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2020年5月7日木曜日

二人に惹かれる理由

受け継ぐのか断絶するのか?


 「温故知新」という言葉が好きです。
 あの頃は良かったと思い出に浸るだけなら、「どうぞご自由に」で終わりますが、明日を作るためのヒントに昔のことを知るのは、とても重要だと歴史を見ていると思っています。

 先日アップした「5月3日松井珠理奈 SHOW ROOM配信の感想」と、そのもう一つ前の古畑奈和を題材にした「涙は知っている」や「誰かの耳」の記事を読んでくださった方々の感想を読んでいて、ふと思ったことがあります。

 なんで、この二人のことをよく書くんだろう、と。

 松井珠理奈と古畑奈和の共通点って皆さんはどんなことを思い浮かべますか?

 一見すると、あまり共通点がなさそうなんですが、二人の間に一人の人物を置くと、少し見てくる気がします。

 それは、大島優子です。「マジすか学園」風にいうと優子さんです。

 まず、奈和ちゃんと優子さんの接点を考えてみると、同じチームK兼任の前の武道館での「制服が邪魔をする」です。

 奈和ちゃんは、ゆりあや花音と一緒に若手選抜として、この曲に挑みます。しかし、リハーサルが終わった時点で、大島優子に若手選抜が集められます。
 2013年の「水着サプライズ」によると、「あ、ちょっと違うな」と思ったそうです。「白黒つけようじゃないか」のソフトを持ってらっしゃる方はメイキングを確認していただきたいんですが、ここで優子さんは、「制服が邪魔をする」の歌詞の意味、表現について後輩に丁寧に指導していきます。
 なぜ、ここでこういうふりつけをするのか、なぜ、こんな歌詞なのかを考えること。そして、どんなことを考えてサビの振りで腕を動かすのか、などをアドバイスします。
 「本当はこういうのを丁寧に教えたい」という思いもメイキングの中で語っていました。
 また、インタビューの中では「怖がられたり嫌われたりするのは嫌だが、嫌われる覚悟を持つこと」、それは「未来のためであること」を語っています。
 この指導を受けたその夜、奈和ちゃんは、AKB48のチームKへの兼任が告げられます。

 チームKに上がってきた奈和ちゃんは、めきめき頭角を現します。
 「表現力があるな、っていうのは、今回のドームのKのリハを見て思った」と2013年8月31日放送の「AKB48のオールナイトニッポン」で当時はまだ、SKE48に来る前だった宮澤佐江ちゃんが言うと、優子さんは次のように語ります。

「あたし、『ヒグラシノコイ』をさ、一緒にさ、公演でやってるんだけど。16歳なの。なんだけど、凄いよね。表現力凄いなと思ったもん。16歳で、えーっと9歳違うのか。

 で、『ヒグラシノコイ』っていうのが、16歳の歌なんだよ。
 でも、難しいの凄く。
 だから、あたしが、一生懸命読解しても歌詞を『この曲凄い難しいなあ』と思って。どう表現すんだろう奈和ちゃんって思ったけど、なんかね。16歳なんだけど。
 過去の16歳の自分を見ているかのような表現の仕方をするの。
 だから、凄いの。
 こんな風な顔をしてこんな感じで唄うんだ、と思って。
 大人びてて、なかなか難しくて。自分の中でかみ砕くことできてないんだと思うけど。でも、出てくるものが凄い違う」

 子供のころから演技の仕事をしていた、というのもあるんでしょうが、優子さんの歌詞を読み解いていくという姿勢は、曲の世界を表現するのに必要だと僕は思います。
 凄いめんどくさいですけどね。
 でも大事だと思います。
 「カラオケ」じゃなくて、ちゃんと「表現する」には。
 曲と向き合い、考えることが出来ている古畑奈和。
 彼女なりに、武道館の時に受けたアドバイスの影響もあるのかも知れませんし、元々、曲と向き合うことが出来ている人なのかも知れません。ただ、あの大島優子を納得させることが出来るのは凄いと思います。
 他にもツインタワーやチームKの先輩、そしてチームAに移っても、様々な経験をしていきます。
 2014年、大島優子の卒業公演に出た時、彼女はブログの中で次のように書いています。
https://ameblo.jp/ske48official/entry-11874889928.html


 やがて、彼女はミュージカルに出演し、2015年には大島優子も出ている「ヤメゴク」の第3話に、今度は女優として再会します。

 そして、SKE48のユニットコンでは、今度は先輩として、後輩たちに「ファーストラビット」や「スクラップ&ビルド」の曲の世界を演出、綺麗に見える指の見え方まで指導していくことになります。
 もちろん、ソロプレイヤーとしての魅力もあり、「誰かの耳」の歌詞の世界と現実の世界を2重のレイヤーで描いた「感謝祭」での演出や「10クローネとパン」、「ガラスを割れ!」、「誰のことを一番愛してる?」と言った表現するのが難しい曲もしっかりと、歌詞の世界に向き合って表現しています。
 やがて、2019年、彼女はSKE48のセンターになります。



 次に、珠理奈と優子さんの関係を考える時に、同じチームKということもありますが、選抜で様々な曲を共にし、AKB48第2章の幕明けを告げる「UZA」ではダブルセンターを務めました。
 観る度に戦争映画を見ている気分になるAKB48のドキュメンタリー2作目の地獄の西武ドーム。あの修羅場を共に経験し、翌年に前田敦子を送り出した二人には、これからグループを背負っていくという使命がのしかかることになります。
 武道館のステージから、二人が飛び上がってでてきたUZAは、抜群にカッコ良かったです。
 選抜として共に戦い、総選挙では競い合った二人。
 珠理奈から見れば、あっちゃんや麻里子様と同じように頼れるお姉さんだったのかもしれません。
 珠理奈は優子さんの卒業公演で次のように語っています。
 
「優子さんのステージやパフォーマンスに対しての全力さを私はずっと見てきました。その背中を見て、私は優子さんのことを本当に尊敬してるなって、今日もステージに立って思いました。
 でも、優子さんの真似をしても、優子さんと同じことをしても、優子さんにはもちろん敵いません。
 人それぞれやり方があって、だからこそ自分らしく、一番大事なことは全力になることだよって、優子さんの背中からそういうことを教えていただけたなと思います」

 時々、忘れそうになるんですが、珠理奈って、本店の選抜にいる時は自分よりもキャリアの長いお姉さんたちに囲まれてるんですよね。頼れる先輩の熱い姿を見ていたんだと思います。そもそも、チームK自体が、チームAに負けないという気持ちが初期は強かったように思います。さらにチームBという超がつくほどのアイドル集団(飛び道具あり)まで来たわけですから。
 なんとなく、SKE48のAKBのパフォーマンスに負けるか、というものに近い感じがするのは、僕だけでしょうか。
 
 珠理奈もまた、全力を大事にし、曲を大事にする人でした。
 2015年7月5日。
 7D2が研究生公演に向けて、「SKE48」を練習している様子を松井珠理奈は見ていて、この曲についてのアドバイスをしていきます。
 
「ごめんね、こんなこと言うのもあれだけど、あんまり良い評判を聞かないので。
 そんなにあれかなあ、と思って観に来てみたけど。
 『SKE』だけ特に観たかったのね。
 その他の曲はSKEの為に作られた曲じゃないじゃん。もともとAKBの為に作られた曲で、「コケテッシュ」とSKEだけは、SKEバージョンというか、SKEの為の歌詞があるから。
 そこは、絶対そのSKEのパワフルさっていうか、見せなきゃいけないとこだと、私は凄く思ってて。
 SKEはアンコールの1曲目かな?
 ファンの皆さんが『もう1回出てきて~』って、もしかしたら、かからないかも知れないからね。かかるないこともあるから。
 その前で楽しいと思わなかったら、ファンの人が見たいと思わなかったら、アンコール言われないからさ。そういう可能性もあるから。そこで呼ばれて。
 一番最初に出ていくって行ったら。本当にね、出ていくところから、思いっきり走って出て行かないといけないと思うの。
 その曲が始まるとか、台詞しゃべるのが始まりじゃないの。もう一歩目踏み出した瞬間が、スタートだから。そこでどんだけ元気に、若いからさ。
 走る、走って、出たかったぁという気持ちで出るものだから。そういうのも意識しながら。
 踊りと歌だけじゃない。そういう気持ちがやっぱり大事だから。早く出たい、ステージに立ちたいという気持ちを、もっと見せて欲しいなあって。レッスンの時から。うん」

 かなり、長い言葉かも知れませんが、これって。「SKE48」という曲の本当に最初の部分なんですよね。「アンコールがかからないかも知れない」というのは、彼女と同じ1期生だった中西優香推しの僕としては、全く脅しではなく、現実に起こりうることだと本店研究生時代の歴史から感じます。
 そこから、珠理奈は研究生たちに寄り添って、一緒に踊っていきます。
 もし、「アイドルの涙」の4枚組をご購入されている方は、この辺りをじっくり見ていただけると、珠理奈が曲の一つ一つの歌詞と振り付けを大事にしていることが分かるかと思います。
 
 そして、更に研究生たちに厳しい言葉をかけていきます。

「全然元気じゃん。
 ごめんね、こんなこと、本当は言いたくないけど。
 全然さ笑顔とかできる体力あるじゃん。
 こんだけさっきレッスン終わってさあ。
 申し訳ないけど、集めちゃってさあ。
 やらしちゃったけどさあ。
 それでも、こんだけ出来るんだからさあ、だったらさあ、最初っからリハでそれ出してよ。
 なんか全然体力あるなら、まだまだやるよ?
 なんなら。私別に頭から全部、こうやってやっていってもいいよ。
 それぐらい、やんないとヤバい。
 と、思う。
 普通こんなに体力余ってない。うん。ストレッチとかできない。
 してくださいって言われても。もう、みんな倒れこむぐらいやんないと。
 前とか後ろとかね関係ないから。ファンの人はどこに居ても見てくれるし。
 でも、前の人がちゃんとやんないと、後ろで見てる、てか、後ろで踊ってる子たちは、ムカつくからね。
 まあ、ポジションとかは関係ない。正直。
 だけど、前に立ってる目立つポジションに居るんだったら、ちゃんとやんないと。
 みんな引っ張っていかないといけないから。
 後ろに居たって目立つ子は一番目立つよ?
 みんながそうなんないと。どこに居ても一番目立つって思われないと。
 それぐらいやって欲しいな。
 あんま言いたくなかったけど。
 なんか、見てたら。
 そういうことも言ってくれる人、多分、あんま居ないんだろうなあ、と思って。
 私たちの時はそれが居たんだけど。
 だから、ちょっと言ってしまったけど。明日笑顔で」

 自分が1期生の時のレッスン。
 センターとして後ろの子たちを納得させる為に努力してきたこと。
 後ろにいた子たちの視線。
 自分の前でセンターを踊ってきた人たちの背中。
 そして、リハーサルから全力で取り組むことの大切さ。
 それを伝えることが出来る人がもう居なくなっていること。
 ちなみに、SKEの歴史としては、この映像の前後でも、真木子やだーすーが、アドバイスをもちろんしています。
 しかし、センターを張っている人物が言う言葉の重さは違うと思います。
 この言葉を聞いている時のゆななの視線が印象的でした。

 翌日に珠理奈は、研究生公演初日も観に来ます。
 しかも、初日に出られなかった菅原やほののれなひゅーに、優しくこの経験が実は色々と分かることだということを語っています。
 休養が多かった彼女ならではだな、と思います。
 「悔しいけどさ。楽しみじゃん、出るとこ楽しみ。教えて下さい、見たい」
 この言葉を受けて、れなひゅーが凄い明るい笑顔になります。
 珠理奈にこんなこと言われたら、そりゃ新人は頑張るよ、となりますね。
 
 関係者ゲネプロ後、それぞれの曲の振り付けについてアドバイスしていく珠理奈。
 「スカートひらり」は、わざわざ自分の衣装まで用意して踊る珠理奈。
 アドバイスの最後に「引っ張っていって、みんなのこと。頑張ってね」という言葉は、2020年現在、とても重く感じます。

 それから、48グループもSKE48も様々な試行錯誤をします。
 全体コンサートでの終盤は、大人数である為についついぶらぶらと歩くための曲になってしまうことには、勿体なさを感じますし、バラエティ色を全面に出していく試みも増えていきます。
 その中でブレイクしていったメンバーがいるのは嬉しいんですが、でも何か大事なものが薄れていく感じもしました。
 AKBの曲で「バケット」という曲があり、珠理奈も歌唱メンバーとして入っているんですが、この曲が描く世界にすっかりなってしまった気がします。
 
 やがて、その変化と珠理奈のズレがピークとなり爆発したのが、2018年の総選挙のリハーサルだったのではないでしょうか?
 これまで先輩たちが背負ってきたものを、責任感の強い珠理奈が背負うことになる。
 その為に全力を尽くしていく。
 文化が違うもの同士がぶつかったら。
 世間は部分的な切り取りがあったというのが、僕の考えです。
 その背景に何があって、何故起こったのか?
 何故、大人たちはこの現象が起きる前に対処できなかったのか?
 「48」というネーミングライツをして、それぞれの独自の文化が育っていくのは良いことだと思うんですが、大事にしていることは共通していたかったな、とも思いましてね。
 今でもこのことは、考えます。
 
 やがて、2019年、「FRUSTRATION」で奈和ちゃんがセンターになったことに関して、珠理奈は「月刊エンタメ」9月号の中で、奈和ちゃんの同期や近い期の子たちに「すごく刺激になっている」と感想を語っています。そして、新体制になって「肩の荷が下りた」ということと、これまで攻めの珠理奈だったが、私がSKE48を守っている間に暴れまくってくれ、ということを一緒にインタビューを受けていたるーちゃんや後輩たちへの期待として語っています。

 今でも、ちょっとした本店のカップリングで参加した曲でもSHWOROOM配信で口ずさんだり、フリが入っている珠理奈。
 表現力の凄さで、下手に触れると大怪我をする欅坂の平手さんポジでも違和感なく自分のものにして、歌詞の世界を読み取り、ストンと自分に落とせる素養を持っている古畑奈和。

 この二人と奇しくも関わった大島優子。

 彼女を二人の間に置いてみていくと、なんで僕がこの二人に惹かれるかが、だんだん見えてきました。

 それは、「曲を大切にしていること」。

 こんな面倒くさいブログを書いている人間からしたら、ちゃんと曲の意味を考えて、体を動かせる人だと二人とも思います。
 よく、ダンスのSKE48と言われますが、僕としては「曲を大切にしているSKE48」で居てくれたら、まだまだ応援できるな、と思っています。
 その文化を珠理奈が後輩たちに残していって欲しいですし、奈和ちゃんはまだまだ見せて行って欲しいな、と思います。

 今回、大島優子という人をヒントに考えてみましたが、これが松井玲奈だったら、どんなことが見えてくるでしょう?
 また、文化の継承が出来るのが、珠理奈だけでしょうか?
 ちゅりは?
 だーすーは?
 本店9期生で超選抜たちと1年目から仕事をしていた大場美奈は?
 「ソーユートコあるよね?」のお家ダンス動画で抜群のパフォーマンスをした山内鈴蘭は?
 キャプテンの真木子は?

 時代の変化と共に滅びる文化なのか? 
 それとも形を変えてでも遺伝子として残るものなのか?
 
 この二人なら、そして、SKEなら。
 明るい未来を作ってくれると信じています。


※この記事はこの1か月間で皆さんからいただいたコメント無しには、思いつけない、書けない内容でした。本当に引用リツイート等でコメントをしてくださった方々、僕のTwitterアカウントに感想を書いてくださった方々に感謝して、この記事を終わります。