必要だとつくづく思いましてね。
この本の各章にはコラムとして、編集部の方が統計データや保険のこと、病院選びについて書いてくださってるんですが、もし、自分の大切な人が乳がんになった時に何か力になれることはないか、と考えさせられましたよ。
あと、この本を読んで思ったのが、インターネット時代になったことで、自分以外にも闘病生活を送っている人たちの生活や意見を知ることが出来る、ということがあります。これは、孤独に闘病生活を送るのとは、気持ちが変わってくるんじゃないか、と思いました。そして、彼女が周りにも病気のことを発信していったことも大きいと思いました。
読んでいると、辛くなるところもあるんですが、病気になったからこそ、出会った人たちも出てきましてね。アイドル時代は「SKE48が好きな人たち」「アイドルが好きな人たち」も含まれていましたが、今は「矢方美紀が好きな人たち」がイベントに来てくれること。公演会などで、同じ病気で戦っている人達やご家族に勇気を与えていること。今も変わらないファンの人達に元気を与えていること。これって、アイドルよりもアイドルしてると思ったのは僕だけでしょうか。
現在は26歳で名古屋で芸能活動をしているみきてぃ。
彼女がこの本を出してくれたおかげで、「知らない」という闇に包まれていた乳がんのことが少しだけ照らされて知ることができました。きっとこれは僕だけではないと思います。
そして、人生の中に突然現れる巨大な絶望にどう向き合うかを教えてもらった気がします。
今夜、5月2日の21時からNHK BS1で「26歳の乳がんダイアリー 矢方美紀」も放送されるので、こちらもおすすめですよ。
最後にこの本を読みながら連想した曲を貼っておきますね。