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2019年11月24日日曜日

おすすめの映画と本「ひとよ」

家族のせいで


 白石和彌監督は「孤狼の血」が大好きでして、今回もどんな作品なのか遅ればせながら、観てきましたよ。
 映画館は、「アナ雪2」で学生やカップルのお客さんだらけだったんですが、「ひとよ」も公開されて結構経っているのに、満席に近い状態でした。


 

 いやでも「家族」と「世間」について考えさせられる作品になってましてね。
 家族の運命が大きく変わった「一夜」から始まるんですが、全体的に、過去と現代がリンクして行ったり、更新していったりという演出が凄く好きでしてね。
 たとえば、佐藤健さん演じる次男が、実家の風景を観て、過去の記憶がよみがえっていくシーンとか、万引きした道を再び家族で歩いていくシーン、そしてタクシーに乗ってお母さんを追いかけるシーン。
 観終わった時に何も変わってないようでいて、実は少し更新されている感じがして凄く良かったです。
 
 出所した母親との距離感がつかめない子供たちに関しては、僕も今年9年ぶりに両親に会ったので、ああ、この感じ凄い分かるなあ、と感じました。
 また、佐藤健演じる次男のもうかなり遠くなった自分の夢の為に、もがいているようで、実はもう手が届かないところに居るのかもしれない、という感じも凄い良かったですね。
 

 そして、作品の根幹に関わってくる「家族」というもの。
 実際の親子である4人よりも、タクシー会社のみんなの方が「疑似家族」的で凄く良いんですが、佐々木蔵之介演じる堂下さん親子の「一夜」とその後に待つ悲劇。
 長男の奥さんとの関係も凄く考えさせられましてね。
 過去の傷も「家族」だからこそ、共有したいという感じ。
 稲村親子の中のお母さんへの認識の違いも面白くてですね。
 「助けてくれた」のか「壊してしまった」のか。
 「何にでもなれる自由」を手に入れたのか、「人殺しの子供という烙印」を押してしまったのか。
 これに関しては、正直、部外者には判定できないと思うんですね。
 「世間」から見たら、殺人者。
 だから、遠くから姿を見せずに石を投げて良いというものでもないんですけどね。
 ずっと、姿を見せない「世間」が嫌がらせをしてくる。
 そのせいで、歪んでしまった部分もあると思うんですよね。
 特に次男の佐藤健のすれてしまった感が強くて。
 だからこそ、最後の「どこからやり直せばいいんだよ」という台詞は凄くガツンと来たんですよね。
 「ひとよ」という言葉はどこか「人世」とも読み替えられる感じもしましたね。

 親がしたことが、子にとってプラスなのか。
 いや、子がやったことも親にとってプラスなのか。
 そんなことを考えながら映画を観ていると、僕個人としては、「僕が子供のせいで親に迷惑かなりかけたなあ」と思いましてね。僕は四人兄弟の長男なんですが、兄弟の中で一番投資してもらったんですよね。なのに、今の自分を顧みると…という瞬間が、映画鑑賞中に沢山ありました。

 母親の「あなたにとって特別な一夜でも、他の人にとってはただの一夜なのよ」という言葉は、やけに頭の中に残っていて、行動に対する解釈の違いをひしひしと感じた1作でした。

 個人的に、白石監督で一番好きな作品はこれ!