笑顔に隠した努力を見せずに
人は人生の中で「やるやらない」を選択するタイミングがあります。
ドキュメンタリー映画「DOCUMENTARY OF 欅坂46 僕たちの嘘と真実」の中で、センターの平手友梨奈さんがライブに出れなくなり、彼女の歌詞の部分だけ誰も歌わないという演出でライブが行われます。
さて、その中で「二人セゾン」の中間のソロダンスを小池美波さんが、平手さんのいない分まで踊るかの選択を迫られる場面があります。踊る踊らないを決めないままライブは進み、いよいよ該当の箇所が来た時、踊り出す小池さんの表情。今まで何度も「二人セゾン」を観ていますが、この「二人セゾン」の美しさには涙が止まりませんでした。彼女は動きだすまでずっと悩んでいたそうです。
このケースは考える時間がたっぷりとありましたが、もし、これが30秒しかなかったら?
先日、行われたSTU48の4周年公演の中で事件は起こりました。
25曲目の「Beginner」という曲が始まるまで約30秒から50秒の沈黙がありました。
直前には、ピアノを担当する兵頭葵さんがキーボードの前に立っていました。そこからの沈黙。
一体何が起こっていたのでしょう?
コンサート後に今村美月さんが配信の中で語っていた内容を確認すると、本来はクリック音が鳴って曲が始まるのですが、クリック音が鳴らなかったそうです。さらに、歌い出しの「昨日までの」の部分もマイクが入っていなかったそうです。
「葵ちゃんに本当に感謝してるし、STUDIO、miniSTUDIOのみんなにも感謝してます」と語っていたましたが、恐るべき対応力。他にも峯吉さんが、愉快にこのトラブルについて語ってくれていましたね(『葵ちゃんステージの上で倒れたか?』という静寂じゃないだろうそれだと、という心配が可愛かったです)。
実際に兵頭さんが語っている配信を確認すると、彼女の中でも一瞬、戸惑いはあったものの音を出す方を選らんだことが分かります。
「クリック音がいつまで経っても鳴らなくて、『これヤバい』『イヤモニ間違えたかも。でも、イヤモニ間違えるようなことしてない』と思って。えっ、これどうしたらいいん?ってなって。(中略)自分が音、弾き始めんと、メンバーのみんなも出てこれんってなったんですよ。やけん、そうやけん、自分が弾き始めんとなんも始まらんってなって。弾き始めた。大丈夫?ってなったけど…いけた!」
こうして、見事に曲を始めることが出来たんですが、途中にSE等が入ってピアノとダンスのバトルになるはずが、SEが入らないまま曲が進みます。
「2小節ぐらい、(ピアノが)休みの時があったんですよ。そんとき『どうしよう』ってなって。適当になんか音を弾いてて、めっちゃ変だったところがあるんですけど。(中略)ピアノだけになって。これはめっちゃ強く弾こうと思って。強めのタッチにしました」
兵頭さんがSEの代わりを、とっさに弾いていたんですね。
でも、瞬時に「Beginner」に合わせたアレンジを弾けるって簡単にできることじゃないですよ。
だって、瞬時に作曲して指でアウトプットしなきゃいけないわけじゃないですか。ううん、本当に凄い機転の利かし方です。
「でも、気づかんかったやろ?みんな?こういう裏事情を聴くのが面白いよね」と少し笑っていましたが、ううん、確かに違和感がなかったです。
ピアノを夜中の3時や4時ぐらいまで練習していたことを、さらっとこの後語っていましたが、努力を全面に見せずに本番でサラッとやってしまうところが彼女の凄さですね。「次からこういうことを考えとこうと思いました」と配信の中で語っていましたが、練習の視野が広がることで、彼女の曲のアレンジもさらに広がりそうですね。
今までの48グループでも様々なアクシデントがありました。
たとえば、僕が推しているSKE48でも音が止まっても1期生が踊り続けたり、外でのコンサートで音がなくなっても研究生が歌って踊ったということはあります。
ただ、今回は曲の途中ではなく自分で弾き始めて沈黙を破り、無音の空白も自分のアレンジで埋めて行くという凄まじい技を見せられたわけですよ。
これは、昨日今日で出来ることではなく、ずっと磨いていたからこそ咄嗟にできたことではと思います。
Creepy Nutsの「板の上の魔物」の歌詞の世界を見事に体現してみせたわけです。
※未聴の方は是非!ちなみにMVの映像は「Creepy Nutsのオールナイトニッポン0」の頃に送られてきた投稿がもとになっていてこんな人達ではありません。
何でも出来る「器用貧乏」で終わらすのではなく、アイドルとして活躍できる場をどんどん提供してい欲しいなと思っています。
個人的には、NHKのEテレの教養番組とかどうですかね?クラシック音楽系の。