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2020年5月5日火曜日

涙は知っている

誰かの未来を選び、育てること




 今更ですが、48グループでは、何度もメンバーたちは自分の価値を他者からの評価で選定されていく。
 総選挙なんか一時期までは全員参加でしたし、握手会の売り上げなんかもそうでしょうか?
 僕が結構辛いなあ、と思ったのが、ドラフト会議です。
 それまで一般人だった子が、先輩たちやファンに選ばれて、アイドルになる。
 かなりドラマチックな瞬間です。
 しかし、その逆もありきで、選ばれなかった人は名前や顔が知られた上で、一般人に戻ることになります。
 その子の物語はそこで終わってしまう。
 いやいや、それはオーディションも同じでしょう、という方もいるかも知れませんが、ドラフトの場合、それが生中継のリアルタイムで行われるんですよね。
 選ばれた者と選ばれなかった者の悲喜こもごもをリアルに我々も観ることになる。この進化系が毎週放送されていた「ラストアイドル」なのかな、とも思うんですがね。

 話を戻すと、惣田さんが選ばれた時の感動は、忘れられませんし(その後の彼女の快進撃も)、「ここがロドスだ ここで飛べ」の曲がじんと来るわけですが。
 
 その反面、選ぶ者たちにも葛藤があります。
 2013年11月10日に行われた第1回48グループドラフト会議。
 高柳明音を始めとするK2メンバーが5人取って行った背景に佐藤実絵子さんの「同期は多い方が良い」という考えや、チームSの卓が松本慈子を取ってじっくり育てようとしたこと(ちなみに、珠理奈が惣田さんの指名が決まった時に喜んでましたね)。

 じゃあ、チームEの卓はどうだったか。
 ここでは、まだ松井チームEだったので、松井玲奈、木下有希子、木本花音、梅本まどか、古畑奈和の5人が座っていました。
 中継やドキュメンタリーの映像を観ていると、皆の意見を聞きながら決めている感じでしたね。
 小石ちゃん、さーなん、どんちゃんを獲得した後で、4巡目をどうするかでチームEの卓は相談していました。

 ここでは、奈和ちゃんが獲得したい子と花音が獲得したい子のどちらを取るか、それともどちらを取らないかで揺れていました。
 「もし、この子が成長したとしたら、チームEの何かあれになるかなと思う。なんか下から来て絶対面倒はみたい」という奈和ちゃんのアピール。
 「チームの今の人数も合わせて全部考えて選ばないとだめだよ」、「今、もう3人取ってるんだよ。今19人なった」という梅ちゃんと玲奈ひょんの冷静な現状認識。
 さらに梅ちゃんから研究生が増えるかも知れないことや、自分たちが獲得した子たちと競っていくことになることが語られていきます。
 玲奈ひょんは、将来性を考えて花音が推している子を取った方が良いという考えです。
 花音は「私はここで終了するのが1番だと思うけど、もし、どっちか採るんだったらこっちだと思う」という考え。
 ゆっこは「止めておくのが1番いいかも、もう」と言います。
 最終的に玲奈ひょんは「でも、やっぱり今、奈和ちゃんがこの子の良さをみんなに話したけど、それでみんなが『あ~』ってならなかったってことは、やっぱり10はいってなかったなんだと思う」、「でも、すごいスタイルも良くて、いい子だなとは思う」とまだ迷います。
 梅ちゃんは、「でもさ、成長する子はいっぱいいるやろ、Eに」と奈和ちゃんに語りかけます。
 奈和ちゃんは、「ずっと見ていたら、この子が1番さ、出来ないながらもさ、ちゃんとやっているのが、あたしは見ていて良かったなと思ったの」と推している子の魅力を語ります。
 最終的に「これは、揉めるならやめよう」という玲奈ひょんの鶴の一声で、選択終了となります。
 この後の玲奈ひょんの言葉が凄く良くてですね。
 「奈和ちゃん。その分、これからチームEの今いるメンバーの中で今回採った子を良くしていこう」と真っすぐな瞳で語りかけます。
 涙がこぼれだす奈和ちゃん。
 さらに玲奈ひょんは語りかけます。

 「奈和ちゃんが初めて今回、誰かが成長する所を近くで見たいなと思ったよね?それはすごい奈和ちゃん自身の成長だと思うよ。だったら、今回採ったドラフトの子に一緒に観てあげるべきだと思う。私は。そういう風に気持ちを持っていこう。大丈夫?」
 
 こぼれる涙を両手で押さえながら、頷く奈和ちゃん。
 「気持ちは分かるよ、ごめんね」と玲奈ひょんが謝ります。
 
 この日の気持ちを奈和ちゃんは、ブログの中でこう書いています。
https://ameblo.jp/ske48official/entry-11683971693.html


 もともと、優しい子だとは思っていたんですが、想像力のリーチが本当に広い子なんだな、と思いました。
 ここから、彼女がドラフト生3人たちを育てていくことになるかというと、そうではありませんでした。
 大組閣で奈和ちゃんは、チームK2に行くことになってしまうからです。
 ただ、誰かの成長をみたいという彼女の熱い思いと涙は、多くの人の心を揺さぶったと思います。

 あの日の涙から約4年後。
 2017年11月12日。
 SKE48のユニット対抗戦が行われます。
 奈和ちゃんは、4人組ユニットで、彼女以外は、8期生の石黒友月、岡田美紅、白雪希白の4人。
 選んだ曲は「ファーストラビット」と「スクラップ&ビルド」の2曲。
 この時のことについては、以前書いた記事を読んでいただきたいのですが(記事の最後にリンクを貼っておきます)、奈和ちゃんが先輩として、後輩たちを引っ張っていく日がついに来ました。
 当時、岡田美紅を推していた僕は、奈和ちゃんしか先輩いないけど、大丈夫か?というのが正直な気持ちでした。
 しかし、当日のライブヴューイングを観た時、その不安は消し飛びます。
 「ファーストラビット」の時の後輩たちをメインにしてあげる演出。
 いやあ、この時ほど、推しの歌い方がさや姉をめちゃくちゃ意識してるじゃない、と感じたことはないです。
 そこからの「スクラップ&ビルド」の新しい世代がSKE48を作っていく期待感が良くてですね。あえて、2番の「確かに良い時代だったんだ、老人たちは懐かしむけど」を唄う奈和ちゃんのカッコ良さ。
 この時の気持ちを奈和ちゃんは、ブログの中でこう書いています。
https://ameblo.jp/ske48official/entry-12327896004.html

 「いろは」というユニット名はそういうことだったんですね。
 また、結果ではなく、後輩の成長を望んだパフォーマンス編成も良かったですね。
 ちなみに、後輩目線からはどう映っていたのか。
 岡田美紅のブログを確認してみましょう。
https://www.blogger.com/blogger.g?blogID=867994519082272227

 また、『100% SKE48』第4号の中では、振りを覚えてこれてなかった後輩を奈和ちゃんが「知らないよ」と怒ってからの指導をした話も載っていますが、真剣に向き合っているからこそ、彼女たちに成長してほしいと思ってるからだと思います。
 さらに言うと、彼女が見てきた先輩たち。
 それこそ、彼女にドラフト会議の席で優しく語りかけた松井玲奈が、名古屋ドームの前日に、後輩たちをどんな風に怒っていたか。
 3期生の木下有希子がコンサート前のリハーサルをどれだけ大事にしてきたか。
 そして、途中からの昇格とはいえ、梅本・木本の4期生二人が初代チームEでどれだけ苦労してきたか。
 いや、それだけではなく、大島優子や秋元才加といった歴史の証人たちともパフォーマンスをしているわけです。
 様々な歴史を彼女は受け継いできた人物でもあると思います。
 だからこそ、SKE48の本質を変えずに後輩たちを指導していったのではないでしょうか?
 おかげ様で僕の推しは、総選挙にランクインし、次はSKE48の選抜を狙っていました。だーすーを始めとする先輩たちを目指して頑張ることが出来ました。
 あのユニット対抗戦の日に届いたモバメの内容は、今でも忘れられないので、奈和ちゃんにはありがとうを言っても言い足りないぐらいです。当時、研究生だらけの環境の中で、選抜常連の先輩と真剣に向き合えたことは貴重な経験だったと思います。
 
 2020年5月現在、チームK2は彼女の後輩の方が多いです。
 彼女は率先して育てるというタイプではないのかも知れません。
 しかし、きちんと場を与えればきちんと、素晴らしい育成が出来る人だと僕は思っています。
 いや、ユニット対抗戦は短期モデルだろ、という方もいるかもしれませんが、長期モデルでも僕らの目に見えてないだけで、年中続いている公演の中で成長を促しているのかも知れません。
 ちなみに、僕はどちらかというと、ソロプレイヤーとしての奈和ちゃんが好きです。なんというか、SKE48の中のジョーカー的な強さというか、どの色の札でもない感じが好きなんですね(凄い抽象的な説明)。彼女の背中に憧れる後輩も少なくないと思います。ただ、先輩としての彼女もやっぱり素晴らしいんです。

 センターとなって、前に誰も居ない状況で踊った2019年を経てのこれから。
 いつかまた、古畑奈和とこれからを担う世代が交わる機会があれば、きっと後輩たちを成長させてくれるのでは、と思います。
 あの日の涙を覚えている人間としては、そして、ユニット対抗戦を知っている人間としては、これから来る者たちも大事に育ててくれると信じています。
 
 ※スクラップ&ビルドについての記事はこちら!
https://oboeteitekure.blogspot.com/2019/01/blog-post_63.html

 ちなみに、今回の記事のタイトルはこの曲からとっています。