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2019年4月21日日曜日

「SKE48版 ハムレット」の感想



人が生きている限りどこにでもある出来事


 日テレで放送されていた「SKEBINGO!」で、お芝居について学んできたメンバー達がいよいよ、シェイクスピアの「ハムレット」にチャレンジしていきます。

 今回はいつもの感想と違って、個別に感想を書いて行きたいと思います。

演出とアレンジ

 シェイクスピアの原作を分かりやすくアレンジしてくれています。
 ありがたいことに、SKE48要素も入れてくれてます。
・デンマーク → サカエ国
・ノルウェイ → 岐阜国

 台詞は必要なセリフに抑えて、心情を表す言葉を足したり、歌を足したりもしてくれています。
 本来なら剣を抜き合うことのないハムレットとクローディアスが、第4幕第3場で刀を打ち合う演出が入っているのも良かったです。
 今回の作品は興味を引く、入口になるようなアレンジだと思います。
 ここから原作に入るとストーリーラインは分かっているので、読みやすくなると思います。

楽曲

 どれも素晴らしいんですよね。
 同じ言葉を別のアレンジで聞かせたり、違う人間の口に歌わせたりすることで、こんなにも違う意味を持つのかと思いました。
 個人的には「恋人はもういない」から始まる曲が好きですよ。
 「愛が消えた日 心の火が消えてしまった」という歌詞がなんとも切なくて。
 「生きるべきか?死ぬべきか?」という名台詞の方も歌にしていて、これがアレンジが変わっていくところが、この後の二人の運命を暗示しているようで、聞いていて不安になりました。

末永桜花&北川愛乃

 緊張感があるストーリーの中で、ほっとするような役割を担った二人。
 リアクションがとても良くって、突然、ヲタになるところも面白かったです。
 よくSNSに上がっている写真が最初のマーセラス・バーナードの写真が多かったので、ローゼンクランツとギルデンスターンの姿がコミカルで、こっちも素敵でした。
 珠理奈の「良心の呵責はない」的な発言に「ええっ!」と登場するのが面白い演出も良かった。
 コミカルでカワイイ役のふたりでした。

高柳明音

 ボローニアスもフォーティンブラスのどちらも説得力が必要な役でしたが、見事に演じきっていました。ボローニアスとしては、元々着る物にこだわる役柄なので、ファッションモンスターの鳥さんにぴったりなんですが、お金に関する教訓を言うところとかも、ビシッと決まっていました。お手紙を読む時に急にカワイイ声になったり、ヲタになった二人が当日券を買おうと退場していくと、「もう満員だったぞ~」と登場するところは笑いましたね。
 また、後半に登場するフォーティンブラスがとても彼女に似合っていて、彼女の眼差しの強さがぴったりでした。

鎌田菜月

 怯える演技が多かったんですが、の動きに注目すると、その時に我慢しているのか、戸惑っているのか、怖いのかが見えてくるんじゃないか、と僕は思いました。最後の演技も悲しくて、毒が身体を蝕む中、息子を見る眼差しは心を動かされました。

佐藤佳穂

 一番ギャップに驚いた人です。
 普段、ニコニコしている彼女から、あんな表情が出てくるなんて。
 劇団しゃちほこの織田さんもびっくりしましたが、レアティーズの激情を表現しているところが本当に良くてですね。
 個人的に「オフィーリア、もう水は沢山だろう。涙は流すまい」というセリフを悲しみを抑えるように言っていたのが、印象的でした。


熊崎晴香

 めちゃくちゃ受けの芝居がよかったです。
 実は登場する場面が多い役柄なんですが、余計な動きをせずにちゃんと相手のセリフを受けてから芝居をしていて、凄いな、と思いました。
 手紙を珠理奈と読むシーンも息があっていて見事。
 最後はホレイショーがこの物語のテーマのようなことを言い、ハムレットの死体に跪いて終わるんですが、その悲しい背中をちゃんと背負っているのも良かったです。


野島樺乃

 はかないオフィーリアを見事に演じてましてね。
 「SKEBINGO!」のオーディション映像で散々観たはずの「これはローズマリー」のところで僕は思わず涙を流してしまいましたよ。悲劇のヒロインをこんなに儚く演じ切るとは。
 オズリックにも見事に変身してましたね。

古畑奈和

 「SKEBINGO!」を観ている限り、多分、一番ハードルを高く設定されていたと僕は思ってるんですが、見事に超えていきましたね。
 邪悪な表情、不安になる表情、全部、良かった。
 さらに、彼女の歌が活かされていたのも。
 「もっと広い世界を知れ!」や「あの世で罪滅ぼしを」というオリジナルのセリフも良かった。
 ちゅりの「ケッタ」の説明で一瞬、奈和ちゃんに戻ってたのも面白かったです。
 

松井珠理奈

 もうね、なんだかんだでうちの大将はやってくれましたよ。
 人間の中にある狂熱を見事に演じてくれました。
 特に赤い衣装を着た背中がカッコよくてね。
 復讐にとらわれて狂ったふりをする演技も良かったんですが、自分と同じように復讐にとらわれたレイアーティーズと対峙した時の表情が更に良かったです。
 一番好きなシーンはオフィーリアの頬に触ろうとした自分の手をもう片方の手で握って去っていくところが、彼の悲しさを物語っていて素敵でした。


全体を通して

 凄く面白い舞台でした。
 これは舞台に携わった先生方やスタッフの方々の力が大きいと思います。
 現在の公演・コンサート・握手に加えて、「SKE名作劇場」として、演劇の仕事を増やして、2か月に1回配信して行ったら女優志望のメンバーも更に活躍できるんじゃないでしょうか?今回参加できなかったメンバー達の演技も観てみたいですしね。
 次はシェイクスピアの「マクベス」とかどうでしょう?