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2019年8月17日土曜日

おすすめの映画と本「イソップの思うツボ」



家族の崩壊と再生と出発


 ※「カメラを止めるな!」のネタバレにふれてます。また、途中から本作のネタバレにもふれています。

 2018年は「カメラを止めるな!」ブームでしたね。
 なかなか劇場で観ることが出来なくて、満席の中で劇場が笑いに包まれながら観たのは良い思い出です。
 さて、「ハリウッド大作戦」の方はまだ追えてないんですが、先に「イソップの思い通り」を観てきましたよ。
 予告編はこちら!



 パンフレットは亀の甲羅のデザイン。
 3監督の対談が充実していて、もう一度観たくなること間違いなしの出来です。


 でね、「カメラを止めるな!」があまりにも良かっただけに、今回もハードルを上げまくって観た人も多いと思うんですよ。よーし、騙されるぞ!多分、凄まじい大どんでん返しなんだろうなあとか、想像しながらね。僕もまさにその一人でスターウォーズエピソード1の予告でテンションを上げまくって当日を迎えたファンみたいにワクワクしながら観に行ったんですよ。
 結果から言うと、「まあ、びっくりはしたけど…」みたいな感じなんですね。
 劇場を出て、映画好きのお友達に感想を連絡し合いながら、ふと、何か観るべき軸がずれてるんじゃないか、とパンフレットを読みながら思いましてね。
 この話は「カメラを止めるな!」みたいな構成や何かが出来上がっていくまでの情熱で勝負するんじゃなく、別のもので勝負してるんじゃないかと思いましてね。

 【ここから、本作のネタバレ】

① 家族という軸がはっきりしている。

 「カメラを止めるな!」でも親子のドラマがありましたが、本作では3つの家族を登場させることで、それぞれの家族が抱えている問題点を浮き彫りにしていきます。

 亀田家は、亡くなった母のこと。
 兎草家は、両親の不倫。
 戌井家は、血がつながっていないこと。

 作品の中で、どの家族も問題を抱えつつも最終的には、前を向いていくというのが良くてね。僕は特に戌井家が好きで、血のつながらない親子が血のつながっている親子以上に互いを思いやってるんじゃないかな、と。多分、本作では描かれてないけど、あの後、フランスに留学したあの子は、スマホで撮った連太郎さんの動画を観るんだろうなあ、とか想像させられましたよ。

 ② 一人一人の登場人物のキャラが凄く良い


 「カメラを止めるな!」は、とにかく個性の強い登場人物たちが、出てきましたが今回も個性的な登場人物が登場しましてね。前作よりも登場人物数を減らしたので、より一人一人の個性が際立ったんじゃないかな、と思います。
 特に前半の亀田美羽さんは、観ててこっちが応援したくなるキャラでしたし、八木圭佑さんの「いるいるこういう眼鏡男子」っていう感じも良かったです。だからこそ、後半の変身ぶりが効いてくるんでしょうが。
 僕は一番、戌井連太郎さんが好きでね。
 身体に傷を残しながらも、血のつながらない娘のために生きるというハードボイルドな設定が良かったです。演じる斉藤陽一郎さんもよくてね。特に困ったような顔をする時とここ一番で決めるカッコいい顔は最高でした。
 ヤクザチームの皆さんとか、本当に良い顔の人が多くて、怖いはずなのに、なんでこんなクリエーター気質なんだよ、ちゃんと脚本まで作ってと、笑いそうになりました。

 ③ なんだかんだで驚かさせられる


 そりゃね、金髪の子が亀田美羽さんだってことは、なんとなく分かりましたよ。でも、皆さん完全に読み切れた人っているんですかね。一つ情報が提示される度に「えっ、てことは…」の連続でした。亀田家の男性メンバーの表情の変わりっぷりも好きでした。あと、翻弄される兎草早織さんも良かったですね。

 ④ ラストシーン

 
 兎草家族が、なんとなくうまく再生されたり、戌井小袖さんに1000万円が渡ったりいことずくめの中、亀田美羽さんの最後のセリフ「ゆっくり生きていく」からのエンドロール後の亀の姿。
 兎のように要領がいい生き方じゃないかも知れないけど、ゆっくり前に進んでいく終わり方で良かったと思います。

 他にもあの印象的なBGMも良かったり、北野映画でよく観る桐生コウジさんが出てるのも嬉しかったりしたんですが、是非是非、劇場で3つの個性が交わりあう科学変化を観て欲しいなと思う一作です。