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2020年11月21日土曜日

あの2日間

 2014/5/25


 その日、確か僕は家で、借りていた映画のDVDを観ていました。
 DVDが終わり、取り出しボタンを押すと、テレビ番組が流れています。
 多分、夕方の再放送番組だったと思います。
 NEWS速報のテロップが流れました。
 「岩手県のAKB48の握手会で襲撃事件」
 頭が真っ白になりました。
 えっ、今日って全国握手?
 個別握手?
 いったい誰が?
 すぐにテロップが続報を流します。
 「川栄李奈、入山杏奈さんがノコギリで切り捨てられ搬送」
 嘘だろ?
 なんで、あの二人が…。
 少しずつ、二人の病状や一緒に切られたスタッフ、犯人について明らかになっていきました。
 夜のニュースでは、AKB48をろくに知らない人達が、「前から握手会でおかしい人は居た」とか「握手会を見直すべき」ということを語っていました。
 何か悪い夢を見ているような、なんで二人があんな目に、とそう思いました。
 ちなみにこの日、ネットの情報は錯綜し、川栄さんが切られたのは頭であるという誤情報が流れていました。犯人の動機は「誰でも良かった」ということで、本当に自分勝手なものでした。SKE48の握手会も途中から中止になったと知りました。
 それから、2日間、48グループのメンバーほとんどがSNSの更新を止めました。
 この間、テレビは様々な角度からAKB48の握手会について語り、時には誤った認識をさせるような報道もしていました。
 ネットの世界では、5ちゃんねる、まとめサイト、Twitterなどで、議論が繰り広げられていました。
 僕自身も、それまで「選挙の速報出たけど、もう推しが総選挙でないって言ってるから気楽なもんだな。味の素スタジアム行くの楽しみだな」ぐらいのことしか思っていなかったのに、突然の事件で、自分たちの目の前に当たり前にあったものが消えてしまった恐ろしさがありました。
 空白の2日間、ある同僚は心配して声をかけてくれ、ある同僚は「いよいよ、AKB48も終わりだね」と言ってきました。
 僕は家に帰って、ぼんやりとこれからどうなるのかな、ということもそうですが、当日の握手会について考えました。二人の痛みについても。これからの公演やグループの未来、アイドルカルチャーについて。
 多分、みんなが足を止めて、それぞれが考えた時間だったと思います。

 5月27日、指原莉乃のツイートからSNSは解禁されていきました。
 当時はぐぐたすを多くのメンバーが使っていましたので、今は保存が出来ていませんので、アメブロから拾っていこうと思います。
 まずは、真那。
https://ameblo.jp/ske48official/entry-11863372327.html

 彼女独特の文体で、被害にあった二人の回復と留守の間にファンのコメントに目を通していたことが語られます。

 次に梅ちゃん。
https://ameblo.jp/ske48official/entry-11863414415.html

 変化に対する戸惑いと、それでも受け入れて新しい形はないかを考えています。
 そして、だーすー。

https://ameblo.jp/ske48official/entry-11863419937.html

 「胸を張ってください」とファンの人達への言葉が印象的です。
 SKE48のメンバーたちが、「日常」を取り戻すために、懸命に公演やイベントに向かっていきました。

 川栄さんのまだギブスを付けた手が、空に伸ばされた写真の投稿は、未だに忘れられません。




 あれから6年、コロナの影響でまた、握手会は形を変えていきました。
 かつては、目に見える侵略と痛み。
 今度は、目に見えない侵略と我慢。
 どちらがマシという話ではないですし、アイドルの安全を考えれば、離れれば離れるほど、アイドルの安全は約束されます。勿論、言葉の暴力は現地でまだあるかも知れません、でも、少しずつ離れていく。
 それが当たり前になっていくのか。それとも戻るのか。
 パオロ・ジョルダーの「コロナの時代の僕ら」の中で「そのうち、復興が始まるだろう、だから僕らは、今からもう、よく考えておくべきだ。何に元どおりになってほしくないのかを」という一文が非常に印象的です。
 

 もう一度、自分の推しメンと握手が出来るようになった時に、何に戻って欲しくて、何に戻ってほしくないか。そんなことを考えながら、今日は眠りたいと思います。