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2020年3月14日土曜日

みんなみんなのために「大矢真那卒業コンサートの思い出」

みんなみんなで





 以前、大矢真那の卒業曲である「永遠のレガシー」について書いた時に、「言葉の人である」ということに少しだけ触れました。
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 真那というと、SKEファンの間では「みんなみんな教」の教祖というキャラ付け(あえてこう書きます)をされて、中には「おれはあくびをしながら、キリスト教徒が正しいことを認める」というシェンケービッチの『クオ・ワァディス』の中に登場する冷ややかな目線で見ていた人もいるかも知れません。
 まあ、「教祖」っていう言い方は、このご時世危険な匂いがしますが、文学の世界では「神」というのは、世界を絶対の目で見通す力を持っていて、たとえば、モームの「月とペンス」。
 「行きづりの読者を、2、3時間のんびりさせるか、旅行の退屈をまぎらしてやるのかのために、著者がどんなに苦心し、どんなつらい経験に耐え、どんな心労を味わったかは、神のみぞ知るのである」

 自分の苦労を神だけは見ていてくれる、分かっていてくれる(もちろん、小説家の孤独も表しています)。こういう、まるで「神」のような信頼を持っているメンバーが大矢真那なんじゃないかな、と僕は思っています。

 よく絵の面白さや子供が大好きな点、何故かメンバーの卒業発表を知らなかった点などが、ピックアップされがちですが、今回は一旦置いて、彼女の卒業コンサートの思い出と言葉の素晴らしさについて、一緒に振り返っていきましょう。

 僕が大矢真那のブログがなんだか気になったのは、たしか、丁度僕がファンになりたての頃で、研究生だった真木子たちが昇格して、奈和ちゃんとなな子が昇格した時のブログでした。
 研究生が「アンダー」としてメディア出演しているメンバーの代わりに踊るというのは大事なことですが、果たしてそれをやりたがっている子がどれぐらい居るか。研究生で与えられたアンダーポジションを半年たっても覚えられていなかった子もいること、その反面、あびるさんやかおたん、えみりんが頑張ってアンダーをしてくれたことが書かれ、劇場が工事で休止される今、1期から6期まで次のスタートラインは同じだ、という内容だったと思います。
 これはメンバーとして言いにくいことを書いてくれたな、と当時、凄く胸が騒ぎました。大分勇気がいったでしょう。それでも、大事にしたいものがあって、それが「SKEらしさ」の一旦を担っていたと僕は思っています。
 
 他にも自分のことを唯一「真那ちゃん」と呼んでくれる矢神久美が卒業発表した時の「何も言えない もう何も聞きたくない」というブログでは、くーみんが居なくなる淋しさをストレートに表現してくれました。また、しーたんが卒業発表して卒業するまでの「うちら公演は好き だけど…」の後を書かないブログや「今のSKE48はどう見えていますか」、「紅白歌合戦でしたが、昨年との違いがありました」と常に問題提起をしてきました。なかなか、外に出しづらいこと、運営からしたら言わなくても良いことも、書いてくれました。それは厳しく映るかも知れませんが、僕はグループに対して、誠実だと思っていました。

 決して運営に推される側ではなかった、というのが僕から見た彼女のポジションですが、それでも恐れずに「おかしいと思ったことはきちんと書く」「考えなければいけないことは考える」という彼女の姿勢は、彼女が持っている育ちの良さから来るのかも知れません。
 アイドル人生の後半で、自他共に認めるオフロード人生を送ってきたかおたんこと、松村香織と意気投合できたのも、上記のことや、人を大切にするところが似ていたからかも知れません。

 さて、前置きが長くなりましたが、2017年9月24日。
 愛知県の日本ガイシホールで行われました。
 この頃の僕は、まだ推しメンが現役で活動していた頃で、少しでも良い席あたれええ!と念じていましたが、2階のスタンド席でした。まあ、肉眼でぎりぎりメンバーの顔が見えるかな、というぐらいの位置でした。
 
 真那ファンの皆さんが自作のチラシを作って「オレンジのサイリウムで真那を送り出してあげよう」的な内容でしてね。
 僕の第一印象は、「はぁ?」でした。
 いや、名古屋ドームのオレンジ1色は分かる。グループにとっての特別な日でしたしね。でも、なんでこのコンサートの開幕からオレンジなんだよ、と重箱の隅をつつくようなことを思いましたが、いやいや、待て待てと。
 真那の夢は何だったか?
 名古屋ドームに辿り着くことだったじゃないですか。
 本当はもう一度、名古屋ドームでのオレンジの景色を見せてあげたかった。でも、卒業までに間に合わなかった。だから、せめて開幕で。そんな想いがあったんじゃないか?
 僕がアスランだったら、斜に構える、略して「ハスる」自分が恥ずかしくなりましてね。
 ううっ、僕が浅はかでした。ごめんなさい、と思いながら僕はサイリウムの色をオレンジにしながら開幕を待ちました。
 やがて、始まった卒業コンサート。
 1曲目の「恋を語る詩人になれなくて」のジャンプから、今日は良いコンサートになるぞお、と期待感マシマシでした。
 3曲目の「意外にマンゴー」でのゆななとのダブルセンターが観られたのも嬉しかったんですが、久しぶりに「女の子の第六感」や「明日のためにキスを」が観られたのが嬉しかったです。ストレートにやったら、本家の秋元才加を超えることは難しいのを舞台監督さんに言われて、自分なりに解釈したことを思い出します。
 個人的には「万華鏡」で、中西優香のことを思い出して、何故か、しんみりしてしまいました。真那会で唄った「だって雨じゃない」でのサプライズも良かったですね。

 僕がこのコンサートで一番印象に残っているのは、選挙曲のブロックです。
 「なんてボヘミアン」や「愛の意味を考えてみた」、「抱きしめちゃいけないんだ」という過去の名曲たちが蘇ってきて、一番テンションが上がったブロックでした。
 個人的には一番好きな「だらしない愛し方」が入ってなかったのが残念でした。
 でもね、総選挙に投票してくれたファンのために、ランクイン曲を選曲するところが、彼女の誠実なところだなあ、と思いましてね。
 彼女が選挙の度に叫ぶ「ありがとーございましたー!」は、生で3回ほど聴きましたが、本当に会場の一番上まで聞こえるんですよね(なぜなら、僕は日産スタジアムの1番上に居た)。真那ファンの皆さんは、毎回、どんな気持ちで聞いていたんでしょう。悔しい時もあれば嬉しい時もあったのかも知れません。僕は2回目のランクインの時が印象に残っています。

 やがて、本編最後の曲、「神々の領域」になります。
 この曲は1期生だけの曲。
 しかし、もう珠理奈と真那しかいません。
 曲の途中で真那はいなくなります。
 この時の珠理奈の痛みを堪えるように踊る姿が、今見ても辛いんですが、同時にドラマも感じてしまいます。
 もちろん、僕は号泣していました。

 アンコール明けは「永遠のレガシー」。
 青と白にガイシホールが染まります。
 この曲は聴く度に、残していく若者たち、そして珠理奈へのメッセージのように僕は聞こえます。秋元先生から見た真那像なのかな、とも思います。
 「未来とは?」を挟んで、伝説の「やりきったことはありません」。
 いやあ、力が抜けましたよ。
 ピンと張りつめた空気を柔らかくしてくれるのも彼女らしいな、と思いましてね。
 最後の「大好き」の後のこじはるからのメッセージのサプライズ。

 客席を本当は周りたかったけれど、時間が…となりそうでしたが、なんとかOKが出て、ぐるりと会場を歩いていく真那。そういえば、この日、午後からじゃんけん大会があったんですよね。発表された時は、「なんでだよ!」と「SKEBINGO!」の時の西くんみたいな怒りを感じましたが、日帰り組もいましたしね。

 最後には「となりのトトロ」に乗せて、これまでの爆笑シーン集が流れました。
 もう、本当にこの人は「みんなみんな」のことを考えて卒業していったんだなあ、と考えながらガイシホールを後にしました。
 こんなに笑った卒業公演はあったでしょうか。
 それから、また一人、伝説がこの会場で行ってしまったとも。
 2012年に卒業した3人、旅立ち卒業組、宮澤佐江、大矢真那。
 そして、今年、この会場で松井珠理奈が卒業します。
 
 きっと真那は、来てくれるんじゃないか、と勝手に思っています。
 あの頃と変わらない笑顔で、珠理奈も、メンバーたちも、僕たちも笑顔にしてくれるんじゃないか、と思っています。

 あの日のことを思い出すと、何故か笑顔になります。