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2020年12月13日日曜日

ずっと「変わり者」でいたい

1477年を待ちながら


 
 社会学者の東浩紀が著作の「弱いつながり」の中で、我々が毎日Googleで検索する言葉が、徐々に決まっていき、広大なインターネット環境で自分の選択肢を狭めているのでは、ないかという始まりで、かなり衝撃を受けたのを覚えています。
 東さんの提案としては、検索する言葉を変える為に、旅に出ることを例の一つに書いていたと思います。検索するワードが必然的に変わっていくわけですね。
 また、批評家の宇野常寛は、著作「遅いインターネット」の中で反射的にSNS等で反応するのではなくじっくりと考えることや、「ネットサーフィン」の面白さを再考し、質の高いものをweb上に置いて行くことを書いていました。
 さて、なんでこの2つの例を挙げたかというと、最近の僕はこの2つの考えと相反することばかりしているからです。
 どんなことをしているかというと、Googleの画面を立ち上げると、「SKE48 ブログ」というワードで検索します。特に夕方頃からは頻繁に。
 そして、探していた文字を見つけられずに、そっと画面を閉じます。

 SKE48の10期生、五十嵐早香のブログ更新が止まって2週間が経ちました。showroomの配信も止まってしまいました。モバメを取っておけば良かったんですが、丁度、10月末に仕事が忙しくなった頃に、「読む暇がないよう」と有料のモバイルメールを解約してしまっていたんですね。
 で、この2週間、五十嵐早香について何度も書こうとして、僕は書けなくてボツにしました。毎週のように更新されていた公式ブログについては、色々と広げられても、具体的にどんなことを掬い上げて書けばよいのか?
 ブログが面白いことなんて、SKE48ファンの方からしたら、流石に1回は聞いたことがあるのかも知れませんし、外見に関することは僕の主観が強いので説得力がないなあ、と思いましてね。
 ぼんやり、「1たす1は2じゃないよ!」の動画を観て、何を書こうかと考えましたが、思いつかないまま12月になりました。

 

 その間も他の記事を書いたり、「5つの視点」の記事のようにいくつかの視座を設けて考えてみましたが、五十嵐早香に関しては「あれ?新しいこと書けてるか?」という疑問がありました。

 そこから、ポツリポツリとたまってしまっていたモバイルメールや見逃していたshowroom配信をチェックしていきました。幸いと言っていいのか分かりませんが、今、ゴリゴリの無職なので、お金はありませんが時間はあったので、毎日、少しずつ消化していきました。
 モバメの明るい文面や時々、怖い写真。
 showroomは映像だけなので、観に来たファンの方々がどんな質問をされたのか分からないものもありましたが、様々な衣装を着て配信を盛り上げようとする彼女の姿がありました。
 それぞれのメディアの日付を見ながら、「あっ、この頃は本社への新規事業のプレゼン用に色々と調べて試算とかしてたなあ」とか、「この頃から終電で帰るのが当たり前になってたんだよなあ」とか「この日に僕は倒れたんだ」とか、当時の自分の状況を思い出していました。

 やがて、2020年9月19日の配信になります。
 彼女の誕生日の配信でした。
 手紙を取り出すと、制服のコスプレ姿の彼女は「照れるなあ」とはにかみながら始めます。
「皆様のおかげで、こういう…こういう感じですけどね。SKE48に入って初めて、誕生日を今日、迎えることができました。
 おかげさまでね。19歳を迎えることができました。19回目ですね。正直、こんなに色々な方々にね、自分の誕生日を祝われるというのは、人生で初めてです。
 (中略)12歳を迎えてからは、毎年毎年、誕生日という日がだんだんと特別ではないものになってしまっていたので、こうして、改めて自分の誕生日を実感するのはなんだか久しぶりで、不思議な気持ちです。まさか、19回目の誕生日がこんなに特別な日になるとは思いませんでした。そして、今日は、私は皆さまに謝りたいことが2つございます。
 まず、1つ目は、なかなか配信が出来ていないことです。これは皆さんもお気づきの方もいらっしゃると思いますが、ここ数か月、配信の頻度が減っていることです。
 皆さんとのコミュニケーションの場が、今はここしかないので、本当に…申し訳ないです。
 そして、2つ目は、まだ1回しか『青春ガールズ公演』に出れていないことです。なかなか目に出せる成果を出せていないので、応援してくださっている方々に申し訳ないと思います」

 ここから先の手紙は切れており、彼女も何を書いたか覚えていないそうです。
 それでも彼女は続けます。

「そして、きっと、この2つのことの原因は同じもので。私がレッスンに充分についていけていないからだと思っています。特に今、12周年公演へ向けて、レッスンでは周りの遅れをとっていることは、自分の目からも明らかです。
 ですが、今日まで、こうして続けられています。何時間も何時間も、同じミスを繰り返し続けて、頭も腕も足もパンパンになり、昨日とさほど変わらぬダンスを先生の前で踊り、怒られても続けられています。 
 ですが、こうして続けられている理由は、一つで。皆さまが、応援して下さる皆さまが、居るということです」

 そして、これからは書いていんですが、覚えているので、と改めて宣言して言葉を続けます。読むのではなく、思い出して自分の頭で新しい文章にしていく。

「私には2つ謝らなければいけないことがあったのですが、10個、感謝させていただきたいと思い、感謝をさせていただきたいことがございます」

 「一つ目は…」と言いかけてやはり、「書いてないな、でも、沢山あるんですよ」と語りかけます。

「まずは、こうしてね。あの…ゲリラ配信にも深夜の配信にも、駆けつけてくださって、ありがとうございます。そして、へへ、凄いあのミラーボールとかめちゃくちゃ、あの、悪ノリしちゃったりしてるのに、盛り上げてくださって。本当にありがとうございます」

「あと、変な歌も皆さま聞いてくださって、ありがとうございます。それから、あのブログも毎回毎回読んでくださって。メールとかにも、感想とか送ってくださって、ありがとうございます」

「それから、いつも私を笑顔にしてくださってありがとうございます」

「いつも…いつも…私のことを沢山沢山、笑わせてくれてありがとうございます」

「色んな、わがままとかも付き合ってくださって、ありがとうございます」

「寂しがりな、私に構ってくれてありがとうございます」

「私の…人生を…変えてくれて、ありがとうございます」

「そして、私を応援してくれて、ありがとうございます」

「本当に、こんなにきちんと、お礼をするのって、多分、去年の12月のオーディションの結果が出て、お礼配信以来だと思うんですけど。ねっ、なんか、改めて言うのも恥ずかしいんですけど。本当に皆さまには感謝していまして。
 あの…もう…私が…続けている理由は、一人でも応援して下さる方がいるからなんですね。まあ、私にとっては…応援してくださる…方の人数も関係ないですし、別に応援してくださる方がいなくても、私は、アイドルとしては、どんな形であれより多くの方々に楽しんでいただければな、と思ってたんですよ。目にゴミが(笑)」

 「ただ、こうして、こんな、ねえ。私みたいなのに、ねえ。私みたいなのを応援してくださる方がねえ。応援して下さる。ちょっと変わり者な方々が、いらっしゃって。ホントに私と似てる方々じゃないですけど。私みたいちょっとに変わってる方がいらっしゃって。応援してくださる方がいらっしゃるので、何でしょうね」

 「いざ、受け取ると、応援を。それを失うのが怖くなってしまって。
 正直、応援してくださって嬉しくなってきちゃって。
 嬉しくて嬉しくてしょうがなくて。
 私は、今、こう、応援してくださっている皆さんを失うのが怖くてたまらなくなってしまったんですよ。
 もう、もう、いいと思ってたのに。
 応援されると、嬉しくなっちゃってですね。
 こんなわがままな私になってしまったんですけど。
 是非、これからも応援よろしくお願いします!」
 
 なんで、僕はこの時の配信観てなかったんだ、と震えました。
 これまでの創作や随筆等とは違った、美しい言葉がそこにはありました。

 彼女のパブリックな発信が止まって2週間。
 年末の研究生公演にも今のところ、出る予定はなし。
 今の僕に出来るのは待つこと。
 それでも、僕は彼女を応援する「変わり者」でいたいと思います。
 
 AKBブームの頃、ある精神学者の方がアイドルを応援するメンタルの裏には「ありがとう」と言われたい欲求や承認されたい欲求があると語っていました。
 でも、「ありがとう」とか「承認」とかいいんです。されたら勿論、嬉しいんですけど、それだけじゃないと僕は思います。
 彼女たちの努力する姿や、才能が開花していくまでのドラマを間近で観る楽しみがあります。そのドラマは時に残酷であり、時に甘美でもあります。
 SKEをよく知らない方々からは「あなたは、時間とお金を投資する場所を間違えている」と時々言われます。
 「でも、考えるの好きですから…」と頭をかきながら僕は答えます。
 彼女たちに「嬉しさ」を味わわせてしまったのなら、ちゃんと最後まで責任を持ちたいなあと、無力ながらも思っているからです。

 自分の推しが今、戻ってこようとしてくれているなら、待っていようと思います。
 僕は離れずに「変わり者」の一人として。
 きちんと理解できているか分かりませんが、同じ「変わり者」理解者として。

 多分、今日もGoogleを開いて、彼女のブログを探すでしょう。どんなにネットの海が広くても、まず、海に出る前に。
 彼女のあの文章が帰ってきた瞬間を期待しながら。

 大丈夫、僕、SKE48ファンだよ?
 待つのには慣れてるんだ。