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2020年5月18日月曜日

古畑奈和と兼任

兼任が彼女に見せたものは?


 自分が居た場所から離れて、別の場所で過ごすことによって、自分が元々居た場所が鮮明に見えてくることや、新しい発見があることもあります。
 社会人の方なら転職や部署異動、学生の方なら進学やクラス替えなんかはどうでしょう。
 自分って場所を変えるとこんな風に評価されるんだ、とかね。
 それだけに限らず、「複業」をされている方なんかは二つの職場を経験することで、見えてくることがあるかも知れません。

 古畑奈和の場合は、それがAKB48との兼任でした。
 
 2013年4月28日の日本武道館でのグループ合同コンサートで、チームKへの兼任が発表されます。
 当時、握手が「古畑ジャンプ」で話題になっていたこともありますが、歌唱力の高さもあって、本店への兼任は納得でした。
 しかし、まだチームEの新体制が動き始めたばかりだったので、ここに更に覚えることが増えていくのか、という不安はありました。
 チームKへと兼任した彼女は、その表現力を大島優子を始めとするチームKのメンバーたちに認められていきます。
 この辺りのことについては、以前書いた「二人に惹かれる理由」という記事を読んでいただけたら、幸いです。
https://oboeteitekure.blogspot.com/2020/05/blog-post_7.html

 このチームKでは、前田亜美、藤田奈那、武藤十夢と「おかぱーず」という公演前におかしを食べる集団を結成、じゃんけん大会にも後年こちらのユニットで出場しています。
 チームK時代は、「ウェイティング公演」や「最終ベルが鳴る」公演に出演。
 SKE48のチームK2で後年再び「最終ベルが鳴る」公演をすることになりますが、チームK時代は「初恋泥棒」を担当しています。
 そして、大組閣を迎え、彼女はチームA所属になります。
 
 このチームAでは、高橋みなみ、小嶋陽菜がいました。
 また、島崎遥香、高橋朱里、岩田華怜、川栄李奈、入山杏奈というAKBの次世代枠の中心に位置するメンバーたちともいよいよ巡り合うことになります。
 この人事を見た時に、僕は「ひょっとしたら、奈和ちゃんを松井玲奈とは違うアプローチで、いつか珠理奈の対面に立たせようとしているのかな」と考えていました。彼女を新しいSKE48の入り口にしたいのかな、と。

 このチームAでの出来事で印象に残っているのは、2014年12月27日のAKB、SKE、HKTに行われた同日ライブです。
 奈和ちゃんは、AKB48のチームAとして宮城県に行っていました。
 僕は、中継でSKE48を観ていたんですが、ああ、奈和ちゃんはそっちで頑張ってるんだなあ、と嬉しい反面、少し寂しい気持ちになっていました。でも、花音もHKTの方で頑張ってましたし、SKE48に興味を持つ人を、きっと彼女なら「SKE48の入り口」になってくれるんじゃないか、と思いもしました。
 2015年1月5日の奈和ちゃんのアメブロでも、「SKE48に興味をもってもらえるようなきっかけをつくれるように…」と書いていましたが、握手会でAKBきっかけのファンが増えることを嬉しいと語っていました。

 2015年1月22日には、合同のリクエストアワー2日目で、「10クローネとパン」の歌唱メンバーとして参加します。
 山本彩という今も歌手として活躍しているメンバーの中に放り込まれますが、この歌詞の世界を忠実に表していきます。
 彼女自身も当時、「大好きな曲」と語っていましたが、僕も本当にこの曲が表している、絶望的な世界に僅かに輝く光の美しさが好きです。これについては、別の記事で書いているので、是非、読んでみてくださいませ。
 
 そうそう、この頃のSKE48はどうかというと、「12月のカンガルー」で、宮前杏実、北川綾巴のダブルセンターで、新機軸を打ち出していた頃です。この時、奈和ちゃんはセンターには選ばれませんでした。
 続く「コケティッシュ渋滞中」では、ダブル松井体制に戻り、彼女にはセンターがまた回ってきませんでした。
 この時の気持ちを2月11日のアメブロの中で「選抜に入れた嬉しさと同時に危機感を持ったのも事実です」と残しています。
 順調に行っているように見えて、実は焦りもあったんですね。

 この頃、彼女の同期がSKE48を去っていきます。
 山田みずほ、岩永亞美。 
 2015年3月6日の山田みずほ卒業時のアメブロを読むと、「ESCAPE」で初めてダブル松井よりも前に出た同期からのバトンを受け取ったように感じます。
 また、2015年3月10日のつうちゃん卒業時のアメブロを読むと、同期ならではの絆を感じます。そういえば、奈和ちゃんは、「ぐみたん」って読んでたのか、という懐かしさもありました。

 
 話を兼任に戻していきましょう。
 彼女が兼任していた2014年から2015年は、AKB48のCDも全タイプ買っていたので、カップリング曲にSKE48のメンバーが居るのは嬉しかったもんです。
 個人的には「君の嘘を知っていた」なんかは、奈和ちゃんの良さが出ていて、今聴いても心が動かされます。ただ、チームAの王道アイドル曲の「君はきまぐれ」なんかも似合っていましたね。
 ただ、本店の表題曲の選抜には選ばれてはいませんでした。
 SKE48からは、珠理奈、玲奈、だーすー、ちゅりぐらいまででした。


 そして、2015年3月25日。
 埼玉スーパーアリーナで行われたAKB48のヤングメンバーコンサートに彼女は出演します。
 岡田奈々との「あなたとクリスマスイブ」を担当し、未来への可能性と兼任している幸せを感じたとこの日のブログでは書いています。
 しかし、翌日。
 2015年3月26日。
 全体コンサートで、彼女の兼任解除が発表されます。
 僕はこのニュースを聞いた時の気持ちをストレートに書くと、「あっ、梯子外して、綾巴にスライドさせる気だな」でした。もう、運営は育てる気があるのか、という感じでした。
 この日、彼女は起死回生の活路をあるイベントに見出します。
 これは是非、原文をお読みください。
https://ameblo.jp/ske48official/entry-12006546780.html?frm=theme

 「今からバカなこと言いますね」

 この一言の奥ゆかしさ。
 そして、ここで終わりたくない、という思い。
 選抜への憧れ。玲奈の優しさ。「あの子」との約束。
 すべての状況をひっくり返すための選抜入り。
 この日の感情をすべてさらけ出した文章は、今読んでも心を揺さぶられます。
 同じく、5月14日には「悔しい」という気持ちが語られています。
 「総選挙ガイドブック」についてですね。
https://ameblo.jp/ske48official/entry-12026329145.html?frm=theme

 
 5月21日の速報発表。
 奇しくも彼女は、AKBのチームA公演の後、速報発表に立ち会います。
 速報の順位は22位。昨年の速報よりも順位は上がっています。
 この日のアメブロは、彼女とファンの方との関係について書いています。
 奈和ちゃんが手を伸ばしたら、ファンが下から押し上げるのではなく、その手と心を繋いで一緒に壇上を目指すということが書かれていました。また、この年にミュージカル「AKB49」で唄った「僕は頑張る」を引用しています。さらに755戦争もこの年。少し先の話をすると、同年12月の「前のめり」センター、色々なことがこの年の彼女の身には起こっているわけです。

 そして、5月29日に、彼女は最後のチームA公演に出演します。
 この日のアメブロの文章は、兼任についてとても考えさせられる内容になっています。
https://ameblo.jp/ske48official/entry-12033873351.html?frm=theme

 
 「SKE48の1人としてAKB48にいた」

 SKE48での立ち位置と違うAKB48での自分の立ち位置。
 ダンスの違い。
 1回でも多く公演に出たい思い。
 未来に素手で触れた感触。
 何かやっと掴めたというものがすり抜けた悔しさ。
 それでもAKBのヤングコンサートの成功を祈れる優しさ。
 この日のブログを読むと、ひょっとして、奈和ちゃんは48グループのヤングメンバーによるコンサートから様々な可能性を感じていたのかも知れないと感じます。

 
 2015年6月6日の総選挙。
 24位という同期の中でトップの順位でランクインします。
 彼女の涙ながらのスピーチをします。

「はい。SKE48チームK2の古畑奈和です。
 投票してくださった皆さん、ありがとうございました。
 私は、SKE48が、AKB48グループが。
 本当に大好きなんです。
 大好きすぎて…大好きなんです。
 それで、私はそんな大好きなAKB48をSKE48の為だったら、どんなことだってするし、何だって捧げたいと思うし。
 私のアイドルの人生を、全部全部捧げたいんです!
 そのくらい、本当に大好きで。ありがとうございます。
 それで、熱い思いを伝えるのは、本当に怖くって。
 その思いが伝わるのかとか、考えた時、凄く怖くなるけど。
 でも、私が大好きな、好きになったこのグループにだったら、このグループのメンバーにだったらいいかなって、思います。
 だから、まだ、うーん、そんなに胸を張って言える立場じゃないかもしれないけど。
 私もいつかはこのAKB48グループの一員として、もっと使ってもらえるような。もっと役に立てるようなメンバーになっていきたいと思います。
 本当にありがとうございました!」
 (※徳光さんのハンカチのとこは省略しています)

 当日、スピーチを聞いていた時は、「奈和ちゃん、感極まってるんだなあ。頑張ったなあ、うんうん」と気楽なことを思っていたんですが(当日は、だーすーが大変だったんですよ)、ここまでの背景を並べていくと、全く違った響きで胸に届きます。
 兼任することによって、全く違った人達の中に入れられ、違う物差しで測られた自分。
 しかし、場所が変わったことによって、芽生えてきた使命感と目標。
 その真っすぐな思いの発露だったんですね。

 この3年後、彼女はAKB48の選抜になります。
 そして、4年後にSKE48のセンターに。
 更に、同じく2019年にヤングコンサートで出会った岡田奈々たちと博多座で「仁義なき戦い~彼女たちの死闘編~」で再会し、舞台という一つのものを作っていきます。
 
 2020年5月現在、兼任という制度はなくなりました。
 しかし、奈和ちゃんが経験した兼任は、現在の彼女の礎として、大きく影響しているのだと今回改めて感じました。
 今も彼女は、でんぱ組のファンの方や声優ファンの方、BRIDERファンの方、サックスファンの方に対して、「SKE48の入り口」として活躍しています。
 きっとこれからも、SKE48ファン、いや48グループファンを増やしていってくれるんじゃないか、と期待しています。
 だから、古畑奈和に「新しい場」への兼任が必要だと今は思っています。