理想の男
皆さん、30歳を過ぎてガチャポンのフィギュアで遊んでいる男ってどう思います?
めちゃくちゃカッコいいですよね。
しかも、そのガチャポンのフィギュアを改造して相撲を取らせて、リーグ戦をしたり、必殺仕事人風のムービーを携帯電話で撮ってみたりしていたら。
今回紹介するカラスヤサトシさんは、漫画家で名作4コマ集『カラスヤサトシ』でデビューします。
『カラスヤサトシ』シリーズは、月刊『アフターヌーン』の読者ページに掲載されていたカラスヤさんの4コマを集めたり、ときどき別の媒体に書いたものをア集めて単行本化したものでしてね。
カラスヤサトシさんの日常をお題に沿って、4コマにしていくんですが、抜群に面白くてですね。
とにかく何気ない日常の風景を面白くしていく人でして。
暮らしの中の何気ない発見や工夫が面白くてね。
特に序盤の方は暇を持て余していた頃なので(失礼)、特に多かった印象が。
更に忘れてはいけないのが、担当のT田さんとの関係。
とにかく、このT田さんが失礼なことを言うんですね。
「このボケ、いつかしばく」とか言ってるんですが、実はお互いに持ちつ持たれつの関係なんじゃないかな、と思いますよ。4巻のカラスヤさんが義経のTシャツ着てたら、T田さんが弁慶の靴下を履いていたというエピソードは最高です。
この漫画を読んだ時に僕は「あっ、いいんだ!」と思いましてね。当時、同じようにいい年して仮面ライダーのガチャガチャのフィギュアに一喜一憂したり、後輩にいきりまくっていた自分としては、共感しかなくてね。読んでいて、仲間がこんなところにいたのか、と嬉しくなりましたよ。
ただ、カラスヤさんの方が遥かにレベルが上で、ガシャポンのフィギュアに善人悪人貧民富豪の他に神を導入し(多分、ミクラスのフィギュア)、わけが分からなくなるのとかも含めて最高です。
そして、様々なチャレンジを単行本にしているんですが、中でも自伝的エッセイ漫画の「おのぼり物語」なんかは、これから都会に出る人や都会に出たばかりの人、一人暮らしをする人にもおすすめですよ。関西から東京に出てくるまでの物語で、映画にもなっています。
ただ、実はカラスヤさんは、フィクションの方が才能あるんじゃないかと僕は思ってましてね。デビュー作からフィクション作品を集めた「強風記」は大正期から昭和初期の純文学を思わせる名作です。現代の漫画でこんな感じを味わえるとは、という名作です。
また、ホラー漫画集の「おとろし」は、なんとも後味の悪い話が多いものの、昔の民話を思わせるようななんとも言えない業を感じるものが多くてこちらは超おススメです。特に私は猿が出てくるあれが印象に残ってます。
最近のものですと、「カラスヤサトシの日本文学紀行」がお勧めです。ここまで読んでるのか!と大学院時代に近代文学を専攻していた人間でも、パスしていたような作品までチェックして4コマにされてます。小説が好きな人やこれから近代文学を読んでみようかな、という方にもお勧めの1冊です。実際に僕もこの本がきっかけで、学生時代に読んだ作品を何冊か再び読み直して、漫画の中の描写と確認したりしましたよ。
現在は結婚し、お子さんもいるカラスヤさん。
育児漫画もなかなか面白かった。
最近は漫画だけでなく、youtubeでも活躍しているようです。
これからも一人の尊敬する男として、カラスヤさんの作品をチェックしていきたいと思いますよ。