映画にできること
先日、やっとタランティーノの新作「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」を観ましてね。
とりあえず、予告の動画を貼っておきますよ。
観終わった後、後ろの席に座っていたカップルが「全然、分からなかった」と言っていたのが、とても印象的でしてね。
この映画は、「シャロンテート殺害事件」を知ってるかどうかで、かなり印象が違ってくるかと思います。
かくいう僕も映画を観終わった後に、「シャロンテート殺害事件」について知りましてね。
ですので、まず、上記の事件を知らなかった人間の感想としては、「なんか、タランティーノの映画にしては、静かに進んでいくな」と思いましてね。特にリックとクリフの物語だと思ってみてると、この女性はいったい何なんだろう、どう関係してくるんだろうと。
なんか、楽しく、踊って、自分が出た映画観て、幸せな午後を送ったなあ、と。
いったい何だったんだろう、なんてね。
それよりも、リックの落ちぶれちまった俺様感や、鏡の自分に対してブチ切れるシーンとか最高でしたし、クリフがヒッピーをボコボコにして、パンクさせられたタイヤを変えさせるところが素敵でした。
そして、クライマックス。
まず、ワンちゃんがめちゃくちゃ強くてね。
映画「ダイナー」を思い出しましたよ。
クリフとのコンビプレーも良くて、あまりにもボコボコにしてて、映画館で久しぶりに声を出して笑ってしまいましたよ(人間性を疑う文章)。
そして、火炎放射器ですよ。
もうね、あそこは最高。
お前の家にもあったんかい!とツッコんでしまいましたよ。家で観てたら、両手を上げて叫んでいたと思います。
これからは、一家に一台火炎放射器の時代だな、と思いましたよ。
という偏差値低めの感想は置いておいて、クリフがここでも、リックの身代わりとして身体を張っているようにも僕には見えまして。多分、これからこの二人は離れていくんだろうなあ、という悲しさを感じました。
さて、帰りの電車の中でパンフレットを読みながら、そういうことか!となりましてね。
あのラストシーンは、タランティーノなりの映画で現実を変えてみせた作品だったのかな、と感じました。そうなると、あの何でもないような日常、特に映画を観るシーンも良かったなあ、と思いました。
また、昔の映画って、なかなか映画好きの人じゃないと手が伸びないと思うんですよね。それを映画を通して、こういう感じだったのか、と味わわせてくれるのもありがたいな、と思いまして。僕は黒澤明の映画が好きなんですが、意外と西部劇とかでも似たような雰囲気の音楽が使われてるなあ、と感じたり、当時の映画製作の現場の雰囲気がいいなあ、と感じたりしました。他にもブルース・リーが出てきたのはちょっと嬉しかったですね。
明けて本日、ネタバレ回避の為に避けてきた『映画秘宝』を読み、宇多丸さんのタランティーノとの対談を聞きまして、もう一度観に行きたくなりましたよ。
とにかく情報の多い映画で、全体的に流れている音楽も素敵で、一体何曲流れてるんだ、というぐらい流れてましたね。僕はラストの音楽なんかは、幻想的な雰囲気で好きですよ。
ソフト化される前にもう一度、事件のことを頭に入れて観てみたい1作です。