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2020年12月15日火曜日

声を集めて、別の声を聴いて

 そこの役割は今


 AKB48グループの人気の背景には、インターネットがあったことがあったことは、多くの社会学者や芸能界の専門家たちによって語られてきました。当時の「2ちゃんねる」で沢山のスレ画立ち、運営も意図的にその流れをくみ取り、企画にも反映していた面白さがあるそうです。「そうです」と伝聞の形で書いたのは、僕自身は、直接初期のAKB48の流れを体験していないからです。
 そこから、徐々にAKB48はメジャーへと階段を登っていきます。
 僕自身も「マジすか」をきっかけにAKB48にハマり(宮澤佐江ちゃん推しでした)、ううむ、何か情報収集をしたい、と思いましてネットの海に飛び込んだものです。
 その中で、個人で一人のメンバーにスポットを当てたブログを書いている方もいらっしゃれば、「2ちゃんねる」からのスレをまとめた「まとめサイト」もゾクゾクとエントリーを続けていました。
 その中で「AKBまとめんばー」を知り、そこから徐々にSKE48のまとめサイトの「エンクラ」へと僕は流れていきます。

 で、この頃の「まとめサイト」の影響力はなかなか大きかったのではないか、と僕は感じています。わざわざアンチ的な内容を中心にまとめたサイトも出てきましたし、コメント欄は罵詈雑言の嵐というところもありました。

 勿論、「エンクラ」だって、答え合わせ的にコメント欄を2020年の僕が読んでみると、めちゃくちゃ事情通気取りのコメントもあれば、コンサートのコメント欄で嘘を書いている人(卒業メンバーが名古屋ドームに登場など)もちらほらいます。

 ただ、2012年前後にファンになった僕は、職場にAKB48について同じ知識量で語れる人は居なかったですし、SKE48についてもダブル松井については知っていても、2次元同好会って最高だよね、という話ができる人はいませんでした。
 ですので、スマホの画面の中で繰り広げられる「1日1人について真面目に討論スレ」のまとめなんかを読みながら、「ああ、そこ分かってるねえ」とか「そういう見方もあったんだ」とインターネットの集合知的な楽しみがありました。
 当時のエンクラのおかげで、松村香織という人の楽しみ方を存分に味わったとも思っています。
 伝説の「明日の速報には柴田阿弥が入る。この名を覚えておけ」もありましたしね。
 そして、2014年の2月の名古屋ドームに向けて、ファン発信でのオレンジのサイリウムの海と「SKE48コール」こそが、ある意味、その完成形だったのではないかと思っています。

 しかし、大組閣で潮目が変わり、「エンクラ」は閉鎖しました。
 サイト自体は残っており、僕なんかは記事を書く時に大変参考にしております。特にGoogle+のアーカイブとしてはかなり優秀だと僕は思っています。
 SKE48ファン自体も、この辺りから徐々に坂道に流れていきます。
 先日、愛聴している「アフターシックスジャンクション」のポッドキャスト配信の中で、ライターのガイガン山崎さんが語っていた、「僕らの世代なんかは、『VSゴジラ』シリーズはクラスの男の子ほとんど見ているっていうところから、えっ、ミレニアムシリーズ観てんの、俺とあいつとあいつしかいないぞ?」という潮目の変化が48グループにも来始めていたのかも知れません。

 僕の周りは「知っていた人」の方が多くなっていきました。
 また、東北の震災以降のTwitterの登録者数が増え始め、声を聴く側から声を出す側の人が増えていきました。
 僕自身は、中西優香卒業からゆるーく下がり始め、8期生の岡田美紅が加入するまで、ゆるーくSKE48と付き合っていくことになります。「前のめり」リリースとか、「アイドルの涙」公開とか、要所要所で熱くなるところはあったんですが、「まるで透明になったみたい」というヒビキさんを呼びたくなるモチベーションだったんですね。
 なんとなく、「まとめサイト」を見るのも面倒になってきて、仕事が忙しくなってきたこともあり、SKE48より河出書房から出ている「世界文学全集」と「日本文学全集」を読破する方が価値があるような気がしてきて、優先順位が下がり始めるんですね。更に、文学と民俗学から社会学へと興味が映り始めて、社会学者の方の著作に出てくる映画を片っ端から見始めて、さらにモチベーションが下がっていきます。

 2017年に、岡田美紅の加入によって再びSKE48熱が熱くなるんですが、思いのほか各サイトに取り上げられることが少なくてですね。徐々にモノマネなどで取り上げられていくことになるんですが、2018年の総選挙ランクイン等を含めて、ううむ、何か他人の声を聴くだけでは面白くないと思うようになりました。

 やがて「まとめサイト」が「ニュース」や「新聞」的な「早く」てあまり再読されない分野のものだとしたら、僕はより「遅い」メディアを作ろう、じっくりと読んで考えるようなずっと覚えてもらえているような記事を書こうとブログを始めました。
 そして、「まとめろぐっ!」さんの「寄稿記事」を読むのが面白くなってですね。
 哲学者のジル・ドゥルーズが、「農耕馬と競走馬の間には、牛と農耕馬の間よりも大きな相違がある」と書いていましたが、競走馬が周囲の環境に応じて「速さ」を求めて生きているのと、農耕馬や牛が濃厚の為に動くように、何に触発されるのかは自分の置かれた環境によって変わってきます。

 読む側から書く側に回ったことで、「寄稿記事」を書かれる方々へのリスペクトが生まれるようになり、ありがたいことに相互フォローをさせていただいている方もいらっしゃいます。

 勿論、まとめサイトは良いところばかりではありません。
 メンバーやファンの方が読んだら傷つくことを書いたり、根拠のない嘘も多いです。
 でも、僕をSKE48を楽しむための基礎知識やミームを教えてくれたのも「まとめサイト」なんですよね。

 だからこそ、これからもSKE48を取り扱うサイトやSNSは増えていって欲しいですし(特に僕みたいなアプローチのプレイヤーもまた増えていくと面白いと思います)、新たなムーブメントが生まれて欲しいなと思っています。だって、SKE48には、まだまだ面白くなる要素があると僕は信じていますから。