人気の投稿

2020年2月21日金曜日

おすすめの映画と本「遅いインターネット」

これから来るものへ 成功の前例を


 宇野常寛さんのことを知ったのは、「批評のジェノサイズ」だったと思う。
 自分の知っているサブカルチャーに関することを、鋭い視点で語っていてページをめくる手が止まらなかったのを覚えている。そこから、SKE48ファンとしては凄く嬉しい松井玲奈が表紙の「PLANETS vol.7」を購入し、特撮ヲタとしては凄く気になる表紙の「リトルピープルの時代」も購入した。
 彼の批評の言葉に触れることによって、自分が楽しんでいるものをここまで深く考えることが出来るのか、と新鮮だった。
 当時、もうかなり惰性で買っていた月刊誌「ダ・ヴィンチ」も宇野さんの評論のページを読むのが毎月の楽しみだった。J-WAVEでやっていた彼のラジオ番組やオールナイトニッポン0も面白かった。
 やがて、2018年に「PLANETS vol.10」が出版された。
 巻頭言で語られていた「遅いインターネット」という言葉はとても魅力的だった。
 僕の話になって恐縮だが、SKE48のまとめサイトなどの記事の賞味期限の短さには思うところが凄くあったし、一つの問題をじっくりと考えるという人が少なくなってきたかもしれない、という寂しさもあった(『1日1人について真剣討論』というスレは、今はなくなってしまったが、じっくりと語り合う場としては凄く好きだった)。
 だから、というわけではないが、自分で48グループの楽曲について考えるサイトを作った。
 できるだけ色々なインタビューやドキュメンタリーを観ながら、じっくりと考えて記事を書いていくようにしよう、何か楽曲を楽しむための新しいきっかけを作ろうという意識は、宇野さんの「遅いインターネット」という言葉の影響が大きい。
 やがて、PLANETSのチャンネルに登録し、毎平日ごとに届くメールマガジンを朝に読むのが日課になっていった。
 一番好きな番組は「惑星開発委員会」だった。
 宇野さんが、SKE48のメンバーと1時間以上語る番組で、自分が好きなSKE48というものの見方でこんなに差があるのか、と愕然とさせられた。SKE48で多い地方の親善大使のメンバーがSNSをどう活用すべきかの話は、特に面白かった。
 そして、2020年。
 いよいよ、「遅いインターネット」が書籍として発売された。
 僕は19日になった瞬間、電子書籍版で購入。




 この3日間、一つ一つの章をじっくりと読んでいった。
 読みながら、色々なことを考えさせられた。
 良い本は、立ち止まることが多い。
 特に第3章での「21世紀の共同幻想論」はとても面白かった。
 「自己幻想」、「対幻想」、「共同幻想」という吉本隆明が『共同幻想論』の中で提示した3区分を21世紀の現在にあてはめて構築していったところは、本当に面白かった。また、「モノ」から「コト」への変化の時代になり、肥大化した自己幻想のバランスをとるためにどうすれば良いのか。

 その問題を解消する為に「考え」、「読み」、「書く」ことができる人を育てていく試みは、現代においてとても素晴らしいことだと僕は思っている。10年ほど、教育に関わる現場で働いていたが、「考えられる」、「読める」、「書ける」、どれも養うのは難しかった。特に「読める」というのはなかなか大変だと感じていた。しかし、これができるようになったら、僕らの毎日や僕らに入ってくる情報は、ずっと変わったものになってくるのではないか。
 一つの事象に対して問いを持てること、別の視点を持てること、そして、「価値の転倒」を起こせる言葉を書くこと。これが出来る人が沢山出てくる社会になっていってほしい。
 
 今、宇野さんが始めた運動は、きっと僕のような今のインターネットにうんざりしている人間には刺さると思うし、同じようにサイトを立ち上げたり、noteで文章を書き始める人たちが出てくるだろう。
 48ヲタの僕はなんとなくAKB48の「Pioneer」という曲を思い出した。
 是非、どっかで探して聴いてほしい(こういう書き方になって申し訳ない)。
 
 この本を読んで、自分のサイトはインターネットをつまらなくしていないか、ちゃんと有益な情報を書けているのか、もう一度考えさせられるきっかけになったと思う。
 「自分の物語」だらけの今だからこそ、僕は「アイドル」たちの「他人の物語」の面白さもをもう一度、考えられる記事を書いていきたいと思っている。
 「速さ」よりも「遅さ」を大切にしながら。
 

※ ちなみに、この「遅いインターネット」の発売に合わせて、youtubeの公式チャンネルには様々な座談会がアップされています。幻冬舎の箕輪さんとの対談。


 この対談でちらっと出てきた、宇野さん監修の仮面ライダーフィギュアとかスゴイ欲しい。宇野さん監修で桜島1号から始まり、お気に入りのショッカー怪人やゲルショッカー怪人とかをS.I.C.とは違ったアプローチはどうだろう。超個人的には、ネオショッカー派なので、ドラゴンキングとかタコギャングとか埋もれているけどカッコいい怪人を出して欲しい。
 またピースオブケイク代表取締役CEOの加藤さんとの対談も。

  
 こちらも「他人の物語」から「自分の物語」に移り変わっていった現代でどうしていくか、ということも語られていますよ。