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2020年10月9日金曜日

「もっと観たいと思わせるセンス」

 スキルとセンス


 

 先日、楠木建さんの「経営センスの論理」という本を読みながら、おっ、と思うことがありましてね。「スキル」と「センス」の違いに書かれていたんですね。ただ、なかなかこの二つの概念は、抽象的な表現のまま考えるのは難しいので、たとえを出されていました。「スキル」は、「国語算数理科社会」のように数値化できるもので、身に着けるものが出来ること。それに対して「センス」は「モテる」というような生まれつきの感覚である、ということ。経営者はセンスのある人、担当者はスキルがある人が向いているというような内容でした。詳しくは是非、読んでみてください。

 SKE48のメンバーの中で「センス」を感じるメンバーは沢山います。
 それはもう、厳しいオーディションを勝ち抜いてきた人達ですから。
 その中でも単独センター経験者の珠理奈、だーすー、ゆななは「センス」を僕は感じます。

 そして、古畑奈和。
 この人も生まれながらの人を惹きつけるセンスを感じます。ダンスや歌のスキルが凄くてもセンスがないと、やはり、ただの上手な人だと思います。

 2020年10月3日から行われたSKE48の12周年公演フェスでは、「0start」、「逆上がり」、「ラムネの飲み方」と3つの公演に彼女は出演しました。

 この3つの公演が彼女のセンスを別々の感じで光らせるプリズムになってましてね。
 特にユニットブロックが3日とも印象的でした。

 初日の「MARIA」では、彼女のことが大好きな岡本彩夏さんと、成長著しい水野愛理とのトリオで登場したんですが、元々チームK3rdの「脳内パラダイス」の曲ですが、歌詞の物語的な要素と奈和ちゃんの表現力の相性が凄く良かったですね。僕は、何故かみこってぃの幻を途中で観てしまいました。ソロ曲の「MESSIAH」とどこか通じる世界観でもありますね。彼女の動きや表情、歌詞の世界観を具象化するというセンスを感じました。ソロアルバムで作ってきた表現力をユニットでもフィードバックする感じですね。

 次は、「逆上がり」での「虫のバラード」。
 SKE48ファンの方なら山下ゆかりのソロでお馴染みですが、僕はこの時、ラジオ番組「10月のお楽しみ」で最近、再会したAKB48チームKの秋元才加さんを思い出しました。
 どこまで意識していたか分かりませんが、古畑奈和の柔らかさに力強さが瞬間瞬間にメリハリで入る感じは、独特のものでしたね。
 「虫のバラード」についての奈和ちゃんのブログを見てみましょう。
 https://ameblo.jp/ske48official/entry-11598058023.html

 秋元さんの強さに古畑奈和の歌唱力を掛け算することで、更に新しい「虫のバラード」を見せることが出来たんじゃないでしょうか。
 AKB48での兼任で手に入れた表現力がここでは出ていたんじゃないでしょうか?


 そして、最終日の「フィンランド・ミラクル」。
 これはちょっと意外でした。
 まさか、まなつ、ゆななといった「可愛い」の超正統派曲で出るとは。
 でもね、2012年頃の研究生だったり、チームE時代の古畑奈和の笑顔の写真と「フィンランド・ミラクル」での笑顔を見比べてみてください。
 何も変わっていないんです。
 一緒に踊った片岡成美、水野愛理コンビとはまた違った可愛さなんですよね。そうそう、こういう一面もあるよね、という。


 ちょっと、「フィンランド・ミラクル」について書いた奈和ちゃんのブログを読んでみましょう。

 https://ameblo.jp/ske48official/entry-11594132865.html

 そういや、これ、会場で観ましたよ。
 菅なな子とのコンビが、SKE48の未来を感じさせました。ああ、これからこの二人が引っ張っていくんだろうなあ、と。
 佐藤実絵子さんが言ってた通り、「躍動感」(いや『脈動感』という言葉もあるのかもしれませんが)が素晴らしかったですね。
 可愛い曲が自分の好き感じと真逆だ、といいつつも、みんなから評価されているのは流石ですね。
 先日放送された「古舘伊知郎のオールナイトニッポンGORD」の中で秋元康が「恋するフォーチュンクッキー」に関するエピソードを話していたんですね。曲が完成した際に、センターを務める指原さんは、物凄く嫌がったそうなんですね。「もっとファンの人がコールを入れられるアップテンポな曲が良い」と。しかし、彼女が自分が好きなものと真逆のタイプの曲が意外と彼女にフィットして大ヒットしました。

 今回の「フィンランド・ミラクル」も同じような化学変化が起きたのではないか、と思います。なんというか、久しぶりに彼女が「可愛い」というスポーツで全力を出してきた、という感じがします。

 こうして彼女が担当したユニット曲だけで並べてみると、彼女のこれまでの歴史を逆行していって、手に入れてきたものや元々持っていたセンスを、12周年公演という物に反射することで確認できたのではないかと思います。
 茅野イサムさんが、ミュージカルのメイキングで彼女の集中力や吸収力を評価していましたが、これまで吸収してきたものが、溢れ出たユニットブロックだったのではないでしょうか?

 そして、今回観られかった別の面は、これから他の曲と重ね合わされることでもっと観られるんじゃないかと思います(『10クローネとパン』のような世界観も好きですが、個人的には『観覧車』のような歌い方の彼女も観たいです)。


 シングルの発売が来年以降ということで、今、僕が求めるのは、対外試合だと思います。それは、アイドルフェス的なものではなくて、普段と違う曲を歌う、普段と違う自分を演じる、そんな対外試合です。先日の朗読劇もまだ観られていませんが、古畑奈和という人の未来に接続するものを残りの2か月間で触れていって欲しいな、と思っています。

 カミフレや「P4U」とかの動きを観ていると、ひょっとすると、SKE48は演劇業界とのパイプが少しずつ強固になっているのでは、と思います(オファーが増えているだけかもしれませんが…)。
 本当に妄想の話になって恐縮ですが、これまで彼女が歌ってきた曲の中で僕が心惹かれるのは、どこか悲劇の予感や悲しみの中に希望がある曲でした。なので、ひょっとすると、そういう原作の作品と奈和ちゃんは相性が良いのでは、と個人的に思っております(その反面、『えにし酒』でみせた人懐っこさがみられるような役もみたいんですけどね)。
 あと、曲だと「僕の打ち上げ花火」の古畑奈和バージョンも聴いてみたいですね。どう表現するんだろうと。

 もっと色々な顔が観たい。もう一度あの顔が観たい。
 そう思わせるセンスこそが、古畑奈和にはあると思います。


※ あと、「10月のお楽しみ」で流れていたこの曲も似合いそうです。ラジオ好きとしては、11月も12月もお楽しみが続いてほしいです。