ノスタルジーではなく、爆発を
10年代の映画業界のヒット作を見直した時に、数十年前の作品のリブートが多いと思います。たとえば、世界を制覇したマーベルコミックのキャラクターたちは数十年前のアメコミのヒーローたちのリブートですし、ディズニーのキャラクターの多くもそうですね(逆に『アナ雪』は、映画で良い音や良い歌を楽しむという『ボヘミアン・ラブソティ』的な楽しみ方の先駆けで、メディアの有用性を活かした作品だと思います)。
今年の映画ヒット作の中でも6月中旬からのジブリ作品が興行収入1位をマークした週もあり、「これは間違いなく面白い」という安心感もあるんだと思います。
今回のSKE48の12周年公演も下手したら、ノスタルジーだけに陥る可能性もあります。知っているものを演者を変えてもう一度なぞるのですから。ただ、その中で一番安心感と遠く、危うさを感じる公演があるとすれば、「会いたかった」公演です。
先輩メンバーは、斉藤真木子と江籠ちゃん他5名。あとは、10期生たちだけで構成された、かなり、冒険したメンバーだと思います。
多分、1曲目を聴く人たちは、自分が観てきた「会いたかった」公演がフラッシュバックするかも知れません。たとえば、僕だったら5期生を中心とした研究生公演の「会いたかった」。様々な人達の思い出と10期生たちは戦うことになると思います。
果たして、10期生たちが過去の思い出を乗り越えられるのか?それとも、思い出の前に飲み込まれるのか?
思い出以上の何かを彼女たちが爆発させてくれるのでは、と僕は期待しています。
もし、観られるとしたら、何かの気持ちが爆発した時のダンスが観たいです。
それは「嬉しい」「楽しい」でもいいし、「負けない!」でも、「乗り越えてやる」でもいいと思うんです。
先日観て以来、かなり心がやられた映画「僕たちの嘘と真実」の中で、急にコンサート中にセンターの平手さんが倒れて、「二人セゾン」のソロダンスで、人生やるやらないで葛藤した小池美波さん。絶対的センターの代わりを、いきなりするかしないか、自分で決めるしかない。次第に曲が迫って来るなか、「やる」方を選んで即興で踊ったソロダンスの感情の爆発。あそこで僕は泣いてしまいました。人間が成長する瞬間が捉えられた素晴らしい映像だと思います。
別にアクシデントが起こらなくても良いんです。
でも、失敗しても良いから、全力で行ってほしい。今しか見られない「新しさ」や「爽やかさ」に助けてもらいながら、もう1つ価値を作っていってほしい。
だって、僕らが研究生に期待することって、上手さですか?
もし、10期生たちが過去に勝てる要素があるとすれば、上手さでも小綺麗さでもない、何かの爆発だと思います。
さあ、「会いたかった」公演で、いったいどんな物語が始まるか?
過去を乗り越えて、ノスタルジーに浸らせない何かを観られることを期待しています。
できれば、レッスンの様子を映像でこんな感じで残していて欲しいなあ。
明日は、「古畑奈和と逆上がり」です。