スクラップ&ビルド
「ポスト・トゥルース」という言葉をご存じでしょうか?
客観的なデータとは関係なく、予断や偏見が先行した社会的信念のことを指します。
人間は感情の動物で、自分の信じたいことしか信じない感情の生き物なんじゃないのか、僕は時々そう思うことがあります。
たとえば、未だにやっている「日本って凄いよね」番組。
本当にそうか、と観ていて思う時があります。
また、このブログはSKE48のことを書いているので、SKE48に引き寄せて考えると、2018年のドキュメンタリー映像「アイドル」の中で出てきた、「今のSKE48で、名古屋ドームに立てるか問題」。
この映像を観ていて、普段イライラしない僕が2年ぶりぐらいにイライラしたのが、全くデータで語らずに、主観だけで「いやあ、今のSKEじゃあ、名古屋ドームは埋まらない」という論説が繰り広げられたことです。もっと早く「FACTFULNESS」が発売されていれば!と思ったんですが、まあ、見せられない数字もあるんだろうな、と自分なりに納得しました。その後の「BUBUKA」での取材で珠理奈やだーすーが、「名古屋ドームは不可能じゃない」と語ってくれたのが、嬉しかったものの、自分もその嬉しさの根拠になるようなデータを、何も持っていないことをまざまざと実感もしました。
2020年4月現在、COVID-19の影響で、世界は未曽有の危機に陥っています。その中で、諸外国の国民生活への保障と日本の保証を考えた時に、僕らはこの国、いや、この国の政府について考えさせられました。
本当に、今の日本でいいのか。
先日、ブログで紹介した宇野常寛さんの「遅いインターネット」と同じタイミングで発売された安宅和人さんの「シン・二ホン」には、僕らがこれからの日本を考えていく上でのヒントが書かれています。できれば、2冊を合わせて読むことをおすすめします。
安宅さんは、慶應義塾大学、環境学部教授で、ヤフー株式会社のCSOも担当されています。10年前に発売された「イシューからはじめよ」を読まれた方も多いんじゃないでしょうか。
まず、この本を読んで、衝撃的だったのが恐ろしい負のサイクルが起きていて、研究者が育ちにくい国になってしまっていることです。
日米主要大学の学生一人あたりの予算と人件費率、日米トップ3大学の常勤教授の平均年収の差。僕自身も10年ほど前に、大学院の修士を終えて博士課程に進もうか悩んでいる時に、近代詩を研究されていた担当教授に「この世界はもう椅子がギチギチだし、どんどん予算も減っているから、食っていけなくなるよ」と言われたのを覚えています。
その時、まだ20代前半だった僕は、まあ、文学の研究なんざ、偉い人には分かってもらえないんだろうな、もっと役に立つことあるんだろうし、と。しかし、こう、データで見せられるとクラクラしてきますね。
P336からの未来のための原資を作り出す私案は、本当にこれからの日本を考えていく上で必要な処方箋だと思います。それに257ページのデータサイエンティスト業務のタスク全体像や350ページから4つの不確実性レベルは、様々な分野で応用可能だと思いました。
あと、教育業界に居た人間としては、「スポンジ力」より「気づく力」というのが、現場にはまだまだ降りてきてないなあ、と思いました。特に小学生とかの中学受験は、これを変えなきゃなあ、と思いました。
読めば読むほど、これから、若い世代に僕らはリソースを割いていきながら、もう一度、立ち上がっていかなければならない、と実感しました。まだ、僕は卒業した大学に寄付できるような身分ではないですが、これに近いことが出来ないかを考えています。
2020年4月現在、僕らが向き合っている敵は、「シン・ゴジラ」よりも厄介で、姿が見えません。あの映画の政府は、全員がベストの選択をしていきながら、ゴジラを倒していきました。今の日本政府にあそこまでを期待するのは難しいですが、僕たちのレベルでこれからの世代に残していける試みがないか、この本を読み終わった後、思考しました。
少なくとも、僕がこれから働く業界では、若いクリエーターたちが活躍できる場、いや、枠を設けられないかを考えてみたいと思っています。
先日観た落合陽一さんとの対談で、「withコロナ」という言葉を安宅さんは出されていました。これから先まだまだ続くコロナとの関わり方を考えさせられました。
話をSKE48に戻すと、これからの時代を進んでいく9期生や10期生たちは、様々な形でSKEが関わるメディアの活用方法を更新しています。
「接触」しなくてもサイン会が出来る、ブログは書き方次第でミメーシスを生む。COVID-19時代で何組のアイドルが残るか分かりません。
ただ、これからSKE48が生き残っていくために必要なことは何か、新しい生き残り方は何かを考えていくフェースが来たのかもしれません。
色々と話が広がりましたが、この本を読んで、「そうだよね」で終わったらダメだと思います。政府レベルの力やルールを作る力はなくても、自分の会社やコミュニティーの中ではできるのではできないか。特に中間管理職やその上の立場が多い、僕たちの世代は。
僕が大好きな映画「メランコリック」の松本の台詞を引用して終わります。
危機的な状況に陥った主人公の和彦が、殺人をするしかないと提案した殺し屋の後輩の松本に賛成した時の一言です。
「ノリで賛成すんなよ。どうせ、全部俺がやってくれると思ってるんでしょ?」
※おススメの映画と本「遅いインターネット」についての記事はこちら!