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2020年1月11日土曜日

おすすめの映画と本「パラサイト 半地下の家族」

今、僕らがいるところは?



 皆さん、韓国映画って観ますかね?
 ここ数年、めちゃくちゃ映画のレベルが上がってる国の一つだな、と思いましてね。
 「アジョシ」、「アシュラ」、「哭声」、「新感染」、「お嬢さん」、「悪女」、「1987、ある闘いの真実」と傑作揃いなんでよね。

 で、2020年公開で一番気になっていたのが、この「パラサイト 半地下の家族」なんですよね。



 

 【ここからはネタバレ全開でいきます】 



  ポン・ジュノ監督、リスペークト!
 いやあ、こんなに早く時間が過ぎていくのは久しぶりでした。
 まず、キム家の人々の味のある感じが凄く好きでしてね。
 中でも「タクシー運転手」でお馴染み、ソン・ガンホさん演じるお父さんの心情の流れが、凄くよくてね。京極夏彦の名作「魍魎の匣」に出てくる「彼岸と此岸」、「魔が差す」という言葉が頭の中で駆け巡りましたよ。
 

 序盤のパク家に、キム家が入り込んでいくところでの台詞回しが良くてですね。「ソウル大学に公的文書偽造科があれば」というお父さんのコメントは笑いましたし、「抽象的だあ」という何かヒントになりそうで、そうでもないセリフ。そして、「便所コオロギKILL、まっぷたつ」というフレーズを思い出す、悲惨な生活。
※公式の冒頭映像をご確認あれ!


 パク家と比較した時に、どんだけ丘の下に住んでんだよ、と言いたくなるぐらい地下に住んでいるのが、後半に分かります。
 この「階段を下りていく、登っていく」という演出については、「アフターシックス・ジャンクション」の中でのインタビューで宇多丸さんが指摘してましたね。


 じわじわと侵食していく感じが、面白いけど怖い。
 パク家、単純じゃんと思った方もいるかも知れませんが、僕もお金持ちの皆さんを相手にする職場で昔働いていたので、ああ、こういう奥さんめちゃくちゃ居た!と共感しました。
 
 そして、中盤のパク家がキャンプに行ってる間に家族がリビングに集まってるシーン。心の中で「馬鹿ぁ!」と叫びましたね。「これ、絶対にバレるやつじゃん、調子乗り過ぎだよ」と思いましてね。一線をここで超えたのかな、と僕は思いました。
 しかし、ここでキム家の正体を知るのは、家政婦のムゥンガンさんとあの地下にいるハゲのおっさんという展開。そして、リビングからの脱出。どんどんサスペンス感が加速していきます。

 そして、後半。
 「無計画」の怖さをガンガン感じるんですよね。
 誰かに流されて生きることの怖さもありますしね。
 そう考えると、あの洪水シーンと、そこで洪水の直接的な被害にあってる人たちって全員…。
 あの洪水の一夜のあとで、臭い問題をどうやってクリアーして行ったんだあの家族、と心配にもなりましたしね。
 ラストの中庭での惨劇も凄かったですね。
 出てきてからの「リスペークト!」は笑いました。
 全部、ぶっ壊して行く。どちらの家庭の足場もこの後半で崩れてしまうんですね。
 ラストのお父さんをいつか地下から救い出す、と「計画」するんですが、ゴールはまだまだまだまだ先なんだろうなあ、と感じさせる終わり方も良かったです。

 韓国のこれでもか、というほどの貧富の差やそこからの成り上がり方については、国方法は違いますが、「バッドジーニアス 危険な天才たち」を思い出しましたね。
 そして、色々と考えさせられる映画でしてね。
 あの石が表すものは何なのか、幸運の象徴なのか、不幸の象徴なのか。
 大学生の友人は、パク家とどんな関係だったのか。
 
 あのどう考えても、日常生活がダメそうな奥さんのパク・ヨンギョさんは、IT社長の旦那を失ったあと、どうなるんだろう、と映画館を出た後の僕は思いました。実はあの奥さんも旦那に「パラサイト」してたんじゃないか。旦那さんの死亡保険とかで、生き抜いていったり、あの美貌だから次の旦那さんをすぐに見つけるかも知れません。
 でも、どこかで、僕は「半地下」の生活に落ちる展開を想像してしまうんですよね。完全に被害者のパク家の人々なんですがね。映画の最初に半地下の家にあった銀メダル。それはだれのものだったか、とかね。

 斎藤工が凄い良いコメントしてくれてます。

 
 去年の「JOKER」といい、「家族を思う時」といい、貧富の差についての映画が増えてますが、世界がこれからどうなるのか、自分は今、どちらにいるのか(僕の場合はぶっちぎりの地下)、をふと考えさせられる映画でした。

 ※わくわくなメイキングもチェック!
 照明の違いとか、新たな発見も!