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2019年2月24日日曜日

暗闇①



沈思黙考の空間の貴重さ


 皆さん、普段、スマホをどれぐらい見てますかね。
 僕も働いてた頃は、通勤時によくスマホを観てましたね。毎日、色んな人の考えや情報をインプットというか、受け流し続けてた感じですかね。その情報を元に何かを考えたり、表現したりということはありませんでした。あとは、とても賞味期限が早いと感じましてね。1週間後には忘れていることがほとんどでした。

 話は飛ぶんですが、僕は映画館という場所が好きでしてね。
 「暗闇の中で、知らない多くの人と同じ作品を観て感動する」という、先日スピルバーグが言っていた最高の体験ができる場所です。
 外部からの情報はシャットダウンされて、入ってくるのは映画のみ。
 映画を観ている時は、映画を観ながら様々な思考が巡らされていきます。
 映画の中のこと、映画の外側のこと、普段の生活のこと、昔の思い出。
 様々なことが想起されていきます。
 トイレが近い僕は、時々、スクリーンから出てトイレに行きます(『ブレードランナー2049』とかね)。扉を開けて、劇場の廊下に出ると、灯りとポスター、他のスクリーンから出てくる観客たち。一気に情報が飛び込んできます。トイレから戻るとまた映画の世界へ、そして、映画が終わると、スクリーンの中で感じたことを持って家に帰ります。

 今回考えていきたい「暗闇」という曲は、そんな沈思黙考について連想させられる曲です。まあ、まずは聴いてみましょう。
https://youtu.be/wTHJ_V96lFQ

 いやあ、海辺を走る自転車の女子高生たちというのは、僕の地元でもよく見た風景です。今では、ヘルメットを被るのがマストみたいですよ。海辺の町の暗さと夕日の暖かさを感じさせられるMVです。黄昏時なのに優しい感じがするのも不思議なMVです。

 歌詞の世界を見ていくと、この曲の世界は夕日が落ちていくところから始まります。
 自分のやりたいこととやりたくないこと、理想と現実、総てが空と海みたいに交わらないと考えています。

 ここで都会に行った友のことを思い浮かべます。
 都会では孤独だろうし、泣き言は言ったい誰に言うのか、と考えます。
 聴いている我々は、こんなことを思いませんか?
 じゃあ、この主人公は誰に言っているのか。

 サビで、夜に語りかけていることが分かります。
 「詩人にするな」というのは「綺麗事」にしたくないわけですね。
 SKE48の「恋を語る詩人になれなくて」の「詩人」とは意味合いが少し違います。
  全部捨てて、自分の全てをさらけ出そうとするわけです。
 「暗闇」の中で。
 「暗闇」の中に入ることで、何かが見えるのでは、と思うわけです。

 この「暗闇」の中で、2番で主人公は星を見つけて、自意識について考えさせられます。まだ始まっていない自分についても。この辺りは谷川俊太郎の「20億光年の孤独」を連想させられる内容です。カメラがズームしていく感じも。

 まだ何が正しいという分別がつかないために何でも手を出してしまう若さを「強欲」と表しています。「やりたいこと」「やりたくないこと」の違いは判るけれど、「欲しいもの」と「いらないもの」の見境が付かないというのは現代の我々に当てはまることじゃないでしょうか。
 しかも、「大人になんかなるものか」とトイザらスのCMみたいなことを言ってるわけです。
https://youtu.be/EMUi718sW5I
 紅條も高校生の頃はこの歌を唄いながらドリームキャストを出してましたよ。 

 そして、再び、夜に語りかけます。
 イマジネーションを否定して、もっと生々しい自分の「正体」について語ろうじゃないか、と。もっと言うと、「お互いの」とあるので、自分だけでなく「夜」の正体も見極めようとします。やがて、「希望の足音か」と、何か答えのようなものの兆しを感じます。

 大サビ前の部分では主人公は叫ぶんですが、誰に向けてというか、自分に向けてなんですね。そうなると、「お互い」というのは、実は「自分」なのかも知れませんね。最後は1番のサビで終わります。話し相手である「夜」はもう一人の自分で自分自身に語りかけながら、答えを探す。
 芥川龍之介の晩年の佳作「暗中問答」を連想させられます。

 この曲は、暗闇の中で何か希望のようなものを感じる曲でしてね。
 それを得るために暗闇の中で考えていくというのが、とても好きでしてね。
 皆さんは考えすぎて、夜眠れないことってありませんか?
 僕は仕事を辞めていよいよお金がヤバイという時は、暗闇の中でそれこそ、綺麗事を全部捨てて、どうやって生きて行けば良いかを考え続けたものです。



 「暗闇」というタイトルなのに、どこか優しいこの曲。
 「風を待つ」同様、ゆったりとしたメロディーは、瀬戸内で流れる時間と都会の時間の違いを感じさせられます。
 秋元康のイメージする瀬戸内の海辺の町のイメージが段々浮き上がってくるのが面白いですね。やっぱりSTU48の曲は、線で考えると面白い。

 STU48の曲の中での「海」は、どこか自分に寄り添ってくれるものだと、「風を待つ」と並べると感じます。そして、この曲と「出航」を並べると、「水平線」が自分や未来の位置を定めてくれるプラスのイメージのものであることも見えてきますね。

 ただ、「暗闇」って、今はあんまりなくてですね。
 僕は、朝方の真っ暗なお寺を散歩しながら、色々と考え事をすることが増えました。あとは、真夜中の誰もいない道とかですかね。
 今日も僕はどこかの「暗闇」の中で新しい曲の「正体」を考えるでしょう。

 先日、行ったタワーレコード難波にメンバーのサインとメッセージがあったので、貼っておきますね。見えづらくて申し訳ない。

 
並べてみると面白い「風を待つ」の記事はこちら!
https://oboeteitekure.blogspot.com/2019/02/blog-post_60.html

始まりについて考えさせられる「出航」の記事はこちら!
https://oboeteitekure.blogspot.com/2019/02/blog-post_82.html