戻れないあの夏と麦わら帽子
この記事が公開される頃には、AKB48のリクエストアワー2019の投票が始まる頃ですが、皆さんは何に投票しましたか。こんなブログをやっていることもあって、何に投票するか迷うところです。歌詞だけなら、「石榴の実は憂鬱が何粒詰まっている?」か「ドガとバレリーナ」が好きなんですね。「石榴」はいつか、記事で書きたいと思います。「僕」と「君」の関係が好きなんですね。毛皮のマリーズの「ダンデライオン」みたいでね。
曲としては、「無意識の色」か「存在しないもの」に入れたいところで迷ってたんですね。どっちもイントロが好きなので。
ただ、今年の総選挙選抜シングルに良曲が多かったことと、総選挙曲はメンバーの卒業なので、なかなか披露されることが少ないということで、「波が伝えるもの」と迷ったんですが、「ひと夏の出来事」に投票しました。
まずは、曲を聴いてみましょう。
「ひと夏の出来事」
いかがでしたでしょう。
僕は、初めて聴いた時、良い曲が来たな、と思うと共に「人間の証明?」と思ってしましましたよ。「母さん、僕のあの帽子 どうしたでしょうね」ちなみに紅條は、「野生の証明」の方がラストが壮絶すぎて好きですよ。
さて、話を戻すと、歌詞の中で主人公の「僕」がある夏の出来事を思い出すんですね。
「君のあの麦わら帽子 風に吹かれ飛ばされてった」から始まるんですが、この「麦わら帽子」がメタファーになってきます。
1番の歌詞では兄妹みたいと言われていた、僕と君は一緒にいるのが普通だと思ってたんですね。しかし、僕は「君の浴衣」をきっかけに、「急に僕は 手を繋ぐのが恥ずかしくなったんだ」と、心境に変化が訪れます。
サビでは「君のあの麦わら帽子 僕がもっと手を伸ばせてたら 風に飛ばされずに 終点へ 走り続けてた」という後悔が突然出てきます。時間が過去から現在に戻っていることに気づかされます。「大人になるってそういうことか ふと思い出した切なさ」とあるので、やはり僕は時間が経って大人になってしまっていますね。そして、飛んで行った君の麦わら帽子。自分の手ではどうしょうもなく、離れていったもの。でも、手を伸ばしていたら、という後悔が感じられます。
2番の歌詞では「僕が好きなアイドルを君は好きじゃなかったね」という歌詞をアイドルに歌わすのが斬新ですね。昔、付き合ってた彼女に「前田敦子なんか、可愛くないじゃん」みたいに言われて、「お前にあっちゃんの何がわかるんだ!」とドキュメンタリー映画を観た僕は反論して、凄く険悪なムードになったことを覚えていますよ。「それが嫉妬のようなものだって ある時 気づいたよ」とね。もっと、素直に言いなよと涙ながらに思いますね。
時間は「制服を着始めた頃」になります。中学とかですかね。「どうでもいい秘密が増えた」って、出てくるんですが、何ですかね。「正直、生写真を買ったはいいけど、どうすればいいか分からない」とか、「映画のブルーレイを買っても本編観ずに特典映像ばかり観ている」とかですかね。
で。背丈も差が出来て、「言葉遣いもよそよそしくな」るんですね。
まさに思春期!皆さんは共学ですか?
僕は工業高校出身で男しかいないので、こんなこともありませんでしたよ。たまに商店街とかで、小学校の頃の同級生女子に会おうものなら、人里に現れた山の怪のように、顔を覆いながら一目散に逃げていったもんですよ。
2番サビでは、僕は無口になるんですね。「これが初めての恋と いつの日か誰も知って行く」恋と認識するには遅かったわけです。「線香花火が寂しく消えた」今度は麦わら帽子ではなく「線香花火」に変わりますが、これも自分の手ではどうしょうもなく過ぎてしまいます。「寂しく消えた」とあることと「無口になっていた」ということから、ひょっとしたら、思いを伝えられずに終わった恋かもしれません。
さて、大サビに向かって曲は転調していきます。
「走る列車の窓 開けなければ ずっとあの日のまま」
窓を開けたのは「僕」なのか、「君」なのか、それは分かりませんが、窓を開けたために、「麦わら帽子」は飛んでいきます。「窓を開ける」というのが何の比喩なのかは、はっきり分かりませんが、「僕」か「君」が離れることがあったんでしょうね。
いよいよ大サビ前。
「夢を何度見たことだろう いつも同じ場面ばかりだ なぜに僕は風の中 この手を伸ばさなかったのか?」
ずっと後悔しているわけですね。同じ場面を。もうここに共感しまくりでしてね。
年をとると、こういう繰り返しの後悔を何度もすることがあるんですね。それは人それぞれです。「なんであの時、ちゃんと説明しなかったんだろう」「あの時、意地を張らなければ」「なんで、スターウォーズ エピソード1にあんなに期待したんだ」「なんで、よりにもよってカウカウファイナンスにいったんだ!」とかね。クライマックスジャンプが聴こえてきそうな後悔ばかりですよ。
で、この後、大サビで1番のサビと同じものがきます。
色々ないきさつを知った後で、もう一度、1番のサビを聴くと、「麦わら帽子」に手を伸ばしていたら、という後悔。
もう、書くまでもないですが、「麦わら帽子」は「君」ですね。「終点」まで行けたかもしれないという後悔と、キラキラした思い出に戻れない切なさを感じます。
聴く度に、切ない夏の記憶を感じさせる曲です。
「波が伝えるもの」が未来を歌っているのに対して、「ひと夏の出来事」は過去を歌っていることから、対にして考えてみると面白いかもしれませんね。作詞の人が同じだからですかね。
※「波が伝えるもの」の記事はこちら
さて、MVを観ていくと、フューチャーガールズの皆さんが、森の中でお食事したり、イルミネーションを作ったりして、楽しく過ごすのを山の怪である我々が覗き見るという作りです(ちょっと嘘)。
センターは、AKB48の後藤萌咲さん。ドラフト1期生なんで、うちでいえば、さりーとかどんちゃんとかと同期ですね。
恥ずかしながら、この曲で初めて知りました。
大サビ前の「夢を何度見たことだろう」の歌声が素敵でした。
さてさて、SKE48からは、はたごん。
優月。
みいぽぽとおしりん。
みんな、夏のお出かけに素敵な白いワンピースですね。
そして、曲のイメージに合う麦わら帽子をかぶっていますね。
ダンスパートでも清楚な感じがして素敵です(35歳の文章)。
食べて、
イルミネーションの点灯式をして、
盛り上がって、わーいな内容なんですがね。
注目したいのは、最後なんですよ。
電気が全部消えて、誰もいなくなります。
夏の終わりの寂しさを感じさせますね。
ひょっとしたら、この風景さえ、「僕」の思い出かもしれませんね。山の怪の。
イノセントな時間に戻れない切なさ、「君」と離れてしまった寂しさ。
また夏になる度に聴きたい名曲です。