選ぶのは君だ VIDEO
2014年4月4日、さいたまスーパーアリーナ。 神奈川県に居た一人の少女は、サイリウムの海の中にいました。 彼女自身もサイリウムを振る一人として。 舞台を見上げる瞳は、どんな未来を見ていたでしょう?
それから約4年後。 2018年3月31日、さいたまスーパーアリーナ。 少女は、観客席より背の高いステージから、輝くサイリウムの海を見下ろしていました。 SKE48のドラフト3期生のセンターとして。
彼女の名前は西満里奈。 2018年1月にドラフト3期生としてSKE48にチームEのメンバーとして加入します。 ドラフト3期生は、これまでのドラフト生たちと違い、SHOWROOMを用いたファンからの指名も加わることになりました。 自分の運命が世界中の48ファンに中継されるというのは、なかなか凄まじい話ですが、ドラフト候補生になるまでの厳しいプロの方々から選ばれて、今度は目線が違うファンの方からも選ばれるという、アイドルの世界につきまとう「選択の世界」の厳しさに彼女は足を踏み入れます。 元々、AKBのファンだった彼女は、これまで見てきたイベントで、アイドルの世界の厳しさを見てきたと思います。総選挙、握手会の券、ゲーム、雑誌のアンケートからフォロワー数、様々な媒体でファンは時間やお金を使うメンバーを「選択」します。 彼女は、選ぶ側から選ばれる側になることを選択します。
それは、勇気のいる決断だったと思います。 しかも、神奈川に住んでいる彼女が目指したのは、愛知県にあるSKE48。 いったいどうやって通うのか? 就職先としてアイドルはやっていけるのか? さまざまな不安を振り払うように、名古屋に旅立った彼女は、着実に経験を積んで行き、2018年の9月16日の「リクエストアワー2018」研究生から正規メンバーとして、チームEに昇格します。大舞台や初めての総選挙、リクエストアワー。かつて、ファンとして観戦していたガイシホールや名古屋ドームでも歌って踊ることもできました。
2019年1月24日。 彼女は初めての生誕祭を迎えます。 その夜の公式ブログでは、「親に内緒でオーディションを受けた」ことが語られます。 生誕祭の時に読まれたご両親の手紙を読んでみましょう。
「満里奈へ
19歳のお誕生日おめでとう。
満里奈がSKEのメンバーになりたいということを初めて知ったのは8期オーディションの時でした。
この時、父は「絶対に受からないから思い出作りに」くらいのつもりでした。
それから1年後、ドラフトで最終候補者に選ばれ、そしてファンの皆様からも選ばれて、2018年1月21日にSKEのメンバーになることが決まりました。
しかし、何も分からない中、神奈川から名古屋に行くということは満里奈にとってだけではなく、家族にとってもそんなに簡単な選択ではありませんでした。家族でたくさん話し合いました。
でも満里奈の人生ですから、満里奈が選ぶべきだと思い、送り出しました。
この1年間、自分が選んだ道はどうでしたか? 楽しいこと、つらかったこと、色々あったと思います。もちろんたくさん努力してきたことも知っています。
でも、忘れてはいけないことは、満里奈が選んだ道はファンの皆様がいたことから選ぶことができたということです。それは満里奈自身が一番わかってると思います。
そして、満里奈は「単にアイドルになりたいのではなく、SKEになりたい」と言って、この道を選びました。
SKEのメンバーとして悔いの残らないよう精一杯やり、応援してくれている人たちに恩返ししていってください。
最後になりますが、ファンの皆様へ。娘の応援をいつもありがとうございます。娘が頑張れているのは皆さんのおかげです。まだまだなところがいっぱいな娘ですが、これからも応援をよろしくお願いします。
チームEの皆様へ。いつも娘がお世話になっています。今後もご指導よろしくお願いします。
スタッフの皆様へ。いつもありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします。
父母より」
何度も行われた家族での話し合い。 それでも単にアイドルになりたいのではなく、SKE48になりたいという青い地平線のように真っすぐで大きな夢。 最終的にご両親は、彼女が「選んだ道」の後押しをしてくれます。 この日の生誕祭で、「皆さんに指名して良かったって言って頂けるように、西ちゃん推してて良かったって言ってもらえるように、これからも頑張っていきたいと思いますので、これからもよろしくお願いします」とSKEファンや西さんの推しの方々に呼びかけます。
そう、2019年から西さんの「選択」の物語は少しだけ加速していきます。 2月には香港の「C3AFA HONG KONG 2019」、4月にはラグビーワールドカップ関連のイベントのメンバーに選抜されます。さらに8月には新たなユニット「カミングフレーバー」のメンバーにも選ばれ、SKE48とは違う文脈を作っていきます。 運営が少しずつ彼女の実力を計る物差しを、少しずつ大きなものに変えて行っている感じがします。 中でもカミングフレーバーというユニットの存在は大きく、ドラフト3期の同期も全員入っていますね。そういえば、2019年の生誕祭の夜の公式ブログに戻ると、彼女は「同じ夢を持つ仲間に出会えたこと」をオーディションを受けて嬉しかったことに挙げていました。 2020年の1月25日に行われた生誕祭でも、「カミングフレーバーに入ったこと」を挙げていました。そして、携帯ゲームのイベントでファンの方々と獲得した「紙兎ロペ」のことを挙げながら、ファンの方々が支えてくれたことを語ります。これは1年前のご両親の手紙の言葉とも繋がりますし、ずっと変わらない感謝の気持ちを持っているからこそだと思います(ずっとやりたかったスキーの仕事ができたことも語っていましたね)。ここから、更に彼女の可能性が広がっていくのでは、と期待が持てる生誕祭でした。
この時、読まれた同期の平田詩奈の手紙を読んでみましょう。
「西へ
20歳のお誕生日おめでとう。
西と初めて話したのはドラフト会議当日。チームEを志望していて、同い年だし、話してみたいなって思ってたけど、なかなか話しかける勇気が出なかったのを今でも覚えています。
でも本番前のSHOWROOM配信で西から話しかけてくれたよね。嬉しかったなぁ。
あの時の自分は少しでも西に追いつかないとって思っていました。だから今こうして同じチームで一緒に活動することができていて、とっとも幸せです。
西はイベント事が近くなると『自分は覚えるのが遅いから』って、夜遅くまでレッスン場に残って練習している姿に『自分ももっと頑張らないと』って刺激を受けます。
泣きながら練習してた時もあったよね。
初めてのMV撮影、初めてのカウントダウン公演、初めてのサマーステーション。たくさんの初めてを一緒に経験できて、人生に一度の成人式も一緒に迎えられて嬉しかったです。
西と一緒だったから大変だったことも全部楽しく乗り越えられたよ。
この2年間で一緒に過ごした時間は同期の中でも一番長い気がします。
お互いが空気みたいな存在で、二人でいても全く喋らない時もあれば時間を忘れるぐらい真面目な話をする時もあるね。うざ絡みにもいつも相手してくれてありがとう。
西が隣にいるのはもう当たり前で、いなくてはならない心強い存在です。
色んな場面で助けられてるのに、西が悩んでいる時、上手に言葉をかけられなかった気がします。ごめんね。
何か悩んだ時は一人で抱え込まないで、頼りにならないかもしれないけど何時間でも話し聞くのでいつでも相談してね。
ドラフト3期生とカミングフレーバーの最年長組、これからもお互い支え合って高め合って頑張ろうね。
最後に。今年こそみかん大量に持っていくので、西のお家に入れてください。
大好きだよ。
チームEの平田詩奈より」
同期だからこそ見ていた西さんの努力する姿。 小さな身体から伝わる全力のダンスは、泣きながらも続けた練習にあったんですね。 そして、空気のように親しい存在だからこそ、悩みも分かちあいたいという平田さんの優しさを感じます。そうしたいと思わせる西さんの人柄もあるんでしょうね。
2020年8月末。 カミングフレーバーは単独ライブを成功させます。 この後の、焼き肉に関するエピソードは本当に面白くて、まだご存じない方は是非是非検索してみてください。こういう一面もあるんだな、と笑うと共に、カミフレ単独の思い出を大事にする気持ちも感じました。 更にカミフレは単発で終わらず、年末には「AYAKARNIVAL2020」、年明けにはSUPER☆GIRLS「カミングフレーバーとツーマンしようぜ!」にも出演。普段と違う環境、違うファンの方々の中で、歌ったり踊ったりすることで、より成長していきます。
2021年2月15日。 西さんは、同期の平田さんと共に3月25日、26日に卒業することを発表します。 上記の2021年1月までの活躍ぶりから、彼女の卒業を予想できた人は少なかったのではないでしょうか? この夜の公式ブログで様々な人との出会いを彼女は「一生の宝物」と表現します。 自分を支えてくれる人達、そして、大切な仲間たち。 多くの人に愛された彼女の卒業公演では、同期が終結するんですが、その前にこの公演で読まれた、西さんのことを慕う後輩からの手紙を読んでみましょう。
「私が加入してすぐ、先輩の出身と年齢を見て同じ方がいないかなと探したら西さんを見つけました。
西さんはドラ3ということで私と一つだけ期が違う方だったので余計に仲良くなりたいと思いました。
今もこの場に立っているチームE公演の2分間MCを初めて担当した時に西さんがいて。初めてだからいつ着替えればいいのか、メイクはいつ入ればいいのかなど何もわからなかったです。でも西さんから声をかけ、すべて教えてくださりました。そこから私が本格的に西さんを好きになったのが始まりです。
後から西さんファンに聞いたら『人見知りで自分からあまり話しかけないよ』ということを聞き、それでも教えてくれた西さんが可愛くて、優しくてもっと好きになりました。
今まで好きになった先輩方とはあまり思い出を作ることができなくて後悔ばかりだったので西さんとは思いでを作ると思い、色々なところでアピールをして、配信やラジオをやらせていただいたり、握手会で同じコスプレをして、私の中で先輩と初めてたくさんの思い出ができました。
本当に優しくて可愛い西さんが卒業することは今でも実感がわかず、信じらないし、言葉でも表せないほど寂しいです。
ほんとはまだいて欲しいと思うし、同じ地元の神奈川県のお仕事も何かしたかったりと、まだまだ西さんとやりたいことがたくさんでした。
これからも色んな場面で西さんを思い出しても泣かずに踏ん張ります。
ファンの皆さんが西さんを大好きという気持ちと同じぐらい私も西さんのことが大好きです。
こうしてまだ好きな先輩の卒業公演に2分間MCで出演できて嬉しいです。
ありがとうございます。
入内嶋涼」
何も知らなかった自分に、優しく色々なことを教えてくれた先輩。 この手紙は入内嶋さん視点で書かれていますが、西さん視点だとどんな風に思っていたのでしょう。ファンの方の言葉を借りるなら「人見知り」の彼女が、自分の内面よりも、先輩として優しく後輩を導いている姿は、カミフレでのお姉さんポジションとも通じる成長を感じます。
次は、卒業公演で一緒に踊った同期の手紙を読んで行きましょう。
「西満里奈ちゃんへ
出会って初めの頃、敬語で話していたのが今では考えられないね。そんな関係になれたこと、凄く嬉しいです。
初めて認識したのはドラフト合宿で最初に泊まった部屋が同じだったとこからで、人見知りで話せる人が少なかった自分にとって初めて話せる人だと思えた西満里奈という存在は凄く大きかったよ。ありがとう
『できない』って言いながらも最後にはやってみせる努力とド根性は誰よりもあると近くにいて感じます。きっとそれはファンの皆さんもわかってくれるよ。
どんな時も西満里奈という人はゆうの中で面白くて、優しくて、最高な人です。だからどこに行っても絶対大丈夫な人だと思ってる。
会えることが少なくなっちゃうのは寂しいけど、同期の特権を使って会いに行きます。なので早くゆうたちをお家に招待してください。
一人ひとりもタイプもバラバラなのに、こんなに一緒にいて落ち着く同期に出会えたこと、幸せです。
ゆうはにしぴ大好きなので、にしぴを一番近くで見守っている西家が大好きです。
新しい目標に向かって進みだす西満里奈をこれからも応援させてください。
何十年経っても、おばあちゃんになってもずっとよろしくね。
まずはゆうの20歳を姉3人で待っててね。
本当に出会えて良かった。
大好きだよ。
西家・平田家、中野家の次女・SKE48チームS 大谷悠妃より」
大谷さんの声が聞こえてきそうな素敵な手紙ですね。 大谷さんも人見知りだったとは…。 ひょっとすると、同じ人見知りだからこそ、相手がしてほしいコミュニケーションが分かるのかも知れませんね。 そして、西さんのやりきる強さも手紙から伝わってきます。
次は、同期の中野さんの手紙です。
「西満里奈ちゃんへ
西くん、卒業おめでとう。
出会ったのは約3年前、ドラフト合宿の時のストレッチでお互いペアが見つからなくて、身長差凄いのにペアになってストレッチしにくかったこと、今でも覚えてます。
最初の頃はあんまりたくさん話す仲じゃなかったけど、気付けば毎日連絡を取ったり、二人でご飯を食べに行ったり、中西というコンビ名を作ってじゃんけん大会に出たり、出会った頃には想像できたなかったくらい仲良くなれて嬉しいです。
ダンスが苦手で振り入れの時に泣いていたり、ライブがある時期は一緒にレッスン場にこもって練習もたくさんしたね。
苦手なりに頑張って、小さい体を誰よりも大きく踊っている姿が本当に可愛くて愛おしいです。
考え方がしっかりしていて、思ったことをちゃんと口に出せて、意外とはっきりしているところは大人でかっこいいなって思ってました。
でも嫌なことは心に溜め込むこともあって、お互い不満や心配事がたまると毎回連絡取り合ってたね。
でも弱い部分を見せてくれたり、伝えてくれることがなんだか嬉しかったです。
自分の意思をしっかり持っていて、周りに流されないところ、気遣いができて優しいとっころ、愛理がイベントに参加したとき一緒にイベントを頑張ってくれたところ、機械に強いところ、西くんにはいいところが沢山あります。
卒業してもずっとずっと素敵な西くんのままでいてね。
改めて卒業おめでとう。
人生一度きり、後悔のない人生が歩めるように祈ってます。
大好きだよ。
チームK2 中野愛理より」
ここからも、沢山涙を流しながらも努力してきたことや、最初は控えめだった関係が、どんどん近づいていく感じが伝わってきていいですね。 中野さんからの手紙は、彼女の頭の良さや意志の強さも伝わってきます。
最後は、一緒に卒業する平田詩奈さんの手紙です。
「西ぴょんへ
卒業おめでとう。
約3年間お疲れ様です。
西ぴょんとは同期で同じチームで、同い年で、そして新しい道へ進む時も一緒。これは運命の出会いだね。
この3年間一緒にいる時間が凄く長かったけど、いつもくだらない話にたくさん付き合ってくれてありがとう。
周りの人にはタイプが真逆で仲良いのが不思議だねって言われることがあるけど、皆が思っている以上になんでも話せて、何でも言える、いい意味で気を遣わなくて落ち着く存在です。
そんな関係になれたこと、お仕事以外の時間でも一緒にいる時間が多くて嬉しかったな。
楽しいことや嬉しいことはもちろんだけど、大変なこと、つらいこともあった3年間だったけど、隣にいつもいてくれたからたくさん乗り越えてこれました。
いっぱいいっぱいで涙を流してる姿を見ることも何度もあったけど、それでも最後までやり切る姿を近くで見てきて何度も刺激を受けて頑張りました。ありがとう。
振り返り切れないほどたくさんの思い出があります。
西に出会わせてくれたSKEに、そして指名してくださったファンの皆さんに感謝してます。
お互い高校の卒業旅行行けていないからSKE卒業旅行一緒に行こうね。
これからも末永く詩奈のくだらない話に付き合ってください。
卒業しても変わらない関係でいてね。
大好きだよ。
チームE 平田詩奈」
もうこちらが言葉を並べるのが野暮なほど、二人の出会いの素晴らしさを感じる手紙ですね。 一緒に過ごしてきたからこそ、色々なことを話して、支えたり支えてもらえたりした。 だからこそ、一緒にSKE人生をゴールできた。 大事な仲間たちと出会えた青春の思い出。
卒業公演で彼女がみた客席の輝きは、どんな風に見えたでしょう? ファンの頃に見た光とは、きっと違うものだったと思います。 それは西さんが選んだ、そして、ファンの方々がくれた、彼女の為だけの青と黄色の特別な光でしたから。きっと、その光は次の彼女の道を照らし続けるでしょう。