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2018年12月8日土曜日

あなたがいてくれたから①

物語を書いていくのは

 曲の前のMCって、すごく大事だと思うんですね。
 特に大事な曲の前のMCは。
 アーティストのMC一つで、曲が普段以上の意味を持ったり、説得力を持ったりします。

 僕の狭い範囲で、MCの説得力があるなあ、とライブやライブDVDを観て感じたのは、the pillowsなんかがそうなんですね。結成から色んな苦労があって、それでも辞めずに25年以上の歴史があるバンドです。いつか、僕が行ったライブで「Funny Bunny」という代表曲の前のMCが印象的でしてね。「10年前の僕はこんな未来が来ることなんて、予想していなかった。明日のことは誰にも分らないんだ。自分の好きなことを信じて、続けていこう」からの「Funny Bunny」ですよ。もう、説得力が凄い。恥ずかしながら、20代の僕は、涙ボロボロ流しながら聴いていましたよ。

 じゃあ、SKE48のMCでそういうのあったかなあ、と考えた時に、一番僕が曲への説得力があるMCがありました。

 「SKE48 SOLOCON 2016」での竹内彩姫の「あなたがいてくれたから」への朗読でしょう。

 タイトルは「魔法をかけたのは」。
 シンデレラのような青いドレスで登場して、朗読を始めていくわけです。
 あらすじの前半をを雑に説明するとこんな感じです。

 2012年11月17日 SKE48 6期生オーディションに合格
 2013年1月1日 元旦公演 仮お披露目 
 2013年2月28日 正式お披露目 
 初めての舞台「キラキラと輝いていた」
 2013年3月31日 「会いたかった公演」 公演デビュー
 自分のサイリウム・自分へのコール
 「新鮮で、ちょっぴり恥ずかしかった」
 「緊張していた私を一番支えてくれたのは、間違いなくファンの皆様だった」
 大組閣祭りの発表
「2、3人がクラス替えをするみたいなものなのかな?」
→ グループ全体のシャッフル

 同期のメンバーの昇格がどんどん決まる。
「初めの方は、私も嬉しかった。けど、だんだんと不安と焦りが私を襲ってきた。でも、私には、自分に自信があった。研究生公演、アンダーの出演回数、努力した時間。他のメンバーよりも、絶対に絶対に負けてない。だけど、その日、私の名前が呼ばれることはなかった。発表が続く中、私たちを襲う絶望。どのチームのメンバーも舞台上に居る中、ぽつんと取り残されたSKE研究生の数人。逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。しかし、私たちを待っていたのは、更なる絶望だった

 一人の人間の自信がゆっくりと崩れていく様を描いた文章としてもしっかりしてると思うんですが、それをメンバー本人の口からきくとなると、説得力が違います。で、ここでもう、さきぽんの朗読のうまさに舌を巻きましたね。
 私も前職では、文章を読む仕事があったのですが、プロだった者の目から見ても、うまいです。抑揚の付け方、表情。ぜひ、彼女にはいつか、朗読劇をやってもらいたいと思う、今日この頃です。
 では、朗読の中盤をどうぞ。

 人数が少なくて研究生公演ができない。正規メンバーも16人以上いるから、アンダーにも出演できない。絶望に打ちひしがれる研究生。仕事は握手会のみに。絶望。
 ファンの励まし。一向に始まるない公演。
 中3で進路に悩む時期。
 「辞めようか」「諦めたくない、ここで終わりたくない。ファンの皆様の言葉を信じたい
「その思いが溢れて、『辞める』という言葉を撃ち破った」

 正規メンバーの公演を覚える。
 いつでもアンダーの準備はでていると伝える。急でもなんでもいんです。公演に出演させてください。という悲痛な願い。

 数日後、チャンスが訪れる。
 チームE「手をつなぎながら」公演へのアンダー出演。
「この急なアンダーを経験したことで、私は強くなれた。なんでもかかってこい! そう思えるようになった」


 とある夏の初め 研究生「アップカミング」公演のお知らせ。
 「私達の為に作られたセットリスト、衣装、演出」
 「未来が明るく照らされたように感じた」
 「アップカミング公演は、私に仲間の大切さを教えてくれた」
「何よりも、諦めずに応援してくださったファンの皆さまに観ていただけることが、私はとても嬉しかった

 2014年3月31日 「コケティッシュ渋滞中」リリースイベント
 研究生全員昇格の発表
「皆様からの大きな大きな歓声」「その日は大好きな大好きな先輩の活動最後の日でもあったから卒業される前に、昇格した姿を見せることができたという安心。絶対に、忘れない日になった」

 うう、もうさきぽんのファンは全員免税してやれよ、と言いたいぐらい、ファンの方に恵まれてますね。この何もない空白期間の辛さたるや。しかし、ファンの人との信頼関係が出来ていますね。
 ちなみに紅條は、3月31日はかつての推しの活動最終日でしてね。それなのに、関西で仕事してましたよ。今でも後悔してます。デロリアンが完成したら、まず、ここからやり直したいですね。
 かおたんちゃんねるのインタビューを観ていると、この頃の鉄人ぶりが凄くてですね。腰の怪我もあったんですが、頑張って、色々な公演に出てるわけですよ。
 では、いよいよ後半です。

 チームKⅡメンバーに。初めて正規メンバーとして迎えた、総選挙。
 速報のみのランクイン。
「悔しい思いと、来年こそという思いで会場を後にした」
 そこからの1年は「総選挙ランクイン」を目標にファンと進む。
 「ファンの方との深い絆は、ここで生まれたと思う

 第8回AKB48 45thシングル選抜総選挙
 速報 第9位にランクイン 12935票
 「夢だと思った。でも、夢じゃなかった」
 「去年のトラウマがあるからこそ、速報で第9位をもらっても、不安を拭い去ることはできなかった」「でも、去年よりは確実に、明るい気持ちで席に着く自分が居た」

「私の心の中では、呼ばれろ、まだ呼ばれるな。そんな葛藤が起きていた」
 第31位 28282票でランクイン
「真っ白になった。我に返った時には、頬が濡れていた」
「あんなに泣いた日は、大好きな祖母が、亡くなった日以来だった」
「悲しい涙から嬉し涙に記憶を書き換えることができたのは、総選挙のおかげだ」

 ランクインからSKE48 20thシングル「金の愛 銀の愛」の選抜入り。
「私の大切な曲が増えた瞬間だった」
「私の頭の中は、いつも支えてくださるファンのことでいっぱいになった」
「私は皆さまと選抜という場所をつかみ取ることができたんだ。私とファンの方との絆が奇跡を生んだんだ」

 じゃんけん選抜へ(衣装はシンデレラのような真っ青なドレス。ファンへの感謝の思い)
「皆様へ少しは恩が返せたかなあ」

「ありがとうございます。私を見つけてくれて。ありがとうございます。嬉しい時も苦しい時も、私の傍にいてくれて。ありがとうございます。どんなことがあっても、支え続けてくれて。これから、どんなことがあろうとも、私には、皆さまがいる。これからも、私の物語を一緒に、作り上げてください」


 ここで、本を閉じます。
 もうね、今まで積もり積もってたフラストレーションがここで、最高の形で報われるわけですよ。そして、時々、忘れそうになるんですけど、アイドルの物語に僕らファンも少なからず、関わっているんだなということです。時にそれは苦しめてしまうこともあるかもしれませんが、今回のさきぽんのように希望へ、そして、絆へと変わっていくこともあるんですね。

 で、ここから「あなたがいてくれたから」ですよ。
 ちょっと聴いてみましょう。とリンク探したんですが、公式がないので、皆さん、探して聴きましょう。
 過去を振り返って、「あなた」への感謝を歌う歌なんですが、これが凄くいい。
 「いくつもの涙流して、ようやくここへ帰ってきたよ。ああ、大きな支えはHOME TOWN」で終わるんですが、この「HOME TOWN」はもう書くまでもないですが、「ファンの皆様」ですよね。
 曲を迎え入れるための演出として、朗読を選択したさきぽんは素晴らしいと思います。この記事のために、ここ数日間、ひたすらこの朗読を聞き続けたんですが、本当に良い声で、読み方がうまいです。これは、彼女の武器として、使っていってほしいなあ、と思います。

 当日、僕も現地にいましたが、もうね、隣の席のヲタの方が「あなたがいてくれたから」のイントロが始まった瞬間、嗚咽を漏らしてまして。タオルで口を隠してらして。「うう、うう、おおん」みたいなね。で、タオルを見たら、さきぽんの名前が!
 思わず僕ももらい泣きしそうになりましたよ。
 
 あと、書きながら気づいたんですが、ファンのことを「ファンの皆様」と凄い丁寧な言い方をしているところも素晴らしい。客のことを「ファンの皆様」というのは僕の知る範囲では新日本プロレスの内藤哲也ぐらいですよ。いつか、さきぽんが、軍団を作って制御不能な活躍ぶりをしてほしい、デ・ハ・ポン!!
 
 真面目な話をするとね、これから先、僕たちは推しとどんな物語を描けるのか、そんなことを考えさせられる1曲でした。

 ちなみに、僕はアルバムの特典映像の眼鏡さきぽんが好きですよ。


 
 あと、かおたんちゃんねるのインタビューもすごい良いのでお勧めです。この朗読の頃のことも語ってくれていますよ。ぜひぜひ。