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2020年7月7日火曜日

おすすめの映画と本「テロルンとルンルン」

美しい一言

 皆さんは、一度だけ観てずっと心に残っている映画はありますか?
 子供の頃に観て、ずっと印象に残っているものもあれば、2回目を観ることで感動が消えてしまうのが嫌でその感動をずっと大事に残しているもの、様々だと思います。
 僕の場合は、2019年の秋に京都国際映画祭で観た「テロルンとルンルン」がそれで、多くの人にこの素晴らし作品を観てほしい反面、もう一度自分で観て、何も感じなかったらどうしよう、という怖さもありました。
 そして、7月5日。
 mu-mo LIVE THEATERの「STAY HOME MINI THEATER」配信でもう一度見直しましてね。

 あらすじを知っていて観てもやっぱり素晴らしい作品でした。
 まだ、7月9日と12日に配信があるので、詳しくは公式HPやTwitterのアカウントをチェック!
 個人的なことですが、12日は僕の誕生日。
 いつもブログの方やnoteを読んで、応援してくれているフォロワーさんたちにプレゼントをねだるとすれば、この映画を観て欲しいです。
 「テロルンとルンルン」の話が出来る人が世界中に一人でも増えることが僕への最高のプレゼントだと勝手に思ってます。
 予告はこちらをご覧あれ。



【ここからはネタバレありで書きます】
 前回は映画館の中で観たんですが、今回は自宅で観られたので、メモを取りながら観てみてました。
 
 まず、開始から美しい風景が映っているんですが、僕は静かな学校のシーンが好きで紫色に光がさしている水飲み場や校舎が印象的でした。
 場所に関していうと、類が引きこもっているガレージの窓が印象的で、スムーズに開かない窓やカーテンがまさに類と外界との関係を象徴しているようでした。
 そして、アナログな感じのものが多いガレージの外は、人の噂で満ち溢れていて、デジタル空間の中で彼に関する嫌な噂が広がっていました。で、そのサイトの名前が「Tahoo!」だったのが、ちょっと面白かったです。
 誤解から新しい噂が広がっていき、瑠海が傷ついていく過程もすごくリアルでした。言葉に出せないからこそ、家族ともうまく理解し合えない辛さ。本当に類と瑠海の関係を理解しているのは、観客だけ。類にも瑠海にも父親が居ないというのも印象的でした。
 瑠海から修理を依頼されたサルのおもちゃの部品が足りない、というのが、世の中との関係でどこかが欠けてしまった彼自身のようでもあります。でも、類も瑠海も自分から望んでそうなったわけではないのに、周りから誤解されやすい生き方になっているのがなんとも切ないです。そんな二人だからこそ、惹かれ合ったのかも知れません。
 部品が無くて一度は諦めかけたものの、それでも、もう一度チャレンジしていく場面も良くてですね。少しずつ類の中で変化が起こっているのも印象的でした。そして、直した時の嬉しそうな顔。食事シーンを美味しそうに食べ始めた後の、やりきれない涙。
 外に出たくても、まだ出る勇気がない。
 彼が発した「お前、今どこおるん?」という台詞も凄く良かったです。
 最後の引っ越しする朝のシーンが最高でしてね。
 日食なつこさんの「vapor」が流れる中、類が走るシーン。
 多分、引きこもっていた類からしたら、走るという行為自体が久しぶりであんな動きになったと思うんですが、「届けたい」という思いが凄く伝わってくる良いシーンなんですよね。
タクシーの窓越しに直ったサルのおもちゃをみせる類。
 窓越しに「ありがとう!」と言葉を発する瑠海。
 見上げた太陽を見て、「こんな眩しかったけ?」と呟く類。
 ここで物語は終わるんですが、類の手にはサルのおもちゃが残ってるわけです。ここから、二人がどうなるんだろう、という未来を色々と想像させられます。
 アフタートークで宮川博至監督が仰っていましたが、「良い映画って何だろう?」という問いに対する、一つの答えがこれではないでしょうか。無駄なものをそぎ落とし、表情や動きが中心である。だから、こそ彼らが発した言葉がキラキラしている。
 エンディングテーマのおとぎ話さんによる「少年少女」という曲の歌詞の中で印象的なのが、「生きるのをやめた僕が赤い目をこするよ」というところと、「出会いと別れを繰り返しながら」「おとぎ話の結末の先」というところ。まさに、二人の物語にぴったりな感じがしました。
 やはり、2回目で観ても面白い。
 この作品はクラシックになりうるんじゃないか、と僕は思っています。
 国を越えても認められていることは勿論ですが、あと30年ぐらいして見直しても、心の中の大事な場所に置いておきたい映画だと思っています。