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2020年3月4日水曜日

「おすすめの映画と本 夢のポッケ 14歳で夢をかなえてまんが家になった私」

夢幻三剣士は確かに最高!


 本日、ときわ藍先生の「夢のポッケ 14歳で夢をかなえてまんが家になった私」。
 もう皆さん読みましたかね?
 僕は電車の中で読んでいたんですが、もうね、泣きましたよ。
 最初のカラー写真と18歳までのこれまでの日々のところで、もう号泣ですよ。
 周りの人にジロジロみられましたが、途中からときわ先生だけじゃなくて、何故か、お母さま視点になって、もう一つ感情が乗っかってきましてね。あたり構わず泣きながら読み進めました。
 お母さま。娘さんたち、本当に立派に育ってますよ、と思いました。



 さてさて、14歳でデビューというセンセーショナルさの裏には、こんなドラマがあったのか、と思いましてね。
 みんな最初から天才じゃないんだ、と。
 『コロコロ漫画大学校』や『ちゃお・まんがスクール』での漫画家になりたいという自分の思いと、結果がついてこない毎日。
 
 小説家のJD・サリンジャーを題材にした「ライ麦畑の天才」でも、小説家になるためにサリンジャーが新人賞に小説を送ったら、「ボツになりました」というハガキが来るんですが、サリンジャーの学校の先生は「よし、やっとスタートラインに立ったな」的なことを言うんですよね。
 そこから、ピン止めじゃあ足りないぐらいのボツのハガキをくらいながら、彼は永遠の名作「ライ麦畑でつかまえて」を書いて、21世紀になった今でも多くの文学青年たちに影響を与えていきます。
 天才と呼ばれるサリンジャーも自分の才能に苦悩しながらも投稿することを続けます。ときわ先生もここは同じで、挫折を味わいながらも「わたしは天才じゃない」ということを一旦、飲みこんでそこからまた走りだせるというところが両者とも素晴らしいです。
 
 漫画だけじゃ、ありません。学校生活でも教師の心のない一言から、「人の視線が気になる」というストレスから、睡眠障害を起こしたというエピソードは凄く辛くてですね。僕は「ストレンジカメレオン」という曲が凄く好きなんですが、周りの色に上手く染まれなくても、大切な何かをちゃんと持っているんですよね。マスクや定時制高校で少しずつ自分を守りながら、自分が居心地の良い場所をみつけて行ったときわ先生。
 
 このエピソードを読みながら、僕は思いました。
 「勉強ができる」というのは「世間のものさし」なんですよね。
 これは「お金持ちだ」とか「流行に敏感」でも良いです。 
 この物差しは時に、とても冷たく人を打ち付けます。
 たとえば、僕が好きな近代文学の小説家や歌人や詩人たちは、この物差しでは、ほとんど価値の無い人達になってしまいます。
 でも、「物語」を作れるって、本当に素晴らしいことだと思うんですよ。
 漫画という幼い世代から手に取れる、時には言葉も関係なく感動を生む、そんな素晴らしいものを作ることが出来る彼女の才能が、認められていくのが僕は他人ごとながら、凄く嬉しかったです。

 作品自体は、藤子・F・富士雄先生の「ドラえもん」に出会ったことから、最初はF・富士雄先生の影響を受けていました。残念ながら、作品自体は望んでいた結果を生みません。
 しかし、そこから、いとこの木崎ゆりあの名古屋ドームでの「それでも好きだよ」や妹の浅井裕華のアイドル活動から生まれた「アイドル急行」。視線の恐怖やマスクをつけることという、自分の内面にあるものをどんどん作品に昇華していくのが素晴らしくてですね。なんというか、自分が経験した様々な悩みや不安をフィクションに落としていく手法は、晩年の芥川チックで僕は好きです。
 そして、18歳で自分の原点である「ドラえもん」と漫画家として再会するというのが、スゴイじゃないですか。
 自分の作風を手に入れたあと、もう1回、自分に影響を与えたものと向き合うというね。

 だれかの力になる漫画を描きたいというところを読んでいると、「ドラえもん のび太と雲の王国」の主題歌の「雲がゆくのは」を思い出しましたよ。


 そういや、「ドラえもん」も子供の頃、観てたら未来は凄いんだろうなあ、と「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズのマーフィーみたいな気分になったもんですよ。ときわ先生の昔の自分は今の自分を知らない、という言葉は、まさに今どんぞこに居る自分に力をくれる言葉です。
 本当に良い本なので、ぜひ、お子様やその親御さんにも読んで欲しいです。