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2021年4月19日月曜日

二人の距離感

もし寂しくなったら何もない大地に話しかけて 


 先日、東京大学大学院情報理工学系研究科の稲見昌彦教授が「最近植物学者の方と研究しているんですが、植物は単体ではなく群として考えた方がいい時もあり、植物交信から学ぶことが多い」と宇野常寛さんと平田オリィさんとの対談で語っていました(平田さんは分身型ロボットOriHimeの開発者ですね)。
 反射的な早さのある動物的な交信と違い、植物的な交信は、遅いけれど長い目線で考えると着実に種を残していきます。このスタンスは情報の捉え方・発信の仕方として非常に勉強になるところがあります。
 

 なんで冒頭からこんな話をしたかというと、昨日の夜ぐらいからネットニュースで「松井珠理奈・松井玲奈 不仲?」という記事が溢れていて、Yahoo!と連動した記事には、まあ、珠理奈の悪口が溢れています。
 さらに、肝心のネット記事は、珠理奈卒業公演に玲奈が来なくてビデオメッセージだったこと、そのメッセージが厳しい内容だったこと。更に、昨日のSKE48公式youtubeチャンネルの珠理奈のオンラインサイン会のコメントの中の「3回楽屋挨拶に行ったけど、3回断られたこと」が書かれていました。




 まだ、記者の名前入りで書いている大手メディアはマシですが(それでも自分の考えは一切書かずに書き起こしだけの記事もありましたが)、名前も書かずにひたすら広告をベタ貼りしてアクセス数やアドセンスを稼いでいるサイトや、それを拡散したり心無い言葉を書いたりしている人々を見ると、疑問を感じてしまいます。
 なんで、こんなに反射的に決めつけられるんだろう?
 確かに珠理奈は「もう会いたくないのかなぁ」と動画の中で言っていましたが、「かなぁ」であって「会いたくない」ではないんですよね。
 じゃあ、何故、会わないのか?
 僕は玲奈ひょん本人ではないので、本心は分かりません。
 でも、これまでの彼女の行動や珠理奈との関係から、推測はできるかも知れません。

 まず、玲奈のビデオメッセージに関してですが、「これからもそっと見守りたいと思います。周りで声を掛けてくれる人を大切にして、卒業してもすてきな笑顔でいてください」というメッセージの部分に注目してみましょう。
 「これからもそっと見守りたいと思います」の部分は、松井玲奈卒業コンサートでの珠理奈が玲奈に送った「玲奈ちゃんには安心して卒業してほしいし、これからもSKEを守るから玲奈ちゃんも見守ってください。これは私からの約束です」という言葉と丁度、対の関係になっているかと思います。
 更に「周りで声を掛けてくれる人を大切にして」からの部分は、一緒に配信に出ていた山内鈴蘭の「親目線じゃない?」という指摘と全く同意見で、甘えん坊の珠理奈のお姉さんとしての玲奈の言葉だと僕は考えています。
 「AKB48Show」の「高橋みなみの説教部屋」のコーナーに呼ばれた松井玲奈は、「私もやっぱ今でも姉妹って感覚。関係性を聞かれたら姉妹って言うのが自分はしっくり来ると思ってて」と、まず二人の関係性を語ります。 
 そして、たかみなが「すっごく語ってたよね?すっごい真剣なの。でも、玲奈が珠理奈には結構強めに言うのが面白くて、それ違うよ!みたいな。えーって。それに対して珠理奈が、そっかなぁみたいな。それ違うそれ違うみたいな。結構強めよね、珠理奈にはね」とロケバスで見た二人の姿を語ります。
 そこから玲奈は「あんまり珠理奈には言葉を選ばないです」、「甘やかさないです」と珠理奈へのスタンスを語ります。
 何故甘やかさないんでしょう。
 たかみなに問われると松井玲奈はこう答えます。

 「それは理由がちゃんとあって。彼女が11歳の頃からやってて周りの人達が凄く珠理奈に優しくしてたから」、「ずっとそれできてるところもあった中で、あ、このままだと良くないなって思った時があって。彼女が多分14か15の頃に。まぁ反抗的になる時ですよね。だからその時に、あぁこのままじゃいけないなと思って」、「お母さんみたいですよね。強く、ダメなことはダメ、違うことは違うと」


 珠理奈のことを思っているからこそ、厳しい接し方をする。
 その場その場のコミュニケーションの為に甘やかしてしまうと珠理奈の為にならない、将来まで見据えた長い視点で厳しい態度をとる。
 そう、植物的交信の視点です。
 そういえば、彼女の卒業曲は植物がテーマでしたね。
 秋元康作詞なのに、玲奈から珠理奈へのメッセージにも僕には最近聴こえています。
 


 
 段々と楽屋挨拶に行こうとしても会わなかった理由が、皆さんにも推測できてきたのではないでしょうか?
 僕の考えとしては、「親離れ」いや「姉離れ」でしょうか?
 珠理奈の視点ではなく、玲奈の視点から考えてみることで、ひょっとすると、わざと今は会わないようにしているのでは、と思います。まだ、甘えていい時じゃない。これからソロで頑張るときだからと。
 でも、いつか、珠理奈が松井玲奈が安心して抱きしめられる日が来た時に、必ず会ってくれると僕は信じています。
 それまでは真那の言葉を借りるなら絶妙な距離感で居てほしいです。
 
 そして、いつか、こんな二人が見られますように(二人の表情が良いですね)。

 僕も植物的な交信で遅くても長くても、見守っていきたいと思います。

2021年2月1日月曜日

自分なりの「守り」方で

 あの日見た背中




 誰かを「守る」と誓ったことはあるでしょうか?


 フィクションの中であれば、誰かからの暴力や組織の危機から「守る」ことが挙げられるかも知れません。
 しかし、我々の日常の中で大切な人を「守る」ということは、なかなか見えにくいことです。
 映画「花束みたいな恋をした」の中で、恋人との関係を「守る」為に主人公の一人は「普通」になろうとしますが、それが二人の関係がずれるきっかけになるということが描かれていましたが、「守っている」つもりでも、実は壊していることもあります。
 かように、「守る」ということは難しいです。

 アイドルの世界も同じです。
 グループやメンバーを守っていくというのは、すぐに取りかかれたり結果が出ることではありません。
 かつて、SKE48は松井珠理奈と松井玲奈の2枚看板が、グループの中心にありました。運動場の汗の匂いがする珠理奈と、舞台の汗の匂いがする玲奈、同じ松井でありながら発する光が対照的だったこともあり、それぞれの光に多くの人々が集まりました。
 やがて、時が流れるにつれて他グループの台頭とアイドルブームの終息もあり、徐々にファンの総数は減っていきます。
 それでも、2015年8月末に行われた松井玲奈卒業コンサートは豊田スタジアムで2日間に渡って行われ、松井玲奈の最後を見届ける為に多くのアイドルファンが集まりました。
 この時、「手紙のこと」で一人一人のメンバーに向けて松井玲奈が言った「一人一人がSKE48の未来です」という言葉が非常に印象的でした。
 松井玲奈について古畑奈和は、2015年8月31日のブログで次のように書いています。

https://ameblo.jp/ske48official/entry-12068036605.html

 「優しい手に何度も何度も包まれて引っ張ってもらいました」
 「人見知りなのに仲良くしようと話しかけて」
 「前に立つ人として引っ張り支える人として」

 松井玲奈のことを思いながら、彼女が背負ってきた「荷物」について思いを馳せます。
 そして、自分が支えてもらったことを今度は自分がしていこうと、彼女は誓います。

 SKE48に関しては、前日のブログで書いています。

https://ameblo.jp/ske48official/entry-12067666930.html

 「守らなきゃ」という気持ちが生まれました。


 この年のリクエストアワーで古畑奈和は、松井玲奈が務めたセンターポジションで「前のめり」を披露します。


 翌年の3月4日。
 宮澤佐江の卒業コンサートが行われます。
 AKB総選挙の選抜常連であり、外仕事の量も多く、SKE48には貴重な女性ファンも引っ張ってこれる魅力的なメンバーでした。
 彼女がMVの画面に出てくるだけで、華やかさが出る貴重なメンバーでした。
 3月4日の古畑奈和のブログを読んでみましょう。
 https://ameblo.jp/ske48official/entry-12135857465.html

 「温かさ」、「安心感」、ベテランメンバーである宮澤佐江がSKE48にくれたものは、ファンである我々よりもSKE48のメンバーがより多く感じていたのかも知れません。
 そういえば、BUBUKAの取材で、宮澤佐江と古畑奈和の優しさが似ていることを指摘されていましたね。

https://ameblo.jp/ske48official/entry-12045112346.html


 思えば古畑奈和は、上記の「前のめり」だけでなく、松井玲奈の「枯葉のステーション」を演奏し、「AKB49」を宮澤佐江に次いで主演を担当します(特に『君はペガサス』の世界観があんなに似合う人はいないと思います)。
 サックス演奏という新しい汗の匂いと、上記の二人に通じる表現力。
 古畑奈和という人ならではの魅力と、二人の偉大な先輩たちの素晴らしい点を彼女は別れと共に再認識し、吸収していきます。
 そして、2016年の総選挙が近づいてきた5月12日。
 残された松井珠理奈への想いを古畑奈和は語ります。

https://ameblo.jp/ske48official/entry-12159730736.html

 「珠理奈さんを守りたい」、「背負っている荷物を少しでも私に持たせてもらえたら」、後輩ながらも抱きしめた珠理奈の背中。彼女にかかった負荷と自分も気づけていたらという後悔。
 松井玲奈にも宮澤佐江にもなれないけれど、自分のやり方で珠理奈とSKE48を「守る」。
 ワクワクさせてくれる、夢を与えてくれたグループを守る。
 思えば、2015年の総選挙での彼女のスピーチは、まさにこの言葉と繋がりますね。
 ただし、まだ彼女はもう一皮むける過渡期の真っただ中でもあったので、早くグループを守れる存在になりたい気持ちと自分の現状を比べて、もどかしい気持ちもあったのではというのも微かに感じます。

 やがて、2017年。
 松井珠理奈の代わりに単独センターとして小畑優奈が選ばれます。
 ゆななのフレッシュな魅力は世代交代を予感させるものでした。
 個人的には、この2017年が来る前の「金の愛、銀の愛」で古畑奈和センターという選択も面白かったのではないか、と思っています。彼女の当時の想いともう一押しとしてセンターという選択肢があれば、もう少し早く珠理奈の荷物を一緒に持ち、未来は変わっていたのかな、とも考えたりもします。

 2019年、古畑奈和はキャリア8年目にしてセンターになります。
 松井珠理奈も雑誌のインタビューで「奈和ちゃんなら安心して任せられる」ということを語っています。
 正直、8年目でセンターということに対して、早い遅いという認識は人それぞれですが、総選挙で2回の選抜入りという結果を出した説得力がありました。そして、彼女なら大丈夫だという「安心感」も。
 そこから、グループを守るためにセンターだった珠理奈の分まで彼女はメディア露出していきます。レギュラー番組も始まりました。ソロの楽曲も増えて行きました。勿論、全盛期ほど外仕事はありません。それでも、センターとしてマイペースながらも、決めるところは決めて(特に対外試合)グループを「守って」いきました。


 この記事を書いているのは、2021年2月1日の夜です。
 明日の朝から、松井珠理奈の卒業シングルが全国の店頭に並びます。
 SKE48の象徴であり、多くの荷物を背負っていた人。
 名前の無い悪意に傷けられ続けた人。
 誰よりもグループを愛していた人。
 あの日見た背中は、今、奈和ちゃんにはどんな風に見えているんでしょう。
 そして、いよいよ、本当の意味でSKE48を「守る」期間がこれから始まります。
 珠理奈を見送る古畑奈和の背中を今度は、どの後輩が見つめているのか。
 あの日の奈和ちゃんの気持ちを、後輩もきっと感じるのではないかと思っています。
 ずっとSKE48と大切な人を「守って」いって欲しい。

 今夜は「前のめり」を聴いて寝たいと思います。



2020年9月27日日曜日

12周年公演に向けての短期集中連載第25弾「僕の太陽は何を教えてくれるのか?」

足し算と引き算を見分けながら 


 皆さん、難しい公演というと、どの公演を思い浮かべますかね?
 ダンスが激しい「制服の芽」でしょうか?
 恐怖のメドレーが待っている「ラムネの飲み方」でしょうか?
 過去の幻が幾重にも重なる「PARTYがはじまるよ!」公演でしょうか?

 SKE48の中でもダンス巧者として有名な木下有希子は、ある公演を難しいと挙げています。ちょっと読んでみましょう。

 https://ameblo.jp/ske48official/entry-11580110822.html


 振り付けが難しいわけではない、簡単だからこそ、細かいところが難しい。
 「darkness」などでガンガン踊っていた彼女だからこそ、説得力がありますね(SSAのdarkness前のダンスは最高)。
 さらに、松井玲奈の「僕の太陽」についても興味深くてですね。
 ちょっとこちらを読んでみましょう。
 ちなみに、じゅりれな好きな人にも読んで欲しい。

https://ameblo.jp/ske48official/entry-11580161914.html

 うーむ、同じ動きが多いからこそ、一つ一つの動きが重要である。
 曲に頼らず自分たちで緩急をつけること。それは表情でもそうであること。

 さらに、もう一つ松井玲奈のブログで読んで欲しいのがこちらです。
 https://ameblo.jp/ske48official/entry-11579526421.html

 ううむ、SKE48のオリジナル公演と比較してシンプルだからこそ、何を足して何を引くのかが重要になってくるのか…。

 そういえば、この公演で菅なな子と古畑奈和が「アイドルなんて呼ばないで」で同じユニットだったんですよね。じゅりれなも好きですけど、なんなおも好きなんですよね。

※なな子のブログ
 https://ameblo.jp/ske48official/entry-11580095996.html

※奈和ちゃんのブログ

https://ameblo.jp/ske48official/entry-11830589285.html 

 二人とも「可愛い曲」に対してのスタンスが共通しているのが面白いですね。
 当時は、さらになるちゃんもいましたね。つうちゃんが入ったこともあったなあ(遠い目)。
 今回も若手の同期で固めてみるのもどうですかね。もしくは、普段はカワイイ曲はあんまり歌わなそうなメンバーとかね。個人的には9期の4人とかね。

 2014年4月22日に終わったこの公演。
 最後のひょんさんのメッセージもいいんですよね。

https://ameblo.jp/ske48official/entry-11831637695.html

 んっ?
 現役メンがもう奈和ちゃんしかいないんじゃない?
 ひょっとして。
 なんで奈和ちゃん入れないんだよ!
 現役メンだから入って当然って、せっかちな人が間違えてブログに書いたらどうするんだ(ええ、僕ですよ)!
 

 さて、話を戻すと、シンプルだけど、そこに工夫が見つけられる公演。
 それが「僕の太陽」公演。
 この短期間で、メンバーたちはどんな風に仕上げて来るのか、そして、それを観る僕たちも細かいところまで注目して観ていきましょう。

 ※個人的に松井チームEで一番好きな曲であり、仕事終わりに聴くと最高なイントロの曲を聴きながらお別れです。



2020年5月24日日曜日

今こそ、松井玲奈総選挙

遥かな歴史の階段を



 松井玲奈がSKE48を卒業したのは、2015年のことなので、2020年5月現在、既に彼女が居なくなって、5年近い時間が経とうとしています。
 それでも、未だに彼女をきっかけにSKE48に入ってきたメンバーは沢山います。また、僕がSKE48ファンというのもあるかも知れませんが、検索エンジンのトップ画面には、彼女のニュースが出てきます。
 そこで、今回は松井玲奈に関することで総選挙をしてみたいと思います。
 ただし、卒業後の彼女の活動をすべて追えているわけではないので、あくまで僕の印象に残っていることになります。
 それでは、行ってみましょう!

 第16位 「松井玲奈のオールナイトニッポン0」

 この日は、「オードリーのオールナイトニッポン」で、若林さんが春日さんの「騒動」で、パチキレた伝説の回でして、その余韻でワクワクしながら聴いたのを覚えています。ちょっとだけそのことを彼女が語ってくれていましたしね。彼女のソロラジオ、また聴きたいなあ、と思います。

 第15位 「gift」

 松井玲奈の初主演作品ですね。
 序盤の廃れた感じが衝撃でしたが、徐々に自分を遠藤憲一さん演じる篠崎に開いていき、最後のシーンで見せる表情が全く違うものになっているのが、印象的な作品です。時々、見返したくなる名作です。

 第14位 「2次元同好会」

 この書籍が大好きでしてね。
 様々なコスプレや作品の魅力について語っているんですが、とにかく作品の愛で方が分かってらっしゃる、というものもあれば、そこに注目してるんですね!というところもあり、自分の知っている作品も知らない作品も、彼女の眼を経由することで新しい発見がある本です。

 第13位 「フィンランドミラクル」

 これはですね。
 リクアワのオーディオコメンタリーを聞いて欲しいんですが、曲の魅力をこれでもかというほど語ってくれるんですよね。凄く嬉しそうに。彼女の「可愛い」を嗅ぎ分けるセンサーを感じることが出来る名解説でもあると思います。

 第12位 「ニーチェ先生」

 ひょんさんの良い意味で「どうかしてる」ところが全開に活かされた役柄でした。もう、一途だけど、そのベクトルがあまりにも凄い方向に向かっているところは、ハマり役だったんじゃないか、と思っています。あのオープニング、印象的でした。

 第11位 「TWO ROSES」

 ダブル松井のユニット曲です。
 この曲を卒業コンサートでしなかったのは、意外でしたが、彼女が居なくなった今、この曲が披露される機会があると、何故か松井玲奈の面影を探してしまいます。珠理奈の卒業コンサートで実現しないかなあ、と思っています。

 第10位 「雨のピアニスト」

 松井玲奈の表現力の片鱗を見せられた1曲です。
 個人的には、卒業コンサートの時の雨の中で1期生3人で唄ったバージョンが大好きす。

 第9位 「キスだって左利き」

 このMVって、ダブル松井の良さが凄い出てて、好きなんですよね。
 二人乗りするところとか、色のなかった玲奈の日常に珠理奈が現れることで色づき始める演出とか、本当に大好きです。
 美しい景色と、涙が印象的な作品です。

 第8位 「片想いFinally」

 かなり刺激的な内容のMVです。
 ここでの松井玲奈は、珠理奈との出会いで変わっていくんですが、「キスだって左利き」とは違い二人の関係はとんでもない方向に変わっていきます。車の衝突シーンも衝撃でしたが、雨の中のビンタが凄く印象に残っています。

 第7位 「世界が泣いてるなら」

 彼女のダークな演技が炸裂する名作です。
 多重人格者を演じる難しさもあると思うんですが、控えめな少女が狂気の独占欲を示し始めるところは、今観てもゾクゾクします。

 第6位 「マジカルラジオシリーズ」

 すいません、マジカルラジオ大好きなんです。
 マジカルラジオ1でのノリツッコミ。
 マジカルラジオ2での一人芝居。
 マジカルラジオ3での厳しい役。
 全部良いんですよね。
 バラエティコーナーで素の表情が観られるのも素敵です。
 いつかまた、マジカルラジオ始まらないかなあ、と日々妄想しています。

 第5位 「マジすか学園シリーズ」

 ゲキカラさんですね。
 初登場時の衝撃。
 マジすか2での頼もしさ。
 舞台版で明かされた過去。
 僕はマジすか2での、溜めて溜めての爆発が大好きなんですが、舞台版も良くてですね。
 本当に一瞬ですが、「強き者よ」が流れるところは感動しました。

 第4位 「枯葉のステーション」

 彼女が居なくなった今でも伝説級に残っている名曲です。
 リクアワを二連覇し、彼女の代名詞になっていました。
 菅原や後藤楽々は歌い終わった後、泣いていましたが、この曲の持つ重みはこれからも大事にしてほしいなと思います。
 松井玲奈の儚さや繊細さを活かした名曲だと思います。

 第3位 「カモフラージュ」

 松井玲奈初の短編集。
 「食」ということをテーマに、価値観やコミュニケーションの変化が描かれていきます。詳しくは感想を書いた記事を読んでいただきたいですが、本当に良い作品が多いんですよ。
 個人的には、この路線は10期生の五十嵐早香さんに受け継がれていくのでは、と考えています。
※「カモフラージュ」についての記事はこちら!
https://oboeteitekure.blogspot.com/2019/04/blog-post_8.html

 第2位 「2588日」

 これまでの彼女の思い出の地を順に進んでいく素晴らしいMV。
 そして、何か大事なものをSKE48に残して行ってくれた、今でもその大事なものは残っていると僕は思っています。時々振り返りたくなる名曲です。

 第1位 「前のめり」

 彼女が単独センターを務めたSKE48のシングルにして、ダブル松井の別れを感じさせる名作です。
 浜辺を走るあの二人の姿。
 以前、TwitterでこのMVの裏話として、二人が走っている砂浜は、貝や石が落ちていて、結構痛いはずだというのを読みましてね。様々な声の中をSKE48の顔として走り続けてきた二人の姿が思い起こされます。
 いつか、また二人が共演する日が来ますように。
※「前のめり」についての記事はこちら!
https://oboeteitekure.blogspot.com/2018/11/blog-post_29.html

 多分、「あのことが入っていない!」という方も多かったと思います。
 皆さんの松井玲奈総選挙はどうでしょう?
 

2020年5月12日火曜日

緊急企画!あなたが好きなSKE48の写真集は?

写真で時間を切り取ること


 
 先日、松井珠理奈と古畑奈和「二人に惹かれる理由」という記事を書いてから、ちょっとした燃え尽き症候群状態になりましてね。
 毎回、このブログの軸がぶれそうになった時に、喝を入れてきたのが、松井珠理奈や古畑奈和だったんですね。「映画秘宝」が、定期的にゾンビ特集やブルースリー特集をして自分たちのルーツを確認するように。
 ブログを更新する度に読んでくださっている方ならば、薄々気づいているかも知れませんが、少し精度が落ちてきている気がしています。
 書きたいことがあるんですが、仕上がりというか、自分の求めているクオリティに達していない。でも、書き続けないと精度はさらに落ちていく。

 そこでだ!

 今日は肩の力を抜いて、久々に緊急提言シリーズをしてみたいと思います!
「あなたが好きなSKE48の写真集は?」をやってみたいと思います。

 写真集に何を求めるかは人それぞれだと思うんですね。
 メンバーのいつもと違う表情がみたいとか、メンバー自身や仲間による撮影じゃなくてプロの方が切り取った推しの姿が見たいという人もいるでしょう。
 ちなみに、僕は、SKE48を知るまでは、写真集というものは松田優作とかキーファー・サザーランドとかのしか持っていなくて、どちらも文字情報がめちゃくちゃ多いんですね。写真だけでなくその人のパーソナルな部分が浮き上がってくるものが好きなんでしょうね。
 あとは、ロケ地ですよね。
 時には一緒に旅をしているような気分にさせてくれたり、同じ部屋にいるような気分にさせてくれたり。1枚の写真から曲が思い浮かぶことがあったり、言葉が思い浮かぶことがあったり、はたまた、思い出が甦ったり。
 こう考えていくと、写真集って色々な楽しみ方がありますね。
 全然関係ないですが、メンバーが載った時に買う「週刊プレイボーイ」とかのあのグラビアの文章は、いったい誰が書いてるんでしょうね?編集者さん?

 さあ、それでは、僕が独断と偏見で選んだ好きな写真集ベスト3、いってみましょう!

第3位 高柳明音写真集「いつか、思い出したいこと」



 最初はちゅりとベトナムってどんな感じだろう、と思ったんですが、夕方の写真や夜の街の写真が凄く良くてですね。旅に出たくなる写真集なんですよね。
 そして、「ちゅりカメラ」のページは、かつて発売された「友撮」を思い出しましてね。メンバーにしか撮れない姿がそこにはありますし、ちゅりから見たSKEの歴史がそこにはあります(しまった。多分、ここから記事一つ書けたぞ)。
 メンバーからのメッセージの水野愛理のメッセージが凄く熱いんですよね。
 こちらもじっくりと読む楽しさがあります。
 
 

第2位 須田亜香里写真集「可愛くなる方法」



 とにかく、景色とだーすーのバランスが良い。 
 キューバの偉大な文化遺産に佇むだーすーの姿。
 詳しくは、こちらの記事を参照していただきたいのですが、彼女と一緒に旅をしているような気分になりますよ。
https://oboeteitekure.blogspot.com/2019/04/blog-post_21.html


第1位 松井玲奈写真集「ヘメレット」


 松井玲奈という人の内面により深く迫ったという意味では、「きんぎょ」よりもこっちかな、と思いましてね。
 とにかく、彼女の「好き」に関するものがこれでもかという文字量で紹介されていきます。要所要所に彼女の小説「カモフラージュ」につながる要素もあるなあ、と思います。
 そして、古畑奈和ちゃんファンの方なら、年を経るにつれて変わっていく彼女に「~年頃の奈和ちゃんの髪型が好き」というのがあるように、僕はこの時期のひょんさんが好きなんですよね。
 いつかまた、彼女の写真集が発売されないかなあ、と期待しています。 
 
 なんで、「無修正」が入ってないんじゃい!
 みなるんやさりー、くーみん、珠理奈は?
 そうお怒りになる方もいるでしょう。
 まあまあ、お茶でも飲んで落ち着いてください。
 あくまで、僕の主観なので、もし、これが良いぞというのがあったら教えて下さい。

 さてさて、今度はこのメンバーの写真集が欲しいベスト3行ってみましょう!

第3位 末永桜花

 おーちゃんほど、写真集の妄想を色々と広げられる人はいないんじゃないでしょうか?
 電車に関すること、ガンダムに関すること、和食麺処サガミさんに関すること、様々な可能性があると思います。
 鉄道博物館とか、京阪での撮影とかも観てみたいですね。前の仕事で京橋と丹波橋の間を週に1度は移動していた人間としては、あの風景におーちゃんが居るのも見てみたいです。

第2位 山内鈴蘭

 もうね、1回、全部彼女に開放させてあげたらいいと思うんですよ。
 ロケ地、衣装、ページ、全部彼女にプロデュース権を預けて。
 ただ、「アイドルの涙」で語っていた彼女のシリアスな一面や最近の「ソーユートコあるよね?」のお家バージョンでの魅力的なダンス。そういうところも文面で読んでみたいな、と思っています。

第1位 古畑奈和

 最近、奈和ちゃんファンになった方なら、あまりピンとこないかも知れませんが、卒業までに奈和ちゃんには、写真集を出すチャンスが来て欲しいな、と思います。詳しくは、「幻の写真集」という記事を読んでいただいきたいんですがね。

https://oboeteitekure.blogspot.com/2020/04/blog-post_18.html

 「オルフェス」の時みたいに、SHOWROOMから出せないもんでしょうか?
 コロナがあと2年続いて撮影が難しいのであれば、かつてのオフィシャルヒストリーブックみたいに、これまでの写真を集めたもので出せないでしょうか。
 それこそ、「乙女酒」・「えにし酒」から写真集だしても良いと思うんですよね。
 

 惜しくもランクインしませんでしたがが、江籠ちゃんや菅原、平田さんや青海さんの写真集なんかも見てみたいと思っています。
 あとは、今の推しメンである早香先生とかとゆいによる観察日記形式の写真集も見てみたいですね。かとゆいのグラビアに早香先生が文章を書いていくとかね。
 色々な可能性があると思いますが、皆さんはいかがでしょう?
 

2020年3月4日水曜日

忘れられない二日間「松井玲奈卒業コンサート 2588DAYS」

空からは涙雨


 皆さんは、アイドルの卒業コンサートに行ったことは何回ぐらいあるだろうか?
 僕は、残念ながら推しの卒業コンサートに行けたことは一度もない。
 しかし、どうしても行っておきたかったコンサートがいくつかある。
 その中の一つが、トヨタスタジアムで2日間に渡って行われた松井玲奈の卒業コンサートだった。



 今更、松井玲奈がSKE48に於いて多大な働きをしたことは、このブログの読者の方ならご存じだろう。
 野暮だと分かりながら書かせてもらうと、多くの人のSKE48の入り口になり、時には運営に代わってヲタを制し、時にはヲタに代わって運営に意見をしてくれた。その反面、一人のヲタクとしての顔も持っていて、鉄道・アニメ・特撮・アイドル・ゲームと、多くのヲタクに親しみを感じさせてくれた。

 
 彼女が卒業発表をした2015年当時、長年推していた中西優香が卒業し、僕は推しが不在の状態だった。
 しかし、松井玲奈というSKE48において、2度と出てこないであろう唯一無二のメンバーの卒業コンサートには絶対に行きたいと思い、8月29日と8月30日両日のコンサートチケットを申し込んだ。
 運よくどちらも当選した。
 だが、ここで大きな問題が僕の前に立ちはだかる。

 僕が当時勤めていた会社では、8月29日の土曜日が4半期の締め日で、物凄く休みにくい感じの日だったのだ(少しカレンダーがずれた業界にいた)。
 休みの申請を出したものの、上司からは「この日だけは、避けられない?」と言われた。
 当時、係長のポジションに居たが、「大事な日に休むのは、社会人としての常識に欠けている、現場の士気にかかわる」と別の上司から指摘されたこともあった。
 今、考えるとなんとも根性論の思考だと思う。仕事と趣味を天秤にかけた時、どちらが重いかは会社の多数派の人と違っていたのだろう。
 ただ、僕からしてみれば、非常識と言われようとも松井玲奈の卒業の方がよっぽど大事だった。
 締め日は毎年やってくるが、玲奈の卒業コンサートは1度きりだ。
 その日の休みが取りやすくなるように、開催が決まった翌日に言ったし(確か2か月前)、他の社員やバイトの方たちに分かるように、2日間の業務の引き継ぎの準備も進めていた。
 そういう業務面での問題はなんとかクリアーできないものか、と努力できたが、意識の面では全く上司たちには伝わらず、何度か虚しい気持ちにこの期間なった。
 
 最終的に、折衷案で午前中から午後14時まで出社して、そこから名古屋へ向かう半休の申請をすることになった。僕が当日働く予定だった支店は、大阪の上本町にあった。14時に出ればなんとか間に合うのではないか。
 半休の申請書には、申請理由を書く欄がある。
 僕は迷いなく、「SKE48松井玲奈卒業コンサート参加のため」と記入した。
 「私用の為と書きなさい」と怒られた。なんで私用の内容を詳しく書いたら怒られるのか、と思ったが半休を取ることが最優先なので、書き直した。
 上司の一人からは、「なんでアイドルの卒業コンサートなんかで」と言われたが、あなたにだって、趣味ぐらいはあるだろう、その趣味で節目の日があったら、参加したくないですか?ということを聞いたら、それでも「アイドルはおかしい」と言われた。

 こういう議論になる度に思う。
 この趣味はよくて、この趣味はダメという境目はなんだろうと。
 仕事と趣味のバランスが崩れてしまっているんだろうか、と考えたこともあるが、「仕事」はお金を稼ぐための手段であって、「趣味」は目的というのが僕のスタンスだった。「仕事」が目的という生き方は、あまり僕にはあっていない。
 さらに、「自分たちは頑張っているのに、こいつはアイドルのコンサートに行くのか、と思われるぞ」とある先輩がアドバイスしてくれた。ああ、なんてフラクタル構造の組織なんだと思った。上司が上司なら部下も同じようになるのか。このアドバイスに対して、何でそういう思考回路になるのか、いちいちみんなが納得する理由がないと休めないのか、とも思った。
 結局、その仕事は松井玲奈のコンサートの3年後に辞めて、転職することになる。
 転職先でも「えっ、SKE48?アイドル?何が楽しいの?」と言ってくる人が居たが、その人たちの趣味にも同じ言葉を言いたくなった。
 「何が楽しいの?」



 2015年8月29日。
 あれほど、大切な日だと上司から言われていた日は、いつも通り何事もない日だった。昼になって出発しようとする僕に、上司は苦い顔をしていたのを今でも覚えている。
 スーツで新大阪から新幹線に乗った僕は、トイレで私服に着換えた。足元のブーツもスニーカーに履き替えた時、何故かすっとした。
 名古屋に着くと、すぐに乗り換えて豊田市に向かう。
 窓から見える景色は初めて見るところばかりで、乗り換えを失敗しないように、ということだけを意識して、豊田市駅に向かった。
 空は少し曇っていた。
 これは雨が来るかもなと思いながら時計を見た。
 ぎりぎり開演に間に合う時間だ。
 駅に着くと、トヨタスタジアムでの送迎バスの列が出来ていた。
 時計を見ると、開演まで15分。
 グーグルマップで距離を検索すると、徒歩20分。
 走れば間に合うな。
 本当はボストンバッグを駅のコインロッカーにいれて、トートバッグだけで会場に向かいたかったが仕方ない。僕は両肩にバッグを掛けて走り始めた。
 これが思ったより遠かった。
 「ここが豊田スタジアムまでの最後のコンビニですよぉ!」と叫ぶコンビニ店員さんの声を無視して、ひたすら走った。
 やがて、大きな橋が見えてきた。そして、その先にスタジアムが見える。
 なんとか、橋の真ん中ぐらいまで来たところで、驚愕する。
 もう一つ大きな橋があるではないか。
 時計を見ると、あと5分で開演だった。
 間に合え、間に合え、と頭の中で叫びながら、二つ目の橋に向かう。
 二つ目の橋の真ん中で、影アナが聞こえてきた。
 ちゅりと江籠ちゃんだった。
 焦りながら、トヨタスタジアムのゲートへ向かう。
 チケットを確認してもらい、1階のスタンド席へ向かう頃には「over ture」が流れていた。不思議なもので、席へ向かいながらも、コールをしていた。
「SKE48!」と叫びながら、「自分の席はだこだ!」と思っていたのだ。
 1曲目の「パレオはエメラルド」が始まる頃に、やっと席を見つけて、スタジアムの階段を降りていく。
 「すいません、すいません」と謝りながら、真ん中の方にある自分の席に行く。
 隣りの席の人は望遠鏡で見ていたので、通る時に頭をかがめたが多分、邪魔だったと思う。申し訳ない。
 席を見つけてボストンバッグとトートバッグをなんとか足元に押し込めたが、ほとんど足の置き場がない。
 それでも、トートバッグからサイリウムを出してコールする。
 「間に合った!」とう高揚感から、コンサートの序盤からくるシングル曲の連発に興奮する。まるで、「もっと声を出せ、解放しろ」と言っているかのようなセトリ配置だった。
 最初のMCで松井玲奈考案のセットリストだと知って、流石だなと思った。
 ユニットブロックでは、斉藤真木子振り付けの「少女は真夏に何をする?」や、かおたんが、線香花火をし始めて会場が笑いに包まれた「花火は終わらない」が披露された。
 そして、僕が一番良かったのは「不器用太陽」だった。
 夏の少し蒸し暑い空気の中、浴衣姿の竹内舞と矢方美紀が出てきて、弾き語りで唄うサビから始まるところが夏の終わりを感じさせる素晴らしい演出だった。ブルーレイを持っている方は、みきてぃがギターを弾いている横でほほ笑んでいるケケ舞の横顔を見て欲しい。
 やがて、歌が上手いメンバーがぞくぞくと出てくる。
 宮澤佐江、高柳明音、佐藤すみれ、東李苑、谷真理佳、石田安奈。
 それぞれ浴衣姿だが、谷の浴衣姿がとても綺麗だったのを覚えている。この人はこうしてたら、本当に美人なのに、と客席で思った。それから、ちゅりが空を見上げながら歌っているのも印象的だった。
 「はにかみロリポップ」で真那のマイペースなクイズに笑い、7D2の「毒リンゴを食べさせて」では、玲奈が懐かしいポジションにいることに隣りの席の人が「うおっ!」と言っていたのを覚えている。
 
 「アイシテラブル!」から「ごめんねSUMMER」までの撮影OKタイムもなかなか斬新な試みだった。
 ただ、僕の席からは本当に豆粒ほどのメンバーと、ちょっと大きい船が撮れていたぐらいだ。でも、近くにメンバーが来るんじゃないか、というワクワク感を覚えている。
 この時に撮った写真は、機種変更の時に消えるという悔やんでも悔やみきれない事態が起こった。あの夕暮れ前のトヨタスタジアムの雰囲気を写真で残せなかったのは、本当にもったいないことをした。
 どんどん照明やライトが明るく見えるようになって、夜が来たことに気づかされる。
 ミュージカル「AKB49」の「夜の教科書」はダブル寛子が観られて嬉しかったし、「奇跡は間に合わない」では、宮澤佐江センターで「うわっ!本物だ!」とちょっと得した気分になった。
 中盤は「わがままな流れ星」での、過去最大規模でのコール合戦がたまらなかった。当時、阿弥ちゃんとだーすーと、玲奈ひょんのモバメを平行してとっていた僕は、阿弥ちゃんコールをしたはずだ。
 珠理奈といえば、当時は「思い出以上」という選択肢もあったのに、「Glory days」にしたのも印象的だった。残りの二人が後藤楽々と小畑優奈だったから、フレッシュな感じにしたのだろうか。この二人が珠理奈というセンターから何かを吸収して引き継がれていくと当時は思っていた。
 また、この日の「クロス」は高柳、大場、古畑というすさまじい3人だった。もし、ブルーレイをお持ちの方は、3人の表現力とカメラワークの素晴らしさを堪能してほしい。赤いサイリウムがスタジアムが染められる様子は、客席から観ていて凄まじい迫力だった。
 「恋ドリ」のあとにMCを挟んで、初めて聴く曲が訪れる。
 「ブリッジ」だ。
 高木由麻奈作曲のこの曲は、SKE48のカッコよさを引き出してくれる素晴らしい曲だ。個人的には、スギちゃんが先輩たちに混じって懸命に踊っているのが印象的だった。
 この日初披露の「世界が泣いているなら」は、曲も良かったが最初の照明が凄くカッコ良かったのを覚えている。今の世の中は「笑える動画」を見る人だらけになったな、とつくづく思う。
 
 ここからMCを挟んでシングル曲メドレーが続く。
 多幸感溢れる流れだった。
 特に終盤に「オキドキ!」が来た時は、まさかここで激しいダンス曲が来るとは「どうかしてるぜ!」と思わず言ってしまった。
 またMC前の「未来とは?」の演出にも注目してほしい。会場のモニターからはよく分かってなかったが、ブルーレイでみると、イントロで下からのライトの当たり具合がもの凄く良い。
 「僕は知っている」で本編は終わった。
 聴きながら松井玲奈のこれまでと重ね合わせて、涙が出ていた。
 アンコールまでの間に雨が強く降ってきた。 
 ここで「神々の領域」のイントロが流れた時は鳥肌が流れた。
 ああ、1期生も3人になってしまったか、と寂しくなった。確か、加藤るみかみきてぃが何かのコンサートのメイキングで「他の1期生が見えてる」と言っていたが、その日の僕には3人しか見えなかった。
 「その先に君がいた」を挟んで、「手をつなぎながら」。
 玲奈が1期生二人と手をつないで走っているのが印象的だった。
 「SKE48」からアンコール最後の曲「前のめり」。
 僕も隣りの席の人も泣いていた。
 明日卒業なのに、今日卒業じゃないのに。
 未だにSKE48のシングルの中で「前のめり」はトップを争う名曲だと思うが、改めてその素晴らしさを感じた最後だった。

 雨が降る中、片手で折り畳み傘をさしながら、駅へと歩いた。暗くて道がよく分からないが、前を行く人について行った。前もこんなことがあったな、と思ったら2014年味の素スタジアムの総選挙に参加した時も、ひどい雨だった。
 やがて、ホテルを取っていた名古屋駅まで戻ると、チェックインをして近くのコンビニに入浴剤を買いに行く。遠征をした時の密かな僕の楽しみだ。時間に余裕がある時は、ドラッグストアなどでじっくりと選ぶが今日はそういうわけにはいかなかった。
 時計を見ると、22時を回っていた。
 飲食店は、居酒屋以外は店じまいを始める時間帯だったが、ラーメン屋が1軒開いていたので、そこに入って食べた。遠征の楽しみとしては、こういう初めて入る店との出会いがある。僕はこの時、初めて硬い麺のラーメンを食べたと思う。それからは、しばらく硬めのラーメンばかり食べていた。
 ホテルに戻って入浴すると、「前のめり」の歌詞の通り、「心地の良い疲れを覚えて」ベッドに身を預けることができた。ふとスマートフォンを見ると、メールの通知が来ていた。一瞬、嫌な予感がしたが、メンバーからのモバメだった。
 ふふ、と笑って眠った。





 2015年8月30日。
 確か、朝はまだ雨が降っていなかったのではないだろうか。
 8時頃に起きると、ホテルの近くにあるマクドナルドで朝マックのセットを頼んで、ホテルに持って帰って食べた。時間に余裕があるので、寝癖をシャワーで直して、11時頃にホテルをチェックアウトした。
 2日目は別のホテルを予約していたのだ。
 しかし、そちらのチェックイン可能時間は14時。
 昨日と同じくボストンバッグとトートバッグを持ってウロウロするのは嫌だったので、どこかコインロッカーはないものか、と駅の近くを歩いたがどこもかしこも使用中で、結局、駅から少し離れた謎の美術館のようなところに荷物を入れて、名古屋の街を歩くことにした。

 よそ者になれるから旅行は好きだ。
 角を曲がる度にどんな景色が出てくるのか、ワクワクする。
 この日は、ホテルから少し歩いたところに映画館があることを知った。
 それでも時間がまだまだあったので、カラオケに一人で入った。
 「金の愛銀の愛」のジャケットに使われているあの店に非常に似ているところだ。
 そこで2時間ぐらい小沢健二とスガシカオを唄い続けた。
 いつ歌っても「僕らが旅に出る理由」は最高だ。
 やがて、時間になり、ホテルにチェックインする。
 皆さんは共感できるか分からないが、僕はコンサートにはぎりぎりに入るのが好きだ。会場で待つのが嫌だし、ホテルの部屋の中なら絶対にトイレは混んでいない。
 「暇だな」
 僕は思わず呟いていた。
 昨日は、コンサートに間に合うのかヒヤヒヤしていたのに、今度は時間を持て余すとは。
 グッズを買いに行くという手もあったが、気合いが入っている人々が朝から買いまくっていると思うと今更行ってもなあ、という気分になり、結局、栄に行ってみることにした。ところが、考えることはみんな同じで、SKE48カフェは人だらけだった。仕方なく、少し早いがトヨタスタジアムを目指すことにした。
 2日目になるともう余裕だ。
 
 豊田市駅に着くと、時間に余裕があるので送迎バスの列に並ぶ。
 5分も待たずにバスに乗ることができた。
 バスはゆっくりと豊田市の街を走っていく。
 昨日と違って街の風景がよく分かる。
 やがて、バスは昨日僕が走りこんだ場所とは全く違う入口から豊田スタジアムに到着。
 今日は、2階の一番後ろの席だったので、グッズや松井玲奈等身大パネルをよそに、入場。松井玲奈ファンの方々が、何かお知らせの紙を配ってらっしゃった。
 丁度、サブステージの向かいの辺りの席だった。
 席の後ろは手すりになっていて、すぐにトイレにも行きやすそうだ。
 隣りの席は家族ずれで、母親と娘さんでコンサートを観に来ていた。
 その年の総選挙後に発売されたメンバーがプリントされたサイリウムを持ってきていたようで、横から見ると「高柳明音」と書いていた。
 
 2日目の「over ture」は初日以上の盛り上がりだった。
 それはそうだ、今日はスタジアムの一番上まで埋まっている。
 過去最大のSKE48のコンサートがいよいよ始まる。
 メンバーたちが船出の準備を確認し、いよいよ松井玲奈の卒業コンサートが始まる。
 このコンサートの舞台が船をイメージしたものだったが、2日目はこれがチーム楽曲やユニット曲などでも船やそこから連想する海のイメージを活かしたものが多かった。
 昨日と同じく4曲連続でシングル曲の連発から始まるが、昨日の開始4曲と同じシングル曲が1曲もない。2日連続で観に来る人のことを意識してだろうが、メンバーの苦労を考えると、本当に頭が下がる。
 久しぶりに「初恋の踏切」が聞けて嬉しかったし、「恋を語る詩人になれなくて」はイントロからテンションが上がる。
 当時まだ研究生だった7D2の「Dear my teacer」から始まる海賊ブロック(?)は、ちゅりの良さが凄く出ていて、僕は好きだ。
 ゆりあが駆けつけてくれた「ごめんね、SUMMER」。
 やはり、彼女が一緒に踊る「ごめサマ」は素晴らしい。
 雨の中、水しぶきを上げて「青空片想い」が始まり、「制服を着た名探偵」ではこの中から未来のセンターが出て来るんだろうな、とSKE48の未来の明るさを感じていた。
 「ピノキオ軍」では、牧野アンナ先生がサプライズで登場し、よくドキュメンタリー映像などで流される玲奈が「ピノキオ軍」の練習中に腰を痛めて苦しむシーンを、まさか、コンサートで昇華してみせるとは。もし、手元に映像ソフトがある人は、この時の惣田さんの表情に注目してほしい。48グループのドラフト1期生の合宿の時、誰がダンス指導をしていたか。僕が個人的に好きなところだ。
 MCでは、乃木坂46メンバーの中継を使ったサプライズのお祝いがあった。
 ちなみに、昨年僕が転職して知り合った同じ職場の坂道ファンの方は、この日は神宮にいらっしゃってVTRでこちらのライブの様子を観ていたそうだ。さらに言うと、元48ヲタもそこそこ居たようだ。

「なんて銀河は明るいのだろう」は、もし、雨でなければきっと美しい夜空を見上げていただろうが、別の野外ライブでの披露に期待している。
 「青春の水しぶき」ではちゅりとの友情を感じられ、「僕の太陽」では松井チームEが揃う。奈和ちゃんの「玲奈さーん!僕の、僕たちのたいよーう!」という叫びを未だに覚えている。チーム解散後、この曲を披露する度に泣きそうになる宮前に注目して観ていたが、この日はなるちゃんが泣きそうだった。
 「君のことが好きだから」では、未来を託されたメンバーたちが集う。「瑠華、お前は選抜になれ!」の一言で、僕の近くの席はちょっとざわついたのを覚えている。みなるんのコミカルなところが出た素晴らしい演出でもあったと思う。
 「バナナ革命」はイントロが、昔のドラマみたいで本当に大好きだ。真木子が来ているのは2013年の「となりのバナナ」でかおたんが着ていたものだ。
 そして、伝説の1期生3人での雨の中での「雨のピアニスト」。
 緑と赤のサイリウムが広がるトヨタスタジアム。
 この時の「虎!火!人造!繊維!海女!振動!化繊!飛!除去!」はもの凄く気持ち良かった。ただ、歌詞に登場する「ショパンの別れの曲」で、いよいよ別れの時が近づいているのか、とふと現実に戻る自分も居た。
 昨日は聴けなかった「美しい稲妻」や「Escape」が登場したのも嬉しかった。
 最後の「枯葉のステーション」では、白いサイリウムでトヨタスタジアムが包まれた。
 思えば、AKBヲタ時代にSKE48の「恋を語る詩人になれなくて」と「枯葉のステーション」が凄いという噂を聞いて、youtubeで動画を検索したものだ。どちらの曲もSKE48を構成する大事な要素だと今でも思っているし、どちらのベクトルも失ってほしくないとも思う。
 シングル曲4曲を挟んで、「手紙のこと」がやってくる。
 「制服の芽」の中で一番好きな曲だ。
 イントロが流れた時に、既に僕は涙ぐんでいた。
 ああ、この曲が選ばれて凄く嬉しい。でも、もうすぐコンサートが終わるんだな、と。
 珠理奈と真那からの玲奈への手紙。
 玲奈からみんなへの手紙。
 玲奈が手紙を読み終わった後に、珠理奈が小さくうなずいているのが印象的だった。
 本編最後は「仲間の歌」だった。
 今でこそ、「僕が知っている」でコンサートが終わることが多いが、僕は「仲間の歌」で終わった時の多幸感が好きだ。
 玲奈が最後に言ってくれた「もう一度、オレンジの景色を見せてください!」。
 名古屋ドームでの選抜メンバーしか見られなかったオレンジ色の景色。
 そのモヤモヤを玲奈が晴らしてくれた。メイキング映像を見ると、アンコール中にかおたんが何度も玲奈に「玲奈さん、ありがとーう」と言っているのが残っている。コンサート映像を見返すと、ゆりあと顔を見合わせたかおたんが泣いているのが分かる。最後にメンバー全員にオレンジ色の景色を見せてくれた。しかも、名古屋ドームよりも大きな会場で。本当に、玲奈は最後までSKE48のことを考えてくれていたんだと思う。
 そして、会場は暗闇に包まれる。
 僕が居た席の近くではアンコールは始まらない。
 多くの人の脳裏には、このアンコールの後に松井玲奈が去ってしまうという想いがあったのかも知れない。
 やがて、僕の右上の方から「イイデスイイデスイイデスヨ!」という声が聞こえ、アンコールが始まった。ふと、雨が止んでいることに気づいた。
 アンコール明けの「前のめり」では二日連続で泣いてしまった。
 出来るだけ耐えようとしたが「前のめりに地を蹴る」のところで限界が来た。
 大サビ前では最後の大「玲奈ちゃん」コールをした。
 これまでの思い出映像を挟み、「2588日」。
 美浜も卒業公演も行けなかった僕にとっては、最初で最後の「2588日」だ。
 幻想的な水しぶきとライトアップされた船の上で、これからの未来と思いは残っていくことを歌ったこの曲では、色々なところで鼻をすする音が聞こえた。
 ああ、一つの時代が終わったんだなあ、と感じた。
 玲奈が旅立った後の「アイシテラブル!」は、悲しみを乗り越えるために用意されたんじゃないか、と思いながら「愛してる!」と叫んだ。
 最後の曲、「手をつなぎながら」のイントロが流れた瞬間、珠理奈が「雨だ!」と叫んだ。ああ、玲奈が卒業しようとしたあの時間だけ奇跡が起きたのかもしれないとガラにもなく思った。
 珠理奈と真那の挨拶でコンサートは終わった。
 来てよかった。
 傘をさそうかと思ったが、そのまま濡れて帰ることにした。
 スタジアムを出ると走っている人たちが何人も居た。昨日と違う出口だったので、とりあえずこの人達についていこうと思った。
 軽い「ヲタクマラソン」が始まる。
 しかし、問題は走り始めて5分ほどで起こった。
 もともと、僕は運動部でマラソンはそこそこ早かったが、僕がどんどん前の人を抜いていったせいで、先頭になってしまったのだ。まずい、駅の方向は分からない。駅への標識も特にない。暫く走った僕は、靴紐を直すふりをして後ろを振り返った。誰もついてきていなかった。
 トボトボと道を引き返すと、大勢の人々が別の方向へ向かって歩いていた。
 そちらの群衆に混ざって、駅へと歩いた。人が居すぎて、なかなか電車には乗れなかった。
 名古屋に戻った頃には、昨日より遅い時間だった。
 この日、何を食べたかは覚えていない。
 ただ、すぐに寝てしまったのを覚えている。
 
 翌日、関西に戻る前に「でらなんなん」というアイドルの生写真やグッズを売っている店に寄った。
 会場では売り切れていたパンフレットが売っていないか、と見にいったのだが、残念ながらなかった(それから暫くして通信販売でパンフレットは購入できた)。
 関西に帰る新幹線の中で、昨日のコンサートのことを思い出していた。
 間違いなく、SKE48の大きな柱が1本無くなった。
 これから何年かかけて新しい柱を建てる必要があるだろう、昔ほどの勢いがなくても時間をかければきっと、と僕は信じていた。
 小畑優奈がセンターになるのは、それから約2年後のことだ。




 翌々日から会社に戻ると、また何の変哲もない日常が待っていた。
 この会社に居る間は、なかなかアイドルが好きだということは、理解されなかったが、退社する年に元ももクロファンの同僚が入社してきて、SKE48のSSAコンサートに参加できるように協力してくれたことも書いておく。

 時間は進んで2020年の現在。
 今年の9月に松井珠理奈が卒業する。
 残念ながら、小畑優奈は卒業してしまった。
 これまでSKE48という大きな城を支えてきた柱が、どんどん消えていく。
 運悪くコロナウイルスのせいで多くのイベントが中止となり、運営会社の株価も下がり続けた。
 それでも玲奈が残していったものは、「2588日」の歌詞のように、後輩たちに受け継がれているはずだ。彼女との活動経験がないのに、倉島杏実を観た時にどこか昔のSKE48のような懐かしさを感じたのは、松井玲奈という人を倉島杏実が沢山みてきたからだろう。
 SKE48の時間が少し遅くなっている今だからこそ、松井玲奈のことを思い出してみて、明日のヒントにするのはどうだろうか。トヨスタに辿り着くまでの彼女の活躍、あの最高の1日目のセトリ、2日目の感動。運営もメンバーもファンも何か新しい気づきがあるかもしれない。
 僕は、趣味と仕事のバランスについて、そして、趣味を理解してもらえないことについて、思い出させられた貴重な体験だった。 
 皆さんは2015年8月29日、30日をどう体験しただろうか?
 

2020年2月6日木曜日

手紙のこと①

手紙のこと

 
 気づけば、このブログの記事も500を超えてしまいました。
 このブログを始めたきっかけは、SKE48の名曲や素晴らしい映像たちをもっとじっくり考えたり、知ってもらいたい、というところからスタートしました。
 ブログを書きながら、他のグループの名曲も触りたくなったり、自分が好きな映画や本について紹介したりと色々なことを書いてきました。
 でも、ふと原点に立ち返った時に、自分がSKE48の曲で、一番好きなものって何だろう、と考えましてね。映像込みだと「前のめり」がぶっちぎりで好きなんですが、曲単体だと「石榴の実は憂鬱が何粒詰まっている?」かなと思ってたんですね。
 これを48グループまで拡大するなら「10クローネとパン」「だらしない愛し方」なんかも入ってくるんですが、ふと、何か忘れていないかな、と考えた時に、「手紙のこと」を忘れていたな、と思いましてね。

 楽曲は公式動画の方に無いんで、各自で探してくんなんし。
 まず、この曲、歌詞が素晴らしい。
 主人公が「君」に対して手紙を書いているところから始まるんですが、語りかけるように手紙を書いてるんですよね。なかなか「好き」というメッセージが書けずに、最終的には出せずに終わってしまうんですが、こんなに片思いの相手のことを思う気持ちを歌詞に出来るのがうまいのか、と秋元康の作詞力にうなった1曲です。
 なかでも「君のことを考えるのが一番楽しい時間だから」という部分が、凄く良いんですよね。なんで好きなのか、ということが伝わってきます。
 また、曲の途中にメンバーが、メッセージを言うんですが、日によって違うんですよね。僕はいつかの公演で玲奈が泣きながら読んでいた時が印象に残っています。
 そして、玲奈の卒業コンサートでの珠理奈と真那の手紙。ダブル松井として時には競い合い、時には支え合った珠理奈と玲奈。最後に伝えられた玲奈への思い。
 真那の手紙では、彼女から見た、松井玲奈像が興味深くてですね。玲奈は外の世界を意識していたことが語られています。
 玲奈からの手紙もメンバーたちにこれからの希望を感じさせてくれるもので、凄く良いんですよね。
 もし、珠理奈の卒業コンサートが来た時には、是非「手紙のこと」を歌って欲しいなと密かに思っています。出来たら、玲奈と真那からの手紙があったら、なお嬉しいななんて思ったり。





 それにしても、公演でこの曲を披露した後にもらえる手紙が欲しかったなあ。

 僕は、今、手紙を書きたいメンバーは、まだいません。

 魅力的な曲たちに手紙の代わりにブログを書いていきたいなあ、とこの曲を聴きながら、しみじみ思いました。 

※「10クローネとパン」についての記事はこちら!
https://oboeteitekure.blogspot.com/2018/11/blog-post_30.html

※「だらしない愛し方」についての記事はこちら!
https://oboeteitekure.blogspot.com/2019/01/blog-post_10.html
 

2019年12月3日火曜日

音を消したテレビ①

世界の片隅に居続ける為に


 皆さん、毎日の生活はうまく行ってますかね。
 うまく行くことばかりだったらいいんですけど、僕は、なかなかそうも行かなくてですね。
 一人暮らしの家に帰って、ふと、部屋の電気をつけた時に思い出す曲があるんですね。
 それが、この「音を消したテレビ」です。
 まあ、まずは聴いてみましょう。



 うーん、1番だけだと、日常のやっちまったシーン集みたいになりますが、最後はみんな笑顔になる良いMVなんですよね。日常の何気ないワンシーンを切り取った短編小説的な感じが凄く好きです。

 まずは、歌詞の世界から見ていきましょう。
 ひとりぼっちの部屋に戻るところから、物語は始まります。
 この日は「ついてなかった」ようで、コンビニで食べ物を買って帰るんですが、「食事」というよりは、「おやつ」に近い感じなんですよね。
 そして、今日あった「悲しいこと」から離れるために、ドアを閉めると、落ち着いて泣こうと思うんですね。
 そして、テレビをつけて音を一番下げる。
 ここがこの曲のポイントなんですよね。
 部屋の中に居ても、自分に接続してくる「世界」もしくは、「世間」であるテレビの音を消すことで、一旦距離を置く。
 「テレビ」の中で起こっているドラマは、自分とは関係ない他人ごとなんですが、「現実」の世界にいる自分の物語は今も続いているんですよね。
 2番では、半身浴をするんですが、いつもは歌う曲を歌うこともないんですね。
 曲の主人公の信条として、人前では泣かないということがあるんですが、1番でゆっくり泣こうと思っていた理由も分かります。
  お風呂から出ると、また、テレビをつけます。
 1番と同じように音を消して「つまらないドラマ」を流しておきます。
 「世間」と縁を切る為に音を消している、と歌詞の中では書かれていますが、僕からすると、本当に縁を切りたいのなら、テレビなんか最初からつけなければいいわけで、どこかで、世界と繋がりたいという想いもあるんじゃないかな、と考えています。
 いよいよ大サビ前。
 ぐっすり寝て、いつもより遅く起きると、もう主人公の中では、「もやもやした」気持ちは消えています。
 そして、テレビをつけると、音を上げていきます。
 「朝のニュース」という「世界」とつながるものを、自分から見ていく。
 「ドラマ」というフィクションではなく。「ニュース」というより現実の「世界」に近いものを観ていく。
 こういうところが、うまいなあ、と思いますね。
 決してドラマチックでもないし、ニュースになるようなこともない、世界の中心ではないかもしれない。しかし、きちんと片隅にいる「私」の人生は続いていくんだという気持ちで新しい一日が始まる。
 小さな悲しみと小さな再生の物語なんですよね。
 僕の勝手な脚本では、金曜日に落ち込んで、土曜日の朝に立ち直るみたいなイメージです。

 曲も凄く良く手ですね。
 凄くひっそりとした音から始まっていくんですが、僕が好きなのは、大サビ前の間奏部分なんですよね。実はギターが凄く鳴っているんですね。主人公の「モヤモヤした」気持ちが表現されていて、ここで洗い流されて朝がくるのかな、と感じました。
 
 MVは、上で書きましたが、日常のついてないワンシーンですが、結構共感できるのもありましてね。だーすーの七味が蕎麦の上にかかりまくるとか、すーめろさんの「それ、私が担当しました」とかね。
 色々な「モヤモヤ」したものを洗濯機で、洗濯していくのを連想させられる大サビ前の演出が好きです。
 曲の半分以上で、メンバーが憂鬱そうな顔をしているだけに、最後にそれぞれが笑顔になっていくところがいいんですよね。特に花音が財布を出す時の表情、凄くいい。

 ちなみにセンターを務めているのは、松井玲奈なんですが、彼女はバスの中で本を読んでいるんですよね。乗客のイチャイチャやうるさい谷たちを観て、「モヤモヤ」が発生しているんですが、他の人と比べると、世界を見てる視聴者と同じ視線に感じるんですよね。彼女の透明感が引き立つ素晴らしいMVだと思います。
 あと、うな重の蓋を開けた時に、「無い!」って、口が動いてたのが印象的でした。

 あと、この曲の「テレビ」との縁の切り方とは真逆のベクトルが、ひょっとして「世界が泣いてるなら」なのかな、と感じました。

 これを書いてる僕はというと、民放の朝のニュースが騒がし過ぎて、最近は音を消して見てるんですね。あと、新日本プロレスの柴田勝頼選手が「音を消してプロレスを観ることで、余計な評価が入らずにプロレスを観ることができる」と雑誌のインタビューで言っていましたが、これ、スポーツ中継とか観る時にしたら、結構、面白いのでお勧めですよ。
 
 話を戻すと、時々日常から離れて、すみっこでも世界に留まり続ける術を教えてくれる貴重な1曲だと思います。完成度から言えば、もっと評価されて欲しい1曲です。

※なんとなく連想した「世界が泣いているなら」についての記事はこちら!
https://oboeteitekure.blogspot.com/2019/01/blog-post_2.html
 
 

2019年11月12日火曜日

TWO ROSES①

二つの太陽


 SKE48の物語を考える上で、松井珠理奈・松井玲奈のダブル松井の存在は、無視できません。というか、この二人を除いて語ることは不可能に近いのではないでしょうか。それほど、この二人はSKE48に置いて重要な二人です。
 総選挙、リクエストアワー、外仕事、本店超選抜、あらゆる場面でSKE48の代表として活躍し、ドラマを作ってきました。
 そんな二人が歌うのがこの「TWO ROSES」です。
 まあ、聴いてみましょう。



 初めて観た時は、あまりにも衣装とメイクの芸術性が高すぎて、ちょっと置いて行かれてる感があったんですがね。すっぴんに近い二人の姿から様々な色が重ねられていく感じが凄く良いんですよね。
 歌詞は出会いの衝撃から始まります。
 目に見えない手が、自分の中の何かを盗んでいった。それからというもの、心の中の何かが欠けて、孤独と切なさを感じることになっていくわけです。
 そして、サビではそんな繊細な心の持ち主を、手も触れずに見つめていたいという別の人物の視点にも見えるんですよね。さらに、バラに喩えることで、2番の歌詞からも見えて来る通り、「傷つくこと」や「いつか枯れてしまうこと」も連想させます。
 2本の薔薇がどうなっていくのかを考えさせられる名曲です。

 ちなみに、僕はリクアワの時に着てた黒白衣装の方が好きですね。

 さて、SKE48を引っ張ってきた松井珠理奈と松井玲奈。
 この二人の関係は、とても不思議な関係で、対照的な時もあれば、似ている時もあるんですよね。
 僕の感覚で言えば、松井珠理奈は「動き」(ムーブ・ダンス)の人。
 松井玲奈は「言葉」(ワード・発信)の人なんですよね。
 SKE48のアスリート的な部分を珠理奈が引っ張り、文化的な部分を玲奈が引っ張っていたんじゃないか、と考えています。
 珠理奈のパフォーマンスや元気な笑顔、玲奈が発信するブログの文章力や趣味の広さ。

 「陽」と「陰」というには、あまりにも野暮なので、玲奈の卒業コンサートで語られていた「太陽」と「月」で表すにしても、どちらもその要素を持っているんですよね。
 卒業コンサートの「手紙のこと」での玲奈への手紙で、珠理奈が玲奈のことを「太陽」と言っていましたしね。
 確かに、松井玲奈という人は、SKE48のメンバー達が憧れる「太陽」でもあったと思うんですね。彼女自身も凄く、芯の強い人で総選挙での「1位を目指したい」というスピーチや、公演や演技に対するストイックさ。それを評価されて広がっていく外仕事。
 真那の手紙でも「松井玲奈はSKEの夢です。松井玲奈はみんなの目標です」と言っていましたし、だーすーが卒業コンサートの特典映像で、「いつかライバルになりたかった人」と言っていました。
 また、珠理奈の繊細さは、満ち欠けを繰り返している「月」と通じる感じもします。

 いつしか、二人はライバルとみられることもありましたが(2011年の総選挙の時とか、何か大きなうねりがここから始まるのでは、と思ったもんです)、いやいや、「前のめり」のMVを観て欲しい。また、MVのメイキング(『アイドルの涙』特典ディスク4)で花の飾りつけをしながら、「カラフルな色を入れたのは、真っ白から玲奈ちゃんに色々な色をつけてほしいなと思って」と監督に語る姿。そして、次第に涙が止まらなくなる珠理奈。そんな珠理奈を「情けないなんて思わないで」と抱きしめる奈和ちゃん。
 やっぱり「前のめり」って曲の外のドラマも含めて名曲だと思いますね。
 「手紙のこと」での玲奈への手紙も凄く良いんですよね。
 最後に素直な自分の気持ちを伝えるところとかね。
 
 じゃあ、玲奈の珠理奈への接し方を見ていくと、珠理奈を甘やかさない、という方針なんですね。
 いつか、珠理奈がチューしたそうにしてるのを片手で制してる写真がありましたが、あれが全てだと僕は思ってます(あの画像、持ってる方いらっしゃったら、どこで観られるか、是非、教えてほしいです)。
 「珠理奈がトップで、そこに私が居てっていう体制にみんなが甘えてきちゃったから、だから、みんなが頑張っていかないとダメなんだなって私は思っています」、「一人一人が自覚をもつことが大切」という内容のことを映画「アイドルの涙」の中で語っていましたが、センターというものを目指す必要がないほどの存在感を得た彼女だからできる鋭い分析だと思います。
 卒業後も女優として活躍し、文筆業も順調な玲奈。
 「カモフラージュ」は本当に傑作でしたね。ドゥマゴ賞まで受賞しましたからね。
 後輩たちの輝く「太陽」であり続けて欲しいなと思います。
 いちSKEファンとしては、卒業コンサートの「仲間の歌」で「皆さん、最後にオレンジ色の景色を見せてください」と太陽のように大きな声で松井玲奈は言ってくれた時が印象的で。
 豊田スタジアムに作った太陽のようなオレンジ色の景色は一生忘れられないと思います。

 さて、そういえば、「アイドルの涙」の中で珠理奈が絶対的なセンターが自分以外にも出てきて欲しいという発言を「遠くにいても」の直前で語っていましたが、2019年11月現在はどうでしょう。
 「前のめり」のMVの中で珠理奈と同じスピードで走っていた玲奈。
 今、珠理奈と同じスピードで走れるメンバー、どんどん増えて来てるんじゃないでしょうか。いや、ジャンルによっては、珠理奈を追い越してる強みを持ってるメンバーもいるかもしれません。
 でも、松井玲奈の代わりはいないんですよね。
 確かに綾巴・みずほの「TWO ROSES」や珠理奈・佐江ちゃんの「TWO ROSES」もいいんですけど、やっぱり、ダブル松井の「TWO ROSES」が観たいわけですよ。てっきり、玲奈ひょんの卒業コンサートのアンコールでやるかと思ってたんですが、されず!
 もう、「TWO ROSES」は見られないのか。
 いや、きっと、珠理奈の卒業コンサートの時にきてくれるんじゃないか、そんなことを期待しています。

 「10年桜」のメイキング映像で玲奈の後ろでふざけて手を動かしていた珠理奈。あの二人から随分、遠くにきたもんだ、とこの記事の為に過去の映像を観ながら、ふと思いましたよ。

※「前のめり」についての記事はこちら!
https://oboeteitekure.blogspot.com/2018/11/blog-post_29.html
※「カモフラージュ」についての記事はこちら!
https://oboeteitekure.blogspot.com/2019/04/blog-post_8.html
※「仲間の歌」についての記事はこちら!
https://oboeteitekure.blogspot.com/2018/11/blog-post_23.html

2019年6月2日日曜日

SKEファンから見たマジすか学園、この回が熱い!



人それぞれのマジ


 皆さん、「マジすか学園」ってご存知ですかね?
 AKB48のメンバーが出演するヤンキー学園ものドラマなんですが、SKEのメンバーもちょいちょい出てましてね。何気に燃えるストーリも多くて、当時はAKBを知らない人達の入り口の役割にもなっていたもんです。
 とりあえず、キャラクターソングのお手本のような「マジジョテッペンブルース」を貼っておきますね。最後に出てくるまゆゆと珠理奈がカッコいい。

 うーん、全盛期感がもりもり出てますね。
 今回は、SKE目線でマジすか学園を観ていった時に、この回が熱い!という超主観メインの記事なので、もし、「こういう回も面白いよ」とTwitterのアカウントの方に教えていただけると幸いです。

 第3位 「マジすか学園3」#5「私のダチに手を出すな」
 川栄李奈演じる「名無し」木本花音演じる「なんてね」の友情が描かれた名作。
 お話は「名無し」が両親へ手紙を書いてる名無しとそんな「名無し」の笑顔が好きだという「なんてね」の心温まるシーンが前半にありましてね。そこからチームマングースの罠が「名無し」に迫るというストーリーなんですよ。その中で「名無し」の嘘と「なんてね」の「俺達はなんだ、俺達とお前はなんだ!?」が切なくてね。この頃の花音を観てると、もっとお芝居で見てい見たいな、と思いますよ。バトルシーンでの「それが、私たちのマジだ!」というシーンも最高です。人のマジを笑っちゃダメですね。「メッシ」と「ヤギ」というまた違った関係性の二人が登場することで、二人の友情がより際立ちます。
 「マジすか3」は、「1」、「2」から世界がいきなり飛んで、びっくりしましたが、ストーリー自体は結構好きでして、SKE48からは松井珠理奈、木﨑ゆりあ、矢神久美、木本花音が出ている上に、移籍前の大場美奈、山内鈴蘭なんかも出てて、今観ても十分楽しめる一作です。個人的には、終盤のゆりあのキックがカッコいいですね。「ぽんこつ」という言葉をあんなに重厚に響かせる主題歌あるでしょうか。
 最後に脱出した3人は、今、考えると、まるで大組閣の布石のようです。

 第2位「マジすか学園2」#1「世代交代上等!」

 何かが始まるワクワク感を感じさせる1作。
 そして、この時聴いた「ヤンキーソウル」の高揚感と、「青春と気づかないままに」の淋しさが素敵でしてね。こりゃあ、名作になるぞ、と思ってましたよ。松井珠理奈演じる「センター」と渡辺麻友演じる「ネズミ」が組んで、マジすかのてっぺんからの景色を目指す「つの字連合」とが「新ラッパッパ四天王」たちと激突していくんですが、第1話では、いきなり「センター」がラッパッパの部室に殴り込みをかけに来るところから始まります。この時のワクワク感。特に、「センター」と「ゲキカラ(甘口)」が向き合うところなんかは、こ、この二人がついに!という感じでした。
 他にも秋元才加演じる「チョウコク」対「センター」の激闘や、毎回繰り広げられる「チームフォンデュ」の面白い会話、くーみん演じる「ダンス」の愛らしさ、前田よどこに行くな展開。衝撃のラスト、どれも見逃せない良作です。

 第1位「マジすか学園」#8「四天王最凶ゲキカラ・笑う」

 「マジすか学園」シリーズが発明した最高のキャラがこの松井玲奈演じるゲキカラなんじゃないでしょうか。破壊衝動の赴くままに敵を血まみれにしてくその姿は、こんな人、近所に越して来たらどうしようとなりますし、映画「ディストラクションベイビーズ」を観てる時も、ゲキカラさんのことを思い出しましたよ。主人公の前田敦子の周りの人間が、どんどん酷い目にあって行く姿を見ながら、「こ、今回は相手が悪すぎる!」と思ったもんです。闘いが終わったあとの笑いも怖すぎる!
 この印象が強くて、「マジすか2」の#5「ゲキカラROCK」の回では、佐江ちゃんの「シブヤー!」からの「ゲキカラ」登場で燃えたもんです。
 当時のAKBの力関係を連想させるストーリー展開も素敵でしてね。
 四天王の配置やラスボスの優子さんなど、ドラマと共にメンバーの名前や力関係を覚えていったもんです。
 ちなみに、なんでゲキカラが爪を噛むかは、舞台版を観ると分かりますよ。
 舞台で1曲だけかかるSKE曲とそのタイミングに僕は震えました。
 「桜の木になろう」まで使うなんて反則!



 なんか、こう並べていくと過去へ過去へと遡って行ってる気もしますが、どれもそれぞれ良さがあるので、是非。ちなみに、もう一度「マジすか1」をやろうとしたのかな、と思わせる「マジすか4」。

 もはや、ケンカの強さとかどうでも良くなって凄まじいスピードで登場人物の命が軽くなる「マジすか5」もそれぞれ面白いので是非!特に「マジすか5」のエンディングの「群像」は名曲です。

  

 まあ、なんだかんだ言ってこのバージョンが一番好きなんですけどね。
 また、SKEでやってくんないかなあ、と思う次第です。
 はーちゃんの本物感。

 



     

2019年4月8日月曜日

おすすめの映画と本⑪「カモフラージュ」



偽るための理由は何か


 ※本記事は前半ネタバレなし、後半からネタバレありでいきます。

 いよいよ松井玲奈の短編集「カモフラージュ」が発売されましたね。
 まだ未読の方は一瞬で掴みとるのさ、ARE YOU READY?





 さて、本作は6つの短編が収録されていますが、そのうち3作は本作のための書き下ろし。「小説すばる」に掲載された「拭っても、拭っても」、「ジャム」、「リアルタイム・インテンション」に加えて(『小説すばる』掲載順)、「ハンドメイド」、「いとうちゃん」、「完熟」が書き下ろしで収録されています。

 各作品、何も入れずに1回読んで、オチまで分かった上でもう1回読むのがお勧めです。
 とにかく、彼女独自の人間の肉体への描写が好きでしてね。
 ああ、そういうところに目が行くのか、とか、そういう風に身体の部位を感じることもできるか、と感じることができました。
 あと、読んでたら、色々な食べ物が出てくるんですが、それがそれぞれ良い味を文字通り出してましてね。僕は餃子が食べたくなりました。
 個人的には、1週目は「完熟」、2週目は「いとうちゃん」が一番好きになりました。
 皆さんは、どの作品がお好きでしょう。この辺りはみんなの意見が聞きたい。
 ちなみに単行本には、集英社の新刊案内の冊子が入っていて、松井玲奈さんの写真も。



         【ここからはネタバレありでいきます】

 さて、この短編集なんですが、「カモフラージュ」というタイトル通り、主人公たちが本当の自分を偽って生きているところが描かれています。
 そして、自分が偽る理由が突然生まれたり、崩壊したりしていくように僕には読めたんですね。それが幸せにつながることもあれば、不幸の始まりでもあるし、必要悪でもあるという風にも読めましてね。

 特に「ジャム」は、自分を偽る必要がない無垢な少年が主人公なんですが、ある日、自分を捨てることを始めていくことになる。まるでシュレッダーを想像させる天使の像の中に自分を捨てていく描写は、頭の中で想像すると、なかなかキツイものがあります。そして、それは、人に見られないようにしておいた方が良いというのも感じさせられる終わり方でした。色の変化も素敵で、赤から白へと徐々に移っていくことを連想させられる描写が凄いです。前半のちょっと甘い文章も、後半で価値観が変わってくることで効いてくるんですね。

 「完熟」に関しては、自分の性癖というようなものが物語の最初に出来てしまったが為に、15才の夏に出会った女の人とその時食べていた桃のことを追い続ける男の話なんですが、これが凄く好きでね。15才の夏に出会った女の人とその時食べていた桃が、どちらも思い入れの強いものになってしまっている。そして、気付けばその女の人と似た感じの女性と結婚し、桃を食べてもらっている。ただ、自分の望んでいるものは得られない、本当に手に入れたいものは手に入らないままの地獄。そして、その夫の性癖を感じつつもこのままの関係でいる為に我慢する妻。この二人の関係や価値観は、他の作品と違い、変わらないまま終わるのが新鮮でしてね。これも最初に夫の方の性癖という価値観が作られてしまったからでしょうね。なんか、スガシカオの「アシンメトリー」を思い出しました。




 「ハンドメイド」は浮気相手の彼女が主人公なんですが、会社の同僚に不倫をしている女性を配置することで、実は自分にも彼女の言葉や彼女への言葉が返ってきているというのが、なかなか面白いな、と思いまして。自分が夢中になっている関係とよく似せた人を置くことで、現実的に考えると、自分も同じようなものだと感じさせる気がしましてね。あと、別れることを決意した心理描写は、とても引き込まれる部分です。好きだから、別れる、というのが本当に好きです。

 「リアルタイム・インテンション」は、動画配信者という21世紀だなあ、という職業の人達が主人公なんですが、まあ、前半はいけ好かないわけですよ。僕が普段、動画では「古井ひでおチャンネル」しか観てないからかも知れませんがね。



 てか、オードリー春日なんですけどね。
 後半から自分たちの隠していた部分が露わになっていく過程が面白くて。
 何気なく書かれていた、みんな人の不幸は好き、というのは、確かになあ、と思いましたよ。動画サイトでも「どっきり」とか「ハプニング」とか多いですもんね。プロレスファンの僕も不穏試合大好きですもん。素敵な話だなあ、と思いきや、さらに恐ろしいことが始まりそうな終わり方も良いですね。

 「拭っても、拭っても」は、自分ではなく人によって価値が作られてしまい、それを変えるのではなく、「積み重ね」ととらえる考え方が良くてね。これまでの自分の恋を肯定してもらえるような感じのストーリーが凄く素敵です。出来る風に見せて、実はズボラな感じの主人公を書くのが上手いなあ、とも感じました。

 「いとうちゃん」は、「その手があったか!」というようなストーリーで、とても心が温かくなるストーリーでしてね。最近、太って来たメイド喫茶で働く主人公が、アリスみたいな女子という自分の理想と段々離れていく現実とどう向き合うかの話なんですがね。痩せないのは、今の自分のままでいいか、と思っているというインスタの回答もごもっともなんですが、その後の解決策が本当に良くてね。
 今の自分が周りから認められていなくても、視点をちょっと変えると、必要とされる世界があるんだ、と考えさせられた良作です。

 全編、自分の価値観を揺るがしたり、作ったりするアイテムが出てきましてね。
「桃」とか「絆創膏」とか、日常にあるけど、人によってはこんな意味を持つ物なのか、と思いました。あと、食べるシーンが多いんですが、この辺りはひょんさんのインタビューを聴いてみると分かりやすいですよ!



 うーむ、やっぱり日常での気づきが素晴らしい。
 ちょっと気が早いですが、次回作が凄く楽しみです。
 女優松井玲奈だけでなく、小説家松井玲奈の活躍もこれからは楽しみです。
 最後に好きな玲奈ひょんのインタビュー動画も貼っときますね。


 
 



    

2019年1月2日水曜日

世界が泣いてるなら①

バッドエンドの誘惑

 ※今回はMVのネタバレ要素が含まれているので、そういうのは嫌という方は、映像を観てからどうぞ。

 世の中には、すっきりしない終わり方の映画ってありますよね。
 ネタバレになるので、よっぽど有名なバッドエンド映画しか書きませんが、「セブン」とかね。黒澤映画のあれとかね。
 
 SKE48でもサスペンススリラー的な作品があるんです。
 それがこの「世界が泣いてるなら」のMVです。
 ちょいと観てみましょう。
 https://youtu.be/tisSAJ4qx2w

 いやあ、のっけから死体と記念写真を撮るという、SNS世代の怖いとこ全開できてますよ。
 

 あれ、この顔見覚えが・・・。

 「女城主 直虎」の今川氏真じゃねえか!
 
初めましての方はこちらの記事をどうぞ。https://oboeteitekure.blogspot.com/2018/12/tsutaya.html
 そりゃ殺されるわ。
 
 アホな話は置いといて、本編を観ていきましょう。
 刑事役の神尾佑さんが、教室に入ってくると死体と記念写真をする女子高生たちが!

 神尾佑さんといえば、仮面ライダーオーズのドクター真木!知らない人はカラオケで大黒摩季の「Anything Goes!」を入れてみよう。オーズをどついてる紫色のやつがドクター真木だ!(間違いだらけの説明)

 殺人は重罪ということで早速逮捕だ、ルパーン!と逮捕したわけです。
 そして、逮捕した後は、ベニチオ・デル・トロ風拷問(嘘をついたら、君の家族の家を米軍が容赦なく空爆するよ)・・・じゃなかった取り調べだ!
 ざっくり聞いていくと、殺された今川先生(勝手に命名)は、女子の人気者だったんですね。谷、なにやってんだ。

 階段の踊り場で今川先生に弁当を渡す綾巴。


 頭をなでなでされる綾巴。ああ、今川先生、こっち側の手は結城丈二みたいな目にあわせてえな(危険な発想)

 同じように宮前もお弁当を渡しています。もちろん成功。
 で、なぜか留置所の廊下を裸足で歩く女性。
意味深な数字。

で、取り調べを進めていくんですが、まあ、分からなんわけですよ。みんな言ってることも分からないし、ちゅりは怖いしでね。




  
 で、さっきの踊り場で弁当を渡すシーンや、画像を張ってなかったけど同じく屋上で弁当を渡すシーンで、実は玲奈ひょんが遠くから見つめていることが分かるわけです。


 うーん、ドラマ「ニーチェ先生」とは比べものにならないぐらいの悲壮感。
 そして、今川先生、どうやら彼女がいるらしくてね。玲奈ひょんが渡した手紙も弁当も「こんなもん、いるかよ!コロスゾ!」はいい過ぎですが、「いや、僕は、いいです…」という感じで断るんですね。


 いやあ、今川先生も隅に置けないなあ、と思ってたら、玲奈の後ろにSKE48平成ジェネレーションズが集結!16人揃った!でも、珠理奈が注射針を玲奈ひょんに渡しますよ。ふ、不穏すぎる。


 ここらへんで留置場の謎も分かってきます。
 なぜか各番号ごとの独房に入れられてるメンバー、玲奈が珠理奈がいる部屋のドアをガチャガチャ回すとさっきの注射針のシーンへ。



 いやあ、ピンポンが鳴って、この顔の珠理奈が覗いてたらビビりますね。
 さてさて、ミステリーとか好きな方ならボチボチ謎が解けたかもしれませんが、もう少しお付き合いください。
 MVはもう一度最初のシーンに戻るんですが、な、なんと実は玲奈ひょんしかいなかった。
残りの15人はなんと、玲奈ひょんの別人格だったんです。
 この数字の意味もここで判明。

 そして、刑事とお医者さんもごっちゃになっていくんですが、最後は「じゃあ、罪を認めて償おう」的な感じで終わると思いきや、突如玲奈ひょんが消えます。
 

 で、映画の予告風に終わりというなんとも後味の悪い終わり方をします。

 この曲は、「世界が泣いてるなら」というタイトル通り、「世界で誰かが苦しんでたら、他人事と思っちゃダメ!」というマイケル・ムーアも笑顔で共感間違いなしのハートフルな歌詞なんですがね。
 しかし、このMVでは凄まじく禍々しい意味を持ってしまいます。
 だって、玲奈ひょんの15人の別人格にとっての「世界」とは何のことを差すんでしょう?それは主人格である玲奈ひょんの世界でしょう。「僕も号泣」するのは当たり前なんですよね。「無関心のままじゃ 僕は生きている価値がないよ」という歌詞も全然違った意味になります。

 皆さん、珠理奈が注射器を渡す時に言っていたセリフを思い出してください。
僕は無力だ。何もできない。一緒に泣くことしかできない」玲奈ひょんの中にいる珠理奈は「無力」であり「一緒に泣くことしかできない」んです。ただ、殺すという決心の後押しはできたのかもしれません。MVでも歌詞の中の単語が一瞬フラッシュバックしていきますが、多重人格とのリンクかもしれません(といいつつ、歌詞と関係ない画像を張る)


 綾巴や宮前の人格は、玲奈ひょんに「こうしたらいいんじゃない?」というお手本を見せていたのかもしれません。

 この手のMVは、最近SKE48ではお目にかかっていませんが、また観てみたいですね。バッドエンドなだけに、暫く心の中に残るという。
 それにしても、今川先生。
 こんな平和主義者だったのに。

 この手のMVでの玲奈ひょんの狂気たるや。

 今のSKE48だと、あえて、佐藤佳穂とかで観てみたいですね。

 そして、笑顔から真顔になる珠理奈も怖い!


 バッドエンドドキュメンタリー映画はげんなりするので、もういいですが、バッドエンドMVはまた観たいですね。