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2019年2月20日水曜日

羽豆岬①



その場所に意味を加えるということ


 もう歳なんですかねえ、「聖地巡礼」という言葉が未だにピンとこずに「ロケ地巡り」という言葉を使いたいんですね。だって、映画「空海」とか映画「日蓮」の「ロケ地」巡りを「聖地巡礼」っていうと、別の意味が出て来るでしょ?まあ、屁理屈をこねてるわりには、僕もロケ地に行くのは好きでしてね。関西だと色々な時代劇のロケ地に行けますし、2018年3月のさいたまスーパーアリーナでのコンサートでは、「うぉ!ここ、オーズとジェネラルシャドウが闘ったとこ!」とか「あっ、ここで龍騎が振り向いてオーディン殴ったとこ!」とか、「プロフェッサーがぶっ飛ばされたとこ!」とか異様に興奮しましたよ。そう、場所に何か意味が加わることによって、人は心が動かされることがあるわけです。

 SKE48にもそんな曲があります。
 それが「羽豆岬」です。2010年にリリースされた「ごめんねSUMMER」のカップリング曲だったこの曲は、名古屋の南のほぼ果てにある羽豆岬という当時は、あまり知られていなかった岬を舞台にした曲です。
 まずは、聴いてみましょう。
https://youtu.be/XxpDHWIh5Rc

 うーん、この記事を書いているのは2019年2月の真冬ですが、また羽豆岬に行きたくなるなあ、という1曲です。
 さて、この羽豆岬なんですが、現在、歌碑が建立されています。
 まずは日刊SPAさんの記事をご参照あれ。羽豆神社の宮司さんのインタビューもあり、地元が盛り上がっていく様子が載っているで、併せてぜひ。いやあ、町議会の人も頑張ったんだなあ。
https://nikkan-spa.jp/491730

 さて、この羽豆岬という曲、実はもう一つ意味が加わります。
 それは、SKE48の初代リーダー平田璃香子さんの卒業が決まった後、SKE48における曲の総選挙である「リクエストアワーセットリスト ベスト50 2012」で1位を獲得します。りかちゃんすの「今から見る景色、一生忘れません!」のセリフと、羽豆岬の海のような青いサイリウムに染まった客席は感動的でしたよ。
 これも日刊SPAさんの記事をご参照あれ。えっ、今回、日刊SPAさんばっかじゃないかって?
 まあまあ、先に参考資料出してから自分の考え書きたいタイプなんですよ。
https://nikkan-spa.jp/489819

 読んでいただいたように、「羽豆岬」の1位ランクインで、SKE48ファンにとって特別な曲になっていきました。

 ここまで外側のことばかり書いてきましたが、内側である曲はどうなのか?
 まず、歌詞の世界を見ていくと、羽豆岬に関連する場所とそこから想起するものが書かれていきます。

 バスの窓を開ける → 潮の匂い

 師崎からの道 → 夏への1本道

 羽豆岬の展望台から見える海 → 未来みたいにどこまでも続く・元気をもらえる

 船 → 希望

 羽豆岬の夕焼け → 美しく沈む・優しい背中

 水平線・港に帰る船 → どんな今日もリセットする

 羽豆岬の思い出 → 青春そのもの・遠い夢を見ていた

 船 → 勇気

 たとえば、左側に挙げられている具体的な事象と矢印書いた右側に挙げられている抽象的なもの。左側だけ見ると、どこの漁港でもあるようなものですよ。でも、秋元康は、そこに色々な意味を加えていったわけです。特に出発して港に帰ってくる船に関しては、3つの意味を与えています。
 ただ、書きながら思ったんですよ。秋元康は本当に行ったのか、と。いや、別にいいんですよ。映画「地獄」とか、その理論で言えば地獄に行ってないと撮れないことになりますからね。まあ、なんか別の記事で部下に調べさせたっていう情報があるので、多分、写真とか映像から連想していったんですかね。
 名もなき漁港に、名作詞家の言葉で意味が付け加えられていき、作曲家の力で優しいメロディーが加わり、映像監督の力で夏の2日間を美しく切り取った風景が加わります。あっ、なんか読んでてうちを田舎扱いするな、とむかついてきた羽豆岬近辺にお住いの方は、「栄、覚えていてくれを叩き落とすならこんな地獄大喜利」をして気分をリフレッシュさせてください。

 さてさて、結果どうなったか。
 今では名古屋の観光本に漏れなく紹介される観光スポットになりました。曲の力によって地域が活性化していくというのは、各地方に設置された48グループならではのことかも知れません。


 僕が前働いていた会社の上司がたまたま名古屋のセントレアで結婚式があったついでに、観光地に羽豆岬というところがあるらしいと行ってみたら、SKEファンが居て、みんなイヤホンをして泣きそうになっていたという異様な光景に遭遇したそうです。

 ちなみに僕も羽豆岬に行ったことがありましてね。初めて行ったのは、2014年2月3日。名古屋ドーム2デイズの翌日ですね。この日は、同じことを考えていたヲタがうじゃうじゃいたみたいでね。羽豆岬へ向かうバスはなんともなかったんですが、帰りのバスが超満員になりまして。普段はご近所のお年寄りが病院とかの行きかえりに利用するんですかね。途中で病院前のバス停から乗ってきたおばあちゃんも驚いてましたよ。

 最初は何ともなかったんですが、段々息が苦しくなってきましてね。ふと窓を見たら、もう窓も乗客の息で真っ白に!
 さっき病院前のバス停から乗ってきたおばあちゃんも、また病院に引き返した方が良い状態になっている!
 僕も走馬燈が見え始めしてね。

 昨日見た名古屋ドームのオレンジ色の風景。
 「THE 八犬伝 浜路再臨」で網干が出てくる時の気持ち悪い笛の音色。
 小学生の頃の同級生の川崎くんが「パンの木」というパン屋をやっていること。
 最初に貧血になったのは小学校の朝礼で校長先生が「GTO」の話をしていたこと。

 もう終わりだ。
 映画「ファーストマン」の失神シーンみたいになっていた時、運転手さんが「早く窓を開けてください!」とマイクで叫びましてね。そりゃ、乗客の僕が死にかけてたわけですから、運転手さんもそうですよね。よくぞここまで運転できたもんですよ。なんとか空気が入ってきたおかげでみんな無事に名古屋の土を踏むことができましたよ。

 というわけで、初めて行った時の思い出は、ほとんどバスの思い出しかないわけです。確かに羽豆神社にも行きましたし、展望台にも上がったんですけどね。なんというか、嵐の「アオゾラペダル」みたいですが、本当にほとんど記憶がないわけです。

 それから僕は、「会社辞めようかなぁ」とか「もう、ダメかもなあ」と思うと、新幹線に乗って名古屋まで行き、羽豆岬へと行くようになりました。最近だと2018年の8月17日に行きましてね。ちょうど、喉が悪くなって、前働いてた仕事を辞めるかどうしようかなあ、という時で、急に思い立って、夕方に行きましてね。バスから見える夕焼けが美しくて。うまく撮れてませんが、ひょっとして、グリーンフラッシュが見られるかもっと浮足だってましたよ。



 バスに乗った時はまだ明るかったので、メンバーのサインがちらほら。僕が乗った時は、乗客が僕だけだったので、バンバン写真が撮れましたよ。






 今では大きな展望台が新たに出来てまして、眺めも良いですよ。




 ええ、肝心の羽豆神社と展望台の写真が一枚もありませんが、感動しすぎて、「もうこれは写真に撮らなくていい心の中に保存しておこう」と決めましたよ。ほら、映画でも、「これは買っちゃいけない、ずっと心の中に保存しておこう」っていう映画ないですか?

 多分、今日もSKEファンの誰かが羽豆岬に行っていることでしょう。歌詞の中にもあるように、疲れた時や心が弱った時に夕日を見て元気をもらえる。
 どこから来たかは違っても、どこに戻るか違っても、みんなの頭の中にはきっと「羽豆岬」が流れているんでしょう。