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2021年8月7日土曜日

バトンを渡せる人

誰かがスコアに起こすさ

 2015年7月29日。
 僕は、トヨタスタジアムの1階スタンド席に居ました。
 もう、夏の気持ちの良い夕暮れが終わり、少しだけ雨の匂いがしてくる夜。
 高木由麻奈さんが作曲した「ブリッジ」が流れました。
 48グループでは珍しいインスト曲です。
 48グループの中でみたインスト曲の中では、2014年SSAの時の「Darkness」前のインスト曲は映像と舞台装置と衣装の全てが合わさった完璧な演出で、これを超えるのはなかなか難しいと思っていたんですが、この「ブリッジ」では、夜の野外で当たるスポットライトの明るさと、曲に合わせて躍動するメンバーの身体性の美しさを感じる、「Darkness」の計算された芸術的な演出とは違う、野生動物の強さを感じる演出でした。
 その中で瑞々しい光を放つメンバーがいました。
 SKE48の7期生、杉山愛佳です。
 研究生ながら、先輩ダンスメンバーたちの中で踊る彼女の姿は、将来、「ダンスのSKE」を牽引する存在になるのでは、と期待しました。
 

 彼女のスキルはどこからやってきたのでしょう?
 それは幼い頃からの修練にありました。

 12年前( * ॑꒳ ॑* )♥杉山愛佳 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)

 ううむ、何か目的があって始めたのではなく、続けていたら上達していたというのが凄いですね。彼女にとってダンスというのは、徐々に「習い事」からずっと生活の中にある「習慣」になっていたんですね。
 そうすることで、ダンスを覚えたり、それを表現したりすることの礎ができ始めていたのかも知れません。
 

 やがて、彼女はSKE48の7期生として加入します。
 研究生としてチームSからチームEまでのアンダーを務めてしまうそのダンススキルの高さと、親しみやすいキャラクターが印象的でした。この言葉がぴったりかどうかは分かりませんが、「初代チームSっぽいメンバー」だな、と感じていました。僕はその感じが好きでした。
 またまた、豊かな表情が素敵で「いい人いい人詐欺」のMVは当時の彼女の魅力が見事に残っている映像ではないか、と思います。


 

 


 個人的な体験になってしまうのですが、ある握手会の会場で、丁度、あいあいがレーンから帰っていく時に、ファンの方々が何かあいあいに向かって叫んでいるのに対して、笑いながら「DD!」と返していて、良い意味でふざけあえる仲でいいなあ、と感じたものです。
 ちなみに、彼女は、DDについて二つもアメブロに書いていますね。
 どちらも面白いので、どうぞ。

1年3ヶ月ぶりの東京( * ॑꒳ ॑* )♥杉山愛佳 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)


 配信の楽しみ方( * ॑꒳ ॑* )♥杉山愛佳 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)


 さて、話をもどすとあいあいが加入して数年は、まだ選抜総選挙もありましたし、握手会も現場でガンガン行われていました。どの価値観が正しいというわけではないのですが、時代の空気は公演でダンススキルを見せて行くメンバーに対して、必ずしも追い風が吹いていたかというと、厳しいものがあったのかもしれません。
 しかし、そんな彼女のことをきちんと見ているファンの方やメンバーもいました。
 SKE48の5期生、市野成美もその一人です。
 2018年3月9日に行われた杉山愛佳生誕祭の手紙を読んでみましょう。

「 

 あいあい、お誕生日おめでとう。

 7期生を初めて見た時に凄いダンスが上手い子がいるって思ったのがあいあいで、その時に私はあいあいに惹かれました。

 まだあいあいが研究生だった頃、たくさんアンダーに出てくれたり、私が研究生公演に助っ人に行ったり、公演で関わることが多かった気がします。

 マネージャーさんにお願いされたら何日前だって、何時間前だって「わかりました、できます」そう言って公演に出ている姿を見て、私は自分を見ているようでした。


『市野ならすぐできちゃうもんね』


 私はこの言葉が凄く嫌いです。
 みんな同じ人間だし、ダンスも歌も覚えるのが簡単な人なんていないのに、スクランブルでの出演でも間違えることが少ないから、みんなからはきっと『簡単にできちゃう人』って思われてるんだろうなって思ってました。


 そう思っても、ファンの方や誰かが一人でも『よく頑張ったね。えらいね。本当に凄い!』そう褒めてくれるだけで頑張って良かったって思えるんだよね。きっとあいあいあもそうだったと思います。


 公演で共演しているうちにあいあいあのことをたくさん知って。きゅうりが好きだということを知りました。

 その時にあいあいあのことをきゅうり会のメンバーに誘ったよね。

 5、6人もいたきゅうり会ももう二人になっちゃったね。

 私が会長のはずなのに、予定を立ててくれるのも、きゅうりを持ってきてくれるのも全部あいあいだったね。

 『なるさん、いつもなーんにも持ってこない』っていうあいあいの言葉に『会長は食べる気持ちだけ持ってこればいいんや!』って反抗してごめんね。

 あいあいとお出かけしたこと、ご飯に行ったこと、全部全部楽しかったよ。

 あいあいといたら二人でしょーもない話でずっと笑いあってたよね。期性は違うけど、こんなにも仲良くなってくれてありがとう。

 4月からはお友達になりたいです。なるちゃんって呼んでほしい。

 私が卒業発表してからすぐに連絡をくれて会った時も『ねぇ、なるさん勝手に発表しないで。嫌だー、寂しい』って言ってくれて嬉しかったです。もうこんなにも近くであいあいの頑張りを見ることはできないけれど、ずっとずっとどこかで見守っています。

 悔しいこと、悲しいこと、もちろん嬉しいことも私でよければいっぱい話してください。力にもなれるように頑張るからね。

 あいあいのファンの皆さん、お手紙を書かせてくださってありがとうございました。

 あいあいの16歳の1年が笑顔で溢れる素敵な年になりますように。

 大好きだよ。

 チームE 市野成美より」


 これはメンバーだから分かることであると思いますし、SKE48のパフォーマンスの土台である公演を守ってきたメンバーの評価について改めて考えさせられる手紙だと思います。特に、「非日常」的な総選挙も無くなり、握手会とオンラインを利用したイベントの比率が逆転して、劇場公演のある「日常」が大切だと再認識した、2021年8月現在には、より見直さなければいけないことだと思います。
 
 また、1期生の松井珠理奈も公演前に彼女に忘れられない言葉をかけています。

珠理奈さんからの一言( * ॑꒳ ॑* )♥杉山愛佳 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)


 話を戻すと、彼女の頑張りにファンの方々も応えようと頑張ります。
 2018年の総選挙では、開票日当日こそ名前を呼ばれなかったものの、彼女に自信を与えるものをプレゼントします。
 その時のことを書いた彼女のブログを読んでみましょう。

思い出話( * ॑꒳ ॑* )♥杉山愛佳 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)


 「今でも辛い事があったら私は総選挙を思い出します」の箇所が素晴らしいですね。
 先ほどのなるちゃんの手紙にもあったファンの方々の、自分を肯定してくれる反応にも通じるものがあると思います。

 同じくティーンズユニットの座を争うイベントでも、彼女は自分がもらった順位について書いています。

 感謝の気持ち( * ॑꒳ ॑* )♥杉山愛佳 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)


 「私にとって10位は1位と同じくらいの価値があります」という言葉が、本当に彼女の優しさや思いの受け取り方を僕らに想像させます。
 どうしても競い合うイベントの場合、ランクインしたメンバー、ランクインしなかったメンバーという視点がつきまといますが、それとは違う視点を僕らに教えてくれる視点でもあります。
 気づけば、彼女はチームSの中で先輩側に位置するキャリアになりました。
 まだ20歳にも満たない彼女が、時に後輩を引っ張っていかなければいけない状況でもあります。他のチームと比べてメンバー構成が若いチームSならではの悩みかも知れませんが、これは彼女の成長にも繋がる貴重な場とも考えられます。
 後輩からはどう見えているんでしょう?
 SKE48の8期生、坂本真凛からの手紙を読んでみましょう。

「あいあいさんへ

 17歳の誕生日おめでとうございます。

 あいあいさんとは『すぎチル入らない?』という一言から仲が深まりましたね。

 あいあいさんと仲良くなる前は正直めんどくさくて怖い先輩だと思っていました。
 

 でも実際は私が悩んでいる時も親身に話を聞いてくださって、気分転換にテレビ塔の展望台に連れて行ってくれたり、公演では時に厳しく、時には優しく後輩思いでいつもかっこいい背中を見せてくれる素敵な先輩だなと感じています。

 そんなあいあいあさんだからこそ後輩はもちろん、先輩やファンの方々みんなから愛されているんですね。

 あいあいさんにとってチームSは半分が後輩。先輩が少ない分、悩みこともたくさんあると思います。頼りないかも知れませんが後輩の私たちもチームSを盛り上げられるようにもっともっと頑張りたいので後輩でも遠慮せず頼ってください。そしてチームSを、SKE48を一緒に盛り上げていきましょう。

 こんな私と仲良くしてくださってありがとうございます。いつも『やったね♪』って叫んで私を呼んでくれるあいあいさんが大好きです。

 テレビ塔の改修工事が終わったら、また展望台に行きましょうね。

 最後に、私にお手紙を任せてくださった、あいあいさんのファンの皆様、ありがとうございました。

 あいあいさんにとって素敵な1年んいなりますように。

 坂本真凛より」

 

 最初のあいあいのイメージが、面白かったですが、ひょっとしてこのイメージのまま止まっているファンの方が居たら寂しいな、と思います。
 真凛ちゃんへのさりげない優しさと行動が素晴らしいですね。
 じゃあ、先輩としてのあいあいは、後輩たちとどう向き合っているんでしょう。
 今度は、先ほどの真凛ちゃんからの手紙より少し前に書かれた、あいあいから真凛ちゃんに宛てた手紙から考えてみましょう。

「真凛へ

 真凛、17歳の誕生日おめでとう。

 真凛にとってチームSに昇格して初めての生誕祭だね。

 『今年のお手紙は誰ですかねー』と隣ではしゃいでいる真凛を見ながら、『本当は杉山なんだよなー』と思ってました。

 私自身こんなにも真凛と仲良くなるとは思ってなくて、正直今でもビックリしてます。

 仲良くなったきっかけは、ホテルで食べた一本のキュウリだったね。きっかけがキュウリって本当に笑います。でも、キュウリ会が再会したのもこの日で、とても記憶に残ってます。

 第一印象は現代っ子感のある今時女子って感じだったけど、話してみると凄い真面目で色んなことを考えてて、とても優しい女の子でした。話していくうちにもっと知りたい、もっと仲良くなりたいって思ったよ。

 最初は私からのウザ絡みばっかりで、すぐすぎチル勧誘するし、すぎチルへの道とか言ってじゃんけんさせられるしで、面倒くさい先輩だなって思ってたかな?

 でもだんだん真凛の方から寄って来てくれるようになって、握手会終わりにお出かけしに行ったり、プライベートでもよく会うぐらい仲良くなりました。

 真凛にとって私はどんな風に見えているかな? しっかり先輩として見えてるかな? 先輩と後輩の距離感ってけっこう難しくて、どこまで踏み込めばいいのかわからなく、たまに考える時があります。

 でも、こんなにも仲良くなれたし、SKEの活動に対してのことや序列、悩んでいることを話してくれたのかなって思います。だから、私は今の関係をずっと大切にしていきたいな。

 ある時、厳しく注意をしてしまったこともあったね。でも、それはもっと真凛が前に出てほしいから、若手が次のSKEを作っていかないといけないから。嫌いになったからじゃないんだよ。

 私もまだ自分でいっぱいいっぱいで、余裕がなくて、みんなを見れる立場でも立ち位置でもないけど、これからを作るのは誰でもない私たちだから。だからみんなと一緒にもっともっと頑張りたいなって思います。

 嫌なこと、つらいこと、嬉しいこと、これからも何でも聞くし、相談してね。人は人、自分は自分だからもっと自分の意思を持ってね。ずっと支えるよ。

 こんな私と仲良くしてくれてありがとう。

 最後に私にお手紙を書かせてくださった真凛のファンの皆様ありがとうございました。

 真凛にとって素敵な1年になりますように。

 P.S.

 生誕委員の方に『やったね』じゃなく『真凛』って書いてくださいと言われたのでお手紙は『真凛』で書いたんですけど、やっぱり『やったね』は『やったね』だよ。

 やったねのことが大好きな杉山愛佳より」

 この真凛ちゃんへの手紙の中には、あいあいがSKE48というアイドル生活の中での哲学というか順位というものへの接し方の答えが書いてある気が僕はしています。
 そして、市野成美から受け継いだきゅうりのバトンが、真凛ちゃんで繋がるとは。
 きっと、後輩との接し方や公演のクオリティの守り方、様々なことを考えていたのでは、と思います。

 公演やライブといったステージに対しての彼女の思いも素晴らしいです。

 こちらのブログを読んでみましょう。


 思い出のステージ( * ॑꒳ ॑* )♥杉山愛佳 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)

 こうしてみると、彼女が全くジャンルの違う曲を公演で磨いていったり、ステージで挑戦したりしてきた足跡が分かります。
 かつて、彼女が習い事で通っていたダンス教室の先生を彼女が体験するようになりました。


 


 変わらない公演への思いもあります。


 SKE48の魅力を構成する大切な要素、公演やダンス、そして面白いユニット(サークル?)を守っていく、あいあい。
 それは、先人たちから受け取ったバトンを、これからの世代へ受け継ぐ大事な役割を彼女は担っているのではないか、と今回様々な彼女の発信を調べていきながら思いました。緊張したり不安を感じたりしている後輩に、珠理奈に言ってもらったような安心ができる言葉を、きっとかけているのでは、と思います。
 そして、みんなの為に、チームの為に頑張る彼女だからこそ、個人として何か報われる仕事やユニットが来るといいなと思います(2020年だと『ガチアレ』のダンスチャレンジがそれにあたるかも知れませんが、僕としてはグラビアや楽器関係やファッション関係など、まだまだ可能性を秘めたメンバーだと思っています)。
 彼女の魅力が再び公演やライブで爆発する日を楽しみにこの記事を終えたいと思います。

2021年8月7日、一日でも早い杉山愛佳さんの回復を待ちながら。