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2021年8月28日土曜日

選ばれる人

選ばれる理由


 

 2018年10月4日、SKE48の10周年記念特別公演のアンコールで谷真理佳のワタナベエンターテイメントへの移籍が発表されました。

 この時、谷真理佳はSKE48のシングル選抜メンバーからは外れた状態でした。
 本当に失礼な書き方をしますが、何故、選抜外のメンバーが大手事務所から選ばれたのか?
 谷のどんなところに魅力を感じたのか。
 今回は、「選ばれた人」谷がどんな人物なのか、様々なメンバーの言葉から考えてみたいと思います。


 まずは、2016年12月14日に行われた彼女の生誕祭で読まれた手紙です。

「まりちゃんへ。21歳のお誕生日おめでとう。

 時の流れは早いもので、大組閣から3年が経とうとしていますね。故郷を離れここに来る決意をしたのは、本当に勇気のいることだったと思います。今どんな思いでこのステージに立っていますか。

 私は、移籍を通して出会えたこの縁に心から感謝しています。チームEが始動したとき、同じ境遇のメンバーが一人でもいることに安心しました。だから、さっきの自己紹介は嘘です。
 その子とのことは名前しか知らなくて、まともに話したこともなかったけど、私は勝手ながら、支えようって決めたんだよ。

 まずは、ダンスを覚え直すところから始まって、厳しい意見ばかりが目立って聞こえました。馴染む、馴染まない。その言葉だけで片付けられてしまうのが、悲しくて切なかった。同期がいない寂しさに、孤独を感じてしまうこともあったね。期ごとに集まって写真を撮ったり、SKE48の歴史感じる時、周りからすれば不思議なくらいに異常に反応していたと思います。
 誰にも言えない悩みや葛藤に、いつも共感してくれたのが真理佳だったよ。

 『辞める時は一緒に辞めよう』なんてその時は笑いあっていたけど、それくらいギリギリで必死だったね。よくここまで折れずに頑張ったと思います。

 ファンの皆さんの支えや、周りの人たちの協力があったから、私達は今ここに立っています。堂々と自慢できる優しい場所だと思います。見渡せばこんなに素敵で愛しい仲間たちがいるから、少なくとも私は、こんな未来が待っているなんて思わなかったよ。下を向いていたあの頃の自分たちに、そっと教えてあげたいです。『そんなに追い詰めないで、あとちょっとだけ頑張ってみよう』って。

 人間、小さな幸せほど気づけないけど、マイナス思考になった時は、人の優しさにそっと触れてみて下さい。肩を貸してくれる人が、真理佳の周りにはいっぱいいるはずです。あと、絶対に自分を見失わないこと。焦らないこと。真理佳にしかない輝きがたくさんあります。ファンのみなさんは、きっとそれが見たくてここにいるんだから、できるだけ笑っていてね。

 共に乗り越えた唯一の同期として、最後にこの言葉を贈りたいと思います。


 真理佳、SKE48に来てくれてありがとう。

 私たちは、この言葉に何度も何度も救われました。
 これから先も、きっとそうだと思います。21歳が実りのある1年になりますように。

 佐藤すみれより」


 ううむ、このすーちゃんの手紙には、移籍組の僕らには見えにくい辛さが残されていると思います。僕自身も周年公演などで、SKEの歴史に触れるMC等の時の移籍メンバーの表情をついつい目で追ってしまって、ちょっと気になってしまうことがありました。
 そして、それぞれの努力や孤独を残酷に片づけてしまう言葉たち。
 この年の谷のスピーチでもこんなことを語っていましたね。
「ネットの中傷ってあるじゃないですか。それを真に受けて、勝手に傷ついて、勝手に自暴自棄になっていた時期があって、今考えると、すごくファンの方に心配をかけたし、情けないなって思いました。だけど、そんな苦しいときに、救ってくれたのがチームEのメンバーで。みんなが声をかけてくれたのがんですよ、チームEのメンバーが『まりちゃん、一人で抱え込まないでね』って。『まりちゃん、私達を頼ってね』って」

 そういえば、宮澤佐江さんが卒業する時に、移籍後、メンバーに支えられたということを語っていましたが、チームEでもやはり、メンバーたちが支えてくれていたんですね。

 すーちゃんからの手紙の内容に戻ると、「SKE48に来てくれてありがとう」、この言葉が持つ意味について、凄く考えさせられました。こちらが思っている以上にきっと移籍メンバーたちには温かく伝わっていたんですね。おそらく、その逆の意志の言葉も先ほどの谷のスピーチのようにメンバーたちの心に冷たく傷をつけていたのではとも思います。
 これは、時間が過ぎても変わらないことだと思います。

 ちなみに、アメブロでも似たニュアンスで書いていましたね。

【第97回目】ただの自己満ブログ(読んでくれ。)谷真理佳 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)

 次は2018年1月13日の谷の生誕祭の手紙を読んでみましょう。
「谷真理佳さんへ

 お誕生日おめでとう。
 

 この1年で、私たちの周りではたくさんのことがありました。こうして今、周りを見てみるだけでも、去年と比べると、だいぶ顔ぶれが変わったと思います。仲良しのメンバーや、ずっと支え合ってきたメンバーが、続けて新しい道へ進んでいく姿に、寂しさや色んなことを考えさせられました。


 谷さんにとっては、きっと名古屋での家族みたいな人たちばかりで、そのたびに『涙が枯れない』と言いながら泣く姿に、胸が痛くなりました。卒業公演などでは『泣くから』と、最初からアイメイクをしないという荒業に出たときは、本当にびっくりさせられました。

 その空いた穴を、その人達の代わりに埋めることは、私達にはできません。それくらい、その人たちは特別だし、きっと大切な存在だったと思うんです。だけども、忘れないでいてほしいです。谷さんが思っている以上に、周りの人は谷さんのことが大好きです。

 今年の誕生日に『こんなに連絡をくれるなんて思わなかった!』そんなことを言っていたけど、そうなんです!それは、谷さんが面白いということはもちろん、無自覚かもしれないけど、谷さんの何気ない優しさに集まった人たちばかりです。もっともっと自分を好きでいてあげてください。そして、周りの人を頼ってみてください。私を含め、嫌な顔をする人は誰もいないよ。

 『意外にマンゴー』のMV撮影があるとなんとなく聞いていた夜に、電話をかけてくれたこと、この数日にガシガシとマンゴーを一緒に食べたこと。懐かしいです。あの時、誰かに電話する勇気が、私にはありませんでした。電話越しで隠しちゃったけど、私も泣いてたんだよ。あの電話があったから、気持ちを整理して、折れずに進むために、と前を向けました。

 今回の選抜のことも、すごい早さで連絡をくれてビックリしました。いつも、私が怖気づいて動けない時に、谷さんはそっと連絡をくれたり、動いてくれます。本当にありがとう。

 ずっと最初の癖が抜けなくて、『谷さん』呼びだったんですが、これを機に、『真理佳ちゃん』とか『にーたー』とか呼ばせてください。

 そして、SKEで期ごとに集まる時は、ドカーンと6期のところに是非来てください。みんなで待っています。

 これからも自分らしく、自分だけの、谷さんだからこその、道を開拓していってください。道を作っていくのは、本当に大変なことだし、時々疲れちゃう時もあるかもしれません。そんな時はまた、ぶらっとご飯にでも行きましょうね。いつでもどこでも、鎌田は飛んで行きます!

チームE 鎌田菜月より」

 「選抜」というアイドルグループの中で避けては通れないシステム。
 そこに選ばれることもあれば、外れることもある。
 そんな痛みを分け合える仲間がいる、というのも同じくグループアイドルの素晴らしさかも知れません。
 鎌田さんの「6期のところに是非来てください」という一言も素晴らしいですね。
 「同期」がいないなら、これから作れば良いという感じでしょうか。

 更にもう1枚、読んでみましょう。

「真理佳へ


 22歳のお誕生日おめでとう。
 真理佳と出会って6年目になるね。私は、真理佳に出会えて本当に良かったなと思います。

 すごくすごくすごく努力家で、レッスンの時、ダンスが踊れなくて一人でずっと自主練していたり、泣きながら必死に、みんなで寄る遅くまで頑張ったよね。そんな真理佳が、HKT48からSKE48さんに移籍を決断し、計り知れないくらいの努力をして、SKE48としてステージに立っている姿を見ると、私も頑張ろうと、すごく思えます。

 気遣いがすごくて、みんなに優しくて、テンションが高くて、時には頑張りすぎちゃう、無理し過ぎちゃう。そんな真理佳が私は大好きだよ。どこにいても、私たちは同期だよ。大切なHKT48 2期生の仲間です。悩んだり迷ったり、苦しい時は頼って欲しい。みんな待ってるから。頑張りすぎずに、頑張ろうね。大好きだよ。ご飯一緒に行こうね。

HKT48 朝長美桜より」

 この年のスピーチでは、谷のことを「ずっとずっと大好きだ」と言っていたファンの方が、違う子に流れて同じことを言っていたエピソードを語ります。自分はアイドルに向いてのではないか、応援していて楽しくないのではないか、と。でも、中途半端には投げ出さずに、アイドルを続けることを語ります。
 そして、「選抜じゃなくても、谷さん、こんなに仕事があるんだ!」という希望を持たせられる人間になりたいと語ります。先ほどの鎌田さんの手紙にも出てきた彼女だから出来る道とも繋がる気がします。

 この選抜落ちした時のことはアメブロでも書いていますね。

意外にマンゴー!谷真理佳 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)

 そして、忘れられない選抜最後のアメブロも。

みんな!ありがとう!谷真理佳 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)

 谷のSKE人生の第1章が、ここで終わったのではないか、と僕は思っています。
 そして、ソロプレイヤーとして、外の場で戦うことが増えていきます。

 2019年1月7日に行われた彼女の生誕祭の手紙を読んでみましょう。
「谷真理佳ちゃんへ

 23歳のお誕生日おめでとう!

 今年のお手紙はSKE48として数少ない同期の私が書かせていただきます。誰だかわかっちゃったかな?

 たにまりちゃんはとても不器用な人だね。とってもビビりだし、怒られるの苦手だし、周りが楽しく面白くなったらいいなと思う一心で発する言葉に後悔したり、あと寂しがり屋でとても繊細。

 昔はすぐに落ち込んだり、色んなこと気にしすぎちゃってて『この子は大丈夫かな?』って心配しかしてなかったけど、最近は少し強くなれたのか、受け流すこともできてて少しだけ心配は減りました。

 でも、やっぱり根は変わってなくて、我慢しちゃったり、場の空気を読んで自分をネタにしたり、悪役になって笑ってもらったり。『私なんかいいの!』と言っている姿をたまに見ます。そういうことができる存在って実は少ないから本当にたにまりちゃんは凄いと思うの。

 たにまりちゃんはよく言います。『美奈ちゃんは本当に凄いよ!』って。
 でもね、気付いてないかもしれないけれど、私からしたらたにまりちゃんこそ、本当に凄いよって言いたい。それはね、たにまりちゃんの周りはみんな笑顔なの。先輩後輩も関係なく。たにまりちゃんと喋る時はみんなが笑顔になれてるの。これは人柄だと思う。だって、凄く話しかけたくもなるし、話かけてもらうと嬉しくなるもん。

 お仕事でも、たにまりちゃんがいると「あー、楽しいだろうな」って自然に思っちゃうくらいのその場を明るく楽しくできる人。これは私には出来ないことなんだ。だから、たにまりちゃん、あなたは十分に凄いよ!

 そして、みんなあなたのことが大好きだし、必要です。

 たにまりちゃんが凄いのはそこだけじゃないよ。10周年公演で発表された渡辺エンターテイメントさんへの事務所移籍。SKE48にいるうちに事務所移籍できるんだってことをたくさんのメンバーに希望を与えてくれました。

 色んなきっかけやチャンスが実を結んだことだけど、そこまでの努力をしたのはたにまりちゃんです。今いるメンバーの希望になれたこと、そして、自らチャンスを掴んだこと、必ず自信にしてください。自分が思ってる以上にたにまりたんは素敵な人です。

 最近はなんだかすごーく綺麗になっていて、もう昔のようなブスキャラのたにまりちゃんではありません。これからはSKE48のビジュアルメンを名乗ってもいいくらい美しいなと思います。
 素材はいいから、ちゃんと可愛くして、清潔にしてください。

 とにもかくにもお互いSKE48に来れて良かったね。

 寂しがり屋で我慢しやすい、たにまりちゃんは本当によくここまで頑張ったね。慣れない場所や人は、なんだかとても不安で仕方なかったよね。みんなずっと優しくしてくれてて、寂しくならにようにって気にかけてくれるんだけど、でも、やっぱり心のどこかで不安や怖さのほうが勝つ時があって、結局自分で乗り越えなきゃいけないんだよね。
 でも、もう乗り越えたからね。私たちも立派なSKE48だよ。

 今近くにいるメンバーやスタッフさん、ファンの皆さん、こんなにも心強い仲間がたにまりちゃんのそばにいます。そして、私と鈴蘭という第2の同期もいます。また「向日葵」歌おうね。

 これからも何かあった時はすぐに連絡してきなさい。一人で我慢したり、抱え込んじゃだめだよ。またゆっくりご飯行こうね。

 たにまりちゃんにとって素敵な1年になりますように。

 たにまりちゃんの同期、大場美奈より」


 前半の谷真理佳という人間の行動と内面についてのみなるんの分析が、素晴らしいですね。以前、「古川古畑のえにし酒」にゲスト出演した時もそうなんですが、彼女のメンバーをじっくりと見られる視線は、二つのチームのリーダーを務めてきたからのものではないか、と僕は思っています。
 自分が必要とされている「役割」をきちんと読み取ってその動きが出来る。
 これは、かつて「オードリーさん、是非あってほしい人がいるんです」の中で若林さんも芸人のカミナリさんに話してましたね。

 


 この年のスピーチで谷はワタナベエンターテイメントに事務所移籍したことを一番大きな出来事として挙げていました。福岡の「ももち浜ストア」という番組を福岡に帰った時にお母さまと一緒に観た時に、お母さまが泣いていたことも語ります。「7年かかったけど親孝行やっとできたなって思いました」と谷は語ります。
 
 最後に2020年1月5日の生誕祭の手紙を読んでみましょう。
「谷ちゃんへ
 
 谷ちゃん、お誕生日おめでとう。
 こうしてお誕生日当日にステージ上で一緒にお祝いできることを本当に嬉しく思います。
 まず、いつも私のことを支えてくれてありがとね。
 
 うまく言えない気持ちがある時に、さりげなく声をかけてくれて、『大丈夫だよ。あかりちゃんは頑張ってる!』って言って、いっぱい元気をくれる谷ちゃんには私は本当に支えられてるよ。

 出会った頃の谷ちゃんは『明るくて社交的で、誰にでもグイグイいける』そんなイメージはあったものの、『きっとこれが等身大の谷真理佳じゃないんだろうな、この子無理してるな』ってことはすぐに気づきました。
 
 むしろ、SKEに移籍が決まった時からHKTファンの方から私の元に『谷は繊細だからよろしく頼みます』とたくさん言われていたから。それも一人や二人じゃなくてたくさんの人から。

 そこまで理解した上で応援されているって、この人は本当の意味で愛されている人なんだなって思ったことをよく覚えています。それってとっても凄いことなんだよ。

 愛されている自分をもっと認めてあげてもいいと思うよ。

 谷ちゃんは私にとって頼れる仲間であり、妹みたいにほっておけない存在です。

 なかなか素直に本音を伝えられない不器用な谷ちゃんですが、谷ちゃん推しの皆さん、どうかこれからも愛情で受け止めてあげてくださいね。

 でも谷ちゃん、私はあなたを甘やかしません。

 だって、つらい思いをして欲しくないから。
 
 頑張った分、報われたっていっぱい感じてほしいから。
 だから、この活動中での悔しい、寂しい、つらいって思えることをまずは自分が一番に褒めてあげてね。
 その気持ちこそがどんな結果よりも頑張った証になると思うから大切にしてね。

 あと絶対に強がっちゃダメ。
 
 そして、うまく周りに甘えられない自分を許しちゃダメ。
 いつも言ってるけど、時には上手に甘えよう。ちゃんと教えるからさ。

 谷ちゃんが頑張った分だけ笑顔になれること、それが私の願いです。
 ここまでの道のりで味わった愛されたい素直な気持ちも、任される喜びもプレッシャーも、選ばれない不安や悔しさも、たくさんの気持ちを知れた今の谷ちゃんだからこそ叶えられる未来があるんだよ。

 それって、誰よりも特別なこと。もっともっとなりたい自分を思いっきり描いたら突っ走る。それだけでいいんだよ。
 
 谷ちゃんの魅力を証明してくれる人はた~くさんいるから安心しなさい!
 私にも他のメンバーにもできない形でSKEをアピールできている谷ちゃんは凄いんだから。

 私の大好きな谷ちゃん、いつでも支えるからね。

 人生一緒に頑張ろう!
 2020年1月5日 須田亜香里より」

 谷のこれまでを肯定してくれるような内容と、これからへの期待が素晴らしいですね。
 
 この年のスピーチでは、ワタナベエンターテイメントに移籍して1年が経ったこと、「ひるおび!」のお天気キャスターになったこと、FM AICHIでラジオ番組が始まることを語ります。
 外の仕事で一人で頑張る難しさと、先人須田亜香里の凄さを感じます。
 そして、2020年の目標として、SKE48のもっともっと主役になることと選抜入りを目標にかかげます。
 最後にサプライズで彼女の1st DVDが発売されることも発表されます。
 
 少しずつ、彼女のやり方でSKEの主役や選抜に近づいているのかも知れません。
 かつてアメブロでも主役になる人について、彼女も書いていましたね。

 かつて、「どこから」来たのかに拘っていた人もいるかも知れません。
 でも、谷が見せてくれる「これから」の方が僕は楽しみです。
 チームの為に、仲間の為に、番組の為に、脇役に周ることも出来る彼女だからこそ、よりよい「場」を作ることが出来ると思います。
 そんな彼女だからこそ、多くの人に選ばれるんでしょう。
 喋りの仕事が多い彼女ですが、もっと演技の仕事も見てみたいです。
 谷主役のラジオドラマなんてどうでしょうか?
 もしくは、久々の2.5次元舞台も似合いそうですね。
 ううむ、こうして書いている内にも想像力を掻き立てられる彼女は、やはり「選ばれる人」なんだと思います。
 外で様々な経験を積んできた谷が、またSKE48の選抜に合流した時、どんなイノベーションを起こすか、今から楽しみです。


 
 

2021年8月22日日曜日

アンチの視点からは見えないもの

あの日、君に投げた、声に復讐されてる


 今年の6月末に刊行された小説家の高橋源一郎さんの新書「『ことば』に殺される前に」を今更ながら読み終えました。
 この新書は2021年のコロナ禍において、再読されたフランスの小説家アルベール・カミュの「ペスト」や「異邦人」の引用から始まり、「ことば」について考えさせられる内容になっています(中原中也の『ありし日の歌』の「正午」の引用も、Twitterという言葉が溢れる空間を考え直す上で、非常に参考になりました)。
 僕らが持っている「ことば」は病原菌のように誰かに感染することもある、それをしない為には強い意志と緊張が必要だ、とカミュは述べています。
 今は、SNSが発達したおかけで、僕らは様々な言葉を発信することができるようになりました。
 高橋さんは「公共の路上」にたとえ、様々な言葉がネットサーフィンする僕らの前に現れるし、自分も送っていたということを語ります。しかし、ある時から怒声を発する人達が増えてきて、その「公共の路上」を下を向いてあるくようになってきたと書いています。
 いつからか分かりませんが、高橋さんはTwitterの更新を減らすようになりました。
 高橋さんの即興連続ツイートの終盤で哲学者のカントの「啓蒙とは何か」の冒頭引用があります。
 「自分の頭で」「いかなる枠組みからも自由に」考えることの反対に「他人の指示を仰ぐ」ことがあることが示され、別の箇所で「考えるという面倒なことは他人がやってくれる」というところも引用しています。ここから誰かが「考えるという面倒なこと」をして作った「枠組み」に乗っかって、思考停止してしまう現象について語っていました(『公的と私的』の章より)。
 続く、「僕たちの間を分かつ分断線」の章では哲学者の鶴見俊輔さんの説得されて変わる経験について書いています。①相手の批判を理解し、②問題の事柄について完全に理解し、③自分のプライドやアイデンティティーよりも、真実の方が大事だと思っていることであると説明します。ちなみに、「洗脳」との違いは過去の自分を捨てずに残したまま変わることだそうです。
 自分と違う考えの違う人間がいることに恐怖を覚えるのではなく、鶴見さんは「自分と違った考えがある人間がいて良かった」という思想を持ったそうです。
 この考えが今あるかというと、まだまだ無いのではないかな、と僕は思います。
 2019年に刊行された批評家宇野常寛さんの著作「遅いインターネット」の中でも、タイムラインの潮目を読んで善悪を判断する人や世界の複雑性から目を逸らすために善悪にしの二分化しかできない人について指摘がありましたね。
 アンチのコメントがワンパターンなのは、ひょっとしたら「考える」ことを放棄しているからかも知れません。
 しかし、考えたり、考え続けることの難しさは、僕自身も感じます。
 
 もともと僕は、SKE48の6期生、鎌田菜月さんが苦手でした。
 いや、嫌いでした。
 なるべく彼女の情報は無視するようにして、コンサートでは彼女の方は見ないようにしました。
 今、考えると「何を意地を張っている!」と両肩を掴んで前後に揺らしてあげたいところですが、当時の僕は「嫌いである」ということに止まり、考えることを止めてしまいました。
 アンチ発言や発信はしないものの、ずっと目を逸らし続けていました。
 その方が楽ですし、考えなくて良いからです。
 1年前にフォロワーの方がSKE48のまとめサイトに寄稿した記事がきっかけで、ちょっと鎌田菜月さんについて調べてみようと思いました。
 それは、少し踏み出すのに力がいることでした。
 これまで鎌田さんが嫌いだった理由を赤裸々に書き、そこから彼女の魅力を調べ始めました。
 調べる中で彼女とファンの方々とのドラマやメンバーたちとの関係を知りながら、何故、自分は嫌いだけど多くの人は好きなメンバーなのか、ということが明らかになっていきます。
 でも、と時々思います。
 もし、あのまま、鎌田さんが嫌いなままだったら、自分は毎月彼女のことを考える視点を持ち合わせていただろうか、と思います。
 ひょっとしたら、悪い方向性に進んでいたかも知れません。
 鎌田さんは、アンチの発言に対して、どう捉えているんでしょうか?
 調べてみると、2015年9月11日の生誕祭のスピーチで少しだけ触れていました。
 一部を抜粋したいと思います。

「私は正直、去年と比べてれば本当に劇的に世界も変わってこうやって、チームE公演でお話させていただけるようにもなって、でもやっぱり周りと比べちゃうとまだまだチャンスを生かせてないとか、自分から掴めて行けてないんじゃないかなと思うことがあって、決して頂けるチャンスは多くないんですが、絶対にチャンスを次に繋げてやろうとか、どんな事もチャンスに繋げてやろうっていう気持ちは誰にも負けないっていうつもりで私はここにいます。
 それは多分、今ここにいる公演だったり、みなさん多分メンバーほぼ平等にいただいている公式ブログやぐぐたすや755も全部が全部私の中ではチャンスで、そのチャンスの中でネタがちょっと先行して自撮りの事だったり、お腹の事だったりが、どんどん先走っちゃって皆さんの中にはそれを苦く思っているのを私は知っています。本当は可愛いのにとか怒ってくださる方が居て、優しいなといつも思っています。
 でも私は、今はそれで良いんだって思っています。
 だから、心配しないでください。
 何か変にプライドを高くして自分からチャンスを逃すよりもちょっとぐらい自分をバッと開いてぶつかってってぶつかって誰かが振りむいてくれたら、その人は絶対に逃さないっていう気持ちでやって行きたいので、良かったら見守って下さると嬉しいです。

 そしてそんな私のエネルギーになって下さってるのは、皆さんなんですが、その言葉は『頑張ってね』とか、そういうのはもちろんあるんですけど、『可愛いね』って言われたら、その言葉に負けない人にならなきゃってプレッシャーにも感じて、逆に去年すごい言われてた『鎌田辞めそうだよね』、『すぐにこの子はSKEから居なくなりそうだよね』って言われたら『絶対に辞めてやるもんか』って思って、だから私を応援して下さる言葉も、温かく迎え入れて下さる言葉も、アンチの人の言葉も全部が全部私にとっては大きな力になっています。本当にありがとうございます。
 そして今年の3つの目標を考えてきたんですが、『公演での武器を見つけること』、『公演での武器を作ること』、『妥協しないこと、選んでもらえる人を作ること』です。詳しいことは後々ブログに書きます。
 でっかい壁はいっぱいあるこの世界なんですが、私はこの業界がすごく大好きです。SKEも大好きです。その壁はやっぱりSKEにいる素敵な物を沢山持っているメンバーだったりとか、ちっぽけな自分だったりとか、周りの人の評価だったりとか、色んなものがあって。昇格したからこそ大きく感じることもすごい沢山あって、苦しいなって思うこともあるんですけど、私以上に喜怒哀楽を示してくれて私の分も怒ってくれて悔しがってくれるみなさんがいるから、私は笑顔で鎌田菜月としてアイドルとしてやっていけることが出来ます。
 だから、決して悔しいって思ってない訳じゃなくて、悲しいって思ってないわけじゃないし、人間なので無理してるんじゃないかって皆さん心配するけど無理はしてません。安心してください。
 今日はこうやって素敵な場所を開いていただいて、私は今年もSKEで頑張りますので、卒業しませんので、安心して応援して下さると嬉しいです。これからもアイドルのSKE48の鎌田菜月をよろしくお願いします」

 心無いアンチの声も、自分が頑張る為のエネルギーに変えていく。
 だけど、人間だから、当然悔しさや悲しさもある。
 それでも、自分以上に自分のことで喜怒哀楽を示してくれるファンの方々がいる。
 そういえば、鎌田さんがさまざまなことを力に変えていることは、だーすーも指摘していましたね。


 
 このスピーチをした生誕祭から5年以上の時間が経ちました。 
 鎌田菜月を選ぶ人は増え続けています。
 ここ数か月も歴史関係のお仕事が!



 正直に書くとまだまだ僕は苦手なメンバーはいます。
 ほら、わりとSKE48に長いこといるのに、僕が一切触れていないメンバーとかいるでしょ?
 でも、アンチの視点では、「~でない」ということは言えても「~である」ということは難しくなります。
 たとえば、おしゆき動画に対して「つまらない、他のYoutuberの焼き直し」という批判をするのは簡単です。でも、二人だからできる企画はこれであると提案するのは難しいです。だって、二人の本質をとらえるために調べたり考えたりするのは面倒ですから。でも、本当に相手と向き合うなら、相手のことを理解し、そこまで考える方が真摯なのでは、と僕は思いました。
 これからも、毎月1回の鎌田さんについて考える連載を続けつつ、僕も鎌田さんから学び、少しずつ自分の中に変化を起こしていきたいと思います。
 そういえば、高橋源一郎さんは幻に終わった明治大学国際学科の卒業式の祝辞の中でこんな言葉を残していました。

 「けれど、私たちはいつも間違います。しかし、間違いの他に、私達を成長させてくれるものはないのです」

2021年8月21日土曜日

太陽を継ぐ人

団子の中身は

 いきなり、僕の話から始まって恐縮ですが、SNSのフォローしているの方々の9割をミュートしています。何故かというと、僕が文章を読むのが遅いというのと、タイムラインというのに興味がないからです。
 一週間のうちに順番にミュートしていた方のツイートをまとめて読んで、「ほうほう、この人は一週間の間にこんなことがあり、こんなことを考えたのか」と読むのが好きなんです。
 そして、なんとなくその人の「欲望」が見えて来るのも面白いです。
 こんな自分になりたいと思うことや、こういう風に見られたい、こういうものが欲しいというのは悪いことばかりではないです(勿論、ゲップが出そうになる方もいるので、そういう方はそっと読まなくなります)。少しずつ目標に近づいていく姿を見て行くのも面白いですし、自分の興味が広がるものも多いです。
 
 では、アイドルはどうでしょう。
 ある時、SKE48のメンバーのプロフィールをまとめて見ることがあり、メンバーたちの将来の夢をまとめて読むことがありました。
 ほうほう、この子は歌手になりたいのか、この子は女優になりたいのか、と知って行く中、一人気になる目標をかかげているメンバーがいました。
 それは、るーちゃんこと井上瑠夏さんです。
 彼女の将来の夢は「アイドル」。
 いや、なっとるがな!と思わず関西弁でツッコミそうになりましたが、これは何か理由があるのでは、と思いましてね。

 まずは、彼女がアイドルになるまでのドラマを見て行きましょう。
 2017年の彼女の生誕祭の手紙を参考にします。

「井上瑠夏へ
 
 16歳のお誕生日おめでとう。瑠夏にとっては、3年ぶりに幸せな誕生日を迎えることが出来たね。14歳の誕生日は、ドラフト落選した後。15歳の誕生日は、某オーディション落選。会場の外で待っていたけど、泣きじゃくって出てきたね。ただ、瑠夏にとって一番きつかったのは、14歳の誕生日でしたね。

 14歳の時は、ドラフト落選した上に、大好きなおじいちゃんが亡くなって、誕生日がお葬式だったね。おじいちゃんは、おばあちゃんを半年前に亡くして落ち込んでいる時に、瑠夏がドラフト候補生に選ばれたことが、おじいちゃんにとって辛い出来事を忘れさせてくれるものでした。

 無口なおじいちゃんが、入院している病院に、瑠夏のドラフトのパンフをわざわざ持っていって、周りの人に「えーけーびーよんじゅうはちの何かに選ばれとるもん」と自慢していることを後から聞きました。
 ドラフト候補生の報告の時も、瑠夏が泣いて、『じいちゃん、ダメだった。』って言ったら、『しょんなかたい、でも瑠夏は顔の小さかけん、なれると!』と、根拠のない自信で、ポツリ一言だけ。じいちゃんにとっては最大の慰めだったと思います。
 
 小さい時から、『じいちゃん、ばあちゃん、何が欲しい?瑠夏がアイドルになって金持ちになったら、欲しいものを全部買ってやるけんね!』が口癖でしたね。アイドルになったことは知らないけど、きっと天国から笑って応援してくれてると思います。

 それから受験勉強もありましたが、いつか叶えられる夢のために今できることをしようと、毎日ダンス、歌いながらのトレーニング、ストレッチ、発生練習など、頑張りましたね。晴れてアイドルになれた16歳の誕生日、こんなにも大勢の人から祝ってもらって良かったね。

 そして、いくつか瑠夏に謝らなければならないことがあります。SKEに受かって間もないころ、熊本と名古屋を行ったり来たりで、心の準備も出来ないまま、急遽名古屋に移住しなければならなくなり、一人にさせてしまって、心細くさせてしまったこと。また、本格的な活動が始まって、公演の練習、雑誌の取材、色んな仕事が入ってきて、同じ日に締め切りが重なることも沢山ある中、頭がいっぱいになり、パニックになることも多々ありましたが、その時そばにいてやれなかったこと、本島にごめんね。

 そして、瑠夏にお願いがあります。自分のことを支えてくれるファンの皆さん、スタッフさん、周りの仲間があって、自分があること、感謝の気持ちを忘れないでください。あと、最近忙しいのか知りませんけど、既読無視はやめてください。

 生誕委員の皆様、数か月前から準備して、このような盛大な生誕祭にしていただいたこと、本人にとって、一生の宝物になります。ありがとうございます。また、スタッフの方々、SKEの良き先輩たち、ご指導いただいたり、いつもかわいがっていただいて、本当にありがとうございます。研究生の皆さん、いつも仲良くしてくれて、本当にありがとうございます。

 最後になりますが、ファンの皆様、いつも熱心な応援ありがとうございます。私事で恐縮ですが、娘は15歳で熊本から愛知に移住し、娘の青春時代の成長を遠くから見守ることしかできなく、寂しい日々を過ごしています。ですが、娘を愛知県に嫁に出したつもりでいます。ですので、熊本生まれの愛知育ちの井上瑠夏を育ててやってください。今後ともよろしくお願いします。
井上パパ・ママより。」

 普段はほんわかしている、るーちゃんの根底にある芯の強さや優しさを感じるお手紙だと思います。いつか、るーちゃんが串団子を食べている写真をアメブロでアップしていましたが、まさに串団子のように外側は柔らかいですが、団子たちを貫く串は堅くて真っすぐなんですよね。
 彼女の周りの人を和ませる優しさと奥に流れている強さを感じます。
 ちなみに、このオーディションの日々と合格したことについて、アメブロでも書いていますね。

 彼女が流した涙の雨が、オーディション合格という虹になるのは、まさに「100万リットル」の涙の歌詞のようで、読みながら心が動かされます。先ほどの手紙と合わせて、何度失敗してもチャレンジを続ける姿は、学ぶことが本当に多いです。
 アイドルになるというのは、簡単ではないんだと、改めて感じます。
 ちなみに、アイドルになる前は保育士さんを目指していたそうです(小さい子が大好きだそうです。おや、誰かと…)。


 そして、先ほどの手紙から分かるもう一つのことは、自分に辛いことがあった時に、周りに支えてくれる人がいる、というのが彼女の人柄を感じさせます。
 それはSKE48のメンバーになってからもそうです。
 
 ううむ、良い先輩に恵まれてますね。
 大切な存在を失った時、傍にいてくれる方の貴重さ。
 ひょっとすると、新しい大切な存在になった日かも知れません。

 先輩に恵まれていると言えば、るーちゃん自身も好きな先輩が沢山いますね。
 1例を上げると、あいあいなんかもそうですね。
 連続して2つ読んでみましょう。


 そして、SKE48のセンターを長年務めた松井珠理奈との関係も印象的です。
 ❤︎井上瑠夏 ・×・ 魔法みたいだ。 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)

 珠理奈からみたるーちゃん像はどんなものなんでしょう。
 2019年のるーちゃんの生誕祭で読まれた珠理奈からの手紙を読んでみましょう。
 
 「るーちゃんへ

 お誕生日おめでとう。

 るーちゃんとの出会いはオーディション会場。歌唱審査で歌だけじゃなく振り付けも一緒に踊りながら、可愛く歌う姿に目を奪われ、本当にアイドルが好きなんだなーと、もう既にアイドルじゃんと思って驚きました。
 そんなるーちゃんが合格していて、フロントメンバーにいて嬉しかったし、やっぱりこの子が来たかーって思ったよ。

 でも、そこからチャンスを掴むことは簡単なことではないから、焦らず諦めず上り詰めて欲しいな。いつか同じ場所で歌って踊りたいな、自分の教えてあげられることを教えてあげていなって思っていたらチームSに来てくれて凄く嬉しかった。
 そこからどんどん成長していく姿が見られて嬉しかったし、どんどん距離も縮まって仲良くなれて、こんな風に生誕のお手紙まで書かせてもらえて私は幸せです。

 最近では一緒にお出かけすることが増えたね。彼氏にするなら私と言ってくれて、るーちゃんと一緒にいるとなんだかデートをしているみたいで癒されるの。完全に釣られています。ファンの皆様がるーちゃん推しになっちゃう理由がわかります。
 一緒にお出かけしている時に『次はいつ?』って聞いてくれたり、『まだ卒業しないでね』って言ってきてくれるのが本当に可愛くて、つい甘やかしてしまうんだよねー。

 でも次のシングルからは選抜メンバーとして活動していくわけだから『おめでとう、良かったね』っていう気持ちと『一緒にSKEを本気で盛り上げて欲しい』っていう気持ちがあるから、ときどき先輩らしく口うるさい時もあると思うけど、嫌いにならないでね。

 グループのことを思って、るーちゃんのことを思ってしっかり見守っていきます。
 これからまだまだ一緒に成長していこうね。何か困った時、悩んだ時はいつでも相談に乗るから相談してね。
 18歳のお誕生日、本当におめでとう。

 今の目標とか自分の気持ち、しっかり皆様に伝えてね。楽しみにしています。

 またデートしようね。

 松井珠理奈より」

 珠理奈からの手紙を読んでいると、るーちゃんの愛されっぷりが分かりますが、その奥には「この子の為に何かしてあげたい」と思わせる可能性や努力の姿があるんでしょうね。
 珠理奈の卒業コンサート前のアメブロでは、凄まじい名言をノートに書いてもいます。

 ううむ、気を失わないで欲しいとは思うものの、全力で頑張るという精神性が伝わってくる名言ですね。一見、タイプが違うように見えても根底に流れているものは同じだと珠理奈は感じたのかも知れません。


 また、生誕祭のスピーチでは「くまもと大好き大使」になったことと「熊本いきなり団子大使」に昨年なったことも語っています。おじい様がご存命だったら、きっと喜んだだろうな、とスピーチを聴きながら思いました。

 るーちゃんは、アイドルになった日々を当たり前にはせずに大切に過ごしていきます。
 良いブログが多いので迷いますが、この2本を読んでみましょう。


 SKE48で居られる日々とファンの皆さんを大事にしながら、るーちゃんは「上を目指す」ことを続けていきます。
 彼女の強い気持ちが伝わってくるブログを2つ読んでみましょう。



 ううむ、何故あの時、るーちゃんが「走れ!ペンギン」を選んだのかを知ると、曲の可愛さの奥にある熱いものを感じます。

 2021年の夏。
 彼女はカップリングとはいえ、「青空片想い2021」のセンターになります。
 大好きだった松井珠理奈のポジションです。

 

 ひょっとすると、沢山の「アイドル」たちを傍でみながら、目標とする姿は変わり続けているかもしれません。でも、彼女の周りにいる人たち、今はなかなか会えないけれど応援してくれているファンの皆さん、そして、地元熊本からの応援、様々な人達に癒しやモチベーションを与える太陽のような輝きを彼女は持っているのではないか、と思います。
 いつか、彼女が目標とする「アイドル」になる日を楽しみに、今日も太陽がどんな風に輝くのか、楽しみにしていたいと思います。

2021年8月18日水曜日

青空片想い2021

 多分、青空の眩しさは同じ


 

 2021年9月1日に発売するSKE48のニューシングル「あの頃の君を見つけた」。
 このシングルのカップリングの中に「青空片想い2021」の文字を見つけた時に皆さんは、どんな感想を抱いたでしょうか?
 僕のストレートな感想を水に薄めず、オブラートに包まず、日干しせずに書くと下のようになります。

「あら、うちは初めてこの曲聴く気がせえへんわあ。
 なんや、2021とか数字つけてはるけど、毎年、コンサートで『青空片想い』してはらしまへん?
 なんで数字つけて、わざわざ今、カップリングにしはるの?
 秋元はん、坂道とはえらい仲良うしてはりますけど、うちらのチームSの新公演、はよう書いてくんなんし。ほんま、いけずな人やわあ」

 京都弁でネチネチ嫌味を言いたくなるぐらい、ピンとこなかったんですね。
 あと、個人的には「石榴の実は憂鬱が何粒詰まっている? Dj 松永mix」作ってくれ!という願望もあるんですが、それから思考を停止して、毎日を過ごしていました。

 しかし、ふと今日、「あの頃の君を見つけた」を聴いていて、何故、この曲がカップリングに選ばれたのかに気づきました。



 結論から言うと、「あの頃の君を見つけた」と「青空片想い2021」はお互いを補い合う関係なのではないか、と僕は考えました。
 2010年3月24日に発売された「青空片想い」。
 もう、10年以上前の曲なんですね。
 「青空片想い」の中で「制服の君」を見つめていた「僕」も10年経ったら、20代後半ぐらいでしょうか?
 「あの頃の君を見つけた」は「懐かしい木漏れ日が揺れる通学路」から始まるんですが、徐々に曲を聴いていくうちに出てくる、少し離れている「彼」を見つけるんですよね。
 そして「僕みたいに君を遠くで思うだけか」という箇所から、「青空片想い」の「誓いは片想い 君は知らなくても構わない」とも通じる気がするんですよね。
 つまり、「青空片想い」の時間を経たアンサーソングが「あの頃の君を見つけた」ではないかと考えるわけです。
 そして、「青空片想い2021」は、ひょっとすると、「あの頃の君を見つけた」の「彼」の見ている世界なのかも知れません。
 そう考えると、「あの頃の君を見つけた」のType-Aって、凄く時間軸が交差し合う一枚ではないか、と思います。
 正直、Type-Aは今回はパスしようかと思っていたんですが、曲と曲が響き合うセトリになっているので、これも買うしかないですね!
 先日公開されたMVに関しては、時間の流れを感じさせる上空からの映像だったり、るーちゃんが珠理奈ポジにいるということは、まだまだSKE48のセンター戦線は熱くなりそうだ、と深読みさせられたり、10期生たちの煌めきも素敵だったり、と見所盛り沢山です。
 皆さんもふとした曲同士のつながりを探ってみるのはいかがでしょう?

2021年8月15日日曜日

古畑奈和とポジション

利他的なエースの存在

 先日、我が家のテレビでYouTubeの「ソーユートコあるよね?」の練習動画を観ていたんですね。

※動画はこちら!

 


 メンバーが元気に踊る姿を見ながら、古畑奈和の動きが気になりました。
 彼女の動きは滑らかさの中に鋭さがあり、2019年にリリースされた「FRUSTRATION」でセンターを経験した彼女が、センターの須田亜香里を支えるツートップのポジションで踊る姿は、頼もしさと個性があり、「やっぱりセンターを経験した人は違うなあ、よく分らないけど自信と表現力があるなあ」と百億人ぐらいがすぐに思いつくことを考えていました。
 さらに、「恋落ちフラグ」でのジャージの上着を羽織った背中の色気。
※動画はこちら!


 ううむ、どのポジションに居ても目を惹かれてしまう彼女のパフォーマンスの素晴らしさ。
 今回は、彼女が考えるポジション観とそこから見えてくるものについて考えてみたいと思います。
 まずは、彼女が目指していたセンターについてです。
 2016年7月17日の彼女のブログを読んでみましょう。

 「ソーユートコあるよね?」とはフォーメーションが違うものの、1列目を任された彼女の意気込みが伝わってきますね。前列に来るからには、SKEに興味を持ってもらえる入り口になりたい。
 しかし、この曲の歌い出しは、珠理奈がセンターで後ろに6期生に北川綾巴、7期生の後藤楽々という配置です。センターに近いポジションではあるものの、時代の風は彼女に必ずしも優しくはありませんでした。
 それでも、現場でのセンターを少しずつ彼女は任されていきます。
 2016年8月7日のブログを読んでみましょう。
 
 いつものポジションとセンターで感じる声援の違いを体感することになります。
 ただ、この頃、彼女がセンターを務められているということは、誰かの代役であることになります。そう、不動のセンター松井珠理奈がいました。
 
  まず、彼女の仕事に対する誠実さが伝わってきます。
 中途半端な努力で、「センター」という言葉を口にしたくない。
 自分自身には何もないから(客観的に観るとめちゃくちゃあるでしょ、とツッコみたくなりますが)、努力で自信を生み出していくしかない、努力しているからこそ、センターに立っているメンバーとの差も見えて来る。
 自分のファンの方々の声に甘えずに、客観的に自分を見てる彼女の視線を感じます。
 自分が成長することで、先輩メンバーの脅威にもなり、SKE48の底上げにもなる。
 そして、この頃の奈和ちゃんのセンターに対する特別な思いは、他のブログでも見られます。
 2016年11月25日のブログを読んでみましょう。

 アイドル古畑奈和のセンターへの思いと、人間古畑奈和の葛藤がない交ぜになっています。「頑張れば〇〇」という言葉の残酷さと無責任さを僕らに認識させられます。いったい、何をこれ以上頑張れば良いのか、と感じてしまう当時のSKE48自体の閉塞感も僕は感じます。それでも、「陽を見る日」を信じて彼女は頑張ります。

 2017年1月22日の彼女ブログでは、後ろから見る同期のセンターと自分がセンターを任された曲について書いています。

  2015年のSKE48リクエストアワーで、卒業した松井玲奈の代役としてセンターを任された「前のめり」についての過去の回想の箇所と「12月のカンガルー」の後ろのポジションでも同期のことを誇りに思う箇所が印象的です。
 アイドルという競争社会の中で、他者のことを誇りに思えるのは、何故でしょう。
 この辺りは後で触れるので、引き続き彼女のポジション観について見て行きましょう。
 2017年5月27日の彼女のブログを読んでみましょう。

 ギリギリ歌番組には出られたことに悔しさを感じるものの、「SKE48の古畑奈和としてAKB48に踏み込む」というのは、かつて兼任をしていて志半ばで終わった目標の再構築だったのかも知れません。
 さらに、2017年6月9日のブログを読んでみましょう。


 SKE48という組織のことを思うと新しい風を入れて行った方がいい、だけど、一人のアイドルとしての自分のことを考えると、というアンビバレントな気持ちの中で彼女は葛藤します。
 その反面、この時代のブレイクスルーが総選挙しかなかったのか、というSKE48の選択肢の貧しさを感じます(結果として彼女にプラスに影響するから良いんですが、選択肢は多い方が良いと思うんですよね)。
※「願いごとの持ち腐れ」選抜については、時間のある方はこちらもどうぞ。
 テレ東音楽祭#古畑奈和 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)

 2017年7月19日のアメブロでは、7期生の小畑優奈がセンターを務める「意外にマンゴー」のリリースイベントについて書いています。
 
 毎回の積み重ねが彼女をフックアップしていくことが分かります。
 今回のシングル表題曲のセンターにはまだ届いていないものの、松井珠理奈が居てもシングルのセンターを任されるところは、大きな前進ではないかと思います(セットリストの順番もあるかもしれませんが、それでも珠理奈の性格から推察するにセンターを任せるメンバーは限られると思います)。
 
 それから、2か月ほど経った2017年9月7日の彼女のアメブロでは、再び、センターについて考えています。

 センターに立つ理由とは何か?
 自分がこのポジションを任せられるのは何故か?
 ブログの中ではっきりとした答えは出ていませんが、その答えは2年後に同期の江籠裕奈が出します。
 古畑奈和がセンターが発表された日の江籠ちゃんのブログを読んでみましょう。

 「わたしね、奈和ちゃんがいるから頑張れてるよ」
 何気ない一文ですが、誰かの頑張る理由になれる、これがセンターを任せられる理由ではないでしょうか?
 江籠ちゃんのブログの中で、「何度も口にしてきた」ということを書いていますが、ここまで読んできた読者の方々も奈和ちゃんのセンターへの思いを感じているのでは、と思います。
 順番が前後しますが、彼女のセンターへの思いはずっと心の中で燃え続けます。
 2018年10月14日の彼女のブログを読んでみましょう。


 奈和ちゃんが2016年頃のブログでは、SKE48の未来を考えて自分がセンターに拘ることに迷いがあったかも知れませんが、この頃は遠回りして自分の夢をしつこく追いかけることを書いています。
 諦めずに夢から目を逸らさなければ、夢が叶うという奈和ちゃんのアイドル人生は、ベテランメンバーたちに希望をもたらすだけではなく、芸能の世界とは違った日常を生きている僕らにも「いや、でも奈和ちゃんは諦めずにやってたしな」という一つの指標になるのでは、と思います。
※ 時間がある方は同期の菅なな子との関係とセンターについてのブログもどうぞ。
私には欠かせない物語り♯古畑奈和 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)


 ちなみに、センターに立った後の奈和ちゃんのブログを読んでいると、自分のセンター曲を大事にしていることも分かります。

 さて、ここまでは古畑奈和という人のセンター観を見てきました。 
 ここからは、センター以外のポジションについて見て行きましょう。
 奈和ちゃんは、AKB48での兼任経験の際にSKE48とは違うポジションを体験しています。なにせ、当時のチームKやチームAはスター選手揃いでした。


 二つ続けて読んでいただいたんですが、二つ目の佐藤亜美菜さんのポジションのアンダーをする記事が凄く良くてですね。「あまめぇちゃんと一緒に頑張っているの」という表現が、彼女の独特のアンダー観が伝わってきます。こういう視点でアンダーしているメンバーが他に居たら教えて欲しいぐらい素敵な視点だと思います。
 ここまでは、チームKでの体験ですが、チームAでの彼女のポジション観も素晴らしいので、読んでみましょう。

 後ろから数えた方が早いポジションであろうと、SKE48の名前を背負って全力で踊る。そのことは、「私のパフォーマンスが嫌いな方」を生み出してしまうかもしれない。それでも気持ちが伝われば、という彼女の意識。
 この意識は兼任の終わりの際に書いたブログでも触れられています。

 「でも私はSKE48です」という言葉に泣きそうになりました。
 自分がどこから来たのかを大事にしている奈和ちゃんの思いが伝わります。
 さらにAKB48の一員として盛り上げたいという思い。
 それは、儚く終わってしまいましたが、この彼女の「利他」の精神は本当に素晴らしいと思います。
 ブログの最後の「SKE48の古畑奈和としてAKB48」に食い込むという野心もここで刻まれています。
 今、「利他」という言葉を使いましたが、奈和ちゃんのブログには「支えたい」、「役に立ちたい」という表現もよく出てきます。
 中でも2014年11月4日のブログが印象的です。

 ここまでずっと追ってきた「センター」になりたいという思い、そして、それと同じぐらい彼女の中にある「支えたい」という思い。
 それはセンターのメンバーだけでなく、多くの人々を。
 東京工業大学科学技術創成研究院「未来の人類研究センター」長であり、リベラルアーツ研究教育院准教授の美学者、伊藤亜紗さんが、哲学者の國分巧一郎さんや政治学者の中島岳志さん、批評家の若松英輔さんや小説家の磯崎憲一郎さんとの研究の成果を寄稿した「『利他』とは何か」の中で、「利他」の難しさについて書いています。
 びっくりするぐらい雑に説明すると、利他の行動の本質には「これをしてあげた相手に利になるだろう」という思いがあります。これはする側の「思い」です。
 しかし、うっかりすると「これをしてあげるんだから相手は喜ぶはずだ」になったり、「相手は喜ぶべきだ」という支配に変わりかねません。
 相手を信頼して、言葉を押し付けすぎずに、時には無言で行動のみで示すことも必要だそうです(インドなんかは文化としてそうだと中島岳志さんはご自分の体験を書いています)。
 また、うっかりすると志賀直哉の「小僧の神様」やチェーホフの「かき」のように「哀れみ」が生まれてしまうこともあります。
 でも、奈和ちゃんの「利他」は本質からずっと離れていないと僕には思います。
 どこのポジションに居ても、彼女はグループやファンの方々の為に頑張ります。
 それは、たとえ負けてしまうかもしれない戦いでも。
頑張りたいと思える、理由♯古畑奈和 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)

 48グループの中には、幼少期からダンスに親しんだメンバーも多いです。ダンスが最初から決して得意ではなかった彼女が、表現力を手に入れて活躍していましたが、こうした決められた型の中で競うのは不利だろうな、と今ならば思います。
 しかし、2019年ヨーヨー世界大会A1部門で、キーラン・クーパーが勝ち負けではなく、観ているファンの為に最高難易度の技に挑戦する姿を思い出しました。そういえば、彼も得点では優勝できませんでしたが、一度は失敗した最高難易度の技をもう一度ステージで決めて多くのファンの喝采を浴びましたね。 
 勝ち負けという自分の利己からいったん離れて何か別のもののためや誰かのためにパフォーマンスする。
 この奈和ちゃんの姿勢に心を打たれた奈和ちゃんファンや他のメンバーのファンの方も多かったのではないでしょうか?
 
 2021年8月現在、AKB総選挙はなくなっています。
 AKB48選抜もAKB48単独になりました。
 競争の時代は終わりをつげ、今はグループの中で様々なことを共に創っていく協奏の時代が始まったと僕は考えています。
 

 その新しい時代の中でも奈和ちゃんは、きちんと適応して自分やSKE48をアピールしていきます。これが出来るのは、ひょっとすると、彼女の根底にある考えがずっと変わっていなかったからなのかも知れません。
 もう6年前のブログですが、彼女は今の時代を先取りしていたかのようです。

 今、SKE48は何度目かの変化の時期に来ています。
 新センター林美澪はまだ若いです。
 きっと新しいセンターを支えつつ、彼女はどのポジションに居ても、自分や先輩から受け継いできたSKE48のパフォーマンスを表現していくでしょう。
 彼女が多くの人に与えた幸せが、いつか彼女が想像もしない形で現れますように。

※ここまで読んで、まだまだ古畑奈和ちゃんについて考えたいというあなたには、こちらもおススメですよ!
 

2021年8月14日土曜日

HEROになれる人

誰かの希望になること




 

 皆さんが推しに惹かれたきっかけは何でしょう?
 直観的な外見の美しさもあれば、内面への共感、期待や尊敬、と言葉に出来るものもあるでしょう。また、知らず知らずのうちに「胸のワンルーム住み着いた君なの」という「らんま1/2」的なきっかけの方もいらっしゃるかも知れません。
 じゃあ、この子は推さないでも大丈夫かも、と思ったことはあるでしょうか?
 先ほどの逆でルックスが好みではない、内面への共感できなさ、期待や尊敬の出来なさ、知らず知らずのうちに嫌っていた、ということもあるかも知れません(なかなか居ないと思いますが)。
 でも、「この子は僕が応援しなくても、沢山の人が応援するだろうからいいか」という好きでも嫌いでもない、という位置に置かれたメンバーはいないでしょうか?
 大変、失礼な話ですが、僕にとって青海ひな乃さんがそうでした。
 2018年の年末にデビューした時、年齢のせいもあってかある程度完成されていて、失礼ですが、「48じゃなくて46に入っていたら、天下を狙えたかも」と思うぐらい整ったルックスでした。
 スタイルの良さはモデルを多く輩出している乃木坂でも通用しそうですし、視線の強さは当時はまだ欅坂だった櫻坂の世界観にもあっていると思います、そして、彼女が笑うとついつい見ているこちらもにやけてしまうような多幸感のある笑顔は、日向坂のハッピーオーラにも通じそうです。
 そう、彼女にはどこか48とは違う文脈でも通用しそうな魅力がありました。
 もっというならば、「こういうタイプのメンバー」というカテゴライズを迂闊にできないほどの「広さ」のあるメンバーでもあると思います。
 そのせいで、どう受け止めればいいのか分からず、長い間、自分の中で「保留」されていたのかも知れません。
 それでは、青海ひな乃は、どんな人なんでしょう?
 まずは、幼い頃のエピソードから追ってみましょう。

 ううむ、青海さんの声が聞こえてくる語りかけるような文体が良いですね。
 個人的には、文末に「ね」を使いがちという自分のブログとの謎のシンパシーも感じつつ、内容に注目すると、今のSKE48に通じそうな習い事を沢山してきているんですね。
 そんな彼女に転機が訪れるのは、高校生の時です。
 
 2019年に行われた彼女の生誕祭の手紙を読んでみましょう。

「19歳のお誕生日おめでとう。
 
 誕生日当日に皆さんにお祝いしていただけるなんて幸せ者です。
 
 生誕委員の方、スタッフの皆様、ファンの皆様、メンバーの皆様、本日は素敵な生誕祭を開いてくださってありがとうございます。

 早いものでオーディションからもう1年経ちました。去年はひな乃にとっても我が家にとっても激動の年でしたね。

 5月にパパが脳卒中で突然倒れてしまったことは思春期にも関わらず仲良しだったひな乃にとって物凄くショックだったと思います。

 本来なら高校3年生で進路をきめなくてはいけない時期だったのに、全力で向き合えなかったことを申し訳なく思っています。

 勉強は嫌いだから大学には行かないと早くから決めていましたが、かといってやりたいことも見つからず、なかなか進路を決めることができませんでした。

 ダンスと歌が大好きなのでアイドルになるのはどうかと勧めたけれど、最初はあまり乗り気ではありませんでしたね。
 でも、パパがだんだん回復してテレビも見られるようになった時、『テレビが出られるようになったらパパが喜んでくれるかな?』と言って、SKEのオーディションを受けることに決め、受かったことに運命的なものを感じます。

 SKE合格してから公演に出させていただくまでは毎日レッスンと自主練があり、そんななか足首を痛めてしまったので病院に行くことを勧めたら『病院に行って疲労骨折と診断されたりすると治るまでレッスンができなくなるので行かない』と言ったあなたの意志の強さに驚きました。

 またSHOWROOM配信が始まった時にはあなたの一般教養のなさにも驚かされましたが、これは中学高校と毎日部活で帰ってきたら疲れて寝てしまうという生活を6年間続けてきたので仕方ないのかな。その代償として根性だけは備わったのだと思うことにしておきます。

 でも、大人になると一般教養は必要なので、今からでも少しずつ勉強してくださいね。

 ひな乃はたまに行き詰ると『私はアイドルに向いてない』と言いますが、あんなにキラキラした笑顔で踊ったり楽しそうにSHOWROOMをしたり、勉強は全然覚えることが出来なかったのに、ダンスや立ち位置はしっかり覚えることができているのでアイドルに向いているとママは思います。

 パパは残念ながら障害が残ってしまいましたが、あなたの公演を観た後は嬉しそうな顔をして何度も深く頷いています。

 病気になる前はアイドルに興味がなかったパパが、今では毎日DMMを見て、overtureの時に『わー、それそれそれ』と自然と口から出るようになって、今ではすっかり立派なSKEヲタクです。

 SKEに入ってから今までとてもありがたいことに幅広くお仕事をさせていただいています。
 そのことに感謝して、今まで通り何でも全力で頑張ってください。
 
 SHOWROOMを見ていても分かりますが、あなたを応援してくださるファンの方は本当に優しくて、いつでもたくさんのパワーをくださっています。どうか、これからも変わらずひな乃の応援をよろしくお願いします。

 そして、ひな乃を気にかけて優しい言葉をかけてくださる先輩方、スタッフの皆様、仲良くしてくれる9期の皆さん、これからもよろしくお願いします。

 ひな乃、あなたは私達の自慢の娘です。これからも応援しています。

 P.S.
 パパが寝かけた時に帰って来て、パパを起こしてダル絡みするのはやめてあげてください。

 ひな乃単推しのママぴよより」


 なんというか、この手紙を書き起こしながら、僕は何度も目の前が潤んで書く手を止めることになりました。
 まだ進路が決まっていなかった高校生の彼女が、お父様の身に起こった病気から、真剣にアイドルになる為に立ち向かっていく。
 それは、自分自身の夢がまだ無くても、夢中で頑張ることで誰かの夢にはなれることを僕らに教えてくれます。
 彼女の「疲労骨折と診断されたりすると治るまでレッスンが出来なくなるので行かない」というのは、ちょっと心配ですが、外見の美しさだけではなく内面の熱量も感じました(でも、持病になる前に診断はしてほしいですね)。
 ちなみに、この年の生誕祭で彼女は、本当に自分でいいのか、と悩むこともあったものの、家族やファンの方々の為に、SKE48を続けることを語っています。

 じゃあ、彼女の考えるSKE48の未来とはどのようなものなんでしょうか?
 再び、彼女が書いたアメブロに戻ってみましょう。


 思えば、彼女はまだSKE48としては2年半しか活動していないんですね。
 公演では、松井珠理奈ポジションを任されることもあり、カミングフレーバーやBlack Pearlのメンバーでもあり、ついにSKE48の選抜にも選ばれました。
 いったい、幾つの文脈を持つ「広さ」を彼女は持っているんでしょう。
 そんな彼女が卒業していくメンバーたちの「熱量」を受け継いでいく。
 そう、きっとSKE48の魅力の一端は、この「熱量」ではないか、と思います。
 SKE48から離れてしまった人が、「もう昔のSKEじゃない」と言われるかも知れません。
 でも、彼女の文章を読んでいると、ちゃんと大事なものは受け継がれていると思います。
 そして、青海ひな乃自身という一人のアイドルの物語は、まだまだ続きます。
 先日、データサイエンスの権威である矢野和男さんの新刊「予測不能の時代」の中で、持続可能な幸福を生み出す組織人に共通している要素として、フレッド・ルーサンス教授(ネブラスカ大学名誉教授、アメリカ経営学会元会長であり、組織行動学者の権威)の研究結果が引用されていました。
 学術的にデータで検証済みの尺度によると、下記の4点を持つ人がこれからの組織には必要とされるそうです。
① ホープ(Hope) 自ら進む道を見つける力。
② エフィカシー(Efficacy) 現実を受け止めて行動を起こす力。
③ レジリエンス(Resilience) 困難に立ち向かう力。
④ オプティミズム(Optimism) 前向きな物語を生み出す力。

 ルーサンス教授は上記の4つをまとめて「HERO」と略しました。
 青海ひな乃には、「HERO」になる要素が多分にあると思います。自分の人生に起きた悲劇を喜劇に変えていく為に、持てる力を使って全力で向き合っていることを、彼女のこれまでが証明しています。また、いくつものユニットを横断しているのもこの力を持ち合わせているから、必要とされているのかも知れません。


 もう、本店選抜や坂道AKBは無くなってしまいましたが、他流試合でどんどん結果を出していく彼女も見てみたいと思っています。嗚呼、もう彼女の物語を考え始めている。でもね、前向きな物語を想像させる魅力が彼女にはあるんですよ。そして、僕が好きな特撮のHEROたちは、誰かに応援されてもされなくても、自分の意思で自分の未来を切り開いて、周りの人達も笑顔にしていたな、と思いました。
 青海ひな乃の3年目の章には、どんな物語が書かれていくか、少し遅れましたが、僕も新たな「HERO」の物語を見ていきたいと思います。




 

2021年8月9日月曜日

共鳴が証明する瞬間を待つ

お互いの歩調が合う瞬間へ

 もうすぐパラリンピックですね。
 僕はオリンピックにはあまり興味がなくて、もう記録の伸びの幅が短くなり始めたオリンピックよりも、パラリンピックにおけるパラリンピアンたちを支える様々な技術の進化が凄く楽しみで、我々人類の将来の身体拡張にもつながるのでは、とワクワクしています。
 だって、何かが欠けていることは、埋まっているものから脱して、進化するための余白と可能性でもあると考えられますから。

 そのパラリンピックの中で、マラソンがあります。
 車椅子での形態と目の見えないランナーと目の見えるランナーが、ロープを輪っかにしたものを掴み、一緒に走る「ブラインドマラソン」というものがあります。
 哲学者の伊藤亜紗さんは、2020年に講談社選書メチエから刊行した「手の倫理」の中で、「さわる」と「ふれる」の二つの概念から不自由論について考えます(ちなみに、その前の2019年刊行の『記憶する体』の身体のローカル・ルールも面白いです。たとえば、目が見える僕らと目が見えない方では、『居心地の良い席』の概念が全く違うとこなんかは特に)。
 その中で、目の見えるランナーは一見すると、目の見えない人の水先案内人に見えると「設計上の非対称性」はあります。
 しかし、伊藤さんがそれぞれのランナーの方々に取材していくと、全く違う答えが返ってきます。
 ロープを持って二人で走っている時は、『共鳴』するような感覚があり、楽しい心が躍る感じがするそうです。
 伊藤さんはどちらかが介助するというよりは、「生成的な関係」を生み出しているのではと書いています。勿論、『共鳴』がバンバン起こるわけではなく、走りながらどちらかが「ここは攻めたい!」と思ってももう片方が「いやまだ無理!」と思うと、スパートをかけることが出来ません。双方のフィードバックループを通してコミュニケーションを生成していくのがこのスポーツの面白さだと思います。

 このスポーツのことを読みながら、ふと、あるSKE48のメンバーのことを思い出しました。
 ドラフト2期生、水野愛理です。

 彼女が48グループの歴史に登場した時、様々な期待を多くの人がしました。
 ただ、当時の水野愛理はまだ13歳でした。
 全ての期待に応えられるほど、彼女が出来上がっていたかというと、それは違っていたと思います。
 僕らSKE48グループファンは松井珠理奈という超例外を知ってしまっているので、ついついその物差しで若手を見てしまうことがあるかも知れません。しかし、珠理奈自身のバックボーンや彼女がデビューした時の環境を忘れてはいけないと思います。
 運営やファンの方々の期待と水野愛理は、「ブラインドマラソン」のように、お互いの持つ紐を交互に引っ張りあいながら、走り始めます。

 その中で水野愛理は多くの感情を知っていきます。
 2016年10月3日に行われた水野愛理14歳の時の手紙を読んでみましょう。


「愛理へ

 水野愛理ちゃんお誕生日おめでとう。
 愛理ちゃんとはいつ、どんな理由があって仲良くなったのか全く覚えていません。
 なぜか私の携帯に愛理のどうしようもなくしょうもない動画があります。あの時仲良かったのかな。

 でも本当に仲良くなれたね。愛理とは色んなお話をします、お仕事のお話はもちろん、他にも学校の話、趣味の話、服とか髪型とか、ほとんどはホンマにくだらんくてしょうもない話ばっかりやけど、私は二人で笑ってる時間がホンマに好きやねん。

 愛理が初めてチームK2の『ラムネの飲み方』公演のアンダーに出演してくれた時、思うようにできひんくてたくさん責められたね。そのあと愛理が電話で泣きながら私の話をちゃんと聞いて愛理自身の気持ちの話をしてくれたことすごく覚えているよ。
 

 そんな経験があったからかな、『0start』公演にアンダーで出てくれた時は殆どミスもなくて成長したねって沢山褒めてもらったね。私はそれが嬉しくて泣きそうな顔の愛理を見てニヤニヤしてた。
 頑張ってたんやなぁってすごい伝わったよ。

 この間ね、愛理のバックダンスを見ていた先輩が、すごい褒めてたよ。『愛理ちゃんが1番上手で1番可愛かった!』って。良かったね。

 愛理はプライドが高くて、自分が『コレだ!』って思ったことは、先輩の私相手でも絶対曲げへん。いつも言ってるけど、良いところでもあるけど折れることも時には大事やで。これからもな曲一緒に頑張っていこうな。って、私もこんなこと言える立場じゃないけどな。

 でも、ちょっと仲良くなり過ぎたんかなぁ。コイツなめれんのか?って思うときがいっぱいある。急に電話かけてくるし、すぐメールしてくるし、『この写真本当にブサイク』とか毒吐いてくるときもあるし。かと思ったら会う度に『髙塚さ~ん、なんでいるんですか~?』ってすごく寄ってきてベタベタして離れへんし、ホテルの部屋は私のところに来て同じベッドで寝るし、私がお風呂に入る時もずっと隣にいるし。
 ちょっと可愛いなとか思ってるよ。大抵は、ホンマ子供やなぁって思ってるけどな。

 待ち受けが斉藤真木子さんと私なのもちょっと嬉しい。なんだかんだ可愛い後輩です。そんな愛理が好きやで。だから、ずっとそのまま素直で無邪気で子供みたいな愛理でいてね。はやくお家においで。いつでも電話でもメールでもしておいで。話には乗ってあげるよ。長くなりましたが最後に、お手紙を書かせてくださった生誕委員の皆さん本当にありがとうございます。

 SKE48チームK2 髙塚夏生より」


 この年のスピーチで水野愛理は、この1年は沢山の「感情を教えてもらった」と語ります。それは「悔しさや悲しさ」でした。最近ポジションが下がってしまったことや、チャンスを逃してしまったことを語ります。
 彼女の破天荒さは、誤解を招くこともあったかも知れません。
 僕なんかは、こちらの予想の範囲内に収まる才能や人間性の素晴らしさよりも、どこか飛びぬけた才能に惹かれるタイプでしたので、時々聞こえてくる彼女のエピソードについては、面白く感じていたんですが、みんながみんなそうではないのも分かります。

 

 それから、1年。
 2017年9月29日の水野愛理の生誕祭で読まれた、大場美奈の手紙を読んでみましょう。


 「愛理へ

 15歳のお誕生日おめでとう。私にとって、愛理は娘のように愛おしくて、本当にかわいくて仕方のない存在です。

 ドラフト会議で愛理を見つけた時、一瞬でこの子いいなと思いました。愛知県出身で、どこかクールで、それいて熱い、一生懸命な愛理がSKE48に居てほしいと思いました。SKE48として、一巡目で選択したこと、左手で交渉権を獲得した時の感動。全部忘れられません。


 愛理にみんなが期待しました。どう育てていこうか、どんな子になるだろうか。そんな期待を、私たちもスタッフさんもしていました。幼いながらにも、48グループが大好きな愛理はきっと感じたんじゃないかな。自分が期待されていることを。プラッシャーになったよね。ごめんね。


 本当は、愛理がSKE48に入ってくれたら、すぐに私たちチームK2のもとで、こっちゃんと共に、二人をしっかり面倒みたかった。先輩と過ごす環境って、後輩にはとっても心狭くて、常に緊張していて、居心地のいいものではないけれど、それが成長につながって、仲間としての絆も強くなっていく大切な時間だから。でも、それを愛理とこっちゃんにしたげられなくて、本当にごめんね。


 ファンの方伝いで、メンバー伝いで、スタッフさん伝いで、愛理の近況を聞くのがとても悔しかったです。おまけに、一番なついたのが、チームK2でもない斉藤真木子で心が折れかけもしました。でも、無事に昇格してくれて、遅くなったけど、チームK2で愛理の成長を見守れる、今の環境がすごく嬉しいです。

 愛理のいいところはね、熱くて一生懸命なとこど、がむしゃらに頑張るところ。そこに私たちは惹かれました。誰も、愛理をとったこと、後悔してないよ。

 今の自分に納得していないと思う。後輩もできて、抜かされてると思うこと、たくさんあると思う。追い抜かさなきゃって焦ると思う。これは個人的な私の願いだけど、愛理は17歳くらいまでは、焦りすぎす、気持ちも折らず、しっかりまっすぐ勉強して、学んで成長してほしい。

 まだ15歳。この先に愛理のチャンスの順番は絶対にきます。今焦ってジタバタするより、チャンスの順番が来たときに、しっかり掴める子になってほしい。だから今は、まっすぐのびのび、楽しいこと、つらいこと、全部吸収して、一歩一歩成長していってください。

 今、愛理には細かく注意はしていません。でもね、実はこっそり後ろで見ています。細かく注意するより、思いっきり注意した方が響く子だから、ずっと見ています。それを忘れずに。

 いつでも周りの人に感謝の気持ちを忘れずに。これからも、ずっとずっと愛理のこと応援してるよ!

 チームK2 大場美奈より」


 もう、水野愛理のここが素敵、という部分を見事に言語化してくれた語ってくれた手紙ですね。思えば、AKB48のチーム4のリーダーであり、研究生時代はチームAの前田敦子ポジションを任されていたみなるんだからこそ、説得力を持つ言葉なのではと思います。
 この年のスピーチでも、水野愛理は「悔しさ」、「後悔」、「反省」を語り、ファンの方が居て当たり前だと思っていた反省を語ります。初期は握手会が完売していたのに、今ではそうではなく、来てくれたファンの方が「完売できなくてごめんね」と言わせてしまうことにも触れています。これを語るのは、愛理自身も辛かったのではと思います。
 そして、8期生の加入や第3回ドラフト会議の開催に危機感を覚えたこと、発してはいけないと思っていた「センターになるぞ」という言葉を発したことを振り返っていきます。また、こっちゃんが水野愛理の影での努力についても語っていました。
 ちょっとずつ、愛理自身が理想と現実のギャップを超えるために、運営やファンの方々の期待に応えるために、前に進み始めます。7D2のメンバーたちが、少しずつ選抜に選ばれてはじめたことや、小畑優奈のセンターも刺激になったのではと思います。
 物販で名を馳せ始めたのも、この年ではなかったでしょうか?
 コロナ禍の2021年現在では、貴重な体験となってしまいましたね。
 僕もデコライトを彼女から売りつけられたかったです(良い意味で『売りつけられる』と書いています。念のため)。
 

 話を戻しましょう。
 再起を誓った生誕祭から1年、2018年9月27日にあった水野愛理生誕祭で読まれた、小畑優奈からの手紙を読んでみましょう。

「愛理へ。

 お誕生日おめでとう。

 愛理のはじめましての印象は、とってもがむしゃらで、ショートヘア―が似合っていて、メイクが濃いという印象でした。そこから一緒にレッスンをしていくうちに、少しずつしゃべるようになっていきました。ですが、特にそれ以上のこともなく、いつからこんなに距離が近くなったのかなと振り返ってみると、多分だけど、一緒に「ラムネの飲み方」公演に出演するときくらいかなと思っています。

 出演することが決まって、二人ともすごく緊張していて、なかなかうまく行かなくて、愛理は泣いてしまうことだってあったけど、それでも次には強くなっていて、かっこいいなと思ったよ。

 そこから、昇格が決まって、もっと一緒にいる時間が多くなって、色んな話をしているうちに、好きなもの一緒だったりで盛り上がって、一緒の関係がった。SHOWROOM配信のノリで作ったコンビ「小野」も、今では私の中では、なくてはならない存在になっています。

 私たちは、どちらかというと、タイプも性格も全然似てなくて、なんなら真逆かもしれないけど、その分、すごく似ているところがあるとすれば、行動力かな?
 何かしたい、食べたい、やりたいってなったら、とにかく行動。その日のうちに決まって行動することなんて当たり前。それくらい行動力がすごいよね。

 でも、そんなことしてるうちに、私の中で愛理は本当に大切な存在になっていったし、なんでも話せる人になりました。何かあったら、しょうもないことでも、悩みでも何でも話したいと思うのはやっぱり愛理だし、それに対してちゃんと言ってくれるのが嬉しいです。例えば、『似合ってないものは似合ってない』とかね。

 愛理は、『破天荒』とか言われてて、何でも思ったことを口にしちゃう素直さが、たまに誤解されちゃうこともあるかもしれないけど、それが愛理の良さだと思うので、これからもそのままの愛理でいて欲しいなって思います。

 何も考えてないように見えて、愛理も実は色々悩んでたり、考えてたりしてたり。すごく優しいから、ご飯に行ったら、さりげなく食べ物をよそってくれたり。実は、すごく色々考えてるんです。

 だから、愛理のファンの皆さん、愛理を信じて、これからも応援してください。絶対に、応援していて飽きないと思います。

 愛理は、これからも愛理らしくいてね。そして、「小野」コンビ、もっと頑張ろうね。最近「小野」コンビで少しずついろんなお仕事できてること、すごく嬉しいなって思ってます。

 最後に、こうやってお手紙を書かせてくださった生誕委員の皆さん、愛理のファンの皆さん、本当にありがとうございました。


 あ、最後に愛理。出かける時にレッスン着で出歩くの。そろそろやめてください。それも愛理らしいけどね。


 小畑優奈より。」


 この翌年の2月にゆななが卒業発表することを考えると、なんとも切ないですね。これまでの先輩からの手紙と違って、同じぐらいの視線から水野愛理を見つめた貴重な手紙だと思います。一見するとタイプの違う二人が、実は行動力という共通点を持っているというのが面白いですね。片やSKE48のセンターを任せられたメンバー、片や悔しさの先にこの年初の総選挙ランクインを果たし、少しずつ呼ばれる仕事が増えてきたメンバー。実績だけを見ると大きな差がありそうですが、持ち合わせえているポテンシャルで見ると、実は近いものがあったのではないか、と僕は思っています。
 少しずつ、水野愛理と運営やファンの方々の走り方が合わさり、「共鳴」が起こったのではと思います。

 最後は2019年10月9日の水野愛理、17歳の生誕祭で読まれた日高優月さんからの手紙を読んでみましょう。


「お誕生日おめでとう。


 今年はこうしてお手紙を書けて嬉しいです。

 いつも私のそばにいてくれてありがとう。一つの支えなので凄くありがたいです。

 16歳の1年はたくさんの葛藤や衝動があって、愛理にとって身も心も忙しかったんじゃないかなと思います。

 泣きながらたくさん話てくれた時に『愛理には愛理の考え方があるんだな』ってちゃんと伝わったよ。

 4年目になるのかな?
 5年ですか。失礼しました。

 5年目になりますね。それでもたくさん失敗して、たくさん壁に当たって、たくさんの経験をしてください。

 愛理自身が「こう」って思っててもそれが間違いのこともあるからね。でも、もちろんそれが間違いのこともあるからね。でも、もちろん正しいこともあります。それも全部経験として糧にしてください。それがいつかちゃんと自分のためになるし、時間が経った後に『あの時はこうだったな』って感じられると思うよ。

 納得いかないことも絶対にこの先あると思うけど、愛理が愛理らしくやってれば大丈夫だよ。敵がいたとしてもその分ちゃんと味方がいるから。上手な言葉はかけられないかもしれないけど、愛理のためになるなら何でもするし、優月は味方でいるからのびのびやってください。

 応援してくれる人も私も笑顔で踊ったりしてる愛理が大好きだから、自分の好きなことに熱中してそのままの愛理を表現してください。

 プライベートでもたくさん遊んでくれてありがとうね。たくさん思い出を作ろう。たくさん遊ぼう。たくさん話そうね。

 何にでも一生懸命な愛理が大好きだよ。
 これからもたくさん可愛がります。
 17歳、たくさんの願いが叶うといいね。たくさん笑って過ごそうね。

 本当にお誕生日おめでとう。

 SKE48チームK2 日高優月より」


 この年の生誕祭でも、水野愛理は悔しいという言葉を発しています。
 総選挙後は仕事が増えたものの、今年は上に上がりたいと思えば思うほど、下に行き、空回りしてしまったこと。ファンの方の入れ替わりが激しかったのではないか、ということ。多分、ファンの方に「ダメ」と言われても歯向かうこと、でも、一人になった時には「失敗しちゃったな」と反省すること。
 K2の層の厚さを感じたこと、諦めて無理だと思ったこともあったが、諦めずに次の一撃で壁を壊せるのでは、と考え直したこと。K2で嫌だなと思ったこともあったけれど、今はK2で良かったと思えることを語りました。
 最後に目標として選抜を目指すことを彼女は挙げます。
 自分の努力不足で、ファンの方々にお金と時間をかけさせてしまったことも語ります。
 再び、水野愛理と「期待」を繋ぐ紐が、少しずれてしまっていたのかも知れません。

 あれから、もうすぐ2年。
 水野愛理は松井珠理奈が選ぶ次世代選抜に選ばれ、ティーンズユニットにもファンの方の協力でランクインします。

 初めまして!想いとか...水野愛理です! | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)



  この曲に出て来る歌詞が、まさに水野愛理にフィットしましてね。
 「壁」、「今の自分じゃダメなんだ」「批判だって自分の手で変えていけ」、「何度でも立ち上がれ」とかね。
 初めて聴いた時は、あまりピンとこなかったんですが、こうして水野愛理目線で聴くと違った響き方がします。
 再び、共鳴を始めた水野愛理と多くの人々の「期待」。
 時には彼女を苦しめたかも知れませんが、今は追い風になり始めているのではと、ここ数年の実績から感じます。「期待」に応えるためには、まだ欠けているものもあるかも知れません、でも、それはきっと埋められる「可能性の余白」だと僕は思います。
 「共鳴」して走る時に「主」、「客」の関係は消えていきます。
 ファンとメンバーが一体となる瞬間を感じることは、アイドルを推していく中で何回あるか分かりません。
 ただ、水野愛理なら、必ずその瞬間をファンの方に感じさせてくれる、期待して間違いなかったと証明すると信じています。
 
 水野愛理さんの一日も早い回復を祈っています。

いうならば、あやめろver.2へ

光が強くて見えないところも


 突然ですが、皆さんが考えるSKE48の7期生、あやめろこと太田彩夏さんのイメージははどんなものでしょう。
 僕がパッと思いつくのは、「1たす1は2じゃないよ」の動画で「あっち向いてホイ!」をしているイメージです。あまりにも愉快な戦いが繰り広げられ、毎回期待してしまいます。いや、それだけでは、ありません。公演でのMCも独自の喋り方で、賑やかに動く右手が印象的です。あとは3ビリオンとかもですね。
 そのせいか、彼女の持つ面白さや賑やかさの方に目が行ってしまいがいちですが(あくまで僕の主観です)、本当にそれだけでしょうか?
 
 2016年には「ミュージカルAKB49」のアンサンブルとして研究生ながら選ばれ、2017年、2019年、2020年にはパッションフォーユーのCM選抜にも入っています。また、ユニット対抗戦でのバブル時代の衣装とメイクで活躍もしました。さらに、岐阜関係の仕事が印象的で、ラジオ番組や銀行関係、サッカーの「FC岐阜応援隊」などの外仕事も任されています。

 彼女を知る為に過去のブログや最近のアメブロ、あとは動画を中心に確認していったんですが、知れば知るほど、彼女が入った期である7期、いや7D2という「奇跡の世代」に入ったが為に、完全にポテンシャルが運営に認められているかというと、果たしてそうなのか、という疑問はあります。
 それでも彼女は腐らずに、いつも公演や動画や外仕事で人々を笑顔にしていきます。
 その背景にはどんなものがあるんでしょう。
 ある生誕祭の手紙をヒントにしてみましょう。

「あやめろへ。18歳の誕生日おめでとう。
 

 あやめろとはチームK2になってから、一段と仲良くなったね。声はバカでかいし、常にオーバーリアクションでたまにいらつくけど、そんなあやめろが大好きで、いなきゃいけない存在だなって思ってるよ。 

 なかなか公演に出られなくて、二人で一緒に弱音を吐いたときもあったね。昇格したばっかりの時は、楽しいことしかないと思わなかったから、ここで試練があるなんて思わなっかったよね。初日に選んでもらった時は、二人で泣いて喜んだこと。きっとこれからもずっと忘れないんだなって思う。新公演になって、今まで以上にあやめろと同じ時間を一緒に過ごせて、今、最高に幸せです。

 先日のコンサートでは48グループのセンターに立ったり、あやめろの活躍ぶりを私も聞いて、すごく嬉しかったよ。いつかは、私もあやめろと一緒にダブルセンターで曲を披露できたらいいな。

 それからグラビアを見て、めちゃめちゃスタイルが良かったから、モデルをしているあやめろも見てみたい!制服を現役で着られるのは今年で最後だから、いっぱい制服を着て遊びに行こうね。


 あやめろの笑ってる姿が一番大好きだよ。これからも支え合って、チームK2としてチームを二人で盛り上げていこうね。とても誇れる、最高の仲間です。

 チームK2 水野愛理より」

 これは2018年8月19日に行われた太田彩夏生誕祭で読まれた水野愛理からの手紙です。じゃんけん大会で結成された「SUPER MOON」というユニットでもこの二人は一緒でしたね(他のメンバーは同期の小畑優奈、野島樺乃)。
 この年のスピーチで、トーク力や語彙力について語り、総選挙のランクインとチーム内での序列を上げることを語りました。思えば、当時のチームK2って、7D2にゆななやなるぴー、こっちゃん、愛理という凄まじい才能たちがいて、選抜常連の先輩が沢山いるんですよね。この中で序列を上げて行くというのは、なかなか大変です。
 また、語彙力やトーク力について言えば、伝える力について考えさせられます。彼女はこの年の生誕祭でファンの方へ、思ってることや気持ちの共有が出来ていないのでは、自分の弱い部分を見せられていないのでは、ということも語っていましたね。
 そのことは、次の手紙でも触れられています。


「彩夏へ

 

 お誕生日おめでとう。
 楽々だよ。


 彩夏の手紙を書くのは2回目な気がする。合ってるかな?

 彩夏とは初期の頃から変わらず仲良くて、喧嘩もしたことなくて、振り返ると懐かしいなー。

 毎日レッスン後にオアシスに行ってポテトを食べたり、移動車の中で『うるさい』って先輩から怒られたり、普段はあんまり真面目な話はしないし、むしろしょうもないことを話してるけど、私の彩夏の好きなところは、一見そうじゃなく見えても実はちゃんとした考えを持っていていて、将来もきちんと見据えているところ、普段はふざけてるけど根は真面目なところ。根柢の考え方は割と共通してるよね。

 でも、心配なところは、彩夏は弱音を吐いたりしないところ。きっと仲のいい野島が選抜に入ったり、楽々が卒業しちゃったりで不安になったり、『つらいな、悔しいな』って思うんだ。

 でも、それを全く口にしない彩夏を見て『強いな』と思う反面、もっと頼ったり相談してくれてもいいんだよって思う時がある。

 私が思うにだけど、『前のめり』の選抜の時、一番素直に喜んでくれたのは彩夏だと思うんだ。

 彩夏はいいヤツ過ぎるってくらいいいヤツで、それはもう分かってるから、何か心につっかえるものがあったり、言いたくても言えないってことがあるなら言って欲しい。解決するまでちゃんと一緒についてるから。楽々がSKEから卒業する分、もっと言いやすくもなると思うんだ。だからどんなに小さいことでも別に構わないから。何かあれば楽々に言ってね。

 言わなくても分かってると思うけど、SKEでもっともっと頑張るんだぞ。

 楽々が卒業しちゃったら会えなくなるの寂しいんでしょう?
 楽々はまあまあ寂しい。まあまあね。

 とか言いながらもなんやかんやで普通に会ってそう。

 SKEに入ってなかったら彩夏に出会えてなかったなって、出会えただけでもSKEに入った意味があると思える。彩夏は楽々にとってそういう人。これからもずっとよろしく。


 生誕委員の皆さん、会場にいる皆さん、DMMをご覧の皆さん、彩夏の手紙を任せてくださってありがとうございます。皆さん、彩夏をどうかお願いします。そして選抜へつれてってあげてね。


 最後にもう一度、お誕生日おめでとう。そして、明日また会おう。」

 

 これは2019年8月19日に行われた太田彩夏生誕祭で読まれた手紙です。

 チームは違っても、同期の絆はずっと繋がっているんだな、と感じさせられる手紙でした。いつも愉快なあやめろの繊細な一面に触れられる、後藤楽々ならではの手紙だと思います。楽々自身も、「前のめり」の選抜に選ばれた時から、沢山の悩みを抱くことになったと思います。それを語れる相手があやめろだったのかも知れません。
 そういえば、「アイドルの涙」の豪華版の特典映像であやめろが優しく諭すようにのじのじさんをフォローするところがありましたね。彼女自身は、賑やかなアウトプットと違って、静かなインプットの視線を持っている気がします。
 そういえば、「おはようから始まる世界」のMVでジッとキャンバスに向かうあやめろのシリアスな視線が素敵でしたね。



 話を戻すと、この年のスピーチで彼女は、19歳の目標として「自分に自信をもつこと」を挙げます。本気で選抜に入りたいと思っているものの、それを口に出せない。もっと自分に自信を持って、言いたいことをファンの皆さんに伝えていきたいということを語ります。2018年の生誕祭と内容が似ているかも知れませんが、より鮮明に目標が見えてきた感じがします。
 そして、もう一つ目標があり、それは後輩にいい背中を見せていけることです。気づけば7期生も中堅のポジションになり、あやめろもK2生活が長くなってきています。その中で尊敬できる先輩たちの背中を見てきたと思います。たとえば、ちゅりもそうですよね。

 この生誕祭で語ったことは、2021年になっても変わらず彼女の中に残っています。
 ちょっと彼女がこれからについて書いたアメブロを読んでみましょう。
 
 7D2という奇跡の世代に僕らは大きな夢を沢山みさせてもらった気がします。
 特に2015年頃から2018年頃までは、これまでと違う価値観がSKEの中で広がっていく気がしていました。それは、アスリート的な要素からバラエティ的な要素へという変化が起こりかけた2013年頃の変化ではなく、もっと違う何かです(この辺りはいつか言語化したいです)。
 しかし、気付けば7D2も多くのメンバーが卒業してしまいました。
 今残っているメンバーたちもそれぞれの位置で公演や選抜で活躍しています。 
 ただ、まだSKE48の大河ドラマの中であやめろの章は来ていない気がします。
 いや、動画の中やSKEの公演では来ているよ、と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、「おもしろ」とは違う種目で戦うあやめろをもっと見てみたいと思っています。
 それは、先ほど挙げた「おはようから始まる世界」の真剣な眼差しが似合う種目であったり、毎回SNSなどに登場するお洒落な私服のセンスが光る種目かも知れません。いや、先輩として後輩たちを引っ張っていくリーダーシップかもしれません。
 それぞれが2019年の生誕祭で語った目標と繋がっていくのではないか、と思います。
 次は、あやめろの番だ、と2021年は思います。

 最後に、太田彩夏さんの1日も早い回復をいのっています。
 2021年8月9日が始まってまだ1時間ほどしか経っていない深夜に。


2021年8月7日土曜日

バトンを渡せる人

誰かがスコアに起こすさ

 2015年7月29日。
 僕は、トヨタスタジアムの1階スタンド席に居ました。
 もう、夏の気持ちの良い夕暮れが終わり、少しだけ雨の匂いがしてくる夜。
 高木由麻奈さんが作曲した「ブリッジ」が流れました。
 48グループでは珍しいインスト曲です。
 48グループの中でみたインスト曲の中では、2014年SSAの時の「Darkness」前のインスト曲は映像と舞台装置と衣装の全てが合わさった完璧な演出で、これを超えるのはなかなか難しいと思っていたんですが、この「ブリッジ」では、夜の野外で当たるスポットライトの明るさと、曲に合わせて躍動するメンバーの身体性の美しさを感じる、「Darkness」の計算された芸術的な演出とは違う、野生動物の強さを感じる演出でした。
 その中で瑞々しい光を放つメンバーがいました。
 SKE48の7期生、杉山愛佳です。
 研究生ながら、先輩ダンスメンバーたちの中で踊る彼女の姿は、将来、「ダンスのSKE」を牽引する存在になるのでは、と期待しました。
 

 彼女のスキルはどこからやってきたのでしょう?
 それは幼い頃からの修練にありました。

 12年前( * ॑꒳ ॑* )♥杉山愛佳 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)

 ううむ、何か目的があって始めたのではなく、続けていたら上達していたというのが凄いですね。彼女にとってダンスというのは、徐々に「習い事」からずっと生活の中にある「習慣」になっていたんですね。
 そうすることで、ダンスを覚えたり、それを表現したりすることの礎ができ始めていたのかも知れません。
 

 やがて、彼女はSKE48の7期生として加入します。
 研究生としてチームSからチームEまでのアンダーを務めてしまうそのダンススキルの高さと、親しみやすいキャラクターが印象的でした。この言葉がぴったりかどうかは分かりませんが、「初代チームSっぽいメンバー」だな、と感じていました。僕はその感じが好きでした。
 またまた、豊かな表情が素敵で「いい人いい人詐欺」のMVは当時の彼女の魅力が見事に残っている映像ではないか、と思います。


 

 


 個人的な体験になってしまうのですが、ある握手会の会場で、丁度、あいあいがレーンから帰っていく時に、ファンの方々が何かあいあいに向かって叫んでいるのに対して、笑いながら「DD!」と返していて、良い意味でふざけあえる仲でいいなあ、と感じたものです。
 ちなみに、彼女は、DDについて二つもアメブロに書いていますね。
 どちらも面白いので、どうぞ。

1年3ヶ月ぶりの東京( * ॑꒳ ॑* )♥杉山愛佳 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)


 配信の楽しみ方( * ॑꒳ ॑* )♥杉山愛佳 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)


 さて、話をもどすとあいあいが加入して数年は、まだ選抜総選挙もありましたし、握手会も現場でガンガン行われていました。どの価値観が正しいというわけではないのですが、時代の空気は公演でダンススキルを見せて行くメンバーに対して、必ずしも追い風が吹いていたかというと、厳しいものがあったのかもしれません。
 しかし、そんな彼女のことをきちんと見ているファンの方やメンバーもいました。
 SKE48の5期生、市野成美もその一人です。
 2018年3月9日に行われた杉山愛佳生誕祭の手紙を読んでみましょう。

「 

 あいあい、お誕生日おめでとう。

 7期生を初めて見た時に凄いダンスが上手い子がいるって思ったのがあいあいで、その時に私はあいあいに惹かれました。

 まだあいあいが研究生だった頃、たくさんアンダーに出てくれたり、私が研究生公演に助っ人に行ったり、公演で関わることが多かった気がします。

 マネージャーさんにお願いされたら何日前だって、何時間前だって「わかりました、できます」そう言って公演に出ている姿を見て、私は自分を見ているようでした。


『市野ならすぐできちゃうもんね』


 私はこの言葉が凄く嫌いです。
 みんな同じ人間だし、ダンスも歌も覚えるのが簡単な人なんていないのに、スクランブルでの出演でも間違えることが少ないから、みんなからはきっと『簡単にできちゃう人』って思われてるんだろうなって思ってました。


 そう思っても、ファンの方や誰かが一人でも『よく頑張ったね。えらいね。本当に凄い!』そう褒めてくれるだけで頑張って良かったって思えるんだよね。きっとあいあいあもそうだったと思います。


 公演で共演しているうちにあいあいあのことをたくさん知って。きゅうりが好きだということを知りました。

 その時にあいあいあのことをきゅうり会のメンバーに誘ったよね。

 5、6人もいたきゅうり会ももう二人になっちゃったね。

 私が会長のはずなのに、予定を立ててくれるのも、きゅうりを持ってきてくれるのも全部あいあいだったね。

 『なるさん、いつもなーんにも持ってこない』っていうあいあいの言葉に『会長は食べる気持ちだけ持ってこればいいんや!』って反抗してごめんね。

 あいあいとお出かけしたこと、ご飯に行ったこと、全部全部楽しかったよ。

 あいあいといたら二人でしょーもない話でずっと笑いあってたよね。期性は違うけど、こんなにも仲良くなってくれてありがとう。

 4月からはお友達になりたいです。なるちゃんって呼んでほしい。

 私が卒業発表してからすぐに連絡をくれて会った時も『ねぇ、なるさん勝手に発表しないで。嫌だー、寂しい』って言ってくれて嬉しかったです。もうこんなにも近くであいあいの頑張りを見ることはできないけれど、ずっとずっとどこかで見守っています。

 悔しいこと、悲しいこと、もちろん嬉しいことも私でよければいっぱい話してください。力にもなれるように頑張るからね。

 あいあいのファンの皆さん、お手紙を書かせてくださってありがとうございました。

 あいあいの16歳の1年が笑顔で溢れる素敵な年になりますように。

 大好きだよ。

 チームE 市野成美より」


 これはメンバーだから分かることであると思いますし、SKE48のパフォーマンスの土台である公演を守ってきたメンバーの評価について改めて考えさせられる手紙だと思います。特に、「非日常」的な総選挙も無くなり、握手会とオンラインを利用したイベントの比率が逆転して、劇場公演のある「日常」が大切だと再認識した、2021年8月現在には、より見直さなければいけないことだと思います。
 
 また、1期生の松井珠理奈も公演前に彼女に忘れられない言葉をかけています。

珠理奈さんからの一言( * ॑꒳ ॑* )♥杉山愛佳 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)


 話を戻すと、彼女の頑張りにファンの方々も応えようと頑張ります。
 2018年の総選挙では、開票日当日こそ名前を呼ばれなかったものの、彼女に自信を与えるものをプレゼントします。
 その時のことを書いた彼女のブログを読んでみましょう。

思い出話( * ॑꒳ ॑* )♥杉山愛佳 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)


 「今でも辛い事があったら私は総選挙を思い出します」の箇所が素晴らしいですね。
 先ほどのなるちゃんの手紙にもあったファンの方々の、自分を肯定してくれる反応にも通じるものがあると思います。

 同じくティーンズユニットの座を争うイベントでも、彼女は自分がもらった順位について書いています。

 感謝の気持ち( * ॑꒳ ॑* )♥杉山愛佳 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)


 「私にとって10位は1位と同じくらいの価値があります」という言葉が、本当に彼女の優しさや思いの受け取り方を僕らに想像させます。
 どうしても競い合うイベントの場合、ランクインしたメンバー、ランクインしなかったメンバーという視点がつきまといますが、それとは違う視点を僕らに教えてくれる視点でもあります。
 気づけば、彼女はチームSの中で先輩側に位置するキャリアになりました。
 まだ20歳にも満たない彼女が、時に後輩を引っ張っていかなければいけない状況でもあります。他のチームと比べてメンバー構成が若いチームSならではの悩みかも知れませんが、これは彼女の成長にも繋がる貴重な場とも考えられます。
 後輩からはどう見えているんでしょう?
 SKE48の8期生、坂本真凛からの手紙を読んでみましょう。

「あいあいさんへ

 17歳の誕生日おめでとうございます。

 あいあいさんとは『すぎチル入らない?』という一言から仲が深まりましたね。

 あいあいさんと仲良くなる前は正直めんどくさくて怖い先輩だと思っていました。
 

 でも実際は私が悩んでいる時も親身に話を聞いてくださって、気分転換にテレビ塔の展望台に連れて行ってくれたり、公演では時に厳しく、時には優しく後輩思いでいつもかっこいい背中を見せてくれる素敵な先輩だなと感じています。

 そんなあいあいあさんだからこそ後輩はもちろん、先輩やファンの方々みんなから愛されているんですね。

 あいあいさんにとってチームSは半分が後輩。先輩が少ない分、悩みこともたくさんあると思います。頼りないかも知れませんが後輩の私たちもチームSを盛り上げられるようにもっともっと頑張りたいので後輩でも遠慮せず頼ってください。そしてチームSを、SKE48を一緒に盛り上げていきましょう。

 こんな私と仲良くしてくださってありがとうございます。いつも『やったね♪』って叫んで私を呼んでくれるあいあいさんが大好きです。

 テレビ塔の改修工事が終わったら、また展望台に行きましょうね。

 最後に、私にお手紙を任せてくださった、あいあいさんのファンの皆様、ありがとうございました。

 あいあいさんにとって素敵な1年んいなりますように。

 坂本真凛より」

 

 最初のあいあいのイメージが、面白かったですが、ひょっとしてこのイメージのまま止まっているファンの方が居たら寂しいな、と思います。
 真凛ちゃんへのさりげない優しさと行動が素晴らしいですね。
 じゃあ、先輩としてのあいあいは、後輩たちとどう向き合っているんでしょう。
 今度は、先ほどの真凛ちゃんからの手紙より少し前に書かれた、あいあいから真凛ちゃんに宛てた手紙から考えてみましょう。

「真凛へ

 真凛、17歳の誕生日おめでとう。

 真凛にとってチームSに昇格して初めての生誕祭だね。

 『今年のお手紙は誰ですかねー』と隣ではしゃいでいる真凛を見ながら、『本当は杉山なんだよなー』と思ってました。

 私自身こんなにも真凛と仲良くなるとは思ってなくて、正直今でもビックリしてます。

 仲良くなったきっかけは、ホテルで食べた一本のキュウリだったね。きっかけがキュウリって本当に笑います。でも、キュウリ会が再会したのもこの日で、とても記憶に残ってます。

 第一印象は現代っ子感のある今時女子って感じだったけど、話してみると凄い真面目で色んなことを考えてて、とても優しい女の子でした。話していくうちにもっと知りたい、もっと仲良くなりたいって思ったよ。

 最初は私からのウザ絡みばっかりで、すぐすぎチル勧誘するし、すぎチルへの道とか言ってじゃんけんさせられるしで、面倒くさい先輩だなって思ってたかな?

 でもだんだん真凛の方から寄って来てくれるようになって、握手会終わりにお出かけしに行ったり、プライベートでもよく会うぐらい仲良くなりました。

 真凛にとって私はどんな風に見えているかな? しっかり先輩として見えてるかな? 先輩と後輩の距離感ってけっこう難しくて、どこまで踏み込めばいいのかわからなく、たまに考える時があります。

 でも、こんなにも仲良くなれたし、SKEの活動に対してのことや序列、悩んでいることを話してくれたのかなって思います。だから、私は今の関係をずっと大切にしていきたいな。

 ある時、厳しく注意をしてしまったこともあったね。でも、それはもっと真凛が前に出てほしいから、若手が次のSKEを作っていかないといけないから。嫌いになったからじゃないんだよ。

 私もまだ自分でいっぱいいっぱいで、余裕がなくて、みんなを見れる立場でも立ち位置でもないけど、これからを作るのは誰でもない私たちだから。だからみんなと一緒にもっともっと頑張りたいなって思います。

 嫌なこと、つらいこと、嬉しいこと、これからも何でも聞くし、相談してね。人は人、自分は自分だからもっと自分の意思を持ってね。ずっと支えるよ。

 こんな私と仲良くしてくれてありがとう。

 最後に私にお手紙を書かせてくださった真凛のファンの皆様ありがとうございました。

 真凛にとって素敵な1年になりますように。

 P.S.

 生誕委員の方に『やったね』じゃなく『真凛』って書いてくださいと言われたのでお手紙は『真凛』で書いたんですけど、やっぱり『やったね』は『やったね』だよ。

 やったねのことが大好きな杉山愛佳より」

 この真凛ちゃんへの手紙の中には、あいあいがSKE48というアイドル生活の中での哲学というか順位というものへの接し方の答えが書いてある気が僕はしています。
 そして、市野成美から受け継いだきゅうりのバトンが、真凛ちゃんで繋がるとは。
 きっと、後輩との接し方や公演のクオリティの守り方、様々なことを考えていたのでは、と思います。

 公演やライブといったステージに対しての彼女の思いも素晴らしいです。

 こちらのブログを読んでみましょう。


 思い出のステージ( * ॑꒳ ॑* )♥杉山愛佳 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)

 こうしてみると、彼女が全くジャンルの違う曲を公演で磨いていったり、ステージで挑戦したりしてきた足跡が分かります。
 かつて、彼女が習い事で通っていたダンス教室の先生を彼女が体験するようになりました。


 


 変わらない公演への思いもあります。


 SKE48の魅力を構成する大切な要素、公演やダンス、そして面白いユニット(サークル?)を守っていく、あいあい。
 それは、先人たちから受け取ったバトンを、これからの世代へ受け継ぐ大事な役割を彼女は担っているのではないか、と今回様々な彼女の発信を調べていきながら思いました。緊張したり不安を感じたりしている後輩に、珠理奈に言ってもらったような安心ができる言葉を、きっとかけているのでは、と思います。
 そして、みんなの為に、チームの為に頑張る彼女だからこそ、個人として何か報われる仕事やユニットが来るといいなと思います(2020年だと『ガチアレ』のダンスチャレンジがそれにあたるかも知れませんが、僕としてはグラビアや楽器関係やファッション関係など、まだまだ可能性を秘めたメンバーだと思っています)。
 彼女の魅力が再び公演やライブで爆発する日を楽しみにこの記事を終えたいと思います。

2021年8月7日、一日でも早い杉山愛佳さんの回復を待ちながら。