時代遅れ
皆さんの思い出は、どんな形で残っているでしょうか。
新型コロナウイルスの影響による外出自粛のおかげか、最近は過去に観た映画や過去に読んだ漫画、昔の思い出話をする人が増えたように思います。
ここ数年の思い出は、スマホやPCのメモリーの中に入っている方が多いかも知れませんし、もっと前の思い出は写真としてアルバムの中に残っているかも知れません。
今回紹介する大矢真那写真集「小倉トースト」は、2018年刊行にも関わらず、誰かの遠い想い出を覗いているような懐かしさを最初感じました。
朝起きて、朝食を食べる。
洗濯物を干して、ゴミを出す。
町に出る。
モノローグのように昨日のことが思い出される。
公演でお昼ご飯を食べる。
花やしきで遊ぶ。
晩御飯を食べる。
初めて引っ越してきた日を思い出す。
勝手に構成を考えてみたんですが、どうでしょう?
真那の何気ない1日が、フィルム撮影で切り取られています。
SKE48に在籍していた頃と比べて、さらに透明度が上がったのではないか、と僕は思っています。こんなに朝の光と相性が良いとは。
また、時々出てくるこちらを見つめる視線の美しさ。接写に耐えうる肌の白さ。
大矢真那という人の素材の美しさを感じます。
この写真集を観ていると、とても不思議な気持ちになります。
何か、少し前に消えてしまった大切な文化というか美しさの在り方を勝手に感じてしまいます。あまり、グラビアや写真集に詳しくはないですが、今の流行りのベクトルとは違う何かを感じます。
それは、大矢真那という人の物の考え方や言葉を読んでいても思います。今では軽く考えられるようなものや忘れてしまわれそうなことを、雑に扱わずに大事にしているように僕には思えます。
そういうことを、人は「時代遅れ」というのかも知れません。しかし、真那にはずっと大事にしてい欲しいですし、僕らも時々思い出したい、そう思わせてくれます。
だからこそ、「フィルム撮影」という、少し懐かしい世界を作って、時代を関係ないものにしたのかもしれません。
色々と小難しいことを書きましたが、食べる幸せ、笑顔になる幸せを教えてくれる写真集でもあります。
こんな世の中で、ちょっとほっこりさせてくれたり、ちょっと大事なものを思い出させてくれる、丁寧な写真集だと僕は思っています。
何か色々なものに流されそうになったとき、変わらないものがあることを思い出させてくれる、懐かしいけれど新しい1冊でした。