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2021年11月21日日曜日

継続と工夫が生み出す特別さ

ぶーはいつも不意打ちで来る


 近頃、家でぼんやりしている時に思想家の吉本隆明さんの公演を聴いています(『共同幻想論』は2020年代の今も多くの社会学者たちが引用する強度の高いものです)。
 こちらは、糸井重里さんが運営している「ほぼ日」のサイトで無料公開されていて、183にも及ぶ公演をその日の気分で聞いています。
※凄く面白いのでリンクを貼っておきます。 

 公演名を失念したんですが、文学作品の名作について、吉本さんはこんなことを語っていました(著作もいくつか読んでいるんですが、おそらく公演だったと思います。吉本研究をされて)。
「この作品の良さが分かるのは自分だけではないか、読者にそう思わせられる。それが多くの人に時には錯覚させられる作品が名作になるのではないか」と語っていました。
 
 歌手の小沢健二が長い活動休止期間を経て、日本で久々にコンサートをした時、「シッカショ節」という曲を披露する前に「笑い」についてのMCをしました。
 アメリカでも日本でも「笑い」は、「ああ、これって自分たちには分かるなあ」というものが受けるとう共通点があるそうです。思えば、彼がこの後披露した「シッカショ節」は彼の代表作である「今夜はブギーバック」や「愛し愛されていきるのさ」とは、全く違うアプローチで、日本の民謡のようでした。



 僕の経験になってしまって恐縮ですが、上記の2つの感覚は、自ら求めて行って得られることは少なく、むしろ不意打ちで来ることが多いです。

 SKE48でも、僕にこの体験をさせてくれたメンバーがいます。
 それが中坂美祐さんでした。
 まずは、こちらのブログをご一読ください。

 こちらのブログで登場するトートバックの画像。
 この豚さんの絵を見た時に、僕は何故か郷愁のような感慨を受けました。上手いとか下手とかいう物差しではなくて、もっと別の愛おしさがありました。「民藝」は美術館に陶芸品を置くのではなく、身近な生活の中に置くことでその「モノ」たちが活きてくることを柳宗悦は語っていましたが、何かその感覚に似た身近さを僕は感じました。
 何度も何度もこの画像の豚さんを見ながら、この感覚を抱かせてくれたこの子は何物なんだろう、と動画やアメブロを読んで行きました。
 
 彼女のアメブロから感じるのは、「構成」が意識されているということです。
 まず、オープニングのトークがあり、本題があり、動画があり(ここ数か月は俳句というか川柳があり)、お知らせで終わるという構成になっています。
 この構成は、常に彼女が自分のブログを更新する際の工夫の元に出来ています。
 こちらのブログを確認してみましょう。


 この時に今我々が読んでいるブログの構成の元になるものがあるんですね。
 ちなみに、生活に関しては、こちらのアメブロでも書かれています。

 アイドルでいる日々をだらっと過ごさずに、自分の毎日を豊かにしていく工夫が本当に尊敬できます。
 工夫といえば、オンライン2ショットでも彼女の工夫が感じられます。

 何故、彼女はこんなにアイドルである毎日を大事にして過ごしているのでしょう。
 ちょっと彼女の生誕祭で読まれたお母さまからの手紙を読んでみましょう。


「美祐へ
 
 14歳の誕生日おめでとう。
 
 SKE48のことが大好きで、生誕祭にも何度か足を運び、客席から観ていたその舞台に立って、沢山の人にお祝いしてもらえる日が来るなんて夢のようですね。
 
 今どんな景色が見えていますか?

 きっかけは、アイドルと一緒に写真を撮ることなんてきっとないからと出かけた写メ会。その出会いがあなたの人生を変えました。

 色んなイベントに出かけて行くたびにどんどんSKE48が好きになって、いつの頃からなんだろ、SKE48に入ることを夢見るようになったのは。

 ちっちゃい頃から歌って踊るのは好きだったけど、『人前でやって』と言うと『無理』って言う子だったのにね。
 
 11歳の誕生日が過ぎた頃に初めて『SKE48になりたい』と聞いた時は正直ビックリしました。

 そして『アイドルになりたいの?』と尋ねると『違う。SKE48になりたいの』と言ったのを覚えていますか?
 
 いつの間にかSKE48が美祐の中で特別な存在になっていることを実感しました。
 
 8期オーディションを経て挑戦した48グループの第3回ドラフト会議では、ドラフト候補生として残ることができましたが、レッスンは全て東京。今まで電車やバスに一人で乗った美祐を東京に一人で通わすことにしたのも、『ただいま』の声を聞くまでは気が気でない毎日でした。

 最終的には福岡まで一人で行って、その時の感想が『福岡遠いね。座りっぱなしで足が伸びないよ』と笑わせてくれました。

 でも、それができたのもその当時担当してくださったマネージャーさんや同じ方向に帰る年上の候補生さんが助けてくれたおかげです。本当に感謝しています。

 ドラフト会議は残念な結果でした。SKE48のすべてのチームが指名を終了した時に舞台裏で頬を伝った一筋の涙は今でも忘れることができません。

 ドラフト会議の直後から同じような経験を持つ先輩や応援してくださっていたファンの方々が色んな方法で発信してくれた温かい言葉に励まされながら必死に前を向こうとしているようでしたね。

 そして、ドラフト会議直後に参加した握手会はドラフト3期生のお披露目。舞台に立つ元仲間に目一杯の笑顔でおめでとうと伝えた美祐は凄いと思いました。

 その直後から丈夫なだけが取り柄の美祐が謎の高熱で一週間寝込んだことはかなり心配しました。

 でも、今となって思うと、心も体も疲れきっていて、あの時の美祐には一週間の休養が必要だったんだと思います。だってその後はずっと元気娘ですから。

 そして、9期オーディション。合格してSKE48の一員として舞台に立つことができました。おめでとう。

 自分で夢への扉を開けたね。でもその先の道のほうが長いし、大変だけど自分で選んだ道です。納得するまで突き進んでください。

 周りからはよく『しっかりしてるね』って言われるけど、全然そんなことなくて、本当は甘えん坊のかまってちゃんだし、頑固で負けず嫌い。不器用で人見知り。かなり面倒な性格だけど、とっても優しい。そんな美祐が母は大好きです。

 人との距離感をつかむのが苦手で、人間関係で悩むことが多いけど、美祐の良さをわかってくれる人が必ずいるからそのまま真っすぐに育ってくれればと思います。

 『表現力でどうすれば大人っぽく、色っぽくなる?』って聞かれたけど、半年前まで男の子に混じって真っ黒になってボールを追いかけていた人間だから難しいなって思う。

 でも、それはSKE48での経験でいつか身につくと思うから今はスタッフさん、マネージャーさんや先輩の言うことに素直に耳を傾け、日々努力してどんな場所でも輝ける自分を目指してね。

 最近やることが多すぎて一杯一杯の美優についつい先に口出してしまう母だから、これからは信じて見守りたいと思います。

 今のこの時を楽しみながら、つらいこと大変なことを乗り越えてくれればと思います。

 経験と出会いは宝物ですよ。この経験と出会いを大切にしてね。いつも近くで厳しく見守っています。

 美祐の周りには応援してくれる人がいることを忘れないでください。
 
 最後になりましたが、株式会社SKEの皆様、マネージャーさん、スタッフの方々、SKE48のメンバーの皆さん、9期生の皆さん、いつも娘がお世話になりありがとうございます。

 この生誕祭を開いてくださったファンの皆さん、いつも娘を応援していただき、そして今日はこんな素敵な生誕祭を開いていただきありがとうございます。

 まだまだ未熟で目に余ることもたくさんあると思いますが、大好きなSKE48の一員として活動できることを大変喜んでおります。これからもよろしくお願い申し上げます。

2019年6月30日 母より 」

 ううむ、SKE48になるまでの道のりが決してストレートなものではなく、挑戦を続けながら勝ち取ったものだったんですね。
 恥ずかしながら、8期生やドラフト3期生のオーディションに挑んでいたことは、初めて知りました。お披露目で舞台に立つドラフト3期生のメンバーたちに「おめでとう」が言えた彼女は素晴らしいと思います、しかし、その後に1週間の静養があったというのも決して心が全て受け入れていたわけではなく、苦しかったことが伝わってきます。
 そして、アイドルではなくSKE48になりたい、この言葉は本当に嬉しい言葉ですね。
 これから同じことを思ってくれる方をどれぐらい生み出せるかが、SKE48が発展していく上で重要ではないか、とふと思いました。
 
 さて、生誕祭の手紙にちらっと出てきましたが、彼女はもともとスポーツ少女で、人との距離については得意ではない、ということが語られていました。
 そのあたりのことを彼女はどうとらえているのか、アメブロで読んでみましょう。


 正直、ティーンズユニットに関しては、「身内同士で戦わなくても…」という気持ちもあったんですが、成長へのトリガーの役割もあったんですね。そして、コロナ禍の自粛期間で生まれた離れ離れの日々。ここで彼女はSHOWROOMの配信を続けていくことで、トーク力を成長させていきます。
 こちらのアメブロも読んでみましょう。

 そういえば、SHOWROOMの社長である前田裕二さんの著作「人生の勝算」の中で、コミュニティが深まる要素として、①「余白があること」、②「クローズドの空間で常連客ができること」、③「仮想敵を作ること」、④「秘密やコンテクスト、共通言語を共有すること」、⑤「共通目的やベクトルを持つこと」を挙げていましたが、中坂さんの配信でも①の要素を中心に⑤の要素が生まれていたのでは、と思います(ちなみに、この説明のすぐ後にAKBビジネスは何故強いのかを③と総選挙、④とアバターを挙げていました)。
 更に、ファンビジネスの4象限として更新が多い/少ない、ファンの数が多い/少ないという4象限の中で、更新を多くすることでより身近になっていき、ファンの数も少しずつ増えて行く、配信が多い人ほどSHOWROOMではスターになれる、何故なら努力と継続から生まれる物語があるそうです。
 その物語は、ずっと見ているよりそっているからこそ特別になっていくのかも知れません。
 
 幸いアメブロのルールも彼女に味方します。

 読んでくれるファンの方々がいるから続けられる。
 この辺りは、普段弱小ブログを書いている僕なんかも共感してしまいます。
 アイディア募集もしていましたが、僕としてはSKE48に関する「衣・食・住」や思い入れのある曲に関するエピソードや公演曲を1曲1曲語るアメブロとかどうでしょう?
 あとは定期的なふりかえりブログが好きなので、続けてほしいですね。
 
 さて、配信やアメブロを継続することで、我々ファンは彼女の工夫の豊かさや価値観の面白さに触れて行くことになります。

 もう、SKE48ファンなら盛り上がれること間違いなしのセットリストですよね。

 たとえば、俳句。
 本文の内容とリンクしていて味わい深くて好きのは、こちらです。

 空耳でも声が聴こえたというエピソードも良いですし、公演という空間の大切さを感じました。
 
 さて、話を戻すと、彼女はティーンズユニットに挑戦します。
 残念ながら悔しい思いをすることになりましたが、この時に絆が生まれたことをブログの中で語っています。


 悔しかったティーンズユニットを経て、「大富豪は終わらない」で行われた「大とくさん」のイベントにチャレンジしていきます。
 そして、見事2位にランクイン。
 嬉しさあふれるブログを読んでみましょう。
 ☆中坂美祐☆ありがとう!! | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)

 「本番で爪痕が残せるように」と書いていましたが、彼女は爪痕を残す役でしたねえ。


 そして、この成功体験は彼女の中での自信となります。

 自信が生まれたからこそ、やってみたいこと、チャレンジしてみたいことをする実行力にもつながる。ファンの方々との絆があるから、チャレンジできると思います。
 
 
 いったいこれから彼女はどうなっていくのか。
 このブログを読んで終わりにしましょう。

 もしかすると、彼女の物語にはいきなりのジャンプアップは無いのかも知れません。
 でも、毎回悔しい思いをした後に、必ず報われる時がやってきます。
 継続と工夫の日々。
 その物語は身近でありながら、我々の中で特別になっていくのではないかと思います。
 自信を身に着けた彼女の次のチャレンジを楽しみにしながら、この記事を終えたいと思います。サビがなんとなく今の中坂さんとファンの方々の関係に似合いそうな小沢健二の「アルペジオ」を聴きながら。


 ※記事に入れられなかったですが、動物に関する価値観も面白いのでおすすめですよ。