人気の投稿

ラベル #松井珠理奈 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル #松井珠理奈 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2022年8月21日日曜日

優しさの上手な使い方について

 忘れられない1日

 ドキュメンタリーを観るのが好きです。
 Amazonプライムやネットフリックスで上質なドキュメンタリー番組やドキュメンタリー映画を観るのが至福の時間です。最近は、映画「ゴッドファーザー」が出来るまでの実話を元にした「ジ・オファー」というUーNEXTのドラマが抜群に面白かったです。
 さて、ドキュメンタリーを観ていると、あの日のあの選択が運命を変えたり、自分に自信をくれたり、ということがあります。それは、自分の選択だけではなく、誰かに選んでもらったこともあります。

 SKE48の中にも特別な1日というのがあると思います。
 この記事の一つ前に「もう一度SKE48の話をしよう」という新連載を始めましたが、その記事を書きながら、これからのSKE48を考える上で重要な1日っていつだろう、と考えました。色々とあると思うんですが、松井珠理奈卒業公演の1日について今回は考えてみたいと思います。

 この日については、当日に1度感想を書いていますが、そこから1年以上経った2022年8月現在視点からの記事にしたいと思います。

 この卒業公演では、珠理奈のお母さまからの手紙が読まれました。


「珠理奈へ

 卒業おめでとう。

 そして、13年間お疲れ様です。

 珠理奈がSKE48に入ったのが11歳。あれから13年も経つなんて。

 今でも覚えています。SKE48が10月にデビューする前、一人だけAKB48の大声ダイヤモンドの撮影に行かなくてはいけなくなり、まだ小学生だったので、その撮影にお母さんもついていきました。

 一人だけ遅れてレッスン。全て覚え、すぐ本番撮影。あの時は本当に出来るのか心配で仕方なかったけど、本番になり、その現場で見ていて、涙が出てきたのを思い出します。

 学生生活がまともに送れなかったこと。総選挙などもあり色々なプレッシャーが珠理奈を押し潰そうとして大変なこともたくさんありました。

 そんな珠理奈をずっと見てきて、今でもふと思うことがあります。

 もし芸能界、SKE48に入らなかったらこんなつらい、大変なことにあうこともなく、普通の学生生活を楽しく過ごせたのではないか。『あの時、止めていれば』と思うことがあります。

 ですが、この世界に入ることは珠理奈が自分で『どうしてもなりたい』と言って、自分で勝ち取った世界。

 つらいこと、大変なことばかりではない。素敵に輝いていることもたくさんありました。こうして素敵な卒業コンサート、公演を迎えられたこと。

 本当に13年間お疲れ様でした。

 珠理奈の一番のファン、母より」

 乃木坂46のドキュメンタリー「悲しみの忘れ方」は、メンバーの母親からの手紙が印象的でした。生駒ちゃんのお母さんが、自分の娘と同じぐらいの学生たちの姿を見て、「自分の娘にも別の人生があったのでは」と考えるところが印象的でした。

 珠理奈のお母さまからの手紙を読んでいると、母親の立場からすると、心配になることがSKE48にいる間に沢山あったと思います。「色々なプレッシャーが珠理奈を押し潰そうとしたこと」の部分が特に印象的で、彼女に与えられた試練とそれでも「勝ち取りたい」という選択を取った娘を応援するしかない、という葛藤も感じます。
 アイドルをやり遂げた娘への優しいメッセージだと思います。

 手紙を受けて、珠理奈も卒業のスピーチをします。

 「これも卒業コンサートの時と同じで、何喋ろうとかあんまり考えてなかったんですけど。

 でもね、こういう形にはね、今なってしまってますけれども、こうやって卒業公演開催することがね、無事にできて。私もまさか卒業公演前に40度以上の熱が上がるとは思わず、それでね、トーク会をちょっとね、それも凄く本当に申し訳ない気持ちでいっぱいなんですけど、スタッフさんとお話してしっかりそれはね。振替してもらえるようにお話してるので、今日の公演の感想だったり、コンサートの感想だったり、皆で一緒に現地でトーク出来たらいいなとそこは思っております。

 現地でトーク会つながりでいくと、けっこう最近その卒業発表してから、やった後に、他の推しメンのファンの方が遊びに来てくれることが凄く多いんですけど、『実は珠理奈推しじゃないんだけど』って、『でもSKE48を好きになったきっかけは珠理奈なんだよね』って言ってくれる人が凄く多くて、あっ、自分って何かのそういうきっかけとか、人の、何だろうな、人生を変えるじゃないけど、何かそういうきっかけにね、1つになれたんだなってことが、『あっ、もうSKEに入って良かったな』って本当に思えることだなって思いました。

 でも、こうやってちゃんと他の可愛い子がいても目移りせず、ずっと卒業公演まで珠理奈のこと応援してくれる皆さんもたくさんいるし、今ここに今日来れない方もたくさんいるし、今ここに今日これない方もたくさんいるっていうのも凄くわかってるし、本当にSKEはっていうか、もう松井珠理奈はファンの方が支えてくれたから、うん、ここまでこれたんだなっていうのは凄く感じます。本当にありがとうございます。

 外は大雨なのかな?ね、名古屋は凄く大雨ということで、名古屋の空も多分きっと泣いてるんじゃないかなと。なんか全然うまいこと言えてない(笑)。全然うまいこと言えてないですけれども。何かね、あのSKEってほんと大事な日に雨が降ったりするんですよね。

 なんか、デビューかなんかの時に、なんか外で初めてやるイベントの時も雨だったり、なんかSKEは雨っていうのが凄く、なんか多くて。

 だから、自分の晴れ舞台もこうやって雨が降ってるっていうことも何ら嫌な気もせず、『あっ、今日雨だけど、SKEって雨だもんな。最後、雨でいいな。最後の雨だな』みたいな、ちょっとなんか、それもそれで皆の中にね、残る思い出、皆は凄く大変だと思う。やっぱりここまで来てくれたのは凄くありがたいなと思うし、大変だろうなと思うけど、それもいい思い出として皆胸にしまっていただいて、今日皆がね、見せてくれましたから。

 私は最初から出れなかったですけれども、皆が今日しっかりSKEこれから未来に向かって進んでいくぞっていうのを見せてくれたと思いますし、今日ここにいないメンバーも皆同じ気持ちで今いると思います。

 なので、これからも変わらずSKE48への応援、そして松井珠理奈のことも気にしていただけたら嬉しいなと思います。本当に今日はありがとうございました。」

 自分自身が既にボロボロの状態なのに、彼女のスピーチからは、この公演を良いものにしよう、後輩やファンの方々にこれから先の未来が楽しみなものになるように、という気持ちが伝わってきます。

 GLAYの曲で「Friend of mine」の歌詞で、「誰かの痛みを優しさの上手な使い方で取り除いている君を見ていたよ」という部分があるんですが、僕は彼女のスピーチを聴きながら松井珠理奈という人の優しさの上手な使い方を感じました。

 では、彼女の卒業公演から後輩たちは、どんなことを考えたのでしょう?
 まずは、アルパカさんこと、荒井優希さんのアメブロを読んでみましょう。

 荒井優希 ⚠️長すぎてもはや閲覧注意 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)


 「近くに生意気なやつがいた方が良い」という荒井さんならではの優しさの使い方が素敵ですね。きっと勇気もいったと思うんですが、それでも行動に移せる彼女も素晴らしいです。「最後までSKE48ことを考えてくれて」、「かっこいい背中」は、珠理奈の意思がちゃんと後輩たちに伝わっているなあ、と感じます。


 続いて、平野百菜さんもアメブロです。

平野百菜♪珠理奈さん | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)

 珠理奈の後輩思いな面が伝わってきます。

 「心にflower」で選抜入りを見事に果たしたももたんですが、珠理奈の先見の明を感じます。果たして二人きりの時にどんなアドバイスを受けたのかも気になりますね。

 

 次は井田玲音名さんのアメブロです。

《井田玲音名》 卒業 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)

 れお様の珠理奈への愛が伝わってきますね。

 水着グラビアのプロデュースという、SKE48のことを考えている珠理奈の思いが形になった企画ですね。遠くに思っていたけれど、話してみるとグループ愛が伝わってくるというのは、これまでのメンバーのアメブロにも通じるところがあるかも知れません。

 それでは、実際にこの公演に出演していたメンバーたちは、どう感じていたのでしょう?

 まずは、みよまること野村美代さんのアメブロから。

野村実代です❤️ | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)

 こちらでも珠理奈のプロデュース心が騒いでますね。自分だけでなく後輩のことを思う気持ちが伝わってきます。そして、自分が「赤いピンヒールとプロフェッサー」を踊るにふさわしい人かという、みよまるの葛藤。しかも、ファンの方々は珠理奈の赤ピンを望んでいるかも知れない。そんなみよまるの心を察してアドバイスをしてくれる珠理奈。このオリメンに直接見てもらいながら、曲を担当できるというのは普通のコンサートのシャッフルとはまた違った良さがあると思います。
 「SKE48を守りたい」という彼女の願いは、今年のチームS新公演でのダブルセンターで見事に形になったのではないかと思います。

 同じく出演した江籠裕奈さんのアメブロも読んでみましょう。

 江籠裕奈。真 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)

 歌い方のプロデュースもしてるんですね。これは自分が歌詞を書いたからこそできることですよね。どんな感情でどんな風に歌えば良いのかを伝えられるのが良いですね。
 ラブ・クレッシェンドというユニットに関しては、リリース時に賛否両論があったかも知れません。それでも選ばれた彼女たちは、その瞬間瞬間を全力で進んでいきます。
 もう江籠ちゃんもベテランメンバーの一人です。
 これから彼女が、「チャンスときっかけ」を自分やグループの後輩たちに与えてくれるのではないか、と思います。

 

 ここまでメンバーたちのアメブロを読んで見えてきたことは、彼女のグループへの思いと、後輩たちへの思いです。彼女をよく知っている方ならご存じだと思いますが、珠理奈自身はめちゃくちゃ体が丈夫というタイプではありません。繊細な性格ですし、時として誤解もされ、きっと彼女自身も大変なのに自分のことを後にして仲間のことを考えられる精神は本当に素晴らしいです。 

 彼女がこのグループを去っていく時に残して行った「オレンジのバス」。
 この公演の最後に歌われたこの曲は、その後、パブリックな場では歌われていません。でも、周年公演など大事なタイミングで歌われるといいな、と思います。勿論、リブランディングしていく上で、珠理奈色を残し過ぎてもいけないというのも分かります。でも、若手のメンバーに曲という形で間接的にでもいいので、珠理奈の思いが伝わっていくと良いなとこの記事を書きながら思いました。

 時代が新しくなっても、変わらない意思を大事にしてくれたらいいな、と思います。

 効率とか儲けも大事ですけど、時代遅れと笑われても人を大切にする珠理奈の思いは、ずっとこのグループに残って欲しいと思います。


※公演当日に書いた記事はこちら!

 珠理奈が歌った「タイムマシンなんていらない」が中心です。

栄、覚えていてくれ SKE48の曲と映像の魅力: 2021年4月29日 松井珠理奈卒業公演の感想 (oboeteitekure.blogspot.com) 


2021年11月30日火曜日

誰かのための言葉たち

 君を知れば見えて来るもの


 近頃、批評家の小林秀雄の著作で読んでいないものをどんどん読んでいます。なかでも数学者の岡潔と対談した「人間の建設」がなかなか面白くて、様々なことを見つめる時のヒントがあります。
 その対談の中で小林は知り合いの骨董屋の親父のエピソードを語ります。骨董屋の親父が李朝のいい徳利を持っていて、小林は何度もこの徳利をねだりますが、なかなかもらえません。やがて、小林は親父と知り合って28年目に徳利をポケットに入れて持って帰ってしまいます。そして、「お前が危篤になったら電報をよこせ」と言うんですね。すっごいエピソードですが、これには続きがあって、親父は結局小林に電報を送らずに死んでしまいます。そして、彼の息子が親父が書き続けていた俳句集があったことを小林に明かします。その句は詞書きとして「小林秀雄に」とあり、「毒舌を逆らわず聞く老の春」、「友来る嬉しからずや春の杯」という上記のエピソードを連想させられる句もあります。
 小林は俳句としては駄句だが、親父の人間性を知っている自分にはとても面白い、と語ります。
 そして、松尾芭蕉の句が名句として残っているが、もし、松尾芭蕉の人間性を知っていたら、生きている時に付き合っていたら、もっと名句として味わえていたのでは、と語ります(だから、芭蕉の弟子たちの)。芭蕉と付き合った人達だけにわかる味わいがあるのではないかと。

 僕はここまで読んで、ふと松井珠理奈のことを思い浮かべました。
 彼女はアイドルとして、48グループの最前線を体験し、プレイヤーとして活躍しながら、徐々に作詞に目覚めていきます。
 そこには、小学生の頃から芸能の世界に身を置き、プロデュースされる側だった彼女が、徐々に、誰かの言葉ではなく自分の言葉で伝えたい、という一人の人間としての成長を僕は感じます。
 彼女が書く歌詞(特にソロアルバムの曲)は暗に示すというよりは、直接的な表現が多いです。悪く書くと余白が少ないと感じる方もいるかもしれません。それを浅いと読みとるのは簡単ですが、本当にそうでしょうか?
 松井珠理奈という人を含めて歌詞を読み取っていくと、小林秀雄の言葉を借りれば「面白さ」が生じてきます。
 では、具体的にどんな曲が挙げられるでしょう?
 

 まずは、彼女の卒業曲である、「Memories~いつの日か会える日まで~」です。


 

 この曲は、卒業曲という対象を連想させられやすい曲ということもありますが、彼女の歩みを連想させられる歌詞がたくさん登場します。
 「あの階段」は、「大声ダイヤモンド」のロケ地やマジすか学園の階段を連想させられますし、「オレンジ色をしたあたたかさ」は、SKE48カラーを連想させられますね。
 自分の卒業曲を自分で書いたというのは、48グループでも初ではないでしょうか?
 彼女のドラマを知っていればこそ、この曲の味わいは変わってくると思います。自分のアイドル人生を終える曲の言葉たちを誰かの言葉ではなく、自分の言葉で彩る。それは、彼女ならではの挑戦だと思います。

 次に挙げたいのが、Black Pearlに書いた「Change Your World」です。
  

 

 まるで後輩達に向けて呼びかけるようなサビの歌詞が印象的です。
 自分がこれまで居た芸能界やSKE48で生き残る厳しさを語りつつも、それを乗り越える行動力を語るこの歌詞は、松井珠理奈を知っているからこその説得力があるのでは、と思います。これまで、様々な困難を乗り越えてきた、だからこその説得力。勿論、この歌詞を書いている自分に言い聞かせているのでは、という読み取り方も出来ると思いますが、卒業シングルだったことを考えると、後輩へのメッセージを込めたという解釈の方がしっくり来るのでは、と思っています。

 卒業と関連した曲が続きますが、SKE48に最後に残した「オレンジのバス」も松井珠理奈を知っていれば味わいが変ってきます。
※動画の2分20秒頃に流れています。 

 この曲は「オレンジのバス」という「SKE48」に居た日々のことを書いていると思います。出だしのバスに乗ってから「もう何年経つのかな」という部分からも、ただバスに乗っているというではない、ということが分かります。
 彼女が描いたSKE48でのアイドル活動やグループ像が見えてきます。
 中でも松井珠理奈を意識させられる歌詞が「心無い人に傷けられたら」のところが凄く印象的で、思えば彼女ほど「心無い人に傷つけられ」てきたメンバーもいないのでは、と思います。
 少し話がそれますが、先日ネットフリックスでテニスの大阪なおみ選手のドキュメンタリーをまとめて観ました。その中で、全米を制覇して一躍スターになった彼女は、「勝つのが当たり前」という感じになり、負けた時には、インタビューでわざわざ「誰に負けたのか教えて?」というような嫌がらせも受けます。結果、彼女はどんどん眠れなくなり、ストレスと戦いながら再生していきます(他にも理解者の死や自分よりも若い才能の台頭など、試練だらけです)。
 この映像を観た時に2018年総選挙の松井珠理奈を思い出しました。あの時の48グループには、もう指原莉乃も渡辺麻友もいませんでした。おそらく宮脇咲良との一騎打ち。そして、過去の順位を比較した時に多くのファンから「勝つのが当たり前」と思われていたのではないでしょうか?
 それでも1位を勝ち取った彼女を待っていたのは、残酷なぐらい大きくなった批判の声でした。これに関しては、以前にも書きましたが、価値観と育ちの違いだったのではないかと僕は考えています。
 AKB48との差別化の為に全力のダンスに特化し、一時期は完全にカウンターとして機能していたグループと、アイドルが持つ楽しさや自由さに特化していったグループ。大きな48グループという幹から分かれて行った二つの枝ですが、気付けば遠く離れてしまったのかも知れません。そこから休養を経て復帰した彼女は、もう総選挙で戦わなくてよくなったというところもあるかも知れませんが、優しさや柔らかさを感じる場面が増えたように感じます。
 今でも「心無い人たち」はいます。なんならこの記事を書く為に色々と調べている時にも、わざわざ珠理奈を悪者にしようと一生懸命な動画があったので、悪質なものとして報告しておきました(恐ろしいぐらい創作されたものでした)。
 総選挙という闘いが終わっても、世間やアンチとの闘いは今も続いているのかも知れません。だからこそ、「オレンジのバス」の中に出てくる「味方」という言葉が響いてきます。
 そして、このSKE48についた「オレンジ」という色に対して沢山の色を「自由につければいい」と語り、この曲は感謝と共に終わります。
 この辺りは、SKE48のセンターとして自分が作ってきた価値観に囚われずに新しい価値観を生み出して欲しいというメッセージのようにも読めます。いずれにせよ、メッセージソングとしての要素が強いのではと僕は考えています。

 さて、先にシングルのカップリング曲を挙げましたが、ソロアルバムである「Privacy」に関しては、実は松井珠理奈という人物を外しても成立するような歌詞が多いです。勿論「あの日交わした約束」や「KMTダンス」なんかは、松井珠理奈を知っていると、より味わい深くなるんでしょうが、松井珠理奈という固有名詞を外して20代の女性の物語としたとしても、十分に成立するような気がします。
 どちらかというと、誰かに向けて創った歌詞の方が、彼女の要素が強くなるし、説得力が増すのは何故でしょう?
 それは彼女の誠実な優しさから来るのでは、と歌詞を読んでいると思います。誰かの背中を押したい、自分と同じ試練に立ち向かう人たちを応援したい。そんな気が僕はしています。
 もうアイドル松井珠理奈はいませんが、彼女が書いた歌詞の中には生きています。
 彼女の次回作が公に発表されるのがいつか分かりませんが、彼女の面白さをじっくりと味わうために、誰かのための曲をまた書いてほしいなと僕は期待しています。

 時が流れて松井珠理奈を知らない世代の子たちが、「オレンジのバス」をどんな気持ちで歌うのか、どんな風に心に響くのか、ずっと先のことですが、どうか未来の世代の支えにもなるといいなと思っています。

2021年5月4日火曜日

証言 松井珠理奈

誰かの嘘と真実

 
 映画が好きなので、たまには映画の話をさせてください。
 黒澤明監督の「羅生門」を皆さんはご覧になったことがあるでしょうか?
 もとは芥川龍之介の「藪の中」が原作になっています(原作には、映画に出てくる木こりは出てきませんが)。
 ある殺人事件に対して、3人の証人がそれぞれが食い違った証言をして、事件は行き詰ります。映画の終盤に事件を目撃していた木こりが、事件の全部を目撃していて3人ともがそれぞれ嘘をついていたことが明らかになっていきます。
 映画のストーリーから浮かび上がってくる人間のエゴだったり、それでも人間を信じたいという思いだったり、様々な心情が描かれていて、「羅生門」は第12回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞。第24回アカデミー賞で名誉賞を受賞します。
 この作品のように、証人たちが食い違う証言をして、矛盾が生じることを「羅生門効果」という名で心理学や犯罪学の世界でも使われるようになったそうです。
 映画やミステリーの場合でもこの効果は今でも「羅生門スタイル」で使われています。印象的な作品だと「トーニャ 史上最悪のスキャンダル」とかですかね。
 
 
 当事者がそもそも語らず、証人たちに先入観があった時には「羅生門効果」が生じやすくなります。
 松井珠理奈に関してもそうです。
 
 松井珠理奈は、SKE48を4月末に卒業しました。
 当初彼女はSNSの更新や文章に関して、そこまで頻繁に更新したり多くを語るメンバーではありませんでした。これは、年齢だったり学業だったりのバランスもあったと思います。また、休養だったり外仕事が多い関係で、外から見ている人だけでなく、一部のSKE48のファンからも「珠理奈は孤立しているのでは?」とか「自分のことばかり考えて出しゃばっている、早くセンターを変えろ」というような批判もありました(Yahooニュースのコメント欄だけでなくまとめサイトのコメント欄でもこの手の批判は形を変えて続けられていました)。
 
 showroomという喋り中心の場を手に入れたことで、彼女の発信は加速していき、握手会という1対1の場だけではないオープンの場で、珠理奈の考えやグループに関する想いなどを思う存分知ることが出来るようになりました。
 それでも我々ファンが知る珠理奈の姿は一面に過ぎません。
 今回は信用できる証言者、SKE48のメンバーたちの証言を借りて、今、自分たちが思い描いている珠理奈像の確認や新しい魅力を発見できないか探してみたいと思います。
 珠理奈と過ごした時間や距離によってメンバーによっても見え方が違うと思いますが、それぞれ見えて来るものがあるかと思います。

 まずは、ファンだったメンバーから見た珠理奈です。


 もう、筋金入りの珠理奈ファンのどんちゃんだからこそ、言葉に出来ないところもあるんでしょうが、「裏表のなさ」を挙げています。ファンだった頃のどんちゃんが見ても、メンバーになったどんちゃんが見ても変わらない姿。よく「嫌いになってない?」とどんちゃんに聞くそうですが、ファンの思いを裏切らない珠理奈の真っすぐさを感じます。
 次は松井玲奈ひょんの大ファンの倉島杏実先輩のブログです。
  

 ファンとして見ていた頃の珠理奈と自分を比べて、当時の珠理奈が務めていたポジションの凄さを実感しています。だからこそ、同世代のメンバーと比べて大人っぽくならずるを得なかったのかもな、と深読みしてしまいます。
 そして、その最前線で様々な場所で戦ってきた経験が、「オーラ」になっているのかな、とも思います。川嶋美晴さんもブログでこの辺りのことは触れていますね。

 特にファン目線から見た「頭の回転の早さ」のところは、本当にイベントなどの記者会見でダジャレを求められる度に、即答しているところが印象に残っています。しかし、彼女の凄さは頭の回転だけではありません。
 荒井優希のブログを読んでみましょう。


 そう、記憶力の凄さも珠理奈の凄さですよね。
 記憶力が凄いからこそ、昔のAKB48の曲も大事に覚えているし、オリジナルの振り付けも覚えている。
 さらに振りつけ覚えの早さも凄いんですよね。
 井田玲音名のブログを読んでみましょう。


 ううむ、10分で振り付けを覚えてしまうところが凄いですね。
 そういえば、松井玲奈が乃木坂46と兼任している時に、覚えの早さに乃木坂46のメンバーたちが驚いたというエピソードがあったそうですが、どんどん覚えなければいけない曲がやってくるという時代背景もあったんでしょうね。
 さきぽんも同内容の指摘をしています。

 ただ、この辺りの性格面やスキル面だけではなく、彼女のSKE48への愛は非常に強いです。立ち上げメンバーである1期生だからというものもあるかもしれませんが、こちらが思っているよりも広い視線でSKE48を見ているのでは、と思わされることがあります。
 僕がそう感じたのは、6期生ZEEPライブで披露した「神々の領域」についてです。
 「神々の領域」は、1期生だけの特別な曲。
 それを6期生がやる。
 かつての僕のような心の狭いファンでしたら、「へえ、6期生はんたちが、『神々の領域』?神7とかに入ったメンバーはんでもいらっしゃるんでっか?いっぺんおうてみたいわあ。誰やろ、神って?」と急に京都風の嫌味をブーブー言いたくなるところですが、珠理奈は違います。

 もうね、この度量の広さ。
 珠理奈卒業コンサート昼の部で、1期生の「強き者よ」が披露された後に、「うわあ、こんな凄い空気の後、誰が場を作り直すの?」と心配していた時に、6期生たちがパフォーマンスで時間を「今」に戻してみせたのは流石です。
 
 そして、僕らの知らないところでメンバーたちを支えていきます。
 まずは、おしりんのブログ。

 もうね、こういうエピソードを聞くと泣いてしまいそうになるんですよ。
 ステージでは前に立つことが多いのに、ちゃんと後ろを支えてくれてる一人一人のメンバーのことを見てくれている。

 同じく6期生の熊ちゃんのためにも動いてくれる。

 朝方までマンツーマンで練習に付き合ってくれていたとは!
 先ほど、覚えの早さやパフォーマンスについて凄さを挙げていましたが、その裏にある「影の努力」を熊ちゃんはちゃんと感じ取っていたんですね。なんか、珠理奈の6期生や熊ちゃんに対する信頼感の裏付けを図らずも見えてきた気がしました。


 そして、センター候補の一人であるみよまるの最初の相談できる人になる。

 彼女の姿が後輩たちのロールモデルになっていく。
 リハーサルでも全力ということは、多くのメンバーがブログで語っていますが、この姿勢を素晴らしいと思うか無駄だと思うか。2018年6月18日、あそこでイズムの違いから齟齬が生まれたのではないかと僕は考えています。
 
 
 話を戻しましょう。メンバーのアイドル活動の要所要所で、ちゃんと声もかけてくれます。
 よこにゃんのブログ。
 
 勿論、励ましたり喜んだりするばかりではなく、時々、仲間に弱音を吐いたりしてくれます。

 ほのぼのしますが、るーちゃんのお母さんにもなってもいます。

 あまりにも、色々なブログを読んで行くことで、皆さん忘れているかも知れませんが、アンチの「珠理奈が孤立してる」とか「自分のことしか考えてない」という言葉とか、馬鹿らしくなりませんか?
 「SKE48に寄生していこうとしている」みたいなことを言う人もいますが、「いや、SKE48が好きなんだよ、言動を見てて気づかないのか?」と問いかけたくなります。人間ってつくづく自分の信じたい物語しか信じないんでしょうね。
 
 最後に、珠理奈は後輩たちにバトンを託します。
 はっきりと明記しているメンバーもいれば、秘めているメンバーもいます。



 今回は、珠理奈のブログや発言を一切引用せずに珠理奈像を立ち上がらせていくということが表のテーマで、裏テーマは何故6期生はこんなに珠理奈に信用されているのかが、あったんですが、ひょっとすると僕が見えてなかった重要な時間を共有していたのかも知れません。

 彼女はもうSKE48には居ません。
 でも、彼女が後輩達に残していった言葉や経験は残ります。
 そして、彼女が作った曲も。
 読み終わった後に「オレンジのバス」の響きが少しだけ変わったら嬉しいです。
 いつかファンの皆さんの握手会とかの証言で珠理奈像を作っていく記事も作れたらいいなと、今回記事を書き終えてから思い始めています。

2021年4月29日木曜日

2021年4月29日 松井珠理奈卒業公演の感想

タイムマシンなんていらない

 


 2021年4月29日、17時50分。
 公演
が始まってもうすぐ1時間経とうとするのに、まだ登場しない主役に僕は不安を覚えていました。
 事前に「ラブクレッシェンド」のメンバーで公演をすると発表があり、普段とは違う楽曲で公演を行うのでは、と思い、DMMで17時から公演を観始めました。
 しかし、全体曲のブロックでは珠理奈の姿はなく、そのまま参加メンバーたちのソロブロックが始まりました。
 松井珠理奈卒業コンサート昼公演の延長のような、若手メンバーたちの新しい魅力を発見させてくれる選曲で、特に「赤いピンヒールとプロフェッサー」と野村美代の組み合わせは斬新で、また新しい彼女の魅力にふれたような気がします。
 公演が始まって9曲目。
 松井珠理奈は登場します。
 歌うのは前田敦子のソロ曲、「タイムマシンなんていらない」。
 歌いながら珠理奈は「私にはタイムマシンなんていりません。今が一番です」と呼びかけます。
 過去よりも未来よりも今。
 それは、現在のSKE48を引っ張っていくメンバーのことをさしているようにも聞こえますし、この公演をやり遂げるという意味にも聞こえました。 
 この公演の直前に珠理奈は高熱になって、イベントを2日間連続で欠席していました。
 そして、公演直前に福士奈央がTwitterにアップした画像には、劇場の椅子で寝ている珠理奈の姿もありました。
 もしかすると、珠理奈はもう満身創痍の状態ではないか。
 ベストコンディションではないが、それでも大事な「今」を成立させる為に、ステージに立ったのではないか。
 僕の不安をよそに、明るいメロディで曲は進みます。
 思えば、珠理奈がこの歌を唄うのは、2014年のAKB48の全国ツアー高知公演以来ではないでしょうか。
 なんだか、歌詞の意味が今日は特別に聞こえてきます。
 多分、珠理奈が卒業した後に、珠理奈の影を追ってしまう、自家製タイムマシン状態になるのではと僕は自分で自分のことを予想しているんですが、先回りして答えを出された感じです(ちなみにこの曲の2番のサビでは、未来が楽しみなことも書かれていましたね)。


 
 歌い終えてMCでユニット曲のコンセプトを語った後、珠理奈は再び後輩たちにステージを預けます。
 そして、そのまま本編は終了、アンコールへと進みます。
 アンコール明けに「Memories~いつの日か会えるまで~」が披露され、「僕は知っている」、そして、メッセージ映像と手紙、そして珠理奈のメッセージを挟んで「オレンジのバス」で本編は終わります。
 「思い出以上」も「Who are you?」でも「赤いピンヒールとプロフェッサー」でもなく、「オレンジのバス」でアイドル人生を終えた珠理奈。
 おそらく先ほど挙げた体力的な配慮もあったかもしれませんが、自分のためではなく、最後にSKE48の後輩たちに向けたメッセージソングで終わるというのが、SKE48のことを考えて行動しつづけた優しい珠理奈らしい選択だと思います。
 
 彼女は、バスから降りていきます。
 走って行くバスの背中は、今、彼女の目にはどんな風に映っているんでしょう。
 公演の中でSKE48の曲の作詞について少し話していましたが、いつか、松井珠理奈作詞の曲がシングルのタイトル曲になる日が来て欲しいなと思っています。勿論、秋元康の歌詞と比べると、まだ遊びやワードセンスで負けている部分もあるかも知れません、しかし、彼女ならではの真っすぐなメッセージの良さもあります。

 アイドルとしての珠理奈が「過去」になっても、作詞家としての珠理奈が「今」をまた作っていける。昔の名前じゃなくて、現役選手としてSKE48と関わる日が来たら面白いな、と僕は思っています。
 
 だから、タイムマシンなんていらない。
 いま、この瞬間の幸せを珠理奈もSKE48も、そして、応援している僕らも作っていきましょう。

2021年4月19日月曜日

二人の距離感

もし寂しくなったら何もない大地に話しかけて 


 先日、東京大学大学院情報理工学系研究科の稲見昌彦教授が「最近植物学者の方と研究しているんですが、植物は単体ではなく群として考えた方がいい時もあり、植物交信から学ぶことが多い」と宇野常寛さんと平田オリィさんとの対談で語っていました(平田さんは分身型ロボットOriHimeの開発者ですね)。
 反射的な早さのある動物的な交信と違い、植物的な交信は、遅いけれど長い目線で考えると着実に種を残していきます。このスタンスは情報の捉え方・発信の仕方として非常に勉強になるところがあります。
 

 なんで冒頭からこんな話をしたかというと、昨日の夜ぐらいからネットニュースで「松井珠理奈・松井玲奈 不仲?」という記事が溢れていて、Yahoo!と連動した記事には、まあ、珠理奈の悪口が溢れています。
 さらに、肝心のネット記事は、珠理奈卒業公演に玲奈が来なくてビデオメッセージだったこと、そのメッセージが厳しい内容だったこと。更に、昨日のSKE48公式youtubeチャンネルの珠理奈のオンラインサイン会のコメントの中の「3回楽屋挨拶に行ったけど、3回断られたこと」が書かれていました。




 まだ、記者の名前入りで書いている大手メディアはマシですが(それでも自分の考えは一切書かずに書き起こしだけの記事もありましたが)、名前も書かずにひたすら広告をベタ貼りしてアクセス数やアドセンスを稼いでいるサイトや、それを拡散したり心無い言葉を書いたりしている人々を見ると、疑問を感じてしまいます。
 なんで、こんなに反射的に決めつけられるんだろう?
 確かに珠理奈は「もう会いたくないのかなぁ」と動画の中で言っていましたが、「かなぁ」であって「会いたくない」ではないんですよね。
 じゃあ、何故、会わないのか?
 僕は玲奈ひょん本人ではないので、本心は分かりません。
 でも、これまでの彼女の行動や珠理奈との関係から、推測はできるかも知れません。

 まず、玲奈のビデオメッセージに関してですが、「これからもそっと見守りたいと思います。周りで声を掛けてくれる人を大切にして、卒業してもすてきな笑顔でいてください」というメッセージの部分に注目してみましょう。
 「これからもそっと見守りたいと思います」の部分は、松井玲奈卒業コンサートでの珠理奈が玲奈に送った「玲奈ちゃんには安心して卒業してほしいし、これからもSKEを守るから玲奈ちゃんも見守ってください。これは私からの約束です」という言葉と丁度、対の関係になっているかと思います。
 更に「周りで声を掛けてくれる人を大切にして」からの部分は、一緒に配信に出ていた山内鈴蘭の「親目線じゃない?」という指摘と全く同意見で、甘えん坊の珠理奈のお姉さんとしての玲奈の言葉だと僕は考えています。
 「AKB48Show」の「高橋みなみの説教部屋」のコーナーに呼ばれた松井玲奈は、「私もやっぱ今でも姉妹って感覚。関係性を聞かれたら姉妹って言うのが自分はしっくり来ると思ってて」と、まず二人の関係性を語ります。 
 そして、たかみなが「すっごく語ってたよね?すっごい真剣なの。でも、玲奈が珠理奈には結構強めに言うのが面白くて、それ違うよ!みたいな。えーって。それに対して珠理奈が、そっかなぁみたいな。それ違うそれ違うみたいな。結構強めよね、珠理奈にはね」とロケバスで見た二人の姿を語ります。
 そこから玲奈は「あんまり珠理奈には言葉を選ばないです」、「甘やかさないです」と珠理奈へのスタンスを語ります。
 何故甘やかさないんでしょう。
 たかみなに問われると松井玲奈はこう答えます。

 「それは理由がちゃんとあって。彼女が11歳の頃からやってて周りの人達が凄く珠理奈に優しくしてたから」、「ずっとそれできてるところもあった中で、あ、このままだと良くないなって思った時があって。彼女が多分14か15の頃に。まぁ反抗的になる時ですよね。だからその時に、あぁこのままじゃいけないなと思って」、「お母さんみたいですよね。強く、ダメなことはダメ、違うことは違うと」


 珠理奈のことを思っているからこそ、厳しい接し方をする。
 その場その場のコミュニケーションの為に甘やかしてしまうと珠理奈の為にならない、将来まで見据えた長い視点で厳しい態度をとる。
 そう、植物的交信の視点です。
 そういえば、彼女の卒業曲は植物がテーマでしたね。
 秋元康作詞なのに、玲奈から珠理奈へのメッセージにも僕には最近聴こえています。
 


 
 段々と楽屋挨拶に行こうとしても会わなかった理由が、皆さんにも推測できてきたのではないでしょうか?
 僕の考えとしては、「親離れ」いや「姉離れ」でしょうか?
 珠理奈の視点ではなく、玲奈の視点から考えてみることで、ひょっとすると、わざと今は会わないようにしているのでは、と思います。まだ、甘えていい時じゃない。これからソロで頑張るときだからと。
 でも、いつか、珠理奈が松井玲奈が安心して抱きしめられる日が来た時に、必ず会ってくれると僕は信じています。
 それまでは真那の言葉を借りるなら絶妙な距離感で居てほしいです。
 
 そして、いつか、こんな二人が見られますように(二人の表情が良いですね)。

 僕も植物的な交信で遅くても長くても、見守っていきたいと思います。

2021年4月14日水曜日

Glory days

 落日であり夜明けでもある


 なんでリブートしてしまったんだろう、という映画が時々あります。
 たとえば、市川崑監督の「犬神家の一族」は1976年に公開され大ヒット、2006年にリメイクされます。全く同じストーリーを同じ主演で、できる限りカットも類似させたものを市川崑監督は作りますが、独自に付け足したラストシーン以外は、76年版を知っている人間からしたら、違和感の残るものになりました。どうしても、昔の方と比べてしまうからです。
 同じく「ヱヴァンゲリオン新劇場版:序」を観た時もテレビ版との差に、「あれ、なんか確認作業でもしてるのかな?」という感想で終わってしまいました。
 この原因を考えて行くと、天才プロレスラー武藤敬司が週刊プロレスのインタビューの中で「どんなに今日ベストバウトをしても、観客の思い出には勝てない」と言っていたこと(W1立ち上げ後だったと思いますが、詳しい方がいらっしゃれば教えてください)がヒントになるのでは、と思います。

 思い出はどんどん美化されていきます。
 気づけば等身大の対象以上に膨れ上がることもあるかも知れません。
 かく云う、僕も市川崑もエヴァンゲリオンも思い入れがあるからこそ、違和感を抱いたというのもあると思います。
 
 SKE48の世界でも思い出とぶつかる瞬間が訪れます。
 その最もたるものが卒業公演や卒業コンサートだと思います。
 先日開催された松井珠理奈卒業コンサートでも、珠理奈に関する曲が披露される度に、その曲が歌われていた頃の珠理奈の姿を思い出すことがしばしばありました。
 僕が最もそれを感じたのが、アンコール2曲目で披露された「Glory days」でした。
 この直前のアンコール1曲目で、たった一人で「神々の領域」を珠理奈は歌います。 
 いつかのコンサートのみきてぃのように「これまでの1期生が見えている」と鑑賞した人もいれば、「松井玲奈卒業コンサート」での雨の中の3人、「大矢真那卒業コンサート」での涙や名古屋ドームの1曲目など、関連する思い出が甦った方もいらっしゃるかも知れません。
 僕は残酷なぐらいありのままの現実と最後の一人になった珠理奈の孤独を再認識させられました。
 その後に、明るいメロディと共に、中西優香と桑原みずきが出てきた時、「ああ、珠理奈に仲間が来てくれた」という喜びと共に心配もありました。
 何故かというと、上記のような「思い出の方が美しい」現象に襲われる可能性があったからです。
 また、昼の部では松本慈子センターで両サイドに熊ちゃんと鎌田さんを据えて、表情が常に快晴という状態のキラキラした現在進行形の「Glory days」を見せられていました。果たして、どうなると考えていると、曲が始まりました。

 「Glory days」の和訳は「絶頂期」という意味と「かつての輝かしい時代」という意味があります。
 あの珠理奈・中西・桑原の「Glory days」が踊られた数分間で、観ていた観客それぞれの「Glory days」の珠理奈が甦ってきたのではないでしょうか?
 勿論、「絶頂期」の珠理奈の思い出が甦った方もいれば(今も絶頂期だという方もいらっしゃると思いますが、今は一歩後ろに引いている感じがあると僕は思います。今回のセトリの配置を含めて)、現在の珠理奈だけをじっと観てらっしゃった方も居るかもしれません。
 ただ、アンコールというもうすぐコンサートが終わる時に歌われる曲という配置も関係してか、僕は「ああ、もうすぐアイドル松井珠理奈が終わるな」と明るい曲調とは反対に涙が零れてきました。
 無邪気な笑顔を見せていた珠理奈の表情は大人びたものでしたし、中西のブリッジはありませんでしたし、カツオのターンもありませんでした。おそらく、踊りだけをとれば2013年ガイシ(奇しくも同じ会場)がこの3人のベストでは、と僕は考えていますが、その時と比べるとダンスでは物足りなさがありました。

 でも、「思い出の方が美しい」現象は起こりませんでした。
 勿論「最後にオリメンで観られた!ありがたい!」みたいなレベルのこともありますが、「ああ、これでアイドル松井珠理奈は終わるんだな。最後にキラキラしていた絶頂期の片鱗を僕らに見せてくれたんだな」という美しい終わりを感じたからです。
 きっとあの曲の間に多くの人の頭の中で「絶頂期のSKE」が一瞬甦り、そして、2021年の現実、もうすぐやってくるアイドルの終わりを見ることになったのではないでしょうか?
 現実と思い出が融合した不思議な感覚でした。

 この現象はコンサートの中でもフラクタル構造になっていて、夜公演は特に思い出と現在を行ったり来たりしながら進んで行ったように思います。
 「Glory days」が終わった後のMCは、本当に昔のSKE48のコンサートのMCを観ているのでは、という錯覚を起こすぐらいの懐かしさがありました。
 でも、元1推しの中西優香のトークよりも、現役メンバーが沢山喋ってほしいなという気持ちの方が強かったです。その理由はまだ自分の中で言語化できていませんが、ただ、「今」が愛しい感覚の方が強かったです。

 夜の部の「Glory days」が「かつての輝かしい時代」を思い出させてくれたのと同時に、今、SKE48に居るメンバーたちが次の「絶頂期」を連れてきてくれるのではないか、と期待しています。

 そして、ソロプレイヤーの松井珠理奈の夜明けも。

2021年4月12日月曜日

オレンジのバス

 あの音楽の中で会っている

 2021年4月11日。
 松井珠理奈卒業コンサート夜公演。
 松井珠理奈が最後出番を終えて、これでコンサートは終わりかな、「手をつなぎながら」とかで終わるかなと考えていた時、その曲は発表されました。

 「オレンジのバス」

 直接珠理奈から伝えるのではなく、作詞という間接的なアプローチで伝えられたメッセージ。
 今日はこの曲について考えていきましょう。
 まずは歌詞の世界から見て行きます。

 1番では、曲の主人公がずっとバスに乗っていることを考えるところから始まります。
 バスに乗車していく人の入れ替わりはあるけれど、寂しさを感じずに曲の主人公は過ごしていきます。
 時には、不安からくる強がりで泣いても、その涙の度に進化していることを曲の主人公は知っています。だから、前を向いて行こうと明るい言葉を相手に発することができます。何年もバスの中で過ごして知った経験があるからでしょう。 
 そして、サビではバスの乗り降りの比喩と呼応するように、出会いと別れが提示され、沢山の思い出が主人公の瞼にうつります。
 ここで「軌跡のバス」という表現が登場します。「奇跡」ではなく、「軌跡」。
 「軌跡」のそもそもの意味は大きく分けると4つです。
 ①車輪が通った後。轍(わだち)。②先人の行いの跡。③ある人や物事がたどってきた跡。④数学で点が一定の条件に従って動くときに描く図形。
 この曲の中では①~③のどれかになってきますが、物理的には①、曲の主人公に合わせると③でしょうか。
 「みんなみんな」が「力強く走って行く」とありますので、ここでいう「みんな」は少数ではなく大多数ではないかと連想されます。
 何年も走ってきた「軌跡のバス」の中で主人公は様々なことを思い出していきます。

 2番では楽しいことばかりではなく、傷つけられたことも思い出します。
 そんな時は弱音を誰かに吐き出し、一緒に気持ちを共有することで「絆」が生まれていくことを語ります。
 そして、心無い誰かの評価ではなく、自分の可能性を信じて進むべきだと。
 2番のサビでは1番のサビと呼応するかのように、過去の先である未来へ進むことが語られます。「軌跡」というこれまで進んだ道である過去よりも「新しい地図」を広げてすすむべきだと語られます。ここでも「みんな」が繰り返されそのみんなは「バス」に一緒に乗っていることが分かります。


 大サビ前では、進むだけではなく止まること、ゆっくり進むこと、遠回りすることが示されます。「みんな」もそれを肯定してくれるはずだと。
 ここで1番のサビ全体と2番のサビの前半がもう一度示されます。
 その後、気になるフレーズが出ます。
 「これからはたくさんの色を自由につければいい」

 今はオレンジ色だったバスに新しい色をつける。
 「新しい地図」と呼応する気がしますが、「たくさんの色」がつくことで、「可能性」の広がりを感じます。
 ここで気になるのは「つければいい」と自分がするのではなく、誰かに託すように。

 そして、曲の最後に主人公はオレンジのバスにお礼を言います。
 このお礼は、バスとのお別れにも思えますし、自分自身の「軌跡」を振り返っているようにも思えます。
 
 「バス」は決して早い乗り物ではありません。
 いくつものバス停で止まりますし、時には遠回りもします。
 その度に誰かが乗って誰かが降りてきます。
 まるで、出会いと別れのように。
 そして、いつか目的地が来たら自分もバスを降りることになります。
 そう、バスは停留所に着く度に我々に「ここで降りますか?」と問いかけています。
 日常はゆっくりと進みながら「軌跡」を作ります。まるで、バスのように。
 皆さんのバスは、今どのあたりを進んでいるでしょう。
 バスの経路は「学校経由」かもしれません「会社経由」や「家庭経由」の人もいるでしょう。何度もバスから降りてまた乗る人もいるでしょう。
 今、バスを降りそうな時、この曲を聴くとあと停留所一つ分頑張れそうになれないでしょうか?
 皆さんは今、まだバスに乗っているでしょうか、もう降りているところでしょうか?

 ここからは、松井珠理奈とSKE48を入れた上で曲を考えていきたいと思います。
 「オレンジ」はSKE48を連想させる色ですし、「バス」もSKE48というグループだと感じられます。そして、そこに「軌跡」という言葉が付くことで「多くの歴史を持つSKE48というグループ」と読み解きました。
 1番2番ともに松井珠理奈の私小説的な要素をあてはめていくと、彼女がこれまでどんな風に進んできたのかが見えてきます。
 彼女だからこその説得力が歌詞の中にあります。
 そこには秋元康の作詞のようなテクニック性よりも、ストレートなメッセージの性が強いです。
 バスへのお礼もSKEからの卒業とリンクしますし、沢山の色も自分が作ってきた価値観だけでなく新しい価値観をSKE48に入れて行って欲しいというメッセージを感じます。
 「みんなみんな」にはメンバーだけでなくファンの皆さんも入っているのではと思います。「新しい地図」という新しい目的地をみんなで見つけて、これから進んでいくSKE48に期待が出来る内容でもあります。


 そして、先日のコンサートでは、後輩たちが歌うことで、もうそこには居ないはずの松井珠理奈が、音楽の中で甦ることが素晴らしくてですね。僕はここで泣いてしまいました。
 今は、珠理奈のことが頭に浮かびますが、50年後に珠理奈を知らない人がこの曲を聴いた時、どんな感想を持つのか。その感想を語る頃もオレンジ色のバスは走っていると信じています。


2021年4月11日日曜日

松井珠理奈卒業コンサート夜の部「~珠理奈卒業公演で何が起こる~」

最後のプレゼント

※コンサート直後なので、箇条書きで書いています。

総括
 松井珠理奈を観ていると、時々、なんでこんなにSKE48が好きなんだろう、と思う時があります。1期生として立ち上げの時から関わり、センターを長年務めて来たというのもあるんでしょうが、12年在籍してもその気持ちは変わらないままで、純粋にずっとSKE48のことを考えている。
 そんな彼女の愛の大きさについて、改めて意識させられたコンサートでした。
 多分、コロナの影響もあって当初の予定とは少し違った振り付けになったり、構成になったり、ゲストになった部分もあるのではと感じさせられるところもあったかも知れません。それでも、逆境の中で全力を尽くすというのが珠理奈らしくて良いですね。
 最後に残してくれた「オレンジのバス」は、卒業していくメンバーが曲を残して行くという「5色のバス」以来の演出なんですが、これも凄く良かったです。ずっとバスに乗ってきた彼女だからこそ、書ける歌詞ですし、仮にこれが秋元康作詞ならもっと違ったものになっていたのではと思います。語りかけるようなこの曲は、次にどこで歌われるのか?卒業公演で彼女が歌うところも見てみたいなと思っています。
 それでは、細かく見て行きましょう。

① ウッホウッホホ
 もうね、まさかこれで始まるとはという驚きがあったんですが、「暗い空気ふき飛ばそう」というところはまさに2021年の空気に合っていました。そして、バナナといえばらんらん。珠理奈からゴリラ語のリクエストがあったのもありますが、リクエストした珠理奈自身が笑いをこらえていたのが印象的でした。

② 青春ガールズ
 愛理が珠理奈の隣りに!
 7D2を思い出しましたが、カメラ目線のふゆっぴも良かったですね。
 昼公演でもそうですが、徐々に水野愛理のターンが来始めているのではと感じました。

③ 偉い人になりたくない
 元気がはじける前半ブロックの白眉!
 2番で映った青木莉樺さんのさわやかさが良かったですね。
 それにしても、序盤から動きまくるセトリですね。
 ラスト前のみなるんと奈和ちゃんの腕をぶんぶん使ってるのをみると、ベテランたちも負けてない感じがしました。

④ Change Your World
 昼よりもカメラアングルが良かった気がします。
 推しカメラじゃなく引きで観ると、振りの力強さと振りのメリハリが分かります。
 「いてもたってもいられず走り出す」のところの青海さんの表情が良かったです。

⑤ MC
 ぴよっさんの「こんな私にも愛をくれる」という涙が全部持っていきましたね。

⑥ TWO ROSES
 もうイントロ始まった時に「誰?誰?誰?」と言いまくってましたよ。
 ここで、ちゅりが登場。
 そうか、チュリじゅりの組み合わせがあったか!
 「マジカルラジオ」ファンとしては嬉しい限りです。
 水面に浮かぶ花のような照明も良かったんですが、二人とも年をとらないですね。

⑦ 青空片想い
 若手中心のさわやかな仕上がりになってましたね。
 伊藤さんの笑顔が凄く良かったです。
 そして、やっぱり林さんに目が持っていかれます。
 大サビ前の一生懸命さが伝わる表情も良いですね。
 ううむ、無限の可能性。

⑧ アイドルはウーニャニャの件
 昼の部の補完をここでしてきたか!
 まず、「このユニットバランスいいな」というのが率直な感想で、この人達だけでドラマが1話できそうな感じです。だーすーは流石のパフォーマンスでしたが、菅原とはたごんのコンビも良かったですね。

⑨ 思い出以上
 レオ様センター!
 ううむ、このセンターは予想外。
 てっきり珠理奈で来るかと思っていたので、最初は驚きましたが素晴らしいパフォーマンスでした。特に「波打ち際の二人は」のところが素晴らしかったです。
 あとは、江籠さんの「すべて幻」のところの声も美しかった。

⑩ 天使のしっぽ
 まず、メンバーを見て僕が呟いた言葉が、「ボーナスステージ」。
 久しぶりに聴いたんですが、この曲、本当に良い曲ですね。
 平野さんの可愛さや衣装との相性もばっちりだったんですが、ゆうゆも良かったです。
 
⑪ 黒い天使
 曲の世界観と愛理の相性の良さ!
 大人なおーちゃんと昼の部とは逆のアプローチのおーちゃんも良かったですね。
 今日一日で、愛理とおーちゃんは推しが増えたのではと思っています。個人的には二人ともいよいよ前列に乗り込んで欲しいところです。

⑫  ここにだって天使はいる
 難波の神曲!
 まさかの選曲なんですが、歌詞が本当に良いんですよ!
 るーちゃんのカメラ目線が何回か抜かれてたんですが、「天使」感がある衣装と共に良かったですね。
 
⑬ MC
 萌え台詞大会でしたが、さきぽんの卒業を意識させる言葉が良かったですね。
 そして、ここぞとばかりに存在感を爆発させるさとかほも凄かったです。

⑭ Parting shot 
 珠理奈の見た目が変わってる!
 メンバーもチームSのエース級が揃っていて、豪華なユニットでしたね。
 
⑮ MC
 15分で珠理奈が髪を切ったエピソードが!
 ふろ思ったんですが、珠理奈は何故、髪を切ろうと思ったんでしょう?
 
⑯ キューティハニー
 まさかのアニソン。
 予想外の過ぎる展開ですが、これもまた良かったですね。
 でも似合ってましたね。

⑰ DJタイム
 ここは、「ダンスのSKE48」が堪能できるところでしたね。
 なかでも「UZA」と「赤ピン」が珠理奈の魅力満点で良かったです。 
 「UZA」はダブルセンターお披露目の武道館の黒衣装と対照的な白い衣装が印象的でした。そして、「赤ピン」は始まり方がカッコいいんですよね。流石DJ!
 「Who are you?」ではyoutubeで登場したNAMI Jさんとの共演も良かったです。僕は何故かこの曲の歌詞のせいか、ここで泣けてきました。

⑱ 強き者よ
 珠理奈のソロ歌唱から始まり、続々と出てくる1期生たち!
 間違いなく、コンサートのギアが一段上がった瞬間かと思っています。
 1期生たちが同期の「最後の勇者」である珠理奈に語りかけるようで、ちょっと一時停止ボタンを押したくなるぐらい感動しました。

⑲ MC
 1期生がグイグイ持って行くMCでしたね。
 どんちゃんがレジェンドたちを見て、思わず泣いてしまうところで僕ももらい泣きしてしまいました。

⑳ 不器用太陽
 みきてぃも来てくれましたよ!
 中央のセリがベンチのようになって、二人で歌うところがなんだか凄く良い時間でしたね。
 卒業してからのみきてぃの人生を著作などで知っているだけに、もう一度SKEの曲を歌っている姿で泣いてしまいました。

㉑~㉔ ごめんねサマー、賛成カワイイ!、バンザイVenus、大声ダイヤモンド
 まず、OGたちのブロックの後に曲を任される現役世代の誰が迎え撃つかというところで、6期を持ってきたところに、今、どれぐらい彼女たちが信頼されているかを感じました。
 「賛成カワイイ!」では、コールが出来ない寂しさが曲を通して感じて来ることになるとは。なんとかサイリウムで補っていましたが、またコールがしたいところですね。
 「バンビ―」は、メンバーたちの遊びが多いので、何回も観たいところですね。
 「大声ダイヤモンド」は、ここで来たのか!という感じでした。この曲もあとは卒業公演ですかね。

㉕ MC
 すーめろさんの登場からビデオレター。
 48グループってこんなに広がっていたんですね。
 真那や玲奈ひょんがこれなかったのは残念でしたが、心のどこかでVTR来てないところからの本人登場はないかな、とも期待していました。ケニー・オメガからのメッセージも嬉しかったんですが、新日勢からも来てほしかったですね。

㉖ 恋落ちフラグ
 ハッピーエンド感のある本編ラスト曲。
 泣いているぴよすがちょいちょい映って、彼女らしくて良かったです。
 明るくて珠理奈らしい本編ラストでした。

EN1 神々の領域
 アクティブな振り付けが印象的な名曲ですが、今回は噛みしめるように歌っていましたね。時々、歌えなくなるところが切なくなりましたね。
 この「神々の領域」はこれで最後になるんですかね。
 いつか、リクアワでまた聴きたいです。

EN2 Glory days
 今回のコンサートのピークというと言いすぎですが、「おおおっ!」と叫んでしまいました。
 まさか2021年にオリメンのグローリーを観られるとは。
 バックダンサーも2~6期の超豪華メンバー。
 色々なオリメン集合がある中でこれを選んでくれたのは、本当に嬉しいです。
 
MC
 もう、カツオオンステージでしたね。
 江籠ちゃんの「昔を思い出す」という言葉も昔を知っているファンには嬉しい一言でもありました。

EN3 Memories ~いつの日か会えるまで~
 オリエンタルな感じの卒業衣装になりましたね。
 卒業衣装でドレスではなく、ズボンのメンバーは珍しいのではと思います。
 珠理奈の表情が、涙ではなく充実感に満ち溢れているように思えました。

EN4 大好き
 世界中のファンに向けての「大好き」。
 この曲もお別れを意識して聴くと違う響きがしますね。
 真那の卒業コンサートを思い出しました。

EN5 僕は知っている
 歌が始まった時に、珠理奈が右下の辺りにいるメンバーに口パクで「頑張れ」と励ましているのが印象的でした。 
 いったい、あそこには誰が居たんでしょう?
 そればっかり考えてました。

MC
 10回目の総選挙リハのエピソードが泣けましたね。
 本当にSKE48がこの人は好きなんだな、というのが伝わってきて。
 そして、最後に置き土産まで残していってくれるなんて。

EN6 オレンジのバス
 詳しくは明日書こうと思いますが、この「バス」という比喩は、これから色々なところで考えられそうですね。欅坂46の「乗り遅れたバス」とは違うアプローチで、メンバーたちが乗っている途中という視線で、もうバスを降りる彼女の視線から描かれたメッセージソングですね。「新しい色」という言葉が、バトンタッチのようにも思えました。

 ううむ、箇条書きになったので物足りない部分もあったかも知れませんが、最速の感想としてはこんな感じです。
 終わりは次の始まり。
 このコンサートが「終点」であり「始点」であると信じています。
  

松井珠理奈卒業コンサート昼の部「卒業だよ!全員集合! ~Let's sing !~」

 過去もIFも全て含めて




 ※ライブ後の感想の為、今回は箇条書きで書かせていただきます。

 総括

 全体的にSKE48のシングル曲を除くと、栄色は薄めの選曲でした。
 その代わりといっては何ですが、過去の名曲をもう一度考え直したり、IFのストーリーを連想させさせられるコンサートでした。
 具体的には各曲のところで書こうと思いますが、AKB48の超選抜たちの代表曲を持ってきて、それを現役のSKE48メンバーが歌うことで、ファンを長く続けている人からしたら、過去の思い出が甦るでしょうし、最近ファンの方からしたらある意味「新曲」なので、推しの新しい魅力を発見できたのではと思います。
 また、IFの要素で言えば、1曲目の「センチメンタルジャーニー」の総選挙映像で椅子に座るところからの椅子に座ったままの登場は、幻に終わった2018年の名古屋ドームの1曲目を僕は連想しました。
 コンサートのタイトルの「全員集合」は、メンバーやファンだけでなく、過去の先輩や名曲たち、ありえたかも知れない未来を集めたのではないかと思います。
 もちろんね、卒メンが登場みたいなのを想像して臨んでいた自分には、少し肩透かし感はありましたが、途中から「あっ、多分そういう意図じゃないんだな」と気づきました。
 でもMCで松井玲奈の名前が出た時は、やっぱり少し期待してしまいましたけどね。
 もし、1曲だけ付け足せるなら、「君はメロディ」も聴きたかったかな、と思います。季節ともコンセプトとも合いますし。
 更に、シチュエーションが変わるとこんなに響き方が変わるのか、という曲も沢山あったのではと思います。
 多幸感に溢れたコンサートについて、1曲ずつ見ていきましょう。

① センチメンタルトレイン

 珠理奈のアカペラからスタート。
 思えば、もっと聴きたかった曲の一つ。
 あの総選挙1位の椅子に似た椅子に座った珠理奈が登場。
 できれば、名古屋ドームでもう一度、これが見たかった!
 選抜にランクインしたメンバーは一段上のところで歌って踊る演出も、カッコ良かったですね。
 なんというか、1曲目から2018年夏の空白を埋めるかのような演出で、ワクワクしました。
 ちなみに、1曲目は推しカメラはほとんど使用せず。

② 初恋の踏切

 2曲目は珠理奈退場。
 とにかくメンバーの躍動感が楽しめる曲と振り付けで、具体的な例をあげると「はかないものとしても」のところの古畑奈和ちゃんとか、移動しながら元気にジャンプするほののとかね。
 更に、「青春の青い電車」のところのどんちゃんの眼差しも良かったですね。
 「トレイン」→「踏切」という繋がりを感じました。

③ 卒業式の忘れ物

 慈子の「サイリウムの色、オレンジにしてくれへん」から始まるのがずるすぎますね。
 とにかく、歌詞が珠理奈の卒業とリンクしますし、先輩を見送る後輩視点が、チームSに凄く似合います。
 「毎日どこかで探していた」のところのよこにゃんの振り付けとゆれるポニーが印象的でした。
 そして、大サビでの青海さんの視線。いやあ、流石は「恋落ちフラグ」で前列に位置するだけの説得力がありました。

④ 今日までのこと、これからのこと

 まあ、「はやっ!」と思わずモニターの前で言ってしまいましたよね。
 ここでも歌詞の中に「電車」が出るのが面白いですね。
 歌詞がこちらも卒業とリンクして泣きそうになりました。
 全体カメラで観た時の8期、9期のフレッシュさと頼もしさ。
 珠理奈の制服姿がお嬢様校ぽかったですね。
 爽やか路線の4曲が続いたので、この後はダークな感じが来るかと思いきや…。

⑤ MC

 泰然自若としている珠理奈。
 みなるんのMCまわしの安定感を感じつつ、今回はメンバーが新しく覚えた曲が多いのかという期待感もあり。
 水野愛理の「カメラが回ってないところでもSKE愛を語っていた」というエピソードも良いですね。

⑥ Glory days

 松本慈子センター、サイドに6期の熊ちゃん、鎌田さんコンビ。
 明るい表情が似合う3人ですが、最後のソロダンスで個性の違いが出ていて面白かったですね。
 曲中で印象に残ったのは、鎌田さんのしなやかさ。そして、熊ちゃんの顔の天気予報が常に快晴だったこと。そして、慈子のかみしめるような登場でしょうか。

⑦ Dear J

 「その組み合わせがあったか!」とここから僕は叫び続けることになります。
 前髪が何度も前髪にかかりつつも構わずに踊るるーちゃんの成長を感じられる1曲でした。
 板野友美と珠理奈、その間にるーちゃんという組み合わせは斬新でしたが、そこがプロデューサー珠理奈の手腕でしょうね。衣装の白に負けない美白でした。

⑧ プラスチックの唇

 みよまるが篠田麻里子さまの曲を担当することになるとは!
 そして、この辺りで多くの観客がもしや、とソロブロックのコンセプトを考え始めたのではないでしょうか?
 メタリックな衣装とみよまるの浮世離れした美しさとの相性も良かったですね。
 歌詞も2021年に聞くとウイルス関連のところは、違った響き方がしますね。
 黒いジャケットのバックダンサーの衣装を着こなす真木子も良かったですね。

⑨ 愛しさのアクセル

 よこにゃんが来たか! 
 和風の衣装との相性が最高!
 たかみなの名ソロ曲を彼女が担当するとは!
 表情、太刀捌き、目力、どれもよこにゃんの魅力爆発で、こういうのが観たかったんだよ!と思わず叫んでいました。
 前半の4曲と比べると、MCを挟んだ4曲はアップテンポの名曲が並びました。

⑩ 心のプラカード

 今度はまゆゆ、と思いきや「マジすか2」のネズミも含んでいたんですね。
 トロッコに乗って出てきた珠理奈のゆるーい「みなさーん」という声も良かったんですが、メンバーたちのプラカード芸も良かったですね。
 緩急が効いた良いセトリだと思いました。
 そして、360度客席を活かしたメンバーの練り歩きも良かったです。

⑪ チューよりkiss

 珠理奈のソロ曲で甘い歌詞なんですが、ピンクのレザーをまとったおーちゃんが歌います。
 ピンクの似合い具合がたまりません。
 そして、振り付け付きでこの曲が披露されるのは、初めてではないでしょうか?
 サビのポーズが印象的でした。
 

⑫ monoclome

 同じく珠理奈のソロ曲なんですが、こちらは男性目線の曲を古畑奈和ちゃんが担当します。
 もうね、出てきた時から一枚絵として決まり過ぎでしょう。
 前半はほとんど動かないのに歌だけで勝負できるところや、宝塚の男役の方が来てそうな衣装の似合い具合(私服だったんですね)は流石!
 背景の都会の風景ともあっていて、当たり前ですが、「歌うめえ!」といい泣いてました。

⑬ Birthday wedding

 ゆきりんのソロ曲で個人的に歌詞が好きな曲です。
 らんらんのドレス姿が美しいんですが、彼女もまた歌が上手ですし、表情も凄く良いんですよね。
 衣装は白が中心でピアスの形もよくてらんらんの新しい魅力を発見しました。

⑭ 花占い

 珠理奈の初作詞曲。
 これを谷が歌うという意外性。
 たまに「このメンバーがこの曲を歌ったら」という妄想をすることがあるんですが、谷の
「花占い」もその一つで、珠理奈ありがとう!と叫びたくなりました。
 サビの言葉のおいて行き方が谷っぽくて好きでした。
 ううむ、谷のソロ歌唱はもっと観たいところです。

⑮ 虫のバラード

 秋元才加のソロ曲ですね。
 これも「その手があったか!」という組み合わせ。
 まさか10期の林美澪ちゃんが担当するとは。
 かつて珠理奈が「思い出以上は成長の記録」と語っていたように、今は少し早く感じるかも知れませんが、数年後にもう一度歌った時にどんな変化があるのか。「始点」を作った気がします。
 一切の笑顔なしに目線だけでもっていかれました。

⑯ 泣きながら微笑んで

 言わずとしれた大島優子の名曲。
 野島さんの歌唱力を存分に味わえた名曲です。
 「ここからまだ動けない」の表現力にしびれました。
 珠理奈の卒業ともリンクしていて、本当に素晴らしかったです。
 ここでも泣きました。

⑰ 君は僕だ

 前田敦子のソロ曲です。
 今回のコンサートの「その組み合わせがあったか!」シリーズの最高峰がこれではないかと僕は思いました。
 えごちゃんと前田敦子という組み合わせもそうですが、歌詞と江籠ちゃんのリンクも凄く良くて、これからも歌ってくれないかなと思います。
 うん、もうね。これも泣きました。

⑱ MC

 それぞれの担当曲の知り方の差が面白かったですね。
 ずらりと並ぶと衣装の違いもオモシロかったです。

⑲~㉑ わるじゅり、ジッパー、ハート型ウイルス

 甘い感じの曲が続きますが、まさかのNOAH勢登場。
 かわいい珠理奈の歌唱の後ろで行われる、襲いかかるバイオレンス(マイトガイン風)!
 筋肉が眩しすぎて、曲があまり入ってこなかったのが正直な感想ですが、「ハート型ウイルス」の正統派の珠理奈も良かったです。

㉒ MC

 珠理奈との印象に残った思い出と曲。
 鎌田さんの「女の子の第6感」に関してのエピソードが印象深かったですね。
 歩き方だけではなく、香水の匂いまで。
 嫉妬するどんちゃんも良かったです。

㉓~㉚ オキドキ、1234ヨロシク、パレオ、未来とは?、前のめり

 SKEお得意の後半シングル曲たたみかけなんですが、もうすぐ珠理奈がここからいなくなるのか、と思うと切なくなりました。
 その中で10期生での「1234」は、新鮮でしたし、僕は推しがもしここにいたらと少しだけ考えてしまいました。
 あと、「パレオ」で熊ちゃんとさきぽんが同じフレームの中に入った時の切なさがありましたね。
 「未来とは?」の若手中心の選抜も良かったです。
 指差しの時の愛理の表情が印象的でした。
 そして、「前のめり」でコールが入った時の感動!
 早く声を出してコンサートに参加したいですね。

㉙ Stand by you

  本編の最終曲。
 「前のめり」で玲奈のことを考えた方を意識したんですが、それでも珠理奈にはみんなが居てくれるという感じが僕はしました。
 ここでも林美澪ちゃんに目を惹かれました。
 個人的に大好きなシングル曲です。
 「センチメンタルトレイン」で始まり、この曲で本編が終わるというのが、図らずも2018年の空白の間に成長していったメンバーたちのことも意識して良いセトリだなと感じました。

EN1
 Change Your World

 MVで観るよりもライブで観た方が良い!
 熊ちゃんと江籠ちゃんのコンビが印象的ですが、今日は「壁を」の部分での熊ちゃんの主人公感が良かったです。これからどうなるか楽しみな曲です。

MC

 さとかほのゴールドパールが気になり過ぎる。
 そして、菅原のウーパールーパーに癒されました。

EN2 恋落ちフラグ

 今日の全体曲としてはベストのおさまりの良さを感じました。
 ううむ、珠理奈ありであと何回見られるのかを考えると切なくなります。

EN3 仲間の歌

 やっぱりSKE48のコンサートと言えば、これですよね。
 360度客席を活かした練り歩きも良かったんですが、やっぱりライブではみんなの声が必要だなと感じもしました。
 どうか、もう一度自由にコールできる日が帰ってきますように。
 

 多分、予想していたものとは違っていたという方も居たかも知れません。
 SKE48曲は夜中心になるかも知れませんが、メンバーたちの個性に寄り添った良セトリではと思いました。何よりリバイバル曲が全部良かった。
 さあ、夜はどうなるか、楽しみですね。

 

2021年4月4日日曜日

SKE48という家族の中で

何にも無い日も君となら何故か幸せ


 突然ですが、皆さんの推しメンは家族に当てはめるとどのポジションにあてはまるでしょう?


 なんでこんな問いを考えたかというと、最近読んだ成馬零一さんの著作「テレビドラマクロニクル1990→2020」を読んだ影響で、宮藤官九郎脚本のドラマをいくつかまとめ見したからでしてね。
 彼の作品を観て行くと、「家族」や「コミュニティー」について考えさせられます。
 欠けていた家族からアドバイスをもらったり、いなかったはずの家族が帰ってきたり、他者が家庭に入ってきたり、自分のポジションが子供から父親に変わったりと様々な語り口で僕たちを楽しませてくれます(『吾輩は主婦である』、『11人もいる!』、『ごめんね青春!』なんかは特に感じます。最新作『俺の家の話』はまだチェックできていません)。また、家族のそれぞれのポジションに何を求めているかや本当にその求め方が正しいのかも考えさせられます( 更にそれを広げて行くと、地域コミュニティーやホモソーシャルについても考えさせられるところもあるんでしょうが、今回は省きます )

 その中でふと、じゃあ自分の推しメンは家族でいうとどのあたりの目線で観ているんだろうと考えてみましてね。

 僕の推しメンは10期生の五十嵐早香なんですが、もはや母でも妻でも娘でも姉でも妹でもすらなく、遠い親戚の才気溢れる子ぐらいの視線で応援しています。でも、推しのためなら多少の労力や時間の浪費は許容できるので、もっと近い親戚かもしれません。

 で、こういう家族目線で見て行った時、松井珠理奈の変化が面白いと思いましてね。
 加入当初は、AKB48の中にいる彼女は、元気な「妹」ポジションで「わがままコレクション」を歌うユニットにも渡辺麻友と共に選ばれています。
 ただし、SKE48に戻ってきた時は、不動のセンターとしてみんなを引っ張っていくしっかりものの「姉」という感じがします。1期生で年少メンバーでありながら「珠理奈さん」として凛とした表情で様々な場に出て、後輩が増えるにつれて求められることも増えたのではないかと思います。そのおかげで実年齢よりも求められることの大きさのギャップに苦しむこともあったのではと思います。
 そんな彼女だからこそ、ふと「妹」に戻れた時の表情なんかも素敵です。印象的な表情の写真が載っているブログを貼っておきますね。真那画伯の絵と共にお楽しみあれ。

「蚊☆じゅりたん」 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)


 ただ、2015年ぐらいまでは松井玲奈を初めとするお姉さんたちが多かったものの、2017年の小畑優奈センターと大矢真那卒業でたった一人の1期生になったぐらいから、「姉」としてのポジションから「父親」や「母親」のポジションになってきたのでは、と思います。
 特に「Jファミリー」や「Black Pearl」のプロデュース、youtubeの「珠理奈HOUSE」の解設、会員制のサイト「珠理奈'sSHARE ROOM」の解設と、家を建てるは部屋を造るは、家族を作るはと「親」としてのポジションにスライドしていったのでは、と思います。
 そんな彼女だからこそ、ふと「妹」や「子供」になった時の表情にときめく方も多いんでしょうね。
 後輩達を可愛がる視線は、彼女のお父さんが彼女を大事に思うものと似たものを感じてしまいます。

 「パパへ☆じゅりたん」 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)

 

 もうすぐ、彼女はSKE48を卒業します。
 2021年4月4日のアメブロでは珠理奈が残した言葉が後輩たちから紹介されているので、是非是非読んでみてください(特におーちゃんのブログ)。


 グループの中で様々なポジションを求められてきた彼女ですが、SKE48を卒業することでソロになります。
 果たして、今度は彼女のことをどんな目線で応援することになるんでしょう?
 ただ、どこに居ても変わらないことがあります。
 2013年3月8日に松井玲奈が書いた手紙から引用して終わりたいと思います。

「この場にいる全員が思っていると思うけれど、私たちは珠理奈が元気なのが一番。明るく、ちょっとやり過ぎなぐらいにはしゃいでくれる姿を見ると安心します。あー、珠理奈だって」


2021年3月11日木曜日

AKB48グループ「東日本大震災復興支援配信〜誰かのためにプロジェクト2021〜」配信の感想

 忘れないことずっと仲間なこと


 本日で、東北で震災があってから10年になります。
 AKB48グループは、震災があった東北地方への訪問を続けています。
 これまでの歩みがまとまった映像が本日、生配信で公開されました。
 ちょっと観てみましょう。

 


 ううむ、こうして年代順にみて行くと、最初は不安の中、表敬訪問をしていった彼女たちが徐々に元気を与えられる存在になっていき、その関係が形になって残り始めているフェーズになったのかな、と思います。
 ある人は48グループから生きる希望をもらい、ある人は48グループから未来へのヒントをもらう。


 印象に残った点をいくつか挙げて行くと、まずは10年前の東北のリアル。
 特に2011年から14年ぐらいまでの町の光景は、観ながら絶望感を感じるぐらいの瓦礫の山がそこにはありました。怪獣映画が好きな僕が見ても、こんな絶望感がフィクションではなく、リアルの中にある恐ろしさを感じました。自分の故郷がこうなったら、と仮定した時に凄まじい喪失感を抱きます。
 
 次に家や家族を失った子供たちが、はしゃいで踊っている様子を見て、ある小学校の教頭先生が「子供たちのありえない姿、見させていただきました。肩組んで、ジャンプして、手を振って。あり得ないんですよ。あの子供たちのかなり多くの子がおうち流されました。親戚、家族、亡くした子もいます。思い出の品も大事なものも、全部流れて無くなって、今、住まいも仮設住宅にいる子もいっぱいいるんですけど、あんな姿はじめて見ました。皆さんの力ですね。すごいです。ぜひ続けてください」という場面がありました。
 ここでアイドルというものが、決して不要不急ではなく、誰かに力を与えるものなんだと感じました。それが、子供たちという忖度を知らないものたちだからこそ、余計に。
 この教頭先生の話を聞いている、珠理奈が思わず泣きそうになっているところも印象的で、他者の痛みを想像できる優しい人だと思いました。

 優しさで言うと、かおたんの寄り添い方も素敵でしてね。
 山田町との付き合いはSKE48ファンの皆さんの中では有名だと思いますが、現地のお子さんからの手紙を聞いていると、東北への訪問を点で終わらせずに線にしていく感じがしましてね。しかも、その点と点とつなぐ線は運営が用意したペンだけではなくて、自分がプライベートで行って、より太い線にしていくところが流石だと思いました。
 2013年から2019年にかけてどんどん成り上がって行ったかおたんですが、どんなに立場が変わっても、東北の人たちとの関係が変わらないのが彼女の良いところだと思います。特に、お手紙を聞いている時の眼差しと表情の豊かさを観ていると、本当に良いアイドルがSKE48には居てくれたな、と嬉しくなります。
 
 それから、東北の映像を観て、必ず思いだすメンバーがいます。
 それがみなるんこと大場美奈です。 
 今日の配信でもコメントを求められて、凄く良い言葉を残しています。
 「沢山の言葉を現地の方からかけていただくんですけど、その中でもやっぱり『忘れないでいてくれてありがとう』って言われたことを凄く印象に残ってて。私達としては、絶対忘れることは無いのに、被災された方々はそういう言葉をかけてくれているっていうことは、そういうことに不安だったり、何か思っていることがあるんだって感じた時に、これから自分がいくつになった時も絶対に忘れないでいようと思ったし、これから私たちが出来ることは少ないかもしれないけど、全力でやっていけたらいいなって、凄く強く思いました」
 丁度、彼女が被災地へ行き始めた時、彼女はスキャンダルで様々なものを失っていました。
 もう一度、大場美奈を再興させ始めていた時でもあったのでは、と僕は思っています。
 ドキュメンタリー映画の2012年のエンディング付近で、100年松を見上げるみなるんの表情が未だに忘れられません。あの時、彼女はどんなことをイメージしていたのか。
 10年近く経った彼女の顔は穏やかでした。

 震災から10年。
 東北出身の48メンバーも増え、気づけば新潟にNGT48も出来ました。 
 総選挙の会場にもなりました。
 未だに、「掌が語ること」も歌い継がれています(本気を出した時の秋元康って本当に良い歌詞かきますよね。最後の「ラララ」のとこで毎回号泣してしまいます)。

 
 そして、ヒット曲があるって大きいことだな、とも思いましてね。
 大人から子供までみんな知っている曲がある。
 一緒に歌ったり、踊るだけで少しだけ気分が明るくなる。
 いや、口ずさんだり、メロディーにゆられるだけでも良い。
 大変な「日常」を乗り越える力をもらえる。
 それは、問題の規模こそ違えど、僕らも同じかも知れません。

 次の10年で、東北がどんな風になっているのか。
 ずっと、48グループとの線がつながり続けて欲しいなと今日の配信を観て思いました。

2021年3月8日月曜日

#HappyJurinaDay2021

 おまけの1年か必然の1年か?


 本日、3月8日は松井珠理奈の24回目の誕生日!
 この1年間で、皆さんが見つめている松井珠理奈像にはどんな変化があったでしょうか?
 今日は珠理奈の誕生日ということで、1日じっくりとこの1年間の珠理奈について考えてみたいと思います。

 まず、一番に僕が感じるのは、「饒舌になった」ということです。
 いや、昔から珠理奈はよく喋るでしょ、と思われる方もいらっしゃると思いますが、そうではなくてですね。

 SNSでの発信が増えたことや、「珠理奈HOSUE」というyoutubeチャンネルや有料の「珠理奈‘s SHARE ROOM」が出来たことで、彼女がある程度自由に発信できる環境が整ったのではないか、と思います。
 そして、その発信の中で、ところどころに見えるこれまでアイドルとして向き合ってきた歴史が感じられるものが多かったです。
 明るく楽しくて、時々ポンコツな彼女の発信の中で一番心に残っているのはこれです。


 


 昨年引退したまゆゆのこと、そして、自身の引退のこと。
 読んだ時は、驚きというよりは納得の方が大きくてですね。
 以前も、「見たくないもの」を沢山みせられてきた珠理奈の立場にたって考えれば、これ以上傷つきながらも芸能界に居てほしいか、というと申し訳ない気がするぐらい、見えるところや見えないところで好き放題書かれてきたと思うんですよね。
 物凄く浅く反射的に悪口を書く人間が居れば、じっと失敗を待っている人間もいます。どちらも限られた人生の時間を、もっと建設的なことに使えよ、と思ってしまいます。
 卒業を控えて毎日伸び伸びと発信している彼女の姿を見ると、僕らの日常の時間が少しだけ柔らかになります。
 

 メディア出演では「格付けチェック」や「鍵のかかった部屋」、「冒険少年」なんかもありましたが、プロレス、格闘技関係が印象的でしてね。
 プロレスリングノアでは、リングに上がって超善人の蝶野正洋さんにビンタしてましたね。「週刊プロレス」の表紙にもなりましたし。新日本プロレスファンの僕としては、また新日のアンバサダーとかもして欲しいんですけどね。なんか、ケニー・オメガのいるAEWと今年の夏ぐらいにからみそうな気配もしてますし。


 そして、アイドルとしては、最後の「手をつなぎながら」公演出演、メンバー全員で挑んだ最後のシングル「恋落ちフラグ」の2点が思い浮かびます。どちらも自分の大事なものをSKE48に残して行くようでした。
 特に「恋落ちフラグ」の名古屋ドーム(今はバンテ―リン!ですね)で、もう一度踊るということを形を変えて後輩達に体験させたのは、いつかもう一度ここで踊る為の布石になれば良いなと思います。

  

 これからの展開への布石といえば、珠理奈自身もそうで、アイドルのプロデュースも本格化していきました。
 

 Black Pearlという珠理奈プロデュースのユニットでは、メンバー選びから作詞まで手掛け、後輩達への熱いメッセージと説得力溢れる内容になっています。また、メンバー選びも彼女ならではの視点になっていて、順当なメンバー、再びチャンスが巡ってきたメンバー、大抜擢のメンバーと面白い組み合わせになっているな、と感じました。
 自分の卒業曲を他の人からの言葉ではなく、自分で書いてみせたことは、彼女が身体的にだけでなく、表現の部分でも大人になったんだと思います。そうすることで、秋元康視点からの珠理奈像との対比にもなるかな、と思っています。
  

 来月で彼女はいよいよSKE48を卒業します。
 本来だったら去年の9月に卒業しているはずだった彼女。
 この運命のいたずらは、僕らがもらったボーナストラックだったのか、それとも大河ドラマの中で必然のチャプターだったのか。
 まだまだ続くSKE48の歴史が証明していくでしょう。
 色々と書きましたが、人生の半分以上をアイドルに捧げてくれて本当にありがとうと言いたいです。
 これからは24歳の1年は新しいことの連続だと思いますが、まだまだ僕らの心を熱くさせて欲しいですし、時にはそのパフォーマンスで圧倒してみせて欲しいと思います。そして、センターの景色を見続けた人だから導けるプロデュサーとしての手腕にも期待したいと思います。

 自由に。


 もっとジタバタしながら、やりたいことだけやればいい!



2021年3月5日金曜日

「SKE48松井珠理奈を漢字1文字で表すと??」の感想

 それぞれの視線から見た珠理奈像


 漢字は表意文字です。
 漢字の中に意味や音を表す記号があり、いくつかの読み方があります。
 今でこそ、漢字の意味は定着していますが、万葉の時代まで遡ると、今とは少し違った意味や今では消えてしまった意味、書き方があるそうです。
 和歌が遊戯のメインだった時代には限られた文字数の中に少しでも意味が込められるようにという狙いもあったのかも知れません。
 我々が持っている名前も多くの場合、漢字が含まれていて名前を付けてくれた人の想いが込められています(ちなみに、僕の母は全部ひらがなでした)。

 かように漢字というのは、面白いもので、「あなたを漢字1文字で表すと?」のような質問が面接なんかでもありますよね。
 今回は「松井珠理奈を漢字1文字で表すと」なんですが、それぞれの選んだ漢字が珠理奈との距離感だったり、珠理奈への想いだったりが見え隠れしてなかなか面白いですよ。

※公式動画はこちら!


 ううむ、「輝」や「愛」や「真」が多い印象ですかね(奈和ちゃんの『愛』の字がキレイでしたね!)。
 9期や10期のメンバーからしたら、遠くの憧れのような存在(この漢字もありましたね)でもあるのかも知れません。
 ここからは、気になった漢字を箇条書き形式で。

 大谷さんの「見」という漢字のチョイスが凄く面白くて、彼女を見る目が少し変わりました。同じくまーやんの「目」も同じ理由で良いなあ、と思いました。
 川嶋さんの「懸」のチョイスもシングル曲と絡めていて、「流石!」と言いたくなります。ほののや石塚さんや鬼頭さんの「笑」なんかも、珠理奈がいることでその場が明るくなる感じが出てますし、真凛ちゃんの「厳」というチョイスも彼女が持つ1期生だからこその良い意味での緊張感も表していて好きです。珠理奈の歴史から見ると石川さんの「戦」も似合ってますね。本当に色々なところで戦ってくれました。
 だーすーの「隣」は、SKE48のトップを共に走ってきた彼女ならではの漢字だと思いますし、「背」から「隣」になっただーすーの成長物語も漢字のチョイスから感じますね。
 るーちゃんの「友」も、彼女の自然体な人懐っこさが出ていて好きです。鎌田さんの「要」と書いて「かなめ」を選ぶセンスが素敵です。
 どんちゃんの「好」のチョイスも珠理奈ファンのどんちゃんらしいですね。
 他にも「光」や「陽」という明るいイメージの言葉が多かったですね。ちなみに、「神」は新日本プロレスの現在のチャンピオンである飯伏選手がよく「神になる」って言ってますね。
 あと、全然関係ないですけど、この動画のはたごんの眉毛の雰囲気が好きです。

 こうして、いくつか気になった漢字を羅列していきましたが、それぞれの漢字からSKEメンバーから見た松井珠理奈像が姿を現してきましたね。それは、先頭に立ち、輝き続け、栄という土地を有名にし、メンバーたちに未来を見せてきた姿ではないか、と思います。

 で、散々メンバーの選んだ漢字を見てきたので、僕も何か1文字選ぼうかな、と考えたわけですよ。
 最初は「ダイヤモンド」を漢字で書いて「金剛石」。そして、そこから1文字選んで「剛」にしようかと思ったんですが、直感で浮かんだのは「零」なんですよね。
「珠理奈が『零』だと?許さん!お前が田舎でなかなか映画観に行けなくなったから、『シン・エヴァンゲリオン』のネタバレを初日の朝にお届けしてやる!」と思われた珠理奈ファンの皆さん。まあ、ちょっとここに座って、お茶でも飲みながら話を聞いてくださいな。
 まず、「零」はアイドルのポジションだとセンターのポジションですよね。まさに珠理奈にふさわしい。そして、始まりの数字でもあります。0から数字が始まっていきます。そして、正でも負でもなく、素数でも合成数でも単数でもない、唯一無二の存在です。
 更に数学の集合論では、空集合の濃度であり、「リンゴを1個も持っていない状態は、リンゴを0個もっている状態」とも考えられるそうです(数学は専門じゃないんで間違ってたらごめんなさい)。つまり、松井珠理奈が居ないSKE48は松井珠理奈が0人いる状態でもあるんです。もう彼女の存在はないんですが、概念としては0人の珠理奈が残る。そんな願いも込めて「零」を選びました。

 皆さんは、どんな漢字を選んだでしょうか?

 個人的には、珠理奈がこの動画を観て、一人一人の文字の感想を言っていく動画が観てみたいんですが、珠理奈HOUSEさん、どうですかね?

2021年2月11日木曜日

96年世代、4人の挑戦者たち

 黄金の世代


 今年の始めに講談社学術文庫で発売された坪内祐三さんの「慶応三年生まれ、七人の旋毛曲り」という本が非常に面白いです。
 慶応三年に生まれた夏目漱石、宮武骸骨、南方熊楠、幸田露伴、正岡子規、尾崎紅葉、斉藤緑雨の7人が、それぞれのタイミングで世に出て活躍し、日本の文化にどのような影響を与えていったかを書いたエッセイである。上記の7人だけでなく、明治期を代表する有名人たちが引用される参考文献の至るところに出てくるので、読んでいるだけで明治期の文学史の勉強にもなるので、おすすめです。
 僕自身は、大正期から昭和初期の文学が研究対象だったので、自分が研究していた作家たちが学生時代に観ていた憧れていた東京の文学界や、彼らの師匠筋やカウンターの対象にあたる人達の「生き方」を勉強し直せたのが、とても楽しかったです。

 さて、読み終わってから、ふと、こういうアプローチをSKE48でするとしたら、どの世代に成立するだろうと思いましてね。
 多分、48グループ全体で見ると、91年生まれが重要な世代だと思います。
 前田敦子・高橋みなみ・板野友美・柏木由紀・北原里英・大家志津香と、一般の方でも名前と顔が一致するメンバーばかりだと思いますし、それぞれが持つキャラクター性もバラバラですが多くの人達の心を掴みました。

 SKE48では、松井玲奈・高柳明音・須田亜香里の3人が挙げられます。
 もうこの3人だけで、充分、SKE48に重要な要素を作っているじゃないか、と考えると思うんですよね。松井玲奈の表現力と時折見せる狂気・高柳明音の熱さとリーダーシップ・須田亜香里の握手力と自己プロデュース力。黄金世代であることは間違いないと思います。しかし、この3人でSKE48の中核を語るには、まだ足りない気がします(かおたんが1歳年上なのが非常に惜しかった)。

 そこで、もう少し下の世代を見て行きましょう。
 僕が注目したいのは、1996年世代。つまり、平成8年4月1日から平成9年3月31日生まれの4人です。
 松井珠理奈・古畑奈和・鎌田菜月・青木詩織です。



 この4人の共通点は、何でしょう?
 それは、彼女たち4人がそれぞれ挑戦者であることです。

 彼女たちが48グループ内で置かれた状況は、必ずしも恵まれているとは言えませんでした。「はっ?松井珠理奈とか超推されだろ?」と思われるかも知れませんが、小学生の頃からアンチがワラワラいる、なんなら週末に握手ついでに、あなたの居るところへ会いに来る人生って経験したことがありますか?
 「AKB48を超える」、「総選挙で1位になる」そんな途方もない目標を自分だけのものではなく、色々な人から託されるようになったことがありますか?
 恐ろしいぐらい高い目標に向けて、全力で走りつづける姿に心動かされた人は多いんじゃないでしょうか?僕もその一人です。
 しかし、140キロ以上のスピードを出し続けた車は、ブレーキを踏むと反動で運転手を殺してしまうように、珠理奈は止まらない生き方を選びます。その反動が要所要所に出ますが、2018年ごろにもろに出てしまったのではないかと思います。
 以前、「松井珠理奈がSKE48のダンスの基準を作った」と秋元康が公式本の中で語っていましたが、それは別にダンスだけではなく、精神性もそうだったのかも知れません。
 今年の彼女は、プロデューサーとしての1面もそうですが、彼女自身の人間性の掘り下げをyoutubeで始めています。電光石火に銀の靴(分かった人は映画ヲタクと見た)のカリスマではなく、親しみやすい一人の女性の姿がいつもそこにはあります。
 そう、新しい挑戦を卒業に向けて彼女は始めているわけですね。

 

 松井珠理奈より半年早く生まれた古畑奈和もまた挑戦者でした。
 いつもなら、「詳しくはこの辺の記事を読んでね?」と手抜き全開でリンクを貼るところですが、今回はじっくりと書いてみましょう。
 珠理奈と比較した時、奈和ちゃんは先を走っていた同期がいました。そして、握手を入り口に表現力が注目され、AKB48との兼任が始まります。二つのグループをまたにかけながら、自分たちの世代で48グループを躍進させたいという夢を持ちます(2015年の総選挙のスピーチなんか特に)。しかし、兼任は解除、ここで彼女は腐らずに次々と演技力を活かした仕事にチャレンジしていきます。そんな彼女の頑張りとは裏腹に、時代の流れは残酷で、彼女が目指していたセンターは次々と同期や後輩たちが獲得していきます。
 ファンの方々と総選挙の選抜獲得やソロアルバム発売によって、独自の路線を進みます。SKE48でソロアルバムを出しているのは、2021年2月10日現在、彼女と松井珠理奈だけです。
 やがて、満を持してセンターになりますが、それまでどれだけの涙を流したのか、と未だに思います。
 松井玲奈とは違う狂気が彼女の中には備わっていて(何かに全力になると危うい感じは755戦争の時に特に感じました)、曲のヴィジュアライズ化という意味でのダンスならば、今の彼女に叶う人はほとんど居ないのではないかと思います。
 今年の彼女は、新しくモデル仕事が入ったり、時代劇の仕事が入ったりと、アイドルという枠の中に居ながら少しだけ外に繋がる仕事に挑戦しています。古畑奈和の色が次は何色になるのか、楽しみです。


 鎌田菜月は、2013年に6期生としてデビューしますが、当時のSKE48イズムの申し子かというと、そうではありませんでした。
 彼女自身がアイドルになろうと入ったわけではなく、あれよあれよと進む審査と自分が置かれている状況に戸惑っていたそうです。
 彼女の挑戦は、アイドルになることから始まったのかもしれません。
 やがて、SNSを駆使した「自撮り詐欺」や「鎌田を脱がせてみろ」というファン心理を理解した自己プロデュースでどんどんポジションを上げていきます。
 ただ、順風満帆かというとそうではなく、彼女自身も「ダンスを覚えるのが得意ではなかった」と語っていますし、同期から遅刻することもあったと語られています。
 既に昇格した同期は選抜にどんどん入り、後輩も選抜入りを果たしていく。
 そんな中でも彼女は、腐らずに地道に公演に出ながら発信を続けていきます。
 やがて、様々な人々の目に触れ、彼女の「趣味」は「仕事」に変わっていきます。
 先日、彼女の「趣味」について少しこのブログで触れましたが、将棋関連の仕事で名鑑の表紙になる偉業は、48グループで初であり、誰にも真似できない彼女しかできないことだと思います。
 今年も彼女は「趣味」を「仕事」へと繋げていきます。
 いや、競馬などを観ていると、「仕事」が「趣味」へ変わるものも出てくるかも知れません。そうすることによって、彼女の宇宙はさらに広がり続けるでしょう。
 好きなものを熱く語るという姿はSKE48の二次元同好会の流れを汲みながらも、新しい流れを作り始めていると思っています。あとは、彼女のフォロワーがメンバーから出てくるかが次の注目ポイントだと思います。ここでいうフォロワーとは、スタイルを真似てさらに進化させるメンバーです。
 そうすることによって、新しいSKE48の選択肢が出てくるのではと思っています。


 鎌田菜月と同期の青木詩織は、静岡からSKE48にやってきたメンバーです。
 全員選抜という今回の「恋落ちフラグ」で初めて選抜入りしたメンバーですが、劇場公演で大活躍し、チームK2の愛されキャラとしてファンの皆さんからは親しまれています。
 彼女の功績で何より大きいのはやいづ親善大使としての活躍です。
 48グループの地方メンバーの魅力の一つとして、ファンが縁もゆかりもなかった土地に対して一つ意味が乗ることが挙げられると思います。「ああ、〇〇ちゃんの出身地なんだ」とか「今度〇〇でイベントがあるから行くか」とかですね。
 僕は一度も焼津に行ったことは無いですが、おしりんのおかげで名前を覚えましたし、ゆるキャラの「やいちゃん」も可愛くて、一時期はパソコンの待ち受け画面にしていました。僕と同じように、彼女のおかげで焼津と繋がった人がいるかもしれません。また、様々な地下鉄での広告もインパクトが大きかったですね(詳しくはこちらのリンクをhttps://www.city.yaizu.lg.jp/g08-002/tikatetu_koukoku.html)。
 選抜入りしなくても外仕事で活躍し、なんなら地元に錦を飾る。
 地方初の48グループだからこそ、土地に新しいレイヤーを乗せられる。
 そんな可能性を彼女を始め、どんちゃんやかおたんも示したのではないかと思います。
 今、彼女はローカルとはまた違った方向のチャレンジを進めています。
 それがtiktokを始めとするSNSです。
 「tiktok?そんなもん見るかよ。ぺっ!」みたいなスタンスだったんですが、日向坂46のキュン動画は好きなので、きっと先入観なんでしょうね。youtubeの方も専用チャンネルを作って動画をアップし続けています。
 彼女が挑戦しているのは、ひょっとすると僕のような「古い観客」かも知れません。新しい面白さを求めて、今日も新しいアイディアを企画しているかと思うと、本当に脱帽します。
 ローカルとグルーバル、どちらも開拓していける強みがおしりんにはあります。

 こうして、96年世代の4人を並べてみると、SKE48のこれまでとこれからの可能性が秘められている気がします。そして、様々な夢の叶え方や挑戦の仕方を提示してくれています。

 珠理奈と奈和ちゃんの関係は、以前書きましたが、珠理奈と鎌田さんの関係。奈和ちゃんとおしりんの関係。珠理奈とおしりん、鎌田さんと奈和ちゃんの関係、考えてみると、面白い組み合わせがありそうです。
 果たして、あと5年経った時に、96年組こそが黄金世代だったと言われるか、それとも全く違う世代が輝くのか。今から楽しみです。

※2001年世代の8人について書いた記事はこちら!

https://oboeteitekure.blogspot.com/2021/02/blog-post_35.html

2021年2月3日水曜日

Change Your World①

新しいSKE48イズムへ


 2020年3月24日のFMラジオ「佐藤光春のON8プラス1」のゲストにオードリーの若林さんが来た時のことです。日本語ラップが学生の頃から好きだった若林さん。順番に好きな曲をかけていくんですが、その中で「ラップスター誕生」に出ていたレジェンドラッパーたちと芸人についてこのように語っています。
 「芸人さんと一緒だと思うんだけど、人間の力と言葉の力が合わさって、パンチラインになるもんだろうなと俺は思ってて。漫才もそうだから。その人間の力がやっぱりね。舞台、ライブしてるの袖から見させてもらったけど、やっぱあるね。やっぱ色んな経験されてきてるから。舞台たった時の韻の力がANARCHYさんとか、CIMAさんとか凄いよ。(中略)やっぱ言葉だけで人間が伴ってないと、やっぱり1曲2曲で長続きしなかったりするすんのよ。(中略)自分の人生と歴史としょった言葉だから。(中略)俺は偉そうに言えないんだけど、漫才にたとえると、あの人が言うからあの言葉面白いよねっていうのがあるから。」
 
 そうなんですよね。
 人の生き方や生き様がにじみ出る歌詞や漫才は、凄く心が動かされます。
 クリーピーナッツの「かつて天才だった俺たちへ」やオードリーの武道館での漫才での「いつまで漫才する気だよ?」「命尽きるまでだよ!」というやりとりには、この人達だからこそというドラマがあります。
 そういえば、入江悠監督の名作「サイタマノラッパー」の一番最後のシーンで交わすフリースタイルのラップは、ヒップホップと程遠い場所で歌われるのにも関わらず、主人公たちしか言えない言葉で綴られていたからこその感動がありました。

 じゃあ、SKE48の中でそんな曲はあるんでしょうか?
 たとえば、佐藤実絵子さん作詞の「5色の虹」は彼女ならではの言葉ですし、1期生の5人だからこそ唄える歌詞だと思います(いますぐ、音源化してほしいです)。
 そして、「恋落ちフラグ」のカップリング曲である「Change Your World」も、作詞を担当した松井珠理奈ならではの世界観になっています。
 そう、ずっと48グループの最前線にいた彼女だからこそ、説得力が伴うメッセージがあります。
 まずは、聴いてみましょう。



 僕の感想としては「そう来ましたか」というMVでした。
 まず、歌詞の世界から見て行くと、1番のAメロでは周りの声に惑わされる自分に葛藤しつつ、走り出す主人公の状況が描かれます。そして、1番サビ前からは「神の導き」が聞こえてきます。サビではAメロで示された周りの評価なんて気にせずに変えていけ、というメッセージが語られます。「強い雨」や「強い風」が「批判」や「周りの言葉」とリンクしそうですね。
 2番では努力だけでは認められない世界に昔から居たことが語られ、自分の内面の声と向かい合います。2番のサビ前では1番のサビ前と同じく「今」が強調されます。そして、2番のサビが印象的でしてね。過去と比べずにどんなに世界が暗くてもそれを照らす存在になれ、というメッセージが語られます。また暗黒期が来ても、君たちが照らす光になれ、というメッセージにも聞こえます。
 大サビ前では、生きて行く上で辛い局面が何度も来ることを語った上で、その度に強くなれるはずだということが語られます。そして、1番のサビを繰り返して曲は終わります。

 もの凄くストレートなメッセージで、松井珠理奈が書くからこその説得力があると思います。加入当初から「批判」にさらされつつも、評価を変えて行った珠理奈。彼女の歴史と実績が歌詞の説得力を助けていると思います。
 曲は突き抜けるような感じが心地よく、聴けば聴くほど心地よくなるスルメ曲の予感がします。

 さて、選ばれたメンバーに関しては、珠理奈選抜ということで、それぞれが選ばれた意味があるようで、詳しくはタイプBのメイキングで明らかになりますが、個人的には水野愛理が再浮上するチャンスが巡ってきて欲しいなと思っています。MVでは、江籠ちゃんの新しい表情が見られて良かったですね。

 ただ、この曲の真の主役はダンスではないかと思いましてね。
 クレジットをチェックすると、ダンスの振り付けには珠理奈や桑原みずきさんの妹の桑原あやねさんの名前もあります。
 「ダンスのSKE48」を思い出させるような振り付けがカッコ良かったです。

 さて、このBlack Pearlが今後も続くのか1回だけなのかによりますが、カミングフレーバーの路線とは、また違うユニットが出てきましたね。どちらのユニットにも属している青海さんが今後のキーパーソンになりそうな予感もしています。
 新しいダンスのSKE48としてのBlack Pearlと新しい若手ユニットとしてのカミングフレーバーと二つのイズムが出てきていますが、そろそろ別のイズムが出てきても面白いかも知れません。
 たとえば、かつての二次元同好会のような文科系の趣味で番組やムックが出るぐらいのユニットを売り出していくのも面白いかも知れません。
 とにかく、あまりにも大きな松井珠理奈という存在が卒業する不安はありますが、それと同じぐらいに新しい可能性を探すタイミングが訪れている気がします。

 さて、色々と書きましたが、珠理奈が卒業しても曲に込められたメッセージはSKE48に残っていくというのが素敵ですね。
 果たして誰がSKE48のトップランナーになっていくのか。
 プレイヤー兼プロデュサーの松井珠理奈の仕掛けがSKE48の活性化を促すと期待しています。特に上記の2つのユニットに居ないメンバーが燃えるとさらに面白くなるかな、と思います。



2021年2月2日火曜日

Memories~いつの日か会えるまで~①

 スタートライン


 ついに松井珠理奈の卒業曲「Memories~いつの日か会えるまで~」が本日から聴けるようになりました。
 48グループの卒業曲といえば、秋元康先生がメンバーに当て書してリリースということがほとんどでしたが、今回は松井珠理奈自身が作詞しています(仕上がりの確認は秋元先生もされています)。作曲は福田貴訓さんが担当。48グループの曲だと、「ハステとワステ」や「動機」、「ぽんこつブルース」や「やさしくするよりキスをして」を作曲された方です。SKE48だと「あうんのキス」を担当されています。

 まずは、聴いてみましょう!


 これまでの自分を纏って旅立つという美しいMVですね。
 旅立ちを題材に描かれた歌詞の世界をまずは見て行きましょう。
 非常に私小説的な内容だと思っています。
 1番の歌詞は、これからを振り返る内容がメインになります。
 「階段」というキーワードが、「大声ダイヤモンド」のMVや「総選挙」をイメージさせられますね。「階段、登らせてもらおうか」という。「無邪気」というワードから年少メンであった頃から、48グループの前線を走っていたことが伺えます。
 そして、1番のサビ前で「倒れそうになった私」の手を握ってくれた人というのは、メンバーであり、ファンの皆さんやご家族でもあったんだと思います。この箇所は彼女が作詞した「あなたの手」の歌詞と繋がる感じもしますね。
 そして、1番のサビでは、「旅立ち」を意識させるものになっています。
 旅といえば、宮澤佐江の卒業曲「旅の途中」が、次の旅路に向けての曲であれば、この曲は初めての旅への気持ちが綴られています。
 

 トランクの中に「記憶」という貴重な財産を持って、強くなることを誓いながら彼女は待っていて欲しいと願います。
 
 2番は、「オレンジ色」というSKE48カラーを連想させる歌詞が出てきます。「オレンジ色」を構成するのがサイリウムだとすれば、ファンの方々もこの言葉には含まれるかも知れません。自分が進んできた「軌跡」をファンの方々も知っているからこそ、聴いている我々にも見えるはずだと問いかけます。それは自身の裏返しでもあるのかな、と思います。
 2番でトランクに詰めたのは「大事な想い」。「記憶」と「想い」が重なるともうそれだけで随筆が書けそうな気がしますが、次に会えるまで笑っていて欲しいと願います。
 2番のサビでは、アイドルとして「サヨナラ」した後も、好きでいてほしいという願いと、別れの場面であるのに、記憶は一気に出会った日を意識させます。

 大サビでは、1番と2番のサビが繰り返されます。
 ここで二つのサビを重ねることで浮き上がってくるのは、「また会える」というメッセージです。「ありがとう」や「サヨナラ」といった別れを連想させる言葉の後で、それぞれのサビが来るんですが、「待ってて」「会えるまで」というもう1回会えることを連想させる言葉が呼応するように書かれています。
 
 アイドル松井珠理奈の終わりと女優でありプロデュサー松井珠理奈のスタートラインを意識させる歌詞の世界になっています。

 MVは、一歩一歩が年表のような区切りになっていて、プロジェクションマッピング
のようにMVなどが映り、時には彼女が着ているドレスに映り込むこともあります。「記憶」というのが、自分の脳の中にあるのではなく、ふと身体の中にも眠っているのではないか、と思わされます。
 また、思い出が今の自分を彩るというのは、本当に技術と発想がマッチしていて、お見事という感じです。多分、生きている間、ずっとドレスの柄は変わり続けるんでしょうね。
 狭い部屋の中で3方がスクリーンがあり、それを珠理奈が見ているというのは、人間の内面世界のようにも見えました(特に真っ白な背景の時は)。スタートラインに立ち、ほんの一瞬、思い出を振り返るかのような世界にも見えました。
 最後に強く眼を閉じて、もう一度開いた時の珠理奈の表情はが意味するものは。僕は映画「新聞記者」のラストシーンを思い出しました。

 できれば、SKE48卒業後も大切に聴いていきたい1曲です。

※個人的に1番好きな珠理奈作詞曲「あの日交わした約束」の記事はこちら!
 

2021年2月1日月曜日

自分なりの「守り」方で

 あの日見た背中




 誰かを「守る」と誓ったことはあるでしょうか?


 フィクションの中であれば、誰かからの暴力や組織の危機から「守る」ことが挙げられるかも知れません。
 しかし、我々の日常の中で大切な人を「守る」ということは、なかなか見えにくいことです。
 映画「花束みたいな恋をした」の中で、恋人との関係を「守る」為に主人公の一人は「普通」になろうとしますが、それが二人の関係がずれるきっかけになるということが描かれていましたが、「守っている」つもりでも、実は壊していることもあります。
 かように、「守る」ということは難しいです。

 アイドルの世界も同じです。
 グループやメンバーを守っていくというのは、すぐに取りかかれたり結果が出ることではありません。
 かつて、SKE48は松井珠理奈と松井玲奈の2枚看板が、グループの中心にありました。運動場の汗の匂いがする珠理奈と、舞台の汗の匂いがする玲奈、同じ松井でありながら発する光が対照的だったこともあり、それぞれの光に多くの人々が集まりました。
 やがて、時が流れるにつれて他グループの台頭とアイドルブームの終息もあり、徐々にファンの総数は減っていきます。
 それでも、2015年8月末に行われた松井玲奈卒業コンサートは豊田スタジアムで2日間に渡って行われ、松井玲奈の最後を見届ける為に多くのアイドルファンが集まりました。
 この時、「手紙のこと」で一人一人のメンバーに向けて松井玲奈が言った「一人一人がSKE48の未来です」という言葉が非常に印象的でした。
 松井玲奈について古畑奈和は、2015年8月31日のブログで次のように書いています。

https://ameblo.jp/ske48official/entry-12068036605.html

 「優しい手に何度も何度も包まれて引っ張ってもらいました」
 「人見知りなのに仲良くしようと話しかけて」
 「前に立つ人として引っ張り支える人として」

 松井玲奈のことを思いながら、彼女が背負ってきた「荷物」について思いを馳せます。
 そして、自分が支えてもらったことを今度は自分がしていこうと、彼女は誓います。

 SKE48に関しては、前日のブログで書いています。

https://ameblo.jp/ske48official/entry-12067666930.html

 「守らなきゃ」という気持ちが生まれました。


 この年のリクエストアワーで古畑奈和は、松井玲奈が務めたセンターポジションで「前のめり」を披露します。


 翌年の3月4日。
 宮澤佐江の卒業コンサートが行われます。
 AKB総選挙の選抜常連であり、外仕事の量も多く、SKE48には貴重な女性ファンも引っ張ってこれる魅力的なメンバーでした。
 彼女がMVの画面に出てくるだけで、華やかさが出る貴重なメンバーでした。
 3月4日の古畑奈和のブログを読んでみましょう。
 https://ameblo.jp/ske48official/entry-12135857465.html

 「温かさ」、「安心感」、ベテランメンバーである宮澤佐江がSKE48にくれたものは、ファンである我々よりもSKE48のメンバーがより多く感じていたのかも知れません。
 そういえば、BUBUKAの取材で、宮澤佐江と古畑奈和の優しさが似ていることを指摘されていましたね。

https://ameblo.jp/ske48official/entry-12045112346.html


 思えば古畑奈和は、上記の「前のめり」だけでなく、松井玲奈の「枯葉のステーション」を演奏し、「AKB49」を宮澤佐江に次いで主演を担当します(特に『君はペガサス』の世界観があんなに似合う人はいないと思います)。
 サックス演奏という新しい汗の匂いと、上記の二人に通じる表現力。
 古畑奈和という人ならではの魅力と、二人の偉大な先輩たちの素晴らしい点を彼女は別れと共に再認識し、吸収していきます。
 そして、2016年の総選挙が近づいてきた5月12日。
 残された松井珠理奈への想いを古畑奈和は語ります。

https://ameblo.jp/ske48official/entry-12159730736.html

 「珠理奈さんを守りたい」、「背負っている荷物を少しでも私に持たせてもらえたら」、後輩ながらも抱きしめた珠理奈の背中。彼女にかかった負荷と自分も気づけていたらという後悔。
 松井玲奈にも宮澤佐江にもなれないけれど、自分のやり方で珠理奈とSKE48を「守る」。
 ワクワクさせてくれる、夢を与えてくれたグループを守る。
 思えば、2015年の総選挙での彼女のスピーチは、まさにこの言葉と繋がりますね。
 ただし、まだ彼女はもう一皮むける過渡期の真っただ中でもあったので、早くグループを守れる存在になりたい気持ちと自分の現状を比べて、もどかしい気持ちもあったのではというのも微かに感じます。

 やがて、2017年。
 松井珠理奈の代わりに単独センターとして小畑優奈が選ばれます。
 ゆななのフレッシュな魅力は世代交代を予感させるものでした。
 個人的には、この2017年が来る前の「金の愛、銀の愛」で古畑奈和センターという選択も面白かったのではないか、と思っています。彼女の当時の想いともう一押しとしてセンターという選択肢があれば、もう少し早く珠理奈の荷物を一緒に持ち、未来は変わっていたのかな、とも考えたりもします。

 2019年、古畑奈和はキャリア8年目にしてセンターになります。
 松井珠理奈も雑誌のインタビューで「奈和ちゃんなら安心して任せられる」ということを語っています。
 正直、8年目でセンターということに対して、早い遅いという認識は人それぞれですが、総選挙で2回の選抜入りという結果を出した説得力がありました。そして、彼女なら大丈夫だという「安心感」も。
 そこから、グループを守るためにセンターだった珠理奈の分まで彼女はメディア露出していきます。レギュラー番組も始まりました。ソロの楽曲も増えて行きました。勿論、全盛期ほど外仕事はありません。それでも、センターとしてマイペースながらも、決めるところは決めて(特に対外試合)グループを「守って」いきました。


 この記事を書いているのは、2021年2月1日の夜です。
 明日の朝から、松井珠理奈の卒業シングルが全国の店頭に並びます。
 SKE48の象徴であり、多くの荷物を背負っていた人。
 名前の無い悪意に傷けられ続けた人。
 誰よりもグループを愛していた人。
 あの日見た背中は、今、奈和ちゃんにはどんな風に見えているんでしょう。
 そして、いよいよ、本当の意味でSKE48を「守る」期間がこれから始まります。
 珠理奈を見送る古畑奈和の背中を今度は、どの後輩が見つめているのか。
 あの日の奈和ちゃんの気持ちを、後輩もきっと感じるのではないかと思っています。
 ずっとSKE48と大切な人を「守って」いって欲しい。

 今夜は「前のめり」を聴いて寝たいと思います。



2021年1月12日火曜日

恋落ちフラグ①

 君が振り返った先には


 2020年1月12日。
 松井珠理奈の卒業シングル「恋落ちフラグ」がついに解禁しましたよ。
 歌詞はまだ全文発表されてないので、MVの内容を中心に観ていきたいと思います。
 ただ、一言だけ書いておくと、やはり「Stand by you」のアップデート版に僕は感じます。より明確に自分の気持ちが分かったというような。この辺りは、また歌詞がはっきりしてから考えましょう!

 公式MVはこちら!

 


 もうね、僕は観ながら泣きましたよ。
 だって、珠理奈がポニーテールで振り返るシーンがあるじゃないですか? 
 また、このモチーフ入れてきたかと!
 「前のめり」にあった珠理奈の振り返るシーンを思い出してください。
 一人で沖縄の海に佇んでましたよね。
 3年後のシングル「Stand by you」では暗闇の中で振り返ってましたよね。希望を見つけて選抜メンバーに抱き着きます。
 そして、満を持して今回の「恋落ちフラグ」ですよ!
 SKE48の全メンバーのエールを受けて(別撮りなのにみんな珠理奈への応援のメッセージを叫んでいたエピソードも素敵)、手を振る表情。
 多くの仲間を見送ってきた彼女がついに旅立つ時が来たか…と感慨深くなりました(『神々の領域の衣装』の特別さがより際立つ感じにもなりましたしね)。
 あと、松井玲奈の「前のめり」が海を連想させるMVなのに対して、珠理奈の「恋落ちフラグ」が空港という空を連想させるMVでソロショットというのも印象的です。

 MVのラストで様々な国の言語で「ありがとう」の言葉が出ていますが、珠理奈の記事を書いた時って世界中の色々な方が読みにきてくださるんですよね。ワールドワイドなメンバーだからこそ、感謝の気持ちをヴィジュアライズ化しているのが良いですね。曲のアレンジにどことなくチャイニーズメロディーぽいアレンジが入ってるのも好きです。
 振り付けを観ていると、過去の曲の振り付けを連想させるものがチラホラありますね。僕が気づいたのは「コケティッシュ渋滞中」です。
 なんとなく、tiktokとかで真似しやすそうなダンスですよね。新しくSKE48を知るきっかけのダンスになると良いなと思います。
 
 珠理奈以外のメンバーで見て行くと、やっぱり、古畑奈和さんですよ。
 なんですか、あの動き。
 一瞬一瞬、止めの動きを入れることで、キレを感じさせますよね。
 2番のところも良いんですが、最初のソロカットもカッコいいんですよね。
 流石はセクシーチーム筆頭。
 MVで6チームに分かれていたので、「ま、まさか、NMB48のNAMBATTLEみたいに6チームに分かれて戦うんじゃ…」と心配していたんですが、それぞれの個性に合わせたチーム分けだったんですね。
 ほののをカッコいいチームに入れたのは、これからどうなって欲しいのか、という期待の表れのように感じました。
 しなやかさを表すチームに鎌田さんを入れているのも、昔だったら分からないんでしょうが、去年彼女について勉強したんで今は納得です。よこにゃんは髪の流れにも目が行きますね。
 そして、だーすーとだーそーのこんな豪華な使い方があったかと。
 2分27秒あたりで、熊ちゃんが一瞬だけ太陽を背負うカットがあるんですが、彼女のイメージにぴったりです。

 最後に名古屋ドームで全員で踊るところも良くてですね。
 久々に多人数の中から推しを探すというのをやりましたよ。何回一時停止しながら、探したことか。どんなに後ろでもどんなに端でも見つけるぜ、という気分に久々になりました。
 そして、その動作を繰り返していくうちに、「あれ、このMV1秒1秒のどこかにSKE48誰かの素敵なところが映っているMVなんじゃないか」と思いはじめましてね。試しに0.5倍速で再生すると、後ろの方のメンバーもちゃんと表情を作っていることに気づかされます。あと、各メンバーが珠理奈に向かって手を振る時の表情も凄く分かりやすくなるので、1度試してみてください(実は深井ねがいちゃんが、手を振りながらこっち見てくれてます)。

 話を戻すと、ユニットの発表だったり、選抜の序列だったりで色々と思うことがあるファンの方もいらっしゃると思います。
 でも、SKE48ってやっぱり一人一人が主役で誰かにとって特別な存在なんだな、と気づかされたMVでもあります。

 30秒あたりでメンバーたちが走る様子は、これからまた新しいスタートだという若さとエネルギーに満ち溢れています。
 珠理奈も今日の配信で言っていましたが、これは終わりではなく新しいスタートのためのシングルでもあるんですよね。
 ロケ地もSKE48に縁のある場所が多かったですが、名古屋ドームでSKE48全員で踊れたことはこれからの財産になると思います。メンバー一人一人のことを考えた、本当に優しい珠理奈らしいMVになりました。
 SKE48は、今第何章か分かりませんが、開いたまま終わり、新しい章に進む。
 そんな気持ちにさせてくれました。
 最後に少しだけ見せる珠理奈の背中と天にかかげた指、そして「センキュー!」がアイドル活動のハッピーエンドを僕には予感させます。
 ああ、また大箱でSKE48が観たい!

2021年1月9日土曜日

珠理奈HOUSE「生電話企画】松井珠理奈にファンが電話したらまさかの結末に…!?」の感想

もう一度、繋がり方の可能性を求めて


 新型コロナウイルスの影響で、僕らの生活は一気に変化を遂げました。
 それはこれまで当たり前に出来ていたことが出来なくなる不便さもありましたし、もう一度、自分たちにとっての当たり前の大切さを思い出させるものでもありました。
 臨床心理学者の関谷裕希さんは、このコロナ時代で我々の中に不安や孤独感、落ち込みや無力感を溜めやすくなっていることを分析しています。そして、対応策としては、マインドフルネスや行動の活性化、身体活動、睡眠、そして、こういう時だからこそ、立ち止まって自分のことを考えるきっかけにして、自分の大事なものについてフォーカスを当ててみてほしいということを語っていました。

 ううむ、自分の大事なものか、と思いましてね。
 この辺りは私的なことを書くnoteに綴るとして、松井珠理奈にとっては何だろう、とふと考えましてね。以前の珠理奈HOUSEの記事で超有名人でありながら、ファンを大事にしていることを書きましたが、今回紹介する動画では、彼女が本当にファンを大事にしていることが見えてくる動画だと思います。
 ※まだ観てない方は、こちらのリンクからチェック!
 


 まず、初見の感想は、珠理奈の横に置いてあるオレンジジュースが、本当に美味しそう。ああ、味のある水が飲みたい。
 さて、こちらの企画、皆さんは参加しましたでしょうか?
 僕はですね、27回ぐらいかけたところで、心が折れて止めてしまいましたよ。
 こちらの動画で驚いたのが、ファンの方のあだ名を覚えていることは勿論ですが、声を聞いただけであだ名を覚えていたことです。
 皆さん、松井珠理奈の握手会の部数を覚えてらっしゃいますでしょうか?
 彼女が昔の曲の振り付けや歌詞をよく覚えていることに驚きますが、握手会というイベントにも全力で向かい合っていたんだなあ、と感じます。
 それから、ラストのスタッフの方の言葉で、裏側でも好感度が高いということが明らかになっていましたね。コンサートのメイキングや固定マイク(懐かしの隠しコマンドのやつですね)の映像を観ていると、本当に誰に対しても優しく礼儀正しかったのではと思います。
 動画の最後で「皆さんと何かする機会、これからどんどん増やしていけたらいいな、と思いますし、このYoutubeのどんどん配信していきたいなと思っていますので、この珠理奈HOUSEを通して、皆さんが繋がってるなと感じて頂けるように、これからも頑張っていきたいと思いますので」と語っています。
 僕はだいたい、珠理奈HOUSEの感想を動画投稿された当日に書いてしまうんですが、たまに1週間ぐらいして、もう一度動画を観た時に、コメント欄は様々な国のコメントで溢れています。そして、誹謗中傷をするようなコメントはありません。オープンですが、ファンの方々が安心してコメントできて、彼女の魅力を楽しめるというのは、これから卒業後も更に大事な場所になる気がします。
 冒頭に書いた「自分が大事にしたいもの」、珠理奈にとってはファンの方々の存在なのではないか、と改めて思いました。
 冷笑的な人は、「いやいや金儲けのためだよ」とか「あんなのキャラ作ってるだけだよ」というかも知れません。誤解を与えるような報道もずっとありました。でも、彼女の姿を追っていればいるほど、「珠理奈HOUSE」というチャンネルで彼女がしていることは、自分の魅力の拡張に加えて、ファンの方々を楽しませたいというサービス精神ありきのものだと僕は思います。じゃないと、イヴに電話企画という面倒だし、不確定要素の強いものはなかなかできないとも思いますしね。
 何を信じればいいか時々分からなかったり、当たり前が揺らいでいる時代だから、真っすぐな彼女の姿にホッとする時があります。2021年も彼女のいる「珠理奈HOUSE」に行くのが楽しみです。

2020年12月30日水曜日

珠理奈HOUSE「【プロレス】松井珠理奈 衝撃のビンタ & NOAH舞台裏に初潜入!!」の感想

趣味から感じるもの


 よく誰かから趣味をおすすめされる際に「一度、生で観てみれば分かるから」と言われることがあります。偏見を捨てて、一度自分で知ることで見えてくるものがあるということですね。今回の珠理奈HOUSEでは、知ることについて珠理奈が語っています。

 まずは、観てみましょう。



 ううむ、新日本プロレスとスターダムぐらいしかプロレスを履修していない僕は、今のNOAHの風景にかなり戸惑っていますよ。なんで武藤敬司が居て、蝶野正洋が居て、船木誠勝もいて、なんなら藤田まで上がってるの?15年前ぐらいの新日本?という戸惑いですね。
 あと、丸藤選手の入場テーマ久々に聴きましたよ。
 以前、働いていた職場の女性がプロレスファンで、NOAHの大会後の食事会に参加したことがあるそうなんですが、丸藤選手はいたずらっ子のようにお茶目だったと語っていましたね。

 まず、印象的だったのが、珠理奈のプロレス愛ですね。
 うん、正直、新日本プロレスのアンバサダーからNOAHのアンバサダーになった時は、複雑な気持ちがありましたよ。「えっ、ケニー・オメガとかわりと推してたよね?」とか「G1の予想とかも握手会でしてくれて、見事に飯伏を的中させてたよね?」とかね。
 でも、彼女はプロレスというジャンルが好きなんですね。
 この辺りはオードリーの若林さんが新日本プロレスだけでなく、大日本プロレスも観に行ったエピソードとも通じます。
 で、まずは武藤敬司との対談。
 うーむ、最近の武藤選手というと、長州力さんのTwitterで話題ですが、僕がプロレスを好きになったきっかけはこの人なんですよね。2001年秋の東京ドームの武藤・馳組対永田・秋山組の試合がめちゃくちゃ良かったんですよね。
 ううむ、膝の手術をしたのは知っていたんですが、まさかまだ現役だったとは。
 対談の中で、イベントを開く旨を語っていましたが、プロレスリングマスターズとかですかね。
 
 いかん、なんか今回、プロレス濃度が濃いので、珠理奈の話を。
 まず、美しい稲妻をアレンジした衣装が似合っていたり、入場するまでは乙女なんですが、いざカメラが回るとパフォーマーの顔になるのが流石ですよね。
 体を張って試合をする選手たちも素晴らしいですが、なんと言っても蝶野正洋さんですよね。
 もう、100点のマイクアピール。
 「こういう放送があり得るのか?」というド正論を語るところとか最高ですね。
 そして、ビンタでお馴染みの蝶野さんにビンタをかますというファインプレイ。
 これはストーリーになるのか?
 次があるのか?
 ちなみに蝶野さんは、様々なところで防災や医療の大切さを語ってくれる、超が付くほどの善人です。


 ううむ、それにしても、会場のファンの方々が珠理奈に優しいのがありがたいですね。
 ちょっとだけ珠理奈サイリウムを持った方も映っていました。
 
 最後の珠理奈のトークで、「観たらパワーをもらえるものかな」というアイドルとの共通点や「オタクが見るもんでしょ?」という偏見を持っていても、実際に知ることによって自分の価値観が変わるという共通点なんかも同じというところも興味深かったです。
 そういえば、ももクロののファンの方、プロレスファンの方が多いですよね(なんとなく、四天王時代の全日ファンが多いイメージ)。運営の方の趣味もあるかも知れませんが、プロレスとアイドルは親和性が高いのかも知れません。
 自分の趣味を通じて、自分の仕事に大事なものを見つけて持って帰るのも、流石珠理奈という感じですね。
 
 プロレスもここ数年観られてないので、色々と落ち着いたら、新日の大阪城ホールとか観に行きたいものです(関西住み)。
 いいんだよ、珠理奈、新日に帰ってきても。
 と、面倒な新日ファン感が出てきたので、この辺で今回は終わりです。
 今年の東京ドームは、飯伏が2冠になる気がしていますよ。