それでも変わらないもの
皆さんの住んでいる街に(村でも屋根裏でも独房でも可)美術館や映画館はありますかね?
僕の地元の愛媛県宇和島市は、僕が成人するまでに町に二つあった映画館は全て閉館し、博物館や美術館もどんどん減っていきました。
理由としては、来場者数の少なさや市政からの援助が得られなかったということなんですね。閉館後、博物館や美術館の展示物は、遠くの美術館や博物館に送られることが多いそうです。つまり、今まで見ようと思ったら、すぐに観られたものが観られなくなってしまうという問題があるんですね。
もちろん、インターネット社会なので、検索さえすりゃ、すぐに出てくると思うんですが、じゃあ、日常生活で画家の作品や20世紀の巨匠の映画監督の作品を能動的に検索する人がどれぐらいいる?という話ですね。
博物館や美術館での偶然の出会いや、映画館から感じ取るその時代の空気感は貴重だと思っています(たとえば、2019年だったら、僕は圧倒的に「格差」と「歴史」だと思います)。
芸術なんざ、何の役にも立たんわい、という方もいると思うんですね。でも、チームラボの猪子寿之さんが、「人類を前に進めたい チームラボと境界のない世界」の中でアートは美を拡大したり美の基準を変えていくので、社会を変えようと思っている人にも有効だということを語っていました。アンディ・ウォーホールの作品が起こした大量生産品に対する価値観の変化を起こしたことを例にだしながら。さらに言うと、美の基準が変われば、人類の行動も変わるし、産業も生まれるし、政治や経済の在り方にも実は影響を及ぼせるという考え方が面白くてですね。
「カッコいい」とか「キレイ」の基準が変わるだけで、僕たちの行動原理や思考も変わっていくわけです。
小学校の頃の課外授業で、ほとんどの目的が美術館の美術品ではなく、遠足形式で歩く行きかえりの道の非日常感の方がメインだった僕も、一つぐらいはインパクトのある美術品や建築物があって、家に帰って「カッコ良かったもの」を家族に語ったものですし、「キレイだったもの」をうろ覚えで授業中にノートの隅に描いたりしたもんです。
自分の幼少期や思春期の美術基準が、地元の町でもある程度確立させることがまだ出来ていたんですね。美術館や博物館や映画館の功績ってそう考えると大きいなと思います。
やがて、僕は建築学や文学の方に傾倒していきますが、大人になった後、仕事の関係で関西にある美術大学で教鞭を奮っている准教授の方と、1日ゆっくり話すことがありました。その方はある程度の美術賞を取っていましたが、それだけでは生活が不安定で大学の仕事とアルバイトである会社の事務職をしているそうでした。
芸術で食べていくことの難しさを話すと、「国の補助もそんなに頼りにならないし、大学の授業コマ数も限られてますしね。やっぱり数字を見られるんですよね」と寂しそうに笑っていました。
いくつ賞を取ったとか何人が授業を取っているとか、「お金」を動かす為には「数字」という裏付けが大切なんですが、その反面、実学が強くなっていき、芸術というものの価値が変な「教養」とかの枠に入れられて、徐々に「数字」の理論の方が強くなっていくのはどうかなあ、と思うんですね。確かに若い子がいま、芸術とかに興味をあまり持てないのも分かるんです。
でも、まだyoutubeやTikTokが価値基準の形成やロールモデルの役を担える段階ではないと思いますしね。
ええ、長いこと前フリしたんですが、先日、「私たちソーユートコあるよね?」コンサートでみなるんこと大場美奈が「コップの中の木漏れ日」をソロで披露しました。
公式のレポートの中で「若手メンバー中心の曲だからこういう時出ないとできないからね」と言っていたことが書かれていたんですが、全く良いと思うんですね。
だって今、彼女はアイドル人生「2周目」が始まっていますから。
アイドル人生の「1周目」が終わったことについては、こちらのインタビューをご覧あれ!
https://news.merumo.ne.jp/article/genre/9364088
インタビューの中で女優を目指しているよこにゃんが、みなるんの姿を見て励みになった、というところも良いんですが、既に彼女が15周年を見据えているところも凄いですね。
そして、彼女がしたこのツイートが凄く印象に残ってましてね。
私のことを好きって思って— 大場美奈 (@mina_ovo) January 29, 2020
応援してくれるなんて不思議だよね。
落ち込んだら励ましてくれるし、夢のために一生懸命頑張ってくれたり、嬉しいことは一緒に喜んだり。
たまに数に気を取られるけど
1人でもそう思ってくれる人が居るなら
人生懸けて大事にしようと思う。
皆のこと絶対大事にするね。
キャリアが10年を超えるベテランメンバーが言う説得力もあるんですけど、「数」だけじゃない、何かアイドルとして大事な根源のものを考えさせられる気がしましてね。
選抜の基準に握手の売り上げが前に出てきたことで、合理的になったものの、「数字」の要素が前に出すぎてしまったことにしんどくなっていた僕にとっては、とても心に刺さりましてね。
もちろん、握手売り上げを前に出すことで「聖域」とかそういう言葉はここ数年聞かなくなってメンバーが傷つけられることが減ったのは良いことだと思います。
でも、そのせいでワクワク感はセンター争いの方に移行したかな、と思っています。
みなるんのこのツイートを綺麗ごとのように感じるかも知れません、いや「数」の方が合理的で役に立つでしょ、と思う人もいるかも知れません。
でも、こういう価値観の彼女はグループにとって大切な存在です。チーム4立ち上げからの苦労を知っていて、復帰からのリスタートもありました。色々なものを潜り抜けて、無駄なものが削られていった、言葉だと思います。
彼女の「2周目」は、どれだけ時代が進んでも忘れてはいけない価値観や、「これから来る者」への「成功の前例」としてのロールモデルとしての活躍もして行って欲しいなと勝手に思っています。
美術館で美術品をみることで自分の「キレイ」や「カッコいい」が更新されていったように、彼女の言葉から大切な価値観が浮き上がっていきますように。
150文字に満たないツイートなのに、僕の迷いを照らす木漏れ日のような文章でした。
※人を応援することについて考えさせられた「HANGOUT PLUS 松村香織編」の感想はこちら!
https://oboeteitekure.blogspot.com/2019/06/hangoutplus.html