闇に魅入られる瞬間
以前、ブログでカラスヤサトシさんの漫画をお勧めしたんですがね。
※詳しくは、こちらをチェック!
https://oboeteitekure.blogspot.com/2019/04/blog-post_16.html
彼の新作、「いんへる」のが発売されました。
カラスヤさんと言えば、愉快なエッセイ的な4コマが有名で、僕は彼の日常生活を読むことで、特撮や時代劇が好きな自分に自信が持てたという、ある意味、恩人的な方なんですね。
この方、実はフィクションがずばぬけて面白いんですね。
「強風記」も「おとろし」も良かったんですが、今回の「いんへるの」も良かった。
※ここからは、ネタバレ全開で行きます。
もう全編いやあな感じの終わり方をするんですね。
もう、カラスヤさん、よくこんなの思いつくな、と思うぐらいのね。
特に僕は「落下節」が印象に残ってましてね。
他の話は、登場人物の心情の変化が起こることが多いんですよね。プラスからマイナスへとか。でも、この話だけ、更に深いマイナスへと進んでいく感じが恐ろしいんですよね。「これはいよいよやめられぬ」という最後のセリフの怖さ。
それから、「手足尻髪」と「まがざる」がリンクしているように家の絵から感じましたよ。
で、この本の表紙にもなっている「大人形」。
すごい不吉。
もう、本棚に置いといて大丈夫かなと不安になりますよ。
最後の「大人形は今も立っている」が怖すぎる。
それから、「狼の祀り」。
これも印象に残ってまして。
僕のふるさとでは、節分の夜に豆をティッシュにくるんで、四つ角に捨てに行く風習があるんですが、それを思い出しましたよ。
思い出されることで復活するという発想は、面白かったですね。
人間のずるい部分や弱い部分、少し狂った部分、全部味わえる。そして、そんな世界に惹かれてしまう人間にはたまらないです。
「春を見る」とかは、凄く純文学的な話で、カラスヤさんには、是非こっちの分野も読ませてほしいなと思った作品集でした。