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2019年3月11日月曜日

掌が語ること



3・11


 その日、僕は兵庫県にある会社の本部で、会議に出ていました。
 急な揺れが襲ってきて、最初僕は、立ち眩みかと思っていましたが、周りの人の反応を見て、部屋を上司たちと出ました。
 上司の一人に腕を掴まれて、携帯電話の画面を見せられました。
 「東北で大型の地震が発生」
 その頃、付き合っていた彼女のことがすぐに心配になり、電話をしました。
 彼女はある公共交通機関の運転士をしていました。
 電話してもつながらず、会議が再開されても、会議の内容が頭に入ってきません。
 横の席の上司を見ると、いらだたし気に貧乏ゆすりをしていました。
 彼も家族に電話しましたが、連絡が取れなかったのです。
 会社はその日、自主退社という形でみんな帰っていきました。
 最悪のケースを想像しながら、何度も電話をしましたが、つながりません。
 やっと電話が通じたのはその日の夜、23時頃でした。
 現場でのトラブルの対処でなかなか電話に出られなかったそうです。

 そこからテレビに映る東北の映像を観て、まだ奨学金の借金がまだ50万近くあったのですが、すぐに貯金を募金しにいきました。よく、無駄遣いをして、あの時あの金を使わなければ、という時はありますが、この募金を後悔したことは一度もありませんでした。

 それから、世の中は不謹慎の波にのまれて、気付けば、ACのCMばかりになっていました。コンビニに行ったら、水がいつも売り切れで、食品もどんどん無くなっていくのを見て、日本という国はどうなるんだろう、と考えました。

 やがて、少しずつ東北に入れるようになった頃、AKB48グループの復興支援ライブが始まります。「誰かのために」運動としてCDの売り上げの一部が義援金として、被災地に送られることになりました。また、握手会の会場でもメンバー達が募金を呼びかけるようになりました。そして、1年後、これからも復興支援を続けていく、ということを表す、「掌が語ること」という曲が発表されます。
 まず、聴いてみましょう。


 このMVに動きはありません。
 写真がずっと続いていきます。
 ただ、その1枚1枚の写真が遠くにいる僕らに、彼女たちの活動を教えてくれます。
 もう、僕はこの最後の「ラララ」のところを観る度に涙が止まらなくなります。最後の被災地にわずかに花が咲いているところも良くてね(しみじみ)。
 歌詞も非常に抽象的な内容なんですが、一人の「掌」で掬える「砂」の量は限られているが、みんなでやれば、それは大きな力になるというのが伝わってきます。いつかは「山」ができる。
 僕は2番の「その砂をぎゅっと握りしめてみよう 言葉よりも先に」というところが好きでね。外野から文句を言うんじゃなくて、行動した方が良いよ、という風に僕には聞こえます。みんなでもう一度「砂」を掬っていくんだ、というメッセージのようにも聞こえます。
 
 果たして、被災地にアイドルが来て歌うということは、どうなのか、と思われる方もいらっしゃったかもしれません。しかし、ドキュメンタリー映画の2作目を見ると、そこには、笑顔を届けられていたことが分かります。まだ未見の方は是非。

 


 この映画の冒頭の、トラックのような被災地ライブカーの上で踊るメンバー達、楽しそうに盛り上がる子供や若者たち、その周りを囲む自衛隊たち。
 僕はこのシーンを観た時に、もう、フィクションを現実が追い越してしまったんじゃないか、と思ったもんです。


 SKE48のメンバーもたびたび復興支援ライブに訪れていますが、やはり、かおたんと山田町の関係が好きでね。
 山田町の子供たちが、48グループをコンセプトにした街のジオラマ「ゆめのまち48」を作ります。ファンの子がいたんですね。この山田町は、48グループが最初に復興支援にきた町でもあります。かおたんは、プライべートでも山田町を訪れ、観光品のアピールもSNSで行います。
 やがて、彼女は山田町親善大使となります。この辺りはドキュメンタリー映画1作目「アイドルの涙」の豪華版を是非観て欲しいです。

 「エビショー」のヒッチハイクの旅でも北海道から栄の劇場へヒッチハイクの旅へ向かう途中に山田町に立ち寄ります。
 ここで、谷に山田町で見てもらいたいものとして、震災で壊滅的な被害を受けた山田町を見せていきます。
 「綺麗だよね、海。初めてきたときもあんな静かな海がこっち側のまちをこんな風にするなんて思わなかった。テレビで見るとは違うなって思ったね」と語っています。
 やがて、町にある鎮魂と希望の鐘を谷と一緒にならします。この時、谷が静かに泣いてるんですね。

「ねえ、私も初めてきたときは泣いちゃった。でも、スタッフさんに涙じゃなくて、笑顔を届けてほしいから、泣かないでって言われて。これを通じて、知らない方に伝えること、風化させないことが私たちにできることだから。少しでも足を運んでもらえるようにできればと思っています」という言葉が本当に良くてね。

 8年間忘れずに被災地支援ライブを続けていく48グループの姿勢は、まさに「掌が語ること」の歌詞のようではないでしょうか。

この曲、無料ダウンロードが可能なので、皆さん、是非聴いてみてください。
https://www.youtube.com/redirect?q=http%3A%2F%2Fwww.akb48.co.jp%2Fdarekanotameni%2F&event=video_description&v=AjV8Z26yVS8&redir_token=mS8T7L4mTXrjHz3a0GlTxTuUpL58MTU1MjMxNDM1NUAxNTUyMjI3OTU1

 あの日から僕の「掌」からも色々なものがこぼれていきました。皆さんはどうでしょう?
 また、「砂」を掬いあげていきたいな、とこの曲を聴くたびに思います。

この被災地支援運動をまとめたNHKの石原プロデューサーの本もお勧めです。
 

 僕が震災のことで連想した「兆し」についての記事はこちら!
https://oboeteitekure.blogspot.com/2019/03/blog-post.html