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2020年2月16日日曜日

2020/2/15 アイマスのドームコンサートへ行ってきた

特別なあなたへ





 2020年2月15日。
 友人の小粋なはからいで、アイドルマスターのドームツアー、京セラドームの1日目に行くことができました。
 僕自身は、アイマスについての知識は、ほとんど無いと言っても良い状態でしてね。「お願いシンデレラ」は知っているものの、他の曲はほとんど知らないですし、声優にもあまり明るくないので、ずぶの素人が参戦する感じなんですね。
 ただ、僕がSKE48で推していた1期生(AKB48の4期生から移籍)の中西優香が、卒業後にダンスのモーションキャプチャーを担当していまして、ちょっとした縁も感じていました。



 それから、参加者の中で唯一知っているメンバーが居ました。
 元AKB48の4期生。
 佐藤亜美菜。
 ライブが開幕して、1曲目で順番にモニターに映るアイドルたち。
 その中に佐藤亜美菜の姿を観た時に僕は自然と涙を流していました。
 ああ、亜美菜が6年ぶりに京セラドームに帰ってきたんだと。


 佐藤亜美菜といつ出会ったかによって、彼女への印象は変わってくると思います。
 僕が彼女を知ったのは、2010年のAKB48が初めて総選挙をした年でした。
 初の総選挙で、前田敦子が勝つか、大島優子が勝つか、渡辺麻友がまくるか、というまだ超選抜が全員居た頃の選挙です。
 その時、彼女は8位にランクインしました。
 他の超選抜と比べるとメディアの出演数などを比較しても圧倒的に不利で、シングルの選抜に1度も選ばれていなかった彼女が、8位にランクインしたことは衝撃でした。

 なぜ、彼女が8位にランクインしたのか。
 まず考えられるのは、劇場公演を頑張っていたこと。
 どれぐらい頑張っていたかというと、研究生時代のエピソードが挙げられます。
 研究生の仕事としては、正規メンバーがメディア仕事で出られない場合、代わりに劇場に出演すること、そして、自分たちの研究生公演を踊ることの2つがあります。
 亜美菜は、自分の公演は勿論ですが、チームA、チームK、チームBと当時3チームのバラバラの公演を自分で覚えていってアンダー出演していました(他にも別会場での公演も覚えていました)。
 2011年ころに支配人をしていた戸賀崎さんが、インタビューで亜美菜の定点映像を順番にとっていくと、チームのダンス練習用の映像が撮れるという内容を言っていたのが印象的でした。
 何故、ここまで努力が出来たのか、というと、4期生が地方から出てきて、なかなか帰るところのないハングリー精神あふれるメンバーが多かったのもあります(指原は後輩の5期で九州から出てきて、中西とか大家のしーちゃんと同じところに住んでいました)、ただ、それ以上に彼女がAKB48が好きだったんですね。
 当時のAKB48の役割は、自分の夢をかなえるためのステップで、毎日の劇場公演やメディア仕事で事務所に見つけてもらって、「女優」や「モデル」、「タレント」といった夢をかなえていくのがコンセプトでした。
 しかし、彼女は「AKB48」になる為に入ってきました。
 本当にアイドルが好きだったんですよね。
 そんな彼女が努力する姿を観て、ファンがついていったわけです。
 もちろん、ファンの総数に関しては、他の超選抜に負けていたかも知れませんが、熱心なファンの方が全力を注いだんでしょうね。
 
 そして、8位になった選挙曲「言い訳Maybe」。
 投票してくれたファンの皆さんの期待に応えるためにと臨んだ彼女に待っていたのは、残酷な仕打ちでした。
 彼女の歌割りは2番の一言だけ。
 MVもほとんど映っていませんでした。
 さらにこの年生まれた「神7」という言葉。
 選挙の上位7名を表す言葉です。
 翌年の選挙では亜美菜は18位になり、「神8」という言葉が出ました。
 僕のうがった見方だと断って書くと、あまりにも露骨だな、と感じました。
 ちなみに、この18位も選抜ランクインということで十分スゴイ順位です。彼女の後ろの19位は指原、JKTに留学してトップ層に君臨しつづけた仲川遥香がいました。
 さらに翌年の総選挙でも18位にランクイン。
 「フライングゲット」の選抜メンバーにも選ばれ、レコード大賞受賞の現場にも「AKB48」のメンバーとして参加することが出来ました。
 
 ちなみに亜美菜のメンバーからの信頼は厚く、後輩メンバーからも彼女は慕われていました。やはり、パフォーマンス力の高さや新しくできたチーム4の演目まで踊れるようになっていたことも大きいと思います。
 ルックスに関しても、オーディションの時に「美少女が居た」と中西優香が驚いたところからお人形さんのような完成度へ、さらに洗練されていきました。
 
 さらに、声優になりたいという夢が出来て、「AKB0048」というアニメの声優オーディションでは、見事に役を勝ち取り、「NO NAME」という選抜に入りました。
 SKE48の中からも、当時AKBだった佐藤すみれ、矢神久美、秦佐和子が入っていて、4期の石田晴香までいる48グループのユニットの中でも僕は最強の選抜だと未だに思っています。
 さらにもう少しだけ語らせてもらうと、彼女が演じたキャラクターが、1期のラスト1話前で、幼馴染への気持ちがアイドルであるために伝えられないまま歌う「大声ダイアモンド」は、本当に素晴らしかったです。オリジナルメンバーの松井珠理奈以外の「大声」のアカペラ歌唱で凄かったのは、彼女だと思います。

 しかし、彼女がシングルの選抜に選ばれることはなく、総選挙のシングルCDの時のみ選抜に入る、いや、ファンが押し上げていたという状況でした。
 さらに追い打ちをかけるように2012年、9月。彼女のスキャンダルが週刊文春で報じられます。イケメン俳優とのカラオケ合コンでした。相手側の俳優の事務所は謝罪。2012年のドキュメンタリー映画の宣材映像では、メンバーの前で謝罪する亜美菜ともう一人の参加したメンバー(ちかりな)の姿が残されています(映画本編では未使用)。あの時の同期である石田晴香の亜美菜を見る目の鋭さと、俯いている後輩の永尾まりやの心境は、とても僕の想像が及ぶところではありません。
 また、一部のアンチが彼女の体形の変化をあげつらうことを書き始めたのもこの頃です。これは個々人の骨の作りや成長期の肉の付き方も関係してくるので、彼女自身の力でどこまでコントロールできたかは分かりません。ただ、どんどん、握手会の売り上げは減っていきましたし、あんなに好きだった劇場公演もベンチ扱いが続きました。この1年前に亜美菜は一度、握手会でヲタからの嫌がらせで一度倒れています。

 理由があって干されるのならわかるんですが、こういうことが起こった背景には、運営が彼女を干し続けたこともあるんじゃないか、と僕は思ってしまいます。ちゃんと評価して、便利屋で終わらせなければと。あとは、事務所の仕事をとってくる強さだったり、彼女のキャラクターを活かせているかだったりもあります。
 
 たとえば、彼女の口の悪さに、あまり良い印象を持たないというファンもいたかも知れませんが、ラジオはでのトークは抜群に面白くてですね。
 秋元康が9期生たちに「なんで佐藤のラジオが面白いか分かる?楽しんで喋ってるだろ?次に何喋ろうってびくびく考えてないんだよ」と語っていました。
 ラジオの世界から出てきた彼の言葉だからこその説得力がありますね。自分の努力を言葉にせずに、面白い話を率先してラジオで語っていく、少し不器用で繊細な彼女の才能をきちんと読み取ってんなあ、この頃の秋元先生と2020年の僕は思っています。

 それから、「AKB0048」の2期の最終回のアフレコが印象的でしてね。「この涙を君に捧ぐ」というファン目線の曲を最後に唄う収録がブルーレイの特典映像に残されているんですが、この時、彼女はずっと泣いてるんですね。「もういやだ、唄えない」と言いながら。「0048」の終わりの悲しさもあると思うんですが、何か別のものを僕は感じてしまいます。

 2013年3月末、彼女は所属事務所のスタジオダンカンとの契約を終了し、AKSに戻ることになります。
 
 逆風の中、彼女にとって最後の選挙が始まります。
 ちなみに、僕はこの年の選挙で中西優香の2年連続ランクインを目指して、CDのフライングゲット日に家にがんがん届くCDをさばきながら、街のCDショップをまわります。信じられない話ですが、当時は品切れ店が続出していたもんです。翌日の発売日に速報が出るからなんですね。

 僕はなんとかその日届いた分の票を入れを終え、深夜からネットに張り付いて各陣営のボーダーラインを観ていました。今年のボーダーはいくつだと。もちろん「●●に●●票いれた」という画像なしのデマもこの日はよくみますね。
 そして、速報日。
 なんとか中西優香が速報入り、SKE48目線で言うと柴田阿弥がいきなり選抜に入って、48界隈だけでなく、朝のニュースのエンターテイメント部門でも紹介されました。
 その時、亜美菜はどうだったかというと、圏外でした。
 その日のSNSでの投稿はとても悲壮感が溢れるものでした。
 ただ、ファンを最後まで信じている、という内容でもありました。
 6月8日。
 日産スタジアムで行われた総選挙で、亜美菜は33位という順位を獲得しました。
 この順位は選抜が1位から16位まででひとグループ、17位から32位までで人グループ、そして、33位から48位までのひとグループのセンターの順位でした。
 ついに彼女は、ファンとの力でセンター曲を獲得したわけです。
 この時の、順位が下がったものの、とてもポジティブなスピーチは会場に居た僕も覚えています。同期で仲が良かった倉持明日香とも同じユニットで期待感も非常に膨らみました。

 総選挙で決まった選抜とヒット曲になった「恋するフォーチュンクッキー」を引っ提げて、AKB48グループの5大ドームツアーが始まりました。
 僕は、8月8日の京セラドーム公演を観に行きました。
 この年のドームツアーは2DAYSで行われ、僕が行ったのは、ちょっと攻めた編成になっている2日目でした。
 17曲目の「1994年の雷鳴」で、推しの中西優香が大島優子や小嶋陽菜と一緒に踊っているのが、総選挙をがんばった身としては、凄く嬉しかったもんです。
 亜美菜のセンター曲「今度こそエクスタシー」は、アンコール明けの3曲目に披露されました。
 センターで踊る亜美菜を見ていると、色々あったけど、亜美菜がセンターまで来たかあ、と感慨深い思いになったもんです。
 ただし、「今度こそエクスタシー」は尺の関係で全部唄うことはなく終わってしまいます。
 
 それから、2013年12月22日にAKB48を卒業します。
 生誕祭でまだまだ卒業できない、的なことを言っていたので、まさかの卒業でしたが、彼女のレギュラー番組「この世に小文字はいりません」の卒業発表回を聴いていると、相当迷った末の選択だったことが分かります。
 ファンに裏切ったと思われるかもしれない、というのを前提にまっすぐ自分の意志を語っていたのも、印象的でした。自分の目標やファンからのニーズがうまく一致していって、旅立つタイミングが来たんだなあ、とこの放送を聴くと分かります。
 アニメのキャラを求めてくれるファンがいる、そのキャラとしてコスプレしたり、唄ったりして欲しいというニーズが出てきた。このままAKB48でいるとみんなも楽しいし、亜美菜も楽しいけれど、声優になった方がもっと楽しいんじゃないか、保証はないけどチャレンジしたい、という心意気が語られています。
 また、一度、アイドルを辞めて一般人になり声優になる過程で、メディアから消えてしまうかもしれないと語ります。そして、次のような言葉も残しています。

「復活してきた時に嬉しいと思う、待っててくれてる人がどれぐらいいるか分からないけど、みんな待っていてくれると信じてるの。
 それは自分のファンの人たちが、みんな良い人達だから。みんなスゴイ亜美菜を好きって言ってくれるし、だから、きっとみんな、きっと亜美菜が戻ってきた時は迎えてくれるって信じて。
 だったら、もっとでかいことやって、自分が上りつめるには辞めなきゃいけないって思った。
 だから、決めました。
 (中略)会えなくなるわけじゃない。
 絶対に戻ってこようという思いで辞めたから、辞めるから。
 後悔させないように頑張ります。
 (中略)亜美菜は5,6年間みんなに多大な迷惑をかけ続けてきた気がするけど、本当にそれでもこうやって、好きって言ってきてくれて、それで今までそれを活力に生きてきたから。
 (中略)きっとみんなは、いっぱいいっぱいさ。
 考えてくれてた思うわけ、私よりも。もっともっときっと。
 だから、本当になんだろう、本当に申し訳ない気持ちは本当にあるんだけど。だからこそ、頑張らなきゃいけない気持ちになったから。
 みんなが『なんで亜美菜ちゃん、もうー』と言ってくれれば言ってくれるほど、やべえ、頑張んなきゃって、スゴイ、こう思うから」

 誤解されるかも知れない、何度も放送内で繰り返しながらも、素の佐藤亜美菜とみんなが求める佐藤亜美菜を考えた時に、みんなが求めるものを仕事としてちゃんと成立させられるのが、アイドルの方ではなく、声優だという考え方を語っていきました。

 卒業後、彼女は声優としての道を歩んでいくことになります。
 それからの亜美菜のことはあまり知りませんでした。
 アイマスをしている友人から、「橘ありす」という役を得てソロCDを出したことをある時、聞きました。
 「in fact」という曲でした。
 CDを貸してもらいました。
 少し寂し気なメロディーですが、どこか演じている亜美菜と通じているような曲だな、とも思いました。
 このソロシングルが発売週に1.5万枚売れて、オリコン8位という結果になりました。初めての総選挙の順位を思い出しました。
 写真を見ると、アイドル時代より少しシュッとした印象でした。

 
 時間は進み、2020年2月15日。
 京セラドームのスタンド席に座った僕は、モニターに映る48グループとはまた違ったアイドルたちのライブを観ていました。
 「over ture」が無いんだ、ミックスは打たないんだ、とか、モニターに歌詞が出ないし、一人一人の名前が出るテロップは少ないんだ、とか文化の違いをぼんやり感じていました。青いサイリウムの中に時々光って見えるオレンジのサイリウムが海火みたいだな、とか呑気なことも考えながら。

 17曲目で、佐藤亜美菜が一人で登場。
 「in fact」をソロで、しかも、アコースティックバージョンで唄います。
 さらに書かせていただくと、フルで。

 その時、僕は2013年のことを思い出して、そしてラジオでの卒業を語った回を思い出して、涙していました。
 「アコースティックバージョンだったので、気持ちが乗せやすかった」とMCで亜美菜が語っていましたが、本当に一つ一つの言葉を大事に乗せているのが伝わってきました。

 おかえり、亜美菜。

 本当にすごくなって帰ってきたな。 
 
 橘ありすさんとプロデューサーさんたちと一緒に階段を駆け上がっていくんだろうなあ。


 いつかラジオで言ってた、AKB以外として2回目の紅白出場も叶うんじゃないかって、ライブ観てたら思ったよ。

 そんなことがずっと脳裏で駆け巡っていました。

 やがて、コンサートは多幸感あふれる「おねがいシンデレラ」で幕を閉じました。
 「Spring Screaming」という曲が爽やかだったり、アイマスに出ることが夢だったという声優さんの言葉に、アイマスというコンテンツの大きさを感じたりもしました。

 アイドルは、辞めた後にセカンドキャリアがはっきり分かる子と、一般人に戻って何をしているか分からないままの子がいます。いや、分かっても、なかなか見ることができないこともあります。
 だから、こんな風にコンサート会場で再会できると、とても嬉しいです。 

 結婚して少し大人になった亜美菜が、これからどんな道を進んでいくのか、遠くから応援しています。