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2019年1月14日月曜日

鷺とり①

業を引き受ける声


 えっ、このブログ、ついにネタが無くなって落語まで触るようになったの?と思ったあなた、違うんです。
 我らがSKE48のチームEメンバー、はたごんこと高畑結希が、2016年に行われました「SKE48 ソロコン 2016」で落語にチャレンジしましてね。今回はそのことに関して書きたいなと思いましてね。

 はたごんがチャレンジしたのは、「鷺とり」という古典落語の演目のアレンジ版でしてね。
 僕は落語はそんなに詳しくないため、3日ほど前からこの演目の聴き比べをしましてね。個人的には桂枝雀さんと桂文鎮さんの「鷺とり」が好きだなと思いましたよ。そういえば、峯岸みなみさんも創作落語として、似たような「鴨とり」にチャレンジしてましたね。

 「鷺とり」の簡単なあらすじを超雑に書くと、①雀をとるエピソードを男がご隠居に話す。②今度は鶯とりの話をする(はたごんではカット)。③鷺を捕まえようとすると(はたごんの場合は鴨。関東では雁)、鷺たちが目覚めて、男を連れて飛んでしまう。男は寺の五重塔の上へ(関東だと浅草寺、関西だと天王子)。お坊さんたち4人が布団をマットにここへ降りろ、とメッセージを送り、男は勇気を出して飛び降りる。すると四隅を持っていたお坊さんの頭が激突カージャック。1人助かって4人死んじゃった。という話。

 この「鷺とり」なんですが、名人方の落語を聞いていると、皆さん20分以上喋られてるんですね。たとえば、雀の描写をじっくりやるんですね。「江戸っ子の雀」が出てきたり、雀の年よりみたいな人への野次とかね。この記事の影響で落語をよく聞くようになったんですが、僕は桂枝雀さんがお気に入りになりそうでしてね。③の五重塔の上で男が困っているんですが、その噂話に「えらいこっちゃ、えらいこっちゃ」を混ぜて(こういうのをはめものというらしいです)、色々なダジャレを入れたりと工夫が凝らされてましてね。また、皆さんお坊さんの描写もちゃんとやるわけです。「困った人を助けるのは、出家の務め」とかね。真面目にやってるからこそ、オチが面白い。落語の面白さとしては、同じ演目でも、噺家さんによって全く違うものになるんだなあ、としみじみ感じましたよ。

 じゃあ、はたごんは、どんな工夫をしたのか。
 時間も10分と限られている。
 はたごんが行ったのは、この話の核になる部分の抽出と、SKE48ならではの工夫です。
 おじさんの雀が歌う「パレオはエメラルド」。見張りの鴨が「パッションフォーユー」のやりすぎ。という、SKE48ファンならニヤリとする演出を演目の中に混ぜましてね。これがあまりにもSKE48様子を入れ過ぎてヲタク接待になると、落語の良さが損なわれてしまうので、これぐらいが丁度良い案配かと思います。


 途中で、困って「ひーん」というところもはたごんの良い意味でのポンコツさが出てて良いですね。落語の登場人物にも出てきそうな。

 で、はたごんが落語をチョイスしたというのは、中々良い目の付け所で、乃木坂46が「じょしらく」で落語にチャレンジしてましたが、あれはどちらかというと、2次元よりのビジュアルだったんで、あんまりピンと来なくてですね(それでも堀ちゃんは可愛いと思いますがね)。観てないので、これも一度観たいなあ。

 今、SKE48でこの手の伝統芸能の仕事に関わっているメンバーは少ないんじゃないでしょうか(ちょっとずれるけど、鎌田さんの将棋とかかな)。2019年1月現在のSKE48の選抜は、現在、握手の売り上げがメインだと思います。ただ、ボーダーラインメンバーが沢山いましてね(べニチオ・デル・トロとかジョシュ・ブローリンのことじゃなくてね)。そこで頭一つ抜けようと思ったら、きっとそのメンバーならではの個性が必要になってくるんじゃないでしょうか。その際にはたごんの落語は、きっと活かされると考えています。他にも香川という要素がありますが、今回は割愛。

 あとは、どこまで好きになるかだと思います。幸い、落語のお仕事に出たり、「落語心中」も観ていたりと落語好きなんだなあと思うんですがね。どうせなら、珠理奈がプロレスを好き過ぎて、ディスティーノを会得したように(プロレスがいくら好きでもプロレス技を会得するやつはなかなか居ない。君はいくらローガンが好きだからって、腕にアダマンチウムを移植するかい?)、はたごんもアイドル活動をしながら、その道も探求してみてほしいですね。きっとそれは、彼女の力になります。何故って、今の日本映画界やドラマ界を見回してください。落語家さん方が沢山出演されています。落語には演技力も必要ですもんね。ひょっとしたら、女優の道も開けるんじゃないか、とこの記事を書きながら思ってますよ。はたごんの演じる雀、鴨、駄目な男、ご隠居、みんな愛らしくなかったですか?



 落語はよく「業の肯定」と言われます。色んな欲望に負けてしまう登場人物が沢山出てきます。ダメな人も沢山出てきます。でも、みんな憎めません。創作落語では、作者の人間への優しい目線があります。何故なら、作者や演者自身が人間のダメさを持っていたり、知っていたりするから。人間のダメさを肯定してくれる優しさを持った彼女の落語、今度は20分以上の時間設定で聞いてみたいなと思っています。はたごんの「死神」とか「芝浜」とか聞いてみたいなあ。あとは、はたごんに創作落語で握手会落語を作って欲しいなあ。ダメなアイドルファンがどんどんきて、アイドルがご隠居みたいに突っ込んでいく。なんなら剥がしの人も込みで。