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2021年2月1日月曜日

自分なりの「守り」方で

 あの日見た背中




 誰かを「守る」と誓ったことはあるでしょうか?


 フィクションの中であれば、誰かからの暴力や組織の危機から「守る」ことが挙げられるかも知れません。
 しかし、我々の日常の中で大切な人を「守る」ということは、なかなか見えにくいことです。
 映画「花束みたいな恋をした」の中で、恋人との関係を「守る」為に主人公の一人は「普通」になろうとしますが、それが二人の関係がずれるきっかけになるということが描かれていましたが、「守っている」つもりでも、実は壊していることもあります。
 かように、「守る」ということは難しいです。

 アイドルの世界も同じです。
 グループやメンバーを守っていくというのは、すぐに取りかかれたり結果が出ることではありません。
 かつて、SKE48は松井珠理奈と松井玲奈の2枚看板が、グループの中心にありました。運動場の汗の匂いがする珠理奈と、舞台の汗の匂いがする玲奈、同じ松井でありながら発する光が対照的だったこともあり、それぞれの光に多くの人々が集まりました。
 やがて、時が流れるにつれて他グループの台頭とアイドルブームの終息もあり、徐々にファンの総数は減っていきます。
 それでも、2015年8月末に行われた松井玲奈卒業コンサートは豊田スタジアムで2日間に渡って行われ、松井玲奈の最後を見届ける為に多くのアイドルファンが集まりました。
 この時、「手紙のこと」で一人一人のメンバーに向けて松井玲奈が言った「一人一人がSKE48の未来です」という言葉が非常に印象的でした。
 松井玲奈について古畑奈和は、2015年8月31日のブログで次のように書いています。

https://ameblo.jp/ske48official/entry-12068036605.html

 「優しい手に何度も何度も包まれて引っ張ってもらいました」
 「人見知りなのに仲良くしようと話しかけて」
 「前に立つ人として引っ張り支える人として」

 松井玲奈のことを思いながら、彼女が背負ってきた「荷物」について思いを馳せます。
 そして、自分が支えてもらったことを今度は自分がしていこうと、彼女は誓います。

 SKE48に関しては、前日のブログで書いています。

https://ameblo.jp/ske48official/entry-12067666930.html

 「守らなきゃ」という気持ちが生まれました。


 この年のリクエストアワーで古畑奈和は、松井玲奈が務めたセンターポジションで「前のめり」を披露します。


 翌年の3月4日。
 宮澤佐江の卒業コンサートが行われます。
 AKB総選挙の選抜常連であり、外仕事の量も多く、SKE48には貴重な女性ファンも引っ張ってこれる魅力的なメンバーでした。
 彼女がMVの画面に出てくるだけで、華やかさが出る貴重なメンバーでした。
 3月4日の古畑奈和のブログを読んでみましょう。
 https://ameblo.jp/ske48official/entry-12135857465.html

 「温かさ」、「安心感」、ベテランメンバーである宮澤佐江がSKE48にくれたものは、ファンである我々よりもSKE48のメンバーがより多く感じていたのかも知れません。
 そういえば、BUBUKAの取材で、宮澤佐江と古畑奈和の優しさが似ていることを指摘されていましたね。

https://ameblo.jp/ske48official/entry-12045112346.html


 思えば古畑奈和は、上記の「前のめり」だけでなく、松井玲奈の「枯葉のステーション」を演奏し、「AKB49」を宮澤佐江に次いで主演を担当します(特に『君はペガサス』の世界観があんなに似合う人はいないと思います)。
 サックス演奏という新しい汗の匂いと、上記の二人に通じる表現力。
 古畑奈和という人ならではの魅力と、二人の偉大な先輩たちの素晴らしい点を彼女は別れと共に再認識し、吸収していきます。
 そして、2016年の総選挙が近づいてきた5月12日。
 残された松井珠理奈への想いを古畑奈和は語ります。

https://ameblo.jp/ske48official/entry-12159730736.html

 「珠理奈さんを守りたい」、「背負っている荷物を少しでも私に持たせてもらえたら」、後輩ながらも抱きしめた珠理奈の背中。彼女にかかった負荷と自分も気づけていたらという後悔。
 松井玲奈にも宮澤佐江にもなれないけれど、自分のやり方で珠理奈とSKE48を「守る」。
 ワクワクさせてくれる、夢を与えてくれたグループを守る。
 思えば、2015年の総選挙での彼女のスピーチは、まさにこの言葉と繋がりますね。
 ただし、まだ彼女はもう一皮むける過渡期の真っただ中でもあったので、早くグループを守れる存在になりたい気持ちと自分の現状を比べて、もどかしい気持ちもあったのではというのも微かに感じます。

 やがて、2017年。
 松井珠理奈の代わりに単独センターとして小畑優奈が選ばれます。
 ゆななのフレッシュな魅力は世代交代を予感させるものでした。
 個人的には、この2017年が来る前の「金の愛、銀の愛」で古畑奈和センターという選択も面白かったのではないか、と思っています。彼女の当時の想いともう一押しとしてセンターという選択肢があれば、もう少し早く珠理奈の荷物を一緒に持ち、未来は変わっていたのかな、とも考えたりもします。

 2019年、古畑奈和はキャリア8年目にしてセンターになります。
 松井珠理奈も雑誌のインタビューで「奈和ちゃんなら安心して任せられる」ということを語っています。
 正直、8年目でセンターということに対して、早い遅いという認識は人それぞれですが、総選挙で2回の選抜入りという結果を出した説得力がありました。そして、彼女なら大丈夫だという「安心感」も。
 そこから、グループを守るためにセンターだった珠理奈の分まで彼女はメディア露出していきます。レギュラー番組も始まりました。ソロの楽曲も増えて行きました。勿論、全盛期ほど外仕事はありません。それでも、センターとしてマイペースながらも、決めるところは決めて(特に対外試合)グループを「守って」いきました。


 この記事を書いているのは、2021年2月1日の夜です。
 明日の朝から、松井珠理奈の卒業シングルが全国の店頭に並びます。
 SKE48の象徴であり、多くの荷物を背負っていた人。
 名前の無い悪意に傷けられ続けた人。
 誰よりもグループを愛していた人。
 あの日見た背中は、今、奈和ちゃんにはどんな風に見えているんでしょう。
 そして、いよいよ、本当の意味でSKE48を「守る」期間がこれから始まります。
 珠理奈を見送る古畑奈和の背中を今度は、どの後輩が見つめているのか。
 あの日の奈和ちゃんの気持ちを、後輩もきっと感じるのではないかと思っています。
 ずっとSKE48と大切な人を「守って」いって欲しい。

 今夜は「前のめり」を聴いて寝たいと思います。