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2020年4月26日日曜日

誰かの耳②

ファクトネス


 2018年5月30日。
 AKB48 53rdシングル世界選抜総選挙の速報が発表されました。
 古畑奈和は5225票で、82位というスタートでした。
 前年が速報6957票でのスタートからの14位だったので、今年は大丈夫か?という不安が少しありました。
 
 6月6日夜。
 なんとも捨てアカウントっぽい名前で、あるツイートが拡散されます。
 それは、ディズニーデートを男性らしき人とする写真で、奈和ちゃんが発言した「携帯電話を奪ってでも」という発言を煽るような書き方でした。
 ここから、あっという間にネット上では噂が広がり、古畑奈和叩きが始まりました。
 画像の検証や行動の推測、実はこうだったんじゃないか、「お客さん」たちだけでなく、SKE48ファンの間でも波紋が広がりました。
 
 6月7日夜。
 写真に一緒に写っていた男性らしき人が、奈和ちゃんの友達の女性だったことが分かります。ツイートで撮られた写真と全く同じ服で、ディズニーリゾートを楽しむ二人の写真が、古畑奈和自身のアカウントでツイートされます。
 ここから、状況は一変、多くのファンが謝罪やお詫び投票をする光景がネット上で観られました。

 文章にすると僅か数行のことですが、この6月6日から6月7日までの約24時間の間の奈和ちゃんファンの方々の心の揺れ動きや罵詈雑言を浴びせられた奈和ちゃんの気持ちを考えると、とてもじゃないですが、短い時間のこととは思えません。

 2018年6月18日。
 45688票で、古畑奈和は15位にランクイン。
 順位は下がったものの昨年よりも5000票多い票数でした。
 更にスピーチで語った「お酒が大好き」という言葉が、お酒を呑むイベントや「乙女酒」、「えにし酒」に繋がっていったのだと思います。
 彼女の未来に繋がる重要な選抜入りだったと、2020年4月25日現在、強く思います。

 2018年8月2日。
 AKBグループ感謝祭が行われ、選抜メンバーはソロでそれぞれの曲を披露していきます。
※公式の動画はこちら!



 本間日陽さんが、「波乗りかき氷」でキラキラした魅力を披露した後、次は奈和ちゃんの出番です。
 会場の通路を制服姿の奈和ちゃんが出てきます。
 通路には、おそらく彼女のものであろう教科書が落とされています。
 それを拾いながら重い足取りで、ステージへ向かう彼女。
 ステージ上には教室のように机が配置され、「霧島、部活やめるってよ」のスクールカースト上位みたいな人々が楽しく話しています。奈和ちゃんが教室に入ると、全員は動きをぴたりと止め、奈和ちゃんの方を見ます。
 彼女が自分の机の方に歩いていくと、後ろから突き飛ばされ、「誰かの耳」が流れ始めます。
 机に座ればゴミ箱の中身を丸ごと上からかけられ、服もビリビリに破られていく奈和ちゃん。

 これまで公演などで「誰かの耳」を唄う際は、感情を爆発させるのは後半の大サビのところであることが多いんですが、奈和ちゃんソロでは、もう悲しみの感情が爆発してるんですよね。おびえながら、言葉を重ねていく彼女。ちなみに、この時のいじめをする人々役のふりつけが歌詞の世界を表現してて僕は結構好きです。
 やがて、身体を抑えられ、髪を切られそうになる奈和ちゃん。
 ところが、彼女はいじめっ子のはさみを奪って、自分の髪を切っていきます。
 あまりにも予想外の行動に、会場はどよめき、スクールカースト軍団は逃げていきます。
 自分で切った髪を持って、大サビを唄う奈和ちゃんの強い眼差し。
 やがて、髪を捨てて、これまでのことが馬鹿らしいというように笑う姿。
 確かに、初めてこの映像を観た時は、「いやあ、やっぱ奈和ちゃんは、台詞なしに曲だけで世界観を作れるのが凄いや。そして、こういう狂気を感じさせる表現も似合うな」と思ったんですが、この曲が披露されるまでに現実で起こったことを考えると、また違うものがあると思いましてね。

 実は「いじめ」という「誰かの耳」という曲の題材の一つを膨らませただけではなく、彼女がネットから受けたことをそのまま表現した、2重のレイヤーになっているのではないか、と僕は思いました。

 この日の彼女のブログを振り返ってみましょう。

 うーむ、この曲のソロでの披露は、あの時じゃないとダメだったんですね。
 「ネットで様々な物語ができまして」という表現が秀逸ですね。
 「王様の耳はロバの耳」、この真実はネットでの声でウイルスのように広がり、隠されていきます。
 悪意のある手が自分の髪を掴んだ時に、それを振り払い、自分の大切な髪をハサミで切ってしまう勇気。
 素直に生きるために、切り落とした髪は、ひょっとするとアイドルはこうあるべきという既成概念や居心地の悪い場所の暗喩のように、2020年の僕には見えます。

 この1年後、ミッドナイト公演で「誰のことを 一番愛してる?」でセンターを務めることになる彼女。平手さんが持つ狂気に、SKE48で張り合えるのは、タイプ的に珠理奈でもだーすーでもなく、奈和ちゃんだと僕は思っています(卒業メンバーありなら、玲奈ひょんやゆななも候補に上がるのでは、と思っています)。

 2018年の8月のこのコンサートで、これまでの何かを切り捨て、解放された彼女が、ここから、素直に自分の好きなものを追いかけていくことになります。

 あの6月にあった喧噪と解放感、そして、8月の爆発。
 古畑奈和の「誰かの耳」はずっと忘れられない1曲です。


 
※奈和ちゃんがソロをしたミッドナイト公演の「誰のことを 一番愛してる?」についての記事はこちら!
https://oboeteitekure.blogspot.com/2019/12/blog-post_24.html

2018年12月3日月曜日

誰かの耳①

顔も名前も隠しながら、唾を吐いて楽しいか?


 インターネットをしていると、見たくもないコメントが出てくることがあるんですね。
 某検索サイトや某通販サイト某掲示板とかね。
 しかも、恐ろしいことに「よく知らないけど」みたいなコメント付きで人の悪口を書きまくっているわけです。

 こういう行為に対して、誰かがやらかすのを待っているというか、自分たちは「まともな側」にいるのを確認して優越感に浸るかのような虚しさを感じるわけです(個人の見解です)。もっと怖いのは、何の根拠もないのに、悪意で「こうに違いない、だから駄目」みたいなことをガンガン書いて行く人もいるわけです。

 実際問題、今年の夏は「松井珠理奈ってどうなの?」とかなり悪意のある感じで多くの人に聞かれましたし、中では「児玉遥の時より盛り上がらなかったね」とか、心無いことをいう人もいるんですね。で、腹が立って、なんでそういうことを言うのか聞くと、「何でも良いから盛り上がりたい。人の失敗は見てて面白いから」という、法的に許されるなら、坐骨神経にブレーキ液を塗るという映画「デスウイッシュ」で学んだ一番痛い拷問を「一生残る痛みを味わわせてやる」と喰らわせてやるところなんですが。小市民の僕は、まあ、相手の連絡先をブロックして連絡が取れないようにするぐらいなんですがね。身近にこういう人がいると、がっかりするわけです。

 顔を隠して悪意を拡散していく人達に対して、秋元康が出したのがNMB48の「ワロタピーポー」なんですね。まあ、当時、お隣さんも須藤梨々花のことで大分揺れていましたからね。まあ、とてもポップで皮肉が効いてて好きなんですが。
 この「ワロタピーポ」と比べて、さらにエッジの利いた楽曲が今回紹介する「誰かの耳」なんですね。
 
 まあ、まずは公式の映像を見てみましょう。
誰かの耳


 雨が始まる時のようなイントロが印象的です。
 誰かが一言つぶやいて、それが一気に広がっていくようでした。

 歌詞がもうエッジが効きすぎていて、挙げていったら切りがないんですが、タイトルにも使わせていただいたところが全てのような気がします。  

顔も名前も隠しながら唾を吐いて楽しいか

 ワロタピーポの場合「人の群れに紛れ 石を投げろ」という「誰かの耳」と比べると、少し柔らかい感じになっております。
 面と向かっては言えないけれど、顔を隠して言う。しかも「火のないところに煙を立ててる」わけですから厄介です。

 MVに関してですが、赤い手袋をした右手が自分の意志とは関係なく動きだす、という内容なんですね。メンバーの表情もアンニュイな感じです。特に1番の「ロバの耳だ」のところの古畑奈和ちゃんの表情の透明感が素晴らしいです。


 この赤い右手の動き。
 最初はメンバーみんな目を瞑っていて、手だけが動きます。やがて、手の動きに促されるように目をみんな開けていくんですが、この描写がちょっと不気味なんですね。しかも公園とかカフェとか、銭湯とか日常的な空間でそれが起こっているわけです。自分の意志というよりは別の何かに寄生されているかのような不気味さがあります。
 なんとなく、「ヴェノム」とか「散歩する侵略者」に通じる不気味さを感じましたよ。で、ダンスシーンはゆななの真顔がカッコいい。特に2番のサビ終わりから大サビまでは、かっこよさ溢れる疾走が見られのでお勧めです。


 最後は、静かにおさまっていく感じで終わるんですが、走っているゆななの笑顔が何を意味しているのかは、ちょっと読み取りにくい感じなんですね。笑っているのか、笑わされているのか。誰かこのシーンの解釈を聞かせて。


 色々描きましたが、2018年のSKE発表曲ではナンバー1曲です(まだかおたんのソロ曲聞いてないけど)。もう、ネットに対するモヤモヤしたこと全部書いてくれてる。今年のリクエストアワーのひな壇では、メンバーが踊りを真似してましたね。確かにあれは、真似したくなるダンス
 ぜひ来年もこのタイプの曲が1曲ぐらい入っていたら嬉しいなあ、と思います。