24年間同じアニメを見続けるとどうなるか
皆さん、滝沢馬琴の「里見八犬伝」をご存知ですかね。
江戸時代に刊行されたこの作品は時代を超えて日本人に享受され続け、ある時は人形劇で、ある時は映画で、ある時はドラマで、そしてある時はアニメで描かれてきました。
今回紹介する「THE 八犬伝」は、アニメ業界でOVAが積極的にリリースされていた頃の作品で、当時のテレビアニメとは一味違った作風が魅力的でした。
さてこの「THE八犬伝」ですが、当時のアニメとしては、キャラクターデザインが美しく、原作では品行方正な人々だった八犬士を現代的な性格づけをして、仲間なのにそう簡単には仲良くなりませんよ、なんなら殺し合いますよ、という「仮面ライダー龍騎」に何の違和感も持たない僕のような人間を作る下地がここで作られているわけです。
で、今回紹介する「浜路再臨」というエピソードなんですがね。
まず、「THE 八犬伝」で画像検索して欲しいんですね。
なかなか美しい絵でしょう?
じゃあ、ちょっと、「浜路再臨」で画像検索してほしいんですね。
びっくりしたでしょう?
そうこの作品。
作画がかなり特徴的で伝説にすらなっている作品です。
僕が初めてこの作品を観たのは、12歳の時。
そこから、36歳になった2019年10月22日現在まで、ひたすら見続けています。
何故、この作品はここまで僕を惹きつけるのでしょう。
今日はその魅力を考えていきましょう。
まだ観てない人は何らかの方法で観てくださいな。
僕はこのアニメを24年間見続けることになります。
「今期は~」という言葉がアニメ好きの方々にはありますが、僕の中ではよっぽどのことがないとテレビアニメをレギュラーで観ないので、「2000年夏クール THE八犬伝」、「2001年 秋クール THE八犬伝」とひたすら「THE 八犬伝」が続くことになります。
この辺りは、一つの作品をねちねちと楽しみ続けるというと、言い方が悪いですが、ガンダム好きの方、エヴァ好きの方とかは共感してもらえないでしょうか?
じゃあ、このアニメの中で、特に異彩を放った「浜路再臨」の何が良いのかを語っていきますよ。
① 画がどうかしている
オープニングの犬塚信乃の顔の美しさと、「浜路再臨」で浜路を追っかけている時の信乃の顔のおっさんっぽい顔。12歳の僕は、いったい自分は何を見せられているんだ、という気分になったもんです。
もう、最初の道節も浜路も声は一緒だけど、誰なんだよ、と思いましたよ。
でも、これが強烈すぎて、頭から離れないんですよね。
画の変化は1話前の「妖猫譚」から始まっているのに、こちらの方が凄く強烈なんですよね。
タイトルの「はまじ 再臨」という文字のバランスも凄く好きです。
そして、この画は人間のリアルな表情、もっというと、より3次元の我々に近い感じがして大好きです。
雨のシーンで、信乃の髪から落ちる水の雫とか、特に好きです。
② 演出
最初と最後に入る瞬きのような演出は、どこか夢の始まりと終わりのように見えますし、もう一度出会ってしまった信乃と浜路のやりとりが切ないんですよね。「もしや以前、どこかでお会いしましたでしょうか?」
「いえ、初めてです」
この時の信乃の淋しそうな顔と風。
僕の好きなシーンの一つです。
なんで、この時、素直に事情を話さないんだろう、と子供の頃は思ったもんです。
また、信乃と荘助が闘う時のカメラの動き。信乃が刀を抜くまでの動き。
「やめてー!」と叫んだ後に止まる音。
最後の信乃の叫び声で最初は夜に輝く月が映っていたのに、徐々に色が変わって朝に変わっていき、異界に変わって行く終わりが凄く印象に残っています。
③ 音
まず、この回は笛の音色が印象的なんですよね。最初の道節と荘助が浜路と再会する時の狂ったような笛の音色。
浜路との過去を思い出す信乃が聞く優しい音色。
最後の網干が登場する時のやはり恐ろしい笛の音色。
どれも素晴らしい。
もちろん、決戦シーンの太鼓の音色もいいんですけどね。
悲しいことに、「THE 八犬伝 新章」のサントラは、第1話~第3話分しか出てないんすね。第7話のBGMとか最高なんですけどね。クラウドファウンディングとかで出せないものかと、最近は考えてますよ。
④ ストーリー
浜路を巡る3人の犬士が交差するのが凄く良くてですね。道節は自分の妹を手にかけた罪悪感。
荘助は浜路への思いと信乃への嫉妬心。
信乃の死んだはずの浜路と再会できた喜びとなんとも言えないやりきれなさ。
そこをついてくる網干。
運命に導かれて、一番一緒にならなさそうな道節がここで合流するのが良いんですよね。
まあ、とにかく一度観たら、忘れられないアニメですし、時代劇好きの方にもチェックしていただきたい作品です。
このブログのそもそものコンセプトの一つが、めちゃくちゃ好きだけど、なかなか理解してもらえないものを紹介したい、語れる相手がいないなあ、という人の為に書きたいということがあったので、自分のために今回の記事を書きましたが、これをきっけに、この作品が好きな人と出会いたいなあ、とも思いました。
僕にとって、大事な大事な1作です。