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2019年12月3日火曜日

音を消したテレビ①

世界の片隅に居続ける為に


 皆さん、毎日の生活はうまく行ってますかね。
 うまく行くことばかりだったらいいんですけど、僕は、なかなかそうも行かなくてですね。
 一人暮らしの家に帰って、ふと、部屋の電気をつけた時に思い出す曲があるんですね。
 それが、この「音を消したテレビ」です。
 まあ、まずは聴いてみましょう。



 うーん、1番だけだと、日常のやっちまったシーン集みたいになりますが、最後はみんな笑顔になる良いMVなんですよね。日常の何気ないワンシーンを切り取った短編小説的な感じが凄く好きです。

 まずは、歌詞の世界から見ていきましょう。
 ひとりぼっちの部屋に戻るところから、物語は始まります。
 この日は「ついてなかった」ようで、コンビニで食べ物を買って帰るんですが、「食事」というよりは、「おやつ」に近い感じなんですよね。
 そして、今日あった「悲しいこと」から離れるために、ドアを閉めると、落ち着いて泣こうと思うんですね。
 そして、テレビをつけて音を一番下げる。
 ここがこの曲のポイントなんですよね。
 部屋の中に居ても、自分に接続してくる「世界」もしくは、「世間」であるテレビの音を消すことで、一旦距離を置く。
 「テレビ」の中で起こっているドラマは、自分とは関係ない他人ごとなんですが、「現実」の世界にいる自分の物語は今も続いているんですよね。
 2番では、半身浴をするんですが、いつもは歌う曲を歌うこともないんですね。
 曲の主人公の信条として、人前では泣かないということがあるんですが、1番でゆっくり泣こうと思っていた理由も分かります。
  お風呂から出ると、また、テレビをつけます。
 1番と同じように音を消して「つまらないドラマ」を流しておきます。
 「世間」と縁を切る為に音を消している、と歌詞の中では書かれていますが、僕からすると、本当に縁を切りたいのなら、テレビなんか最初からつけなければいいわけで、どこかで、世界と繋がりたいという想いもあるんじゃないかな、と考えています。
 いよいよ大サビ前。
 ぐっすり寝て、いつもより遅く起きると、もう主人公の中では、「もやもやした」気持ちは消えています。
 そして、テレビをつけると、音を上げていきます。
 「朝のニュース」という「世界」とつながるものを、自分から見ていく。
 「ドラマ」というフィクションではなく。「ニュース」というより現実の「世界」に近いものを観ていく。
 こういうところが、うまいなあ、と思いますね。
 決してドラマチックでもないし、ニュースになるようなこともない、世界の中心ではないかもしれない。しかし、きちんと片隅にいる「私」の人生は続いていくんだという気持ちで新しい一日が始まる。
 小さな悲しみと小さな再生の物語なんですよね。
 僕の勝手な脚本では、金曜日に落ち込んで、土曜日の朝に立ち直るみたいなイメージです。

 曲も凄く良く手ですね。
 凄くひっそりとした音から始まっていくんですが、僕が好きなのは、大サビ前の間奏部分なんですよね。実はギターが凄く鳴っているんですね。主人公の「モヤモヤした」気持ちが表現されていて、ここで洗い流されて朝がくるのかな、と感じました。
 
 MVは、上で書きましたが、日常のついてないワンシーンですが、結構共感できるのもありましてね。だーすーの七味が蕎麦の上にかかりまくるとか、すーめろさんの「それ、私が担当しました」とかね。
 色々な「モヤモヤ」したものを洗濯機で、洗濯していくのを連想させられる大サビ前の演出が好きです。
 曲の半分以上で、メンバーが憂鬱そうな顔をしているだけに、最後にそれぞれが笑顔になっていくところがいいんですよね。特に花音が財布を出す時の表情、凄くいい。

 ちなみにセンターを務めているのは、松井玲奈なんですが、彼女はバスの中で本を読んでいるんですよね。乗客のイチャイチャやうるさい谷たちを観て、「モヤモヤ」が発生しているんですが、他の人と比べると、世界を見てる視聴者と同じ視線に感じるんですよね。彼女の透明感が引き立つ素晴らしいMVだと思います。
 あと、うな重の蓋を開けた時に、「無い!」って、口が動いてたのが印象的でした。

 あと、この曲の「テレビ」との縁の切り方とは真逆のベクトルが、ひょっとして「世界が泣いてるなら」なのかな、と感じました。

 これを書いてる僕はというと、民放の朝のニュースが騒がし過ぎて、最近は音を消して見てるんですね。あと、新日本プロレスの柴田勝頼選手が「音を消してプロレスを観ることで、余計な評価が入らずにプロレスを観ることができる」と雑誌のインタビューで言っていましたが、これ、スポーツ中継とか観る時にしたら、結構、面白いのでお勧めですよ。
 
 話を戻すと、時々日常から離れて、すみっこでも世界に留まり続ける術を教えてくれる貴重な1曲だと思います。完成度から言えば、もっと評価されて欲しい1曲です。

※なんとなく連想した「世界が泣いているなら」についての記事はこちら!
https://oboeteitekure.blogspot.com/2019/01/blog-post_2.html