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2021年9月27日月曜日

「熱さ」を繋げる人

物語か日常か


 

 SKE48の歴史を紐解いて行くと、偉大なキャプテンたちがいました。


 チームSのリーダーであり、キャプテンを務めた平田璃香子さん。
 3期生で当時研究生でアンダー出演等をしていた3期生たちの証言を集めると、凄まじい人格者であるということが「3じゃないよ!」の動画で語られていましたね。
 また、リクエストアワーにおける「羽豆岬」の光景は、SKEの歴史に残る出来事ですし、曲や土地に良い意味で「文脈」を乗せることに成功したのでは、と思います。

 次にキャプテンを務めた中西優香は、2013年4月13日の組閣から2014年の4月22日の約1年間という短い期間でした。
 僕は、元中西優香推しなのでどうしても贔屓に書きがちですので、凄いシンプルに書くと面倒見の良さを表と裏で発揮していきます。

 そして、大組閣での発表から宮澤佐江さんがキャプテンになります。
 最初こそSKE48とのチューニングが合ってないのでは…という心配もありましたが、徐々にチームSを中心にメンバーやファンとの距離が近づいて行きました。
 なんと言っても彼女は、様々な大きな舞台で結果を出して来た人なので、一つ一つの言葉の説得力が違います。また、彼女が持っている熱さはSKE48との相性も良かったのではないでしょうか。
 彼女がいた2年間は、SKE48の新世代の礎を作ってきた期間ではないかと考えています。

 2016年3月5日に斉藤真木子はキャプテンになりました。
 それから2021年9月末現在まで、この役職を務めています。 
 上記の3人よりもキャプテンとしてのキャリアも長くなりました。
 さらに支配人という未だに謎に包まれた役職も務めています。
 1期生である松井珠理奈が卒業した今、彼女がもっとも長くSKE48に居るメンバーです。
 今日はちょっと斉藤真木子の魅力について考えてみたいと思います。

 まずは、2019年5月2日に行われたかおたんこと、松村香織卒業公演で真木子が書いた手紙から読んでみましょう。

「松村香織ちゃん

 2016年の生誕祭で一度手紙を書きました。こうして今日またかおたんに手紙を書く日が来るなんて思わなかったよ。

 9月の卒業発表から約半年。いつ辞めるの?まだいるの?って言葉が飛び交うことも少なくなかったけど、そう言って笑いあえるのもなんだか楽しくて、卒業コンサート、最後の握手会、最後の撮影、最後の〇〇っていうのが増えて来て、ついに来月の予定にはかおたんの名前が入ってこなくて、『あのイベント楽しみだね』とかも言い合えなくなることが寂しかったです。

 9年間、歌や踊りが苦手なかおたんが唯一自分の武器として手に入れた個性や発想力や独創力、私にも、そしてどのメンバーにも真似できない形でSKE48の新しい入り口をたくさん作ってくれました。

 周りと違うことをやって批判された時も、うまく嵌って絶賛された時も、どんな時もそばで見ていたけれど、いい時も悪い時もその度に大きなプレッシャーに悩まされて追い込まれて、禿げたり痩せたり、私たちにも知らない悩みをたくさん抱えて今日まで色んな逆境を乗り越えてきた姿がこんなにもキラキラ輝いて見える今が心の底から本当に嬉しいなって思います。

 かおたんは6期生やドラフト1期生、研究生時代にはたくさんの後輩を育ててきたことは有名な話ですが、先輩である私にもたくさん力を貸して、チームに寄り添ってくれました。

 私が研究生になって、後輩なのに年上だという絶妙な立場で最初は『真木子さん』と呼ばれていたはずですが、当時の私たちを否定することなく、時には『いつメン、いつメン』といじってくれて、降格した私たちの居場所を作ってくれました。

 私たちの暗黒時代を今こうして笑って話せるようになったのもかおたんのおかげです。

 そんないつメンの生き残りも来月からはついに私一人になりました。

 笑って話してくれるかおたんもいなくなってしまうので、また入ってきた後輩が『真木子さんって何で研究生になっちゃったんですか?』と目の前でネット検索をされちゃうのはどうしようかなって思ってます。

 でも、あの頃を本当に青春時代だと心から思ってるから、話せる仲間がいなくなるのは本当に寂しいな。

 当時のSKE研究生から唯一選抜総選挙にランクインしたことは私達の本当に誇りでした。ステージに立つかおたんが初めてかっこいいと思えた。

 そこから火がついたかのように、私たちの研究生公演がたくさんの方に評価されるようになり『今一番熱い公演がSKE研究生だ』と言われるようになって本当に嬉しくて嬉しくて、調子に乗って『会いたかった』公演と『PARTYが始まるよ』公演の2公演を同時進行なんてやってたね。

 研究生になってしばらくはふてくされて、人生のどん底だった私たちを救ってくれたのはかおたんをはじめとする当時の3、4期研究生。そしてどれだけ檄を飛ばしても有無を言わさず死に物狂いでついてきてくれた5期研究生のみんなでした。あの時があるから今の私があると言っても過言じゃありません。感謝してもしきれないです。本当にありがとう。

 それから何年もの月日が経っても、いつも頑固で考え方が一通りしかなく、頼る場所が見つからない私にいつも手を差し伸べてくれて、一番いい方法を一緒に考えて、時には夜中まで話を聞いてくれたこともあったね。

 かおたんの前でなら素直に涙を流すこともできたし、どんなに理不尽でやるせない自分の気持ちにも整理をつけることができました。

 優しい言葉はもちろん、時にはきつく叱ってくれて本当に感謝しています。

 プライベートの面でも、14歳でこの世界に入った世間知らずで金遣いも荒い私をちも気にかけてくれました。

 まぁ私以外にも手にかかる人はいたと思うけど、それでもいつもみんなが頼る先はかおたんでした。

 かおたんがSKE48を大好きなまま卒業してくれるのが本当に嬉しいです。中にはきっとこの世界の理想と現実に苦しんで思うようにアイドル人生が進まず、夢を半ばで諦めてしまうメンバーもいる中、自分の可能性を信じて最後の最後までアイドルを余すことなく堪能した姿は本当に誇らしいです。

 かおたんの穴は簡単に埋まるはずないけれど、いま一度ここでみんなで力を合わせてこの壁を乗り越えなければいけない、ある種の試練だと思っています。

 これからもこのグループは大きくなっていくんだろうし、メンバーもたくさん増えていくだろうけど、私もワカテガチュウに負けないように頑張るね。

 明日からもずっとずっと、おばあちゃんになってもよろしくお願いします。

 かおたんの更なる幸せを心から願って、9年間お疲れ様。卒業おめでとう。

 斉藤真木子より」


 松村香織というSKE48の歴史の中でも異端であった存在。
 しかし、異端の彼女だからこそ、王道から外れてしまったことのある彼女にも理解を示し、「ふてくされていた」彼女の心に、研究生の仲間たちと共に火をつけてくれました。
 そして、「キャプテン」や「支配人」ではなく等身大の一人のアイドルとしての斉藤真木子と向き合ってくれる存在がかおたんであったのかも知れません。
 ううむ、10期生五十嵐早香推しの僕としては、今、真木子やかおたんに話を聞いてほしいな、と思う次第です。
 話を戻すと、真木子が残り続けることに反発を感じる「ワカテガチュウ」の皆さんもいるかも知れません。僕の推しは10期生ですが、かと言って真木子に早く席を譲れとか、卒業しろとは思えません。むしろ、もっと残って色々なことを若手に伝えていって欲しいという気持ちです。
 それは5期生の奈和ちゃんや江籠ちゃんを見ていれば分かります。
 

 次に2021年4月27日に行われた高柳明音卒業公演で読まれた真木子が同期のちゅりに向けて書いた手紙を読んでみましょう。

「明音ちゃんへ

 同期とは同じ時期、入学、入社の時期が同じ人。SKE48は昔から期で縛る活動が多かったです。

 同じオーディションを受けて、一緒にデビューのステージを踏んで、同じ夢や目標を追いかけて、互いに切磋琢磨して。

 他の期を見ながら最近よく考えます。

 12年前、お披露目や公演デビュー、コンサートに向けて毎日何時間もレッスンを重ねて、皆で円になってお弁当を食べたり、お仕事の前後でお買い物に行ってプリクラを撮ったり、休みの日には私の地元の大阪に招いたこともあったね。全然案内できなかったけど。

 お泊りのホテルとかは同質になったことはなかったっけ?

 でも、こうして振り返ると私たちちゃんと同期らしいことをしたんだなと思います。

 初めての芸能界で色々なドキドキやワクワクを一緒に味わって、褒められたら一緒に喜んで、そしていつも1期生やチームSと比べれては『2期はダメダメだ』って言われるのが悔しくて皆で『見返してやろう』って頑張ってたくさん練習して。

 どんな時も皆一緒に泣いて笑って横並びでいられる、そんな日々がずっと続くってそう思ってました。

 同じチームK2からスタートした私たちだったけど、チームS、Eそして研究生までもを網羅してしまった私と、ずっとK2にいる明音ちゃん。今となっては同期という類で一緒に活動をすることも増えたけど、考えてみると明音ちゃんと私が同じチームでいられたのは今日までの12年のうちたった1年半というとても短い時間でした。

 やっとの思いでチームK2にオリジナル公演がもらえるという時に、そこに私はいられなくて、今更だけど本当にごめんね。

 そこからはお互いが必要以上になくなって、自然と一緒の空間や時間を過ごすこともめっきりなくなりました。

 しばらく経った頃、同期や親しいメンバーの卒業でどんどんとひとりぼっちになっていく明音ちゃんの姿を見つけました。
 

 私の知る明音ちゃんは元気で明るくて楽しい人だったはずなのに、その異変に気付いても「私なんかが」と引け目を感じてしまい、手を差し伸べることができませんでした。二人の間にできた長い空白の時間は明音ちゃんへの触れ方さえも忘れてしまったみたいです。


 明音ちゃんがみこってぃの卒業公演の時に書いた手紙の中に『空白の時間だったその溝を埋めていきたい』と本音をもらしてくれたことを今でもはっきり覚えてます。

 本当は一緒にオリジナル公演をやりたかったという思いを10年越しに知ることができて、本当に本当に心の底から嬉しかったです。

 そこからかな、少しずつ胸の中にあったトゲみたいなものがすっと取れて、明音ちゃんと接することができました。

 たった1年半で築き上げたものだったのに、元に戻すのには10年もかかってしまったね。

 SKE48としても明音ちゃんがいたから見られた景色がいっぱいあって、明音ちゃんがいたから学べたことがたくさんあって、明音ちゃんがいたから今の自分がいます。

 ただ、やっぱり今日の今日まで明音ちゃんの背中に追いつくことも隣に並ぶことも、ましてや追い越すことなんてできませんでした。
 

 どんなに距離があっても私にとってはずっと凄い人だったし、追いつきたい人だったし、初めて言うけれど憧れのような存在でした。

 今では明音ちゃんの周りにはたくさんのメンバーの姿があって、『ちゅりちゃん、ちゅりちゃん』と楽しそうな場面を見ていると嬉しいような寂しいような、でも、やっぱり明音ちゃんの笑顔が見れて嬉しいです。

 卒業コンサートを通しても後輩メンバーへの想いがたくさん感じられました。皆の真ん中に立って、引っ張って、楽しんで、騒いで、忘れずに仕掛けて帰っていく、最高に素敵なコンサートでした。ありがとう。

 ただ明音ちゃんのいるうちにナゴヤドームでの単独コンサートが実現できなかったことが心残りです。

 今ではあまり声に出さなくなったけど、『ナゴヤドームをしてからじゃないと卒業できない』と言っていたのを覚えています。

 でも過去に縛られてなかなか前に踏み出せなかった私たちに『今が一番楽しい』と明音ちゃんが皆を引っ張ってくれたから今のSKE48があります。

 楽しい時も、嬉しい時も、悲しい時も、悔しい時も、苦しい時も、どんな時も皆の先頭に立って、SKE48を守って戦ってくれました。

 皆のためにとたくさん頑張ってくれた明音ちゃんだからこそ、明日からは自分のことをたくさん考える時間にしてください。たくさん甘やかしてあげて、遅れてきた青春を存分に楽しんでね。

 寂しくないわけなんかないけれども、私も一人を存分に楽しみます。そして皆と一緒に『今が一番楽しいSKE48』を更新し続けます。

 たくさんのごめんねとありがとうを込めて。

 斉藤真木子」

 思えば同期であるちゅりは、SKE48の歴史に名前を残す活躍をしましたし、常に先頭集団で居続けました。
 それに対して、真木子は紆余曲折の末、それでも負けじと努力を続けたことが手紙から伺えます。追いかけたくてもなかなか追いつけない背中。時には引き離されていく自分。
 関係を元に戻すまでに10年間かかったというのも、とても深い言葉で、真木子側の視点だからこそかもしれませんが、不器用な二人の関係を感じさせられます。回り道をしながらも最後に分かり合えた二人。
 そして、「過去にしばられて」という表現をどうとるかは、人それぞれだと思いますが、グループの目標が見えにくい状況なら、「今」を肯定して大事にしていく、という考えも真木子は受け継ぎます。


 今度は、2018年7月2日に行われた彼女の生誕祭で読まれた彼女宛ての手紙から。

「真木子へ

 ひと足先に24歳、大人になりやがって!クソ―!

 お誕生日おめでとう、まっこ!

 私がお手紙を任された時、好き過ぎて緊張と何をどこから書いていいのか悩んで計算したら、100枚ぐらいになりそうなので、頑張って5枚にまとめたいと思います。

 真木子はね、本当に凄いの。あんなに毎日SNS更新して、自分の出ない番組まで宣伝して、会えないメンバーにはSNSで絡んだり、元気かな?ってチェックしたり。あのね、これを続けることがどんなに大変か普通の人には出来ないことを真木子は続けてるの。

 私、今毎日SNSとSKE Mail、ブログ、頑張って続けてるけど、真木子ってこれを何年も続けてると思ったら本当に神だなって思った。簡単そうで、簡単じゃないよ。ファンの人も当たり前だと思って欲しくないな。

 あとね、真木子ってダンスも上手で歌もうたえて、器用で何でも出来ちゃうから、オレが応援しなくても真木子ちゃんは大丈夫だって思っている人がほとんどだと思います。それは違うよ。ファンのみんながいるから頑張れるし、みんなが見つけやすいっように前の列で踊れるように見えない努力を重ねてきたから今があるんだよ。

 真木子は気づいてる。ファンのみんなが言う『応援してる』って言葉が形になってないことを。どれだけファンのみんなに伝えても、信じても形にならない悔しさ。

 みんなを責めてるわけじゃないけど、真木子ちゃんは大丈夫だなんて思わないでほしい。ファンとメンバーは一心同体。一緒に頑張らなきゃダメなんよ。

 だから、今この手紙を聞いてくれてるファンの方には今この瞬間から真木子に本気で向き合ってほしい。真木子はそんなに強くないよ。私は知ってる。陰で真木子が重い重圧に耐えて涙をこらえてるの、私は知ってる。

 総選挙、私はランクインしてほしかった。SKEメンバー全員思ってたと思うよ。ランクインしない意味が分からないくらい真木子のポテンシャル半端ないの分かってるでしょ?あとはファンの皆さんがどれだけ本気になれるかじゃないかな。私は真木子大好きだから、ちょっときついこと言っちゃうし、ファンのみんなもそんなのわかってるよって思ってるかもしれないけど、それを真木子に全力で伝えてあげてください。それがまた真木子の活力になるはずだから。

 SKE48を辞めることは簡単です。でも、続けることも才能だと私は思う。10年続けてきたんだよ。真木子半端ねーって。

 私は真木子とこれからも一緒にSKE人生歩みたい。友達としてもそばで『あーだこーだ』言いながら寄り添っていきたい。今、私がSKEにいられるのは真木子が支えてくれたから。次は私の小さな器で真木子を精一杯支えていくよ。だから、ありのままの真木子でいてください。

 あー!珍しく語ってしまった(笑)公演の雰囲気変になってないかな?心配(笑)

 あっ、そうだ、真木子、今日はいつものキレイ事言わなくていいよ。考えてきたスピーチ、1回捨てよう。

 今日はキャプテン斉藤真木子じゃなくて、一人の女の子の斉藤真木子としてのファンのみんなに語ってあげてほしい。大切なことだからもう1回言うね。キレイ事言わなくていいよ。今思う素直な気持ちのまま、ゆっくり言葉にして伝えてみたら、言いたいことスラスラ出て来るはずです。真木子の本当の気持ち、今日は吐き出してみよう。誰も文句言う人はいない。文句言うやつがいたら私がぶっ飛ばす。文句あるやつ、握手会お待ちしてまーす。

 最後に、真木子、改めてお誕生日おめでとう。大人へまた一歩近づいたね。

 お酒好きそうな顔をしてんのに全然お酒より黒いシュワシュワしたカロリー高いジュースが大好きだし、めっちゃ食うでーとか言いながら全然食べてないし、楽しくLINEしてたと思えば急に既読っ無視してくるし、MAKICOCODEAL凄い好きで、絶対いいね押してたのに最近ないし、真木子の笑い方デカすぎてどこにいるのかすぐわかるし、タピオカ好きじゃなかったのにいつの間にかインスタがタピオカだらけになってるし

 誕生日プレゼント買ったのに既に真木子持ってたし。

 でも、真木子といると本当に色んなことが楽しくて、発見があって、幸せです。真木子と出会えて良かった。メンバー以上の友達になれて良かった。これからもこんな私だけど仲良くしてね。

 真木子、大大大大好きまる~。

 この後のスピーチ頑張れ!まっこ、素直に、だよ。

 真木子推しのファンの皆様、お手紙書かせてくださってありがとうございました。正直どんな手紙になるのか不安だったでしょう。普段伝えられない気持ちをこうして生誕祭で伝えられたことに感謝しています。

 真木子ファンのみんな、全力で戦え!真木子をよろしく頼むよ、マジで。私に手紙を書かせたということはそういうことでっせ。燃えろ!真木子ファンのみんな!

 真木子のことすげー神、大好き!と思ってるチームSのスーパー可愛い山内鈴蘭より」

 もう、なんというか、メンバーだから分かる視点というか、こんだけ頑張っている人が、なんで報われないんだろう、という思いです。前回の深井ねがいちゃんの記事でも書きましたが、芸能人を続けることの難しさ、大切さも感じます。

 そして、ついつい「自分が応援しなくても大丈夫」と勘違いさせてしまう頼もしさを彼女は持っています。
 きっと彼女から遠くにいればいるほど、昔からのファンもいるし、ダンスも上手いしある程度上まで行ってるしと。
 でも、そうではありません。
 近くで見ていると弱さも見えて来るし、助けが必要でファンも燃えなければいけない。
 3年目に書かれた手紙ですが、今の真木子はどうでしょうか?

 昨年から東大阪市の仕事に沢山登場しています。
 なんなら、最近もこんな活躍を。



  


 自分の地元の魅力をアピールしています。
 それは派手なものではないですが、東大阪の方々の日常に根差していて、毎日情報が更新されていく48グループの早さとは、正反対の良さがあると思っています。
 そして、これからの48グループがまた社会に根付いていく為に必要な動きだと思っています。
 今までのリーダーとは違ったやり方で、斉藤真木子のアイドルとしての生き様を見せてほしいです。
 

 さて、実は今回の記事には裏テーマが一つあります。
 それは2021年9月19日の夜に突然湧いた「SKEとは何か考えてください」という言葉。
 様々な人が解釈を出しました。
 そして、まるで大喜利のように消費され、週末にはすっかり忘れられてしまいました。
 ただ、何故、一メンバーへの注意の言葉があそこまで広がっていったのか?
 それは自分の中のSKE像を問い直されたからではないか、と思います。
 上記の問いに対するヒントが斉藤真木子について考えることにあるのではないか、と思っています。
 3つの手紙から抽出される要素。
 ① 様々な才能を受け入れる度量の広さと心に火をつけるメンバーたち。

 ② 目の前の追いつきたい目標に必死で頑張る、それは必ずしもそう簡単に埋まるとは言えない。時間がかかっても遠回りしてもいつか辿り着く。

 ③ 応援するファンたちとの関係。

 上記の3つがSKEとは何かを考えていくヒントになると思っています。

 ①に関しては、これまで正統派と呼ばれるメンバー、邪道と呼ばれるメンバー、様々にいました。共通しているのは、ファンの心に火をつける何かを持っていたこと。
 ②に関しては、SKE48の前には常にAKB48が居ました、総選挙の時には数々の先輩メンバーたちの壁がありました。ナゴヤドームに辿り着くまでの道も。それでも多くの目標に向かって走り続けた姿があること。
 ③ 「もうSKE48はいいだろ」と離れて行った人もいるかもしれませんが、それでも今も熱く心を燃やすファンの方々がいること。

 ただ、ここまでは全て「これまで」の話です。
 「今」のSKE48が上記の3つであるかどうかは、正直、分かりません。
 グループとしての「未来」の目標もコロナ禍で見えにくく、立てにくくなっているのかも知れません。それでも、まだ「熱さ」はメンバーにもファンにも残っていると思います。
 僕個人の話をすると、少しずつグループに対する閉塞感を感じています。
 昨日観た、STU48のガールズバンド「青い向日葵」の未来への目標をしっかりと立てて、アパレルブランドとコラボしながら、「モノ」も「コト」も満たしつつ、グリーンアリーナを目指すという「物語」は1年後、3年後までワクワクできるものでした。
 今のSKE48にそれはあるでしょうか?
 1年後のSKE、3年後のSKEはどこでどんなメンバーたちがライブをしているというビジョンがどれぐらいあるでしょうか?
 やり方は必ずあります。
 12周年公演フェスで「過去」と向き合い、メンバーたちが乗り越えていくまでのあの期間、物凄くワクワクしました。方法が無いわけではないはずです。
 SKEの「今」をどう面白くするのか。
 運営は勿論ですが、メンバー、ファン、みんなで面白くできると信じています。
 このグループの「熱さ」や「物語」、それを未来の逸材たちに斉藤真木子なら繋げられると信じています。
 

2021年9月25日土曜日

家族と歩むとき

「成功」ではなく「続ける」こと


 

 最近、橋本努さんの「消費ミニマリズムの倫理と脱資本主義」という本を読みましてね。
 マックス・ウェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」を彷彿とさせるタイトルですが、筆者の橋本さんもインスピレーションを受けたそうです。
 いわゆる、「モノを捨てるべし!要らない、持たない、夢も見ない、フリーな状態それも良いけど」的なミニマリストの方々の例から、中野孝次さんの「清貧の思想」のような「いや、我慢するべし、ハードボイルドはやせ我慢」という徒然草の頃から言われるような保守的なミニマリズムまで、様々なタイプを挙げながら、ミニマリズムって精神的には禅と相性が良さそう、とか脱資本主義(ここでの使われ方としては次から次へ消費していくこと)をどうするか、ということが書かれています。
 さて、この本の前半の第2章ぐらいで強迫神経症と強迫的消費依存について語る際に引用される研究が印象に残っていましてね。
 ヴァン・ジョインズとイアン・スチュアートによる人格適応理論です。二人は「親の養育スタイル」については、ある組み合わせになると強迫神経症になると研究結果を出しています。
 ちょっと一例をみてましょう(翻訳なので句読点の多さはご容赦ください)。
① 親が養育に熱心ではなく、あてにならない場合には、子供は空想的になり、感受性が強く、思いやりがあって、風変りだが創造的で、ひきこもりになる。
② 親が子供のニーズを先取りして満たそうとする場合、それがうまくいかなくなると子供は反発し、反社会的になると同時に、魅力的に他者を操作するようになる。
③ 親の養育の仕方が感情に左右される結果として一貫性がないと、子供は疑り深くなり、明晰な思考を持つと同時に一つのことに固執するパラノイア型になる。
④ 親が過剰に子供を管理・コントロールする場合、子供はそれに従いながらも攻撃的になり、ふくれたりふざけたりしながらも、粘り強い反抗者になる。
⑤ 何か目的を達成するとほめてあげるという養育をする場合、子供は完全にその目的を達成することを強迫観念のように思いがちであり、責任感ある仕事中毒者になる。
⑥ 子供に対して親を喜ばせて欲しいと求めるような養育をする場合、子供は演技型になり、「人好き」で、物事に対して熱狂的に過剰反応するようになる。

 ううむ、全部悪く書いてるようにも感じますが、多くの方は⑤のタイプになりやすいそうです。真面目な人がよくなるそうで、「理想の自我」や「成長」を求めるうちに、消費も次から次へとと完璧を追い求めてしまいがちだそうです。
 「自己実現への欲求」は誰しも多かれ少なかれ持っているかもしれませんが、それが「新しい価値創出」や「個人による文化的な創造」ということも出来ますし、「積極的な消費」の方に流れて行くこともあると思います。それが「消費」に偏り過ぎると「強迫的消費」になってしまう。具体的には「自分へのご褒美」が過剰になってしまう。
 こうなると、親の育て方って大事ですよね。
 いや、親と子供の接し方というか向き合い方でしょうか。
 ちなみに僕は、ゴリゴリの③的な育てられ方をしましたよ(両親ともに今日と明日と昨日で意見が変わるAB型。勿論、僕もAB型)。
 ただ、親の育て方はこんな6つのタイプだけとは限らないはず!(ジョインズ、スチュアート、折角研究してくれたのに、すまん)

 そう思わせてくれるのが、深井ねがいちゃんです。
 
 彼女のSHOWROOM配信では、ご両親がよく声の登場をします。
 初めてねがいちゃんのSHOWROOM配信を観た時のことです。
 彼女が楽しく喋っている時に、何気なく「〇〇なんだよね、ママ?」と画面の向こうにいるお母さまに訪ねて、「うん」とお母様が返事をされて、時々トークの軌道修正を入れているのが印象的でしてね。
 僕は「オードリーのオールナイトニッポン」を中心にラジオをよく読むんですが、パーソナリティが一人の時に放送作家の人の何気ない笑いやコメントが聞こえた時と似ていて、なかなか面白い配信だな、と感じました。
 彼女の個性に寄り添いながらも、きちんと配信の方向を逸らさない、これは簡単なようで難しくて、番組名は書きませんがこの放送作家、パーソナリティよりも受けようとしてないか、と邪魔に感じる時もあります。
 それが無いんですよね。
 これは、トークだけではありません。
 深井ねがいちゃんの芸能活動に対するスタンスにも繋がっていると思います。

 2021年3月19日の彼女の配信の中で印象に残っている話があります。

「 私、お父さんとお母さんがね。
 『オッケー』って言わなかったらこっちで活動してないわけですよ。
 で、なんかSKE48を、あの、たとえばね、今とは言わないけど、『卒業した後に今、何したい?』ってお父さんと話し合った時に、私は演技がしたいって言ったんですよ。
 演技がしたいし、あの、『今は演技がしたい』って言ってて。
 普通さあ、あんまりSKE48でさ、正直言うと選抜になってないし、成功してないんだけど。あの、客観的に見たらね。ファンの人は知らんよ、分からん。私のファンの人は『成功してるよ』って言うんだけど、まあ、一般的に見たら成功してないって私言われてるんだけど。
 成功を芸能界で成功してなかったのに、また芸能界の演技の方に『私は辞めたら進みたい』って言ったら、オッケーしてくれる人ってあんま居ないんですよ。だけど、『勉強とかしなくていいから。なんか、夢を追ってくれてるだけでいいし、もし、次のところで、もう無理だっていう限界までやって、無理だったら、パパとママがいるから帰っておいで』って言われたんですよ。『それまで頑張ってくれたらいいし、あの、もうパパとママがいるからさ。帰ってくる場所あるじゃん』って言ってくれたんですよ。
 だから、そんな親って正直言うと、あんまり見ないんですよね。私のまあ、住んでたところだったら、『ちゃんとした大学に行って!』、『ちゃんとした高校の行って!』みたいな。勉強って感じだったんですけど。
 なんか、お父さんは『勉強別にしなくていいよ』っていう人だったんです。『勉強しなくていいよ』みたいな。『俺、勉強できないから、娘に勉強しろとは言えないし』みたいな。うん、なんか『夢追ってくれてるだけでいいし。お前、演技できるじゃん』とか。『お前、なんか芸能人やってる方が幸せそうだよ』って言われたんですよね。
『お前は芸能界で成功するとか成功しないとかさ。まあ、言えばこの人知ってる、たとえば小栗旬さん。出てきたら、みんな小栗旬知ってる!って言うじゃん。ちょっと呼び捨てにしたのね、ダメだけど。まあ言えばね、そんなじゃなくても芸能界って色んな層がいるから。それを成功したとか成功してないとかじゃなくて。そこで続けるかだから』って言われた時に、凄い泣きそうになったんですよ」

 ううむ、なんて素敵なご両親なんでしょう。
 ねがいちゃんが芸能界で夢を追いかける姿、それは「成功」という目標を追う、先ほど挙げた⑤のモデルの育て方ではなく、むしろ逆。続けることの大切さ、貴重さを教える姿勢が素晴らしいですね。
 ご両親の為にお小遣い制のねがいちゃんは少しでも良いものをとプレゼントを贈ります。自分のための消費ではなく家族が喜ぶ顔を見るために。

 SKE48に居る限り選抜というのは重要なことだと思います。
 しかし、選抜が全てではないし、違う夢の叶え方もあるのではと考えさせられました。
 この後、お母さまも病気をされていてしんどかったけれど、ねがいちゃんの卒業式などに来てくれたり、お父さまが二人の傍にいてくれたことも語られます。
 だから、「悪いことで家族を悲しませたくない」ということを語っていました。
 ううむ、言葉じゃなくて行動から学ばせてくれるのが素晴らしいです。
 
 更に、家族といえば、深井ねがいちゃんのファンの皆さんの呼称は「深井家」ですね。
 全員、血のつながりはなくても、ねがいちゃんのご両親のように、ねがいちゃんの幸せを願う気持ちは同じじゃないでしょうか。
 彼女は応援される大切さを知っています。
 同じ日の配信では「私はあの、SKE48に居る限りは絶対に、あのSKE48の看板を一応背負っているので。まあ、選抜でもなければ、あの後ろにいる『その他A』みたいな子なんですけど。自分の立ち位置をしっかりやっているので。自虐ネタというよりは、しっかり背負っているので。それでもSKEの一員だし舞台もあるので」とグレたり悪い事をしたりしないことを語っています。
 何故、深井ねがいちゃんを「深井家」の方々は応援するのか、それは一人一人の中に理由があると思います。
 ただ、ねがいちゃん推しでもない僕が書くのは生意気ですが、あえて書かせていただくと、夢の為に頑張る彼女の姿、ファンの方が喜ぶことは何かを考える姿勢、そういうひたむきな姿勢が魅力ではないかと僕は感じました。
 「深井家」の方からしたら、「その他A」なんかではなくて、大切な娘かもしれませんし、妹かも姉かもしれません。いや、ひょっとしたら、嫁かもしれません。でも、一つだけ言えるのは、家族という大切な共同体の一人なんだと思います。
 
 ドラマ「私立探偵 濱マイク」の最終回のラストシーンで、忘れられない台詞をSIONの「通報されるくらいに」をバックに語ります。

 「かつて俺は、依頼人は家族と思えと教えられた。家族の頼みなら、どんなことも投げうってできるはずだと」

 きっと「深井家」の関係もこの台詞に近いのではないか、と勝手に思っています。
 お互いを大切にしたいし、裏切りたくない。だから、頑張れる。
 今は休養中ですが、再び彼女が帰ってきた時、また全力で頑張る彼女の姿が見られることを楽しみにしています。
 芸能界に居続けてくれることのありがたさを改めてかみしめながら。
 

2021年9月18日土曜日

鎌田菜月が似合う街

 君と旅をするなら


 普段、「栄、覚えていてくれ」というブログを書いてますが、noteの方では私的なことや映画や本の感想を書いています。
 noteの中では、今、僕が住んでいる愛媛県宇和島市出身のSTU48の兵頭葵さんにも注目していましてね。彼女がTwitterなどで紹介した宇和島の名所に実際に行ってみて、そこの新しい魅力を探してみよう、という連載をしております(気づけばもう13回!)。

 ある日、ふと「鎌田菜月さんならどうだろう」と月に一度の連載用に鎌田さんが行ったところなんかを調べてみたんですが、いやあ、日本中にめちゃくちゃあるんですよ。
 ううむ、コロナ禍の今、そしてお金もひとよりも無い僕では直接行くことが出来ないので、この記事はボツかなあ、と考えておりました。
 なんとなく、前回の記事で総まとめ的なことも書きましたしね。

 それから数日して、自分自身が2022年にあるチャレンジをしようとあることを調べていました(『あること』だらけで申し訳ないです。多分、2022年の1月ぐらいにはお伝えできるかと思います)。
 そういえば、鎌田さんってまだソロ写真集やソロDVDって出してないな、と思いましてね。
 同じチームE内では、だーすーがソロ写真集、谷やさとかほがソロDVDを出しているんですが、鎌田さんはまだ書籍化やDVD化には恵まれていません。でも、彼女が色々な旅先で挙げる写真は、とても素敵なものが多いです。

 そこでですね。
 今回は、鎌田菜月さんが書籍やDVDを出すならどんなものが良いか、考えてみようという企画をやってみようと思います。
 ポイントは、どこでどんなコンセプトで、というところです。

・ 鎌田菜月1stフォトエッセイ企画

 名古屋・京都・台湾。
 3つの都市を舞台に鎌田菜月さんを撮っていきます。
 それぞれの都市やお店、物に対する鎌田さんのエッセイなんかも載せたいですね。
 何故、この3都市かというと、鎌田さんと風景の相性がとても良いと感じたからです。
 昔、ぱるるの写真集で5つの都市を回った写真集がありましたが、鎌田さんはぐっと3つに絞りました。


 まず、京都は、鎌田さんの歴史好きという側面は勿論ですが、一つのことにじっくりと向き合っていくという彼女の姿勢と歴史のある古都の風景というのがなかなか合っているのでは、と思いました。
 

※京都はこのあたりのツイートからのリンクが詳しいです。

 とりあえず、土方さんの為に、豊玉発句集のグッズ化はやめてあげてください…(新選組は『薄桜鬼』派)。
 話を戻すと、Instagramに挙げた京都の坂道の下のあたりで撮った写真が凄く良いんです。

 鎌田菜月はInstagramを利用しています:「kyoto \♡/ ・ 久しぶりにプライベートで京都へ行ってきました。 清水寺からスタートして、あとはひたすら歴史を楽しむ渋めの旅🙏💭 #kyoto #清水寺カフェ #京ばぁむ #sweets #matcha #coldday #memories」

 写真はプライベート鎌田さんですが、雨の夜とかにシチュエーションを変えるだけでぐっと雰囲気が変わりそうです。
 印象に残っている写真をもう一枚。


 鎌田菜月はInstagramを利用しています:「まだまだ朝は寒い🍃 寒すぎて予定してた服を着るの諦めました。 #gm #instamemories #京ばあむ #おたべ #こたべ #me #kyoto #cold #girls」
 

 ここは、実際に僕も行ったことがあるんですが、秋になると色彩が豊かで「鬼平犯科帳」のエンディングにも出てきますね。
 鎌田さんに似合いそうです。
 古い木造建築の色や神社の朱色、石畳の色なんかとも合う気がするんですよね。

 次に台湾なんですが、同じく写真を見て行くと鎌田さんと景色の相性が良いんですよね。
 奇しくも坂道が多いところですし、夜店の赤い提灯が印象的です。
 鎌田さんと一緒に旅をする感じになるのでは、と思います。

 台湾はおそらく、このリポートがめちゃくちゃ詳しいですし、写真も多いです。
 鎌田さん推しじゃない方も、この機会に是非読んで欲しいレポートです。

SKE48女子旅?鎌田菜月 in 台湾?presented by 美十|SKE48 Mobile

 

 そして、最後は名古屋。
 彼女のホームであるSKE48劇場や最近更新されている歴史関係の動画から思い入れのある史跡で撮るのも良いかも知れません。




 台湾も今回の写真集では何か歴史と関係があるところで撮っていくと、歴史という1本の線で3つの都市が結べます。
 そう、ひょっとすると、鎌田さんは「文脈のある街」が似合うのではないか、と最近は思っています。
 ただ、過ぎて行くだけでなく少し足を止めて考える。
 そんなコンセプトの写真、どうだろうか、と僕なんかは思いました。
 皆さんは、鎌田さんに似合う街、どんなところだと思いますか?
 また、どんなコンセプトの本屋DVDが似合いそうでしょう?
 
 推しがどこか自分の知らないところを旅する、何気ないことですが、実はその土地を知る偶然の出会いがそこにあると思います。

 次に彼女が発見するのはどこでしょう?

 

2021年9月12日日曜日

次の塁では、誰が待つ?

君が出会う度に

 

 アメリカのメジャーリーグのチーム、オークランド・アスレチックスの再生をテーマにした「マネーボール」という映画をご存じでしょうか?
 チームにお金がないことで、GMのビリー・ビーン(演じるのはブラッド・ピット)はお金をめちゃくちゃ持っているヤンキースなどの人気チームとの差を埋めるための手段を探すことになります。しかも、打率が高い選手や人気選手が続々と流出している状況。
 チームとして危機に直面したビリー・ビーンは、統計学から選手選びや戦略を考えようじゃないか、という「セイバーメトリクス」という統計学的理論を用いる男と出会います(暇な缶詰工場の夜警の方が考えた理論というから、学会だけでなく在野にも凄い人はいるんですよね)。
 さて、「セイバーメトリクス」には見た目や評判、キャリアなんかは関係なく、出塁率を中心に見て行くことで、選球眼がめちゃくちゃ良い人を選んでいきます。そうすることで、思わぬ才能たちをチームはスカウトしていくことになります。これは当時の野球界では思わぬパラダイムシフトになったようで、導入当初こそ負け続けましたが、そこから逆転劇を繰り広げて行きます。
 脚本は「ソーシャルネットワーク」等でお馴染みアーロン・キーソン、監督はベネット・ミラーです。

 ※予告はこちら!



 さて、この映画を観ながらふと、「うわあ、周りがスター選手だらけで、人気選手が抜けた中で再生していくのって、SKE48がこれから迎える状況じゃない?」と思いましてね。
 アイドル界だけで言えば、48時代から46時代に変わり、エンタメ市場でいえば、ここ数年で10代から20代を中心にVチューバ―人気が盛り上がりを見せています。
 ううむ、これからSKE48が再び再浮上を目指すか、小規模ながら幸せな停滞を目指すかは、書き出したら長くなるので、いつかnoteの方に書くとして、これからの人材に注目していきたいと思いましてね。
 その時に、「マネーボール」の中で登場した出塁率って何に当たるのか、ということなんですよね。
 内側で言えば握手券の売り上げかも知れません。外側で言えばメディアへの出演になるでしょうか。ホームランが、須田亜香里のような多くのメディアに出ることで「世間」への接続ではないか、と僕は考えています。ちゃんと固有名詞になっていくことではないかと。
 でも、今のSKE48を取り巻く状況は、なかなかホームランを打ちにくい状況です。
 そうなっていくと、堅実にヒットを打っていくしかありません。
 出塁率を上げて、ヒットを狙う人材…。
 皆さんは誰の名前が思い浮かんだでしょう?
 思い浮かべた名前の中にこの人の名前はあったでしょうか。
 
 大谷悠妃。

 なんで、彼女なのか。
 キャッチフレーズからの強引なこじつけじゃないのか?
 ふふふ、その通りですよ。
 でもね、このページを閉じる前に、少しだけゆうゆについて考えてみませんか?

 彼女の人となりについては、「天才」という言葉がよく登場します。
 なにせ、ゆうゆ自体が自分のことを「天才」と言ってますしね。
 で、その文脈で面白がるのは、大いに結構ですし、僕自身も「1たす1は2じゃないよ!」の古畑奈和ちゃんとの回は、本当に好きなんですが、一旦、そこは置いておきましょう。
 2018年8月7日に行われた彼女の生誕祭での手紙を読んでみましょう。

 ゆう14歳のお誕生日おめでとう。手紙書くって言ったら『お仕事行ってくるね』とか『何時に帰ってきます』くらいだから、何を書いたらいいか分からないけど、書いてみるね。

 ゆうちゃんへ。
 あらためまして、お誕生日おめでとう。去年、ゆうの誕生日には全く想像していなかった、大谷家だけのアイドルが本当のアイドルしてることが、今もまだ不思議です。

 去年の年末は、本当に大丈夫かなって何度も思ったよ。ドラフトの合宿、家を出る時から泣いちゃって、ママが『つらいなら行かなくてもいいんだよ』って言っても、途中で諦めることが大嫌いなゆうは、一人でちゃんと電車に乗って合宿参加していくこと、ママはいまでもふと思い出す時があります。よく頑張ったね。でも、その合宿がゆうを一回りも二回りも大きく成長させてくれて、本当に素敵な仲間にも出会わせてくれて、本当に貴重な経験をさせてもらったよね。今では本当に素敵な思い出だよ。

 いつの頃か、写真撮られることも嫌いなのか、苦手なのか、逃げ回っていたことをすっかり忘れてしまうほどに、今、何事も楽しんでいる姿を見るだけで、ママはとっても幸せです。

 ゆうは、まだまだいっぱい覚えることもあって、大変なこともあると思うけど、先輩やスタッフさん、そして、ファンの方を大切に、常に感謝の気持ちを持って過ごせるといいなと思っているよ。ママも皆様には感謝しかありません。そして、ママは全力でゆうのサポートも頑張るからね。これから過ごす14歳のゆうが、幸せで満ち溢れていますように。
ママより」

 ううむ、最初はやはり不安との戦いから始まったんですね。
 そして、出会った「本当に素敵な仲間」。
 僕はパッとドラフト3期生の仲間たちが思い浮かびました。
 中でも、平田詩奈さんと組んだ「ハニシス」は」印象的でした。
 少し、個人的な話をすると、平田詩奈さんがマラソンにチャレンジした記事を書いた時に、このイベントについて色々と調べていたんですが、ゆうゆがわざわざ応援に来てくれていたというエピソードが大好きでしてね。

 


 「番人」というワードセンスが素敵ですが、 同期の為に動けるところが本当に素晴らしいです。
 平田さんに対しては、「素を出せる場所」とも語っていますね(余談ですが、二人の『禁じられた二人』を公演で観たかったですね。『賛成カワイイ!』のダブルセンターとかも)。



 しかし、彼女の優しいお姉さんとは別れの日がやってきます。
 2021年3月26日に行われた平田詩奈生誕祭の手紙を読んでみましょう。

「しぃちゃんへ

 卒業おめでとう。

 しぃちゃんとは、一緒に色んなことをしたから、思い出がたくさんあります。
 ハニシスってコンビ名を付けてお仕事一緒にさせてもらったり、映画観たり、ただ話したり。その全部の思い出は笑顔になれることばかりで、つらいことや悲しいことは一切しぃちゃんから聞いたことがなかったです。

 けど2年前、しぃちゃんの生誕祭でしぃちゃんママからの手紙を聞いた時、家でも弱いところを出さないしぃちゃんがたまに小さなことで号泣してる時があると聞いて、その時の自分も今の自分も凄く力不足だったなって思います。


 いつも助けてもらってばっかでごめんね。そしてありがとう。

 

 これからは何かあった時、しぃちゃんみたいに話を聞ける人に頑張ってなるから、いつでも呼んでね。でも勿論ゆうは何も無くても呼びます。


 ゆうはゆうの同期がしぃちゃん、にしぴ、らぶりんで良かったって凄く思います。色々バラバラなのに一緒にいると落ち着いて心強かったです。


 2人が卒業して、ゆうとらぶりん二人になってもドラ3の妹枠は継続する気満々だよ(ハート)

 これは昨日にしぴにも伝えたんだけど、ゆうはしぃちゃんが大好きだから、しぃちゃんの家族も大好きです。ママからの手紙はゆうも隠れて泣いてました。


 本当にいつもありがとう。出会えて良かった。

 大好きだよ。

 ハニシスは永遠。

 同期もずーっとずっーと永遠だよ。


 平田家、西家、中野家の次女・SKE48チームS 大谷悠妃」


 「次女」というワードセンスがまたもや素敵ですね。
 大好きな平田さんと触れ合いながら「話を聞ける人」という目標を見つけて行きます。
 同期でもあり、一番近くで優しさを分けてくれるお姉さんでもあったのかもしれません(ラジオでは、ゆうゆの方が実はしっかりしているのでは、というところもありましたね)。

 さて、彼女が出会った「素敵な仲間」は平田さんだけではありません。

 たとえば、先輩。
 翌年の生誕祭(2019年7月29日)で北川綾巴からの手紙を読んでみましょう。


「ゆうゆへ


 15歳おめでとう。
 まだ15歳なの?
 若い!
 ビックリ!

 そんなことはさて置き、この1年はどうでしたか?

 チームSではたくさんのお姉さんに囲まれて、可愛がられて妹的な存在のゆうゆだけど、中身は変に大人で、ちょっと生意気で、自分のこと可愛いってわかってるなーって、そんなところも含め愛おしくてたまりません。

 何て言うのかな?
 ゆうには他の人とは何か違う魅力的なものを感じます。

 ゆうゆがチームS公演に出演し始めてすぐの頃、表情カチカチで笑顔もぎこちない姿を見て、『大丈夫かな?』って凄く心配でした。
 チームSの中に急にポンって入って、きっと近くに頼れる人だったり、心許せる人がいなくて一人で不安になることもあったよね。


 周りを見て下さい。
 ゆうのそばにはたくさんの先輩がいて、皆ゆうのことが可愛くて仕方なくて、いつだって話を聞くし、何でも相談に乗ります。だから頼ってね。

 最近ではニッコニコの笑顔でアイコンタクトをしてくれるゆうゆを見て、ほっと安心します。


 MCとかラジオもグングン成長して、『大谷のしゃべりはいいよ!』って言葉をよく耳にするようになり、なんだか誇らしい気持ちになります。

 でもね、どんな時でも今の状況に満足しちゃダメ。今はまだ目の前のことに精一杯で、周りを見る余裕がないと思うけど、全部にがっついて、学び、吸収して、大きくなるんだよ。

 ゆうはまだまだできるはず。その可愛いルックスをたくさんの人に振りまいてメロメロにさせちゃえ!ゆうゆならできるよね。

 きっと私が見てない間にグーンと成長するんだろうな。そんな姿が見れることを楽しみにしています。

 最後に。私に手紙を書かせてくださり、ありがとうございます。ゆうの成長をこれからも見守っていてあげてください。

 ゆうにとって笑顔いっぱいの1年になりますように。

 チームSに来てくれてありがとう。

 綾巴より」


 ううむ、チームSに昇格したばかりの頃のゆうゆの姿と優しく声をかけてくれた、綾巴の姿が目に浮かぶようですね。この年の生誕祭で、ゆうゆは目標を見つけることを語ります。目標をみつけることで手段はあとでついてくるとも。
 リーダーであり、優しい先輩であった綾巴は、ゆうゆに先輩のロールモデルとなっていったのではないかと思います。
 ゆうゆにとって大事な人は、この2か月後にSKEから卒業します。



 
 年齢の問題があって、全部のコンサートや公演に出れないこともありました。
 それでも、成長とともに彼女の出番は増えて行きます。
 彼女の出会った人の中で、上村亜柚香も重要な存在です。
 公演のユニットで「あゆうゆ」で披露する「ここで一発!」。
 須田亜香里、松村香織という3期生のコンビの「これまで」のドラマを連想させる歌詞を「これから」の二人が歌うというのは、とても冒険ですが、歌詞に二人が次第に追いついていくのではないか、と思います。
 ちなみに、この二人の関係性では、このツイートが非常に印象的です。



 長い視線で見た時にこの二人が、チームSのリーダーシップを担っていく日もやってくるのでは、と思います。
 同期や多くの先輩たちの優しさから学び成長していくゆうゆ。それは彼女の趣味である読書やドラマの鑑賞も関係してくるかも知れません。多くの良き出会いが、彼女を本物の天才にしていく。
 

 野球で出塁したバッターは守備の選手とすれ違いながら、前に進んでいきます。
 野球の塁は3つだけですが、アイドルの塁はもっと沢山あるのではないかと僕は考えます。
 時には、次のバッターのヒットが出ずに前に進めないこともあれば、思わぬアウトが続いてホームに帰れないこともあります。
 涙と不安の中、ホームを出発した彼女が、今、何塁にいるのか。
 そして、ホームに帰ってくる時、どう成長しているのか。
 今から楽しみです。 

※カミングフレーバーとしてのゆうゆについては、今回触れていないので、また、機会を見て書きたいと思います。

平田さんのマラソンについての記事はこちら!

栄、覚えていてくれ SKE48の曲と映像の魅力: 平田詩奈の走り方 (oboeteitekure.blogspot.com)

2021年9月11日土曜日

民藝と須田亜香里の美と「直」について

 日常の中にいてくれるからこそ

 皆さんは、哲学者であり思想家の柳宗悦が唱えた「民藝」という運動はご存じでしょうか?
 「民衆的工藝」の略語なんですが、びっくりするぐらい雑に説明すると、食器や器を美術館の中に閉じ込めるのだけではなく、「用いる」ことで生活の中に浸透していき、「民藝」になっていくのだと説いています。時には生活の中で使うことで、器が欠けることもあるかもしれません。しかし、古くなったり修繕されたりするほど、そのものの固有性を強くしていく。
 そして、時に「美」は見えにくくもなると「茶道を思う」の中で柳宗悦は書いています。
 「美」を見えにくくするものは大きく分けると3つです。
 ①「思想」(〇〇主義とかですね)、②「嗜好」(好き嫌いですね)、③「習慣」(惰性や先入観も含まれるかと思います)の3つで、この3つを遠ざけるには「じかに」見ることが重要である、と柳は唱えます。ここでいう「じかに」とは「直に」と書くべきではないか、と批評家の若松英輔は指摘しています。「直に」「観る」こと、つまり「直観」という言葉の違う意味があるのではないかとも。認識的経験と認知的経験のどちらも「直観」の中には含まれます。
 「知る」こと「識る」ことが交わることで、「知識」になる。

 こういうぶろぐを書いていると、ついついメンバーのイメージを頭の中で固定しまいそうになるんですが、ふと自分の推しを見る時の視点はどうなんだろう、と反省しました。
 それから、上記の「民藝」の本を何冊か読んでいるうちに、ふと思い浮かべたメンバーがいます。

 3期生の須田亜香里です。
 彼女は、テレビという私たちの日常の中に浸透しています。
 そして、キャリアも長いのですっかり僕たちの中での須田亜香里像が固まっている状態という人も多いのではないでしょうか?
 かくいう僕もかなりだーすー像については、自己啓発本や各種インタビューから固まっている状態ですが、本当にそうか、と思いましてね。
 たとえば、テレビのバラエティ番組やワイドショーのコメンテーターとして登場する彼女は非常に雄弁です。それは、言葉だけではなく身体を張ることもあり、その際に彼女の鍛えた身体性でアトラクションをクリアーする。その光景は、彼女の身体自体が言葉になっている気がします。 
 柳宗悦は「白樺」の編集後記の中で、1924年に建てた朝鮮民族博物館という日本だけでなく、韓国の民藝品博物館設立について触れた時に、他の民族を理解する時に言葉ではなく物を言わない美術から知っていくことが出来るのではないか、と書いています。芸術が国を差別を越えて、人間の争いを止めるためのトリガーになるではないか、と(『未知の友』という言葉が印象的でした)。
 「いや、理想論だろ」と言われればそれまでですが、美しいものは時に人を沈黙させじっくりとみせる力があると思います。芸術を通して遠くの他者を知るという意味では、僕個人の話で恐縮ですが世界文学を読んでいる時間や外国映画を観ている間の「沈黙」は、めまぐるしい時代の中でじっくりと考えさせられる時間だと思います。

 話を須田亜香里に戻すと、彼女が公演の中で自分の言葉以外の「歌詞」という言葉の中で表現する時の表情。
 写真集の中でキューバの美しい景色の中で、魅せる彼女の身体性。
 SKE48のMVの中で魅せるシリアスな表情(個人的にはだーすーの演技だけで魅せるもので一番好きな曲はこれ!)。



 彼女が日本だけでなく国境を越えて人気なのは、実はこういうところにもあるのではないか、と僕は感じています。

 アイドル生活の長い須田亜香里のブログの中で、変化についてこんなことも書いています。

 #須田亜香里 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)

 自分のことを見つけて、ずっと好きでいてくれる人へ。そして、かつて自分を好きだった人へのメッセージが非常に印象に残っていて、夢を語っていた頃の自分と自分の現在地について知って欲しいという思い。

 #須田亜香里 須田亜香里のソーユートコあるよね | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)

 そして、自分を好きでいてくれる人への感謝も語っています。

#須田亜香里 #アメブロ読者 #何年目 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)


 そして、須田亜香里の可能性を見つけてくれる人たちへの感謝も。

#須田亜香里 #2018年 #私を動かしたもの | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)

 今も須田亜香里は変わり続けていると思います。
 何故なら、変化を躊躇うことは後退につながると彼女自身も書いているからです。

 #須田亜香里 #アイドルなのに | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)

 個人的には、そろそろまた写真集や演技の仕事が来て、新しい須田亜香里像を発見できないかな、と願望しております。景色や誰か他の人の言葉と融合する彼女の身体や声が、今気になっています。


 そして、「直に」メンバーのパフォーマンスやコミュニケーションに触れて、新しい魅力を発見できる場が増えてほしいとコロナ禍の今、改めて思っています。