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2021年6月12日土曜日

愛し愛されて生きるのさ

 

ペイフォワード


 

 皆さん、「ペイフォワード 可能の王国」という映画をご存じでしょうか?
 「ペイフォワード」というのは映画の中の言葉を借りると、「次へ回せ」という意味です。

 映画の冒頭で、記者のクリスさんがある事件を追っている途中に、犯人に車を破壊されて途方にくれます。そこに一流弁護士の人が通りかかって、新車のジャガーをいきなりプレゼントします。あまりの展開に驚くクリスに、弁護士の人は「ペイフォワード!」と叫んで去ります。

 この映画は、誰かからもらった善意や優しさを他の誰かに回せと言う「ペイフォワード」という行動が、本当に小さなレベルでですが、身の回りを少しずつ豊かにしてくれる過程を描いている好きな映画の一つです。

 

 SKE48のメンバーで、「ペイフォワード」という言葉で思い出すメンバーがいます。
 それがチームEの深井ねがいちゃんです。

 8期生として加入したばかりの頃の彼女は、全てが順調というわけでは決してありませんでした。
 しかし、彼女が持っている明るさと、ひたむきに努力する姿には、少しずつ人々の心を動かしていきます。中でも、劇場公演の鉄人である市野成美さんへの弟子入り宣言(2017年5月20日)は、当時、岡田美紅推しだったも、「この子、信用できる!」と思ったものです。

 この時のねがいちゃんとなるちゃんとの関係が何か残っていないか、と調べていた時に、生誕祭の手紙が出てきました。
 ちょっと、読んでみましょう。
 2018年1月23日 研究生「青春ガールズ公演」です。

「ねがいちゃんへ

 15歳のお誕生日おめでとう。
 

 私が出会ったばかりの頃のねがいちゃんは不安な顔で踊って、レッスン場の隅で『できないです』と泣いてばかりでした。


 いつからなのかハッキリとは覚えていないけど、ねがいちゃんは私のことが好き、そして私のことを師匠と呼んでくれています。

 そんなねがいちゃんから悩み相談のLINEが来た時、私は話を聞いてあげることしかできなくて、自分はほんとに頼りないなと思いました。

 でも、最初はつらいことばかりかもしれないけど、一生懸命やっていれば誰かは必ず見ていてくれるはずで、私はそう思いながら活動しているし、そしたら私はたくさんの素敵なファンの方に出会えたんだよっていう話をしました。

 LINEがきた時は『ねがいちゃん大丈夫かな?』って思ってたけど、最後には『まだ頑張ってみます』そう言ってくれて私は安心しました。

 たまにねがいちゃんのファンの方が握手会に来てくれる時、とてもいい方たちばかりだなっていつも思っています。

 私が『青春ガールズ』公演に出るようになって、ねがいちゃんと一緒のステージに立っていると、最初の頃のような不安な顔はなく、全力で楽しんで、歌って踊るねがいちゃん。そんな素敵な姿にみんな惹かれているんだなと思います。

 これからどんどん成長するねがいちゃんをファンの方と一緒に見守っていきたいです。

 挨拶すると恥ずかしそうに小声で返してくれるねがいちゃん。話しかけると顔が真っ赤になるねがいちゃん。私が疲れて座っていると凄く心配してくれるねがいちゃん。どんなねがいちゃんも私は全部全部大好きです。


 何か悩み事がある時、私でよければ何でも話してください。いつでも連絡待ってます。


 改めてお誕生日おめでとう。15歳の1年が素敵なものになりますように。


 次はE公演で一緒のステージに立ちたいです。


 市野成美より 」


 何もかもうまく行かなかったり、不安だったりする時に、寄り添い見守ってくれる先人がいるというのは本当に大きいですよね。なるちゃんだけでなく、ファンの方々もそうです。
 みんなの優しさを貰いながら、ねがいちゃんは成長して、ステージ上で楽しみながら踊っていきます。
 手紙の最後の方に書かれている尊敬する人の前になると、少し照れる様子も良いですね。

 
 ちなみに、2018年の初頭には、劇団れなっちの「ロミオ&ジュリエット」のオーディションに合格してジュリエットのお父さん役にもなっていましたね。
 加藤玲奈さんから(48グループ運営から?)のチャンスを見事に活かしてみせました。
 その時に出会った、NGT48の菅原りこさんへの手紙では、深井ねがいさんのりったんへの愛が感じられる素晴らしい内容になっています。

 

2018年11月27日のことです。

「りったん、生誕祭おめでとう。

 そうか、りったん18歳になったんだね。

 初めて会った時は何だろう。不思議な子って印象だったよ。

 まぁ、そういう私もかなり不思議だけど。

 今回りったんの生誕祭でのお手紙のお話をいただいた時は正直ビックリしました。

 最初、マネージャーさんから連絡いただいて、いきなり何事かと。だって、新潟のNGT48に行かれたマネージャーさんからの連絡ですから、また怒られるのかと思いましたよ。何かやらかしたかなって一瞬心配になりました。

 でも、内容が生誕祭のお手紙のことでほっとしました。でも、よく考えたら正直私でいいのかと思ったよ。

 たしかりったんと初めて会ったのは加藤玲奈さんのプロデュースされているれなっち総選挙、2017年劇団れなっちの舞台メンバーに選ばれた時だったよね。

 りったんって私から見てすっごくほんわかしていて、マイペースで、不思議なザ・アイドルっていうイメージでした。あっ、と私とは真逆のタイプの子だと確信しました。

 そんな子がどんな役を務めてるんだろうと思っていたら、なんとりったんはまったくタイプの違う、小難しくて、悪だくみをするマキューシオ役。しかもマキューシオは台詞が多い!

 稽古中、うまく台詞をスラスラ言えず、凄く悔しそうな表情を見て、こんな表情もするんだとビックリしました。


 それからきっかけはわからないけど一緒におしゃべりしたし、お互い台本を読み合ったり、ご飯を食べに行ったり。

 りったんとご飯と言えば、初めてりったんとラーメンを食べに行った時、食べきるのに30分ぐらいかかって麺が伸びてしまったのを覚えています。

 さすがマイペースな子だなと感心してしまいました。


 あっ、そうだ、りったんと知り合ってからりったんのことを調べたりはしなかったけど、昨日初めてエケペディアを覗いてみて笑ってしまったことがあったよ。

 性格、趣味のところで長所が天然、明るいってあって、その通り!って思って。短所は人との距離感がつかめないところと書いてあり、『えっ、私と同じやん』ってなり笑ってしまいました。お互いにそこのところは成長したいね。

 私はつい最近やっとのことで研究生から昇格させてもらいました。りったんはNGTの1期生としてみんなを引っ張る立場だよね。これからも持ち前の明るさとなんとも言えない空気感を活かして頑張ってね。

 私もりったんとお仕事がしたいから実力つけるために頑張るから待っててください。

 この度はりったんの大事な生誕祭のお手紙を書く機会をくださった生誕委員の方々、ファンの方々に感謝しております。本当にありがとうございました。

 りったんにとって18歳の1年が素晴らしい1年になりますように心から願っています。

 最後に。りったんのファンの皆さんへ。皆さんの推しは最高です!


 SKE48 深井ねがい」

 冒頭のユーモラスな表現も凄く良いんですが、りったんとの共通点や推しの方々への言葉も素敵です。
 貰って来た優しさを少しずつ他の人にも広げていく感じがします。
 いつか、二人が女優として再会するところも見てみたいですね。


 さて、再び、深井ねがいちゃんをめぐる文章に戻りましょう。2019年1月22日に行われた、深井ねがいちゃんの生誕祭の手紙も読んでみましょう。

 「ねがいちゃんへ

 16歳のお誕生日おめでとう。
 

 こんな風に改まってお手紙を書くのは初めてで、恥ずかしいですが、せっかくの機会をいただいたので素直な気持ちを書かせてもらいますね。

 ダンスのレッスンが始まり、撮影というものを経験したり、同期と過ごす時間が増えていった頃、初めてあなたを見た時の印象は「とにかく凄い」でした。

 それは、みんなが右も左もわからず手探り状態なのに、あなたは誰よりも大きな声で、誰よりもグイグイ前に出て、唯一現場のスタッフさんや大人たちとも友達のように話せていたから。そんなこと、みんななかなかできないよ。

 物怖じしないところも、明るくムードメイカーなところも全部あなたの魅力だと私は信じてるから、自信を持っていいんじゃないかなって思うよ。

 だけど、その反面、本当は凄く考え込んだり、泣き虫なところがあることも私は知っています。

 最近はどうかな?私とはチームが違って会える機会も少ないけど、そんなたまに会った時でも悲しそうに下を向く姿をよく見かけるような気がするな。初期のころみたいに無邪気に笑うねがいちゃんっていうよりは頑張って笑ってる、そんな風に見えるかな。

 SKEにいれば、そして上を目指せば目指すほど、つらいことってこの先もたくさん待ってると思う。

 でもね、そのつらい気持ちも悔しい気持ちもきっと本気で戦っている証拠で、ただただここにいられればいい、そんな風に思っていればこんな感情は生まれない。

 だから今この活動を通して感じている気持ちは全部自分を強くしてくれるって信じて頑張ってれば絶対この先で生きるはずだから一緒に乗り越えていこうね。

 私もついているし、何よりあなたはたくさんのファンの方がそばにいてくれるよ。

 そして今日の生誕祭も凄く緊張するって言ってたね。大丈夫だよ。主役なんだから堂々と笑ってればいいの。最後まで楽しんでね。応援しているよ。

 ステージに立つ度胸、MCで培う柔軟性、ここで学ばせてもらえること全てが女優というあなたの夢にいつかリンクするはず。夢はきっと手を伸ばした1ミリ先にある。だからその夢に向かって今日もあなたらしくステージで輝けることを深く願っています。

 あなたはSKEにとっても凄く貴重な存在だと思います。だからこれからもキャッチフレーズにもあるように日本一のアイドルになってください。

 終わりになりましたが、この度は生誕祭という貴重な日にお手紙を書かせていただきありがとうございました。気の利いたことも言えませんでしたが、これからもねがいちゃんの同期として切磋琢磨し、隣で彼女を少しでも支えられたらと思います。

 ファンの皆様、スタッフの皆様、そしてチームEのメンバーの皆さん、これからもねがいちゃんをお願いします。

16歳、素敵な1年になりますように。

チームS 岡田美紅」

 同期として彼女の傍にいてくれた、みいぽぽからの手紙です。
 NMB48の「届かなそうで届くもの」を連想させられるな、と個人的に感じました。
 「最近はどうかな?」とねがいちゃんの笑顔を気遣う表現が凄く好きです。
 そして、ねがいちゃんが持っている明るさと、繊細な両面が見えて来ます。
 涙が出るのは、本気でSKE48という場に向き合っているから。
 真面目に真っすぐにアイドルに向き合うから支えたくなる、SKE48にとって「貴重な存在である」というみいぽぽの表現は、彼女がもう卒業した後の2021年に読むと、また違う響きがします。確かに深井ねがいちゃんの個性は、前にもいないし、これからも出てこないんじゃないか、という魅力があります。
 勿論、真面目さだけではなく、突拍子もない危うさもあります(CDの特典映像にあったドッキリの映像は、かなりスリリングでしたが、この子は何者なんだ、と気になった方も多かったんじゃないでしょうか)。

 彼女にとって、みいぽぽの卒業による別れは、とても大きな意味を持っているのではないか、と思っているんですが、いつか書いてみたいと思います。
 元、みいぽぽ推しとしては、推しの分の夢もねがいちゃんに託している部分があるのかもしれません。
 

 さて、更に1年の月日が経ち、2020年1月25日。
 再び、ねがいちゃんの生誕祭がやってきます。

 その日に読まれた手紙を読んでみましょう。
 

「ねがいちゃんへ

 お誕生日おめでとう。

 16歳の1年はどんな1年でしたか?

 チームEに所属したのは去年のことだったかな?

 去年の生誕祭で『このステージで言えないことがあった』と後にブログに書いていたことを覚えています。

 チームEとして認めてもらうこと、チームEのメンバーともっともっと喋れるようになること、SKEに友達を作りに来たわけじゃない、自分の夢を追いかけに名古屋まで来たんだと言いつつ、先輩や後輩そして同期の仲間への思いが芽生えてきているのが私は嬉しいです。

 ステージの上や舞台上では物怖じすることなくハキハキ喋っていて、大きな声で何でも思い切ってやりのける反面、楽屋では凄く大人しくて冷静だということを知りました。

 きっとそれが本当の姿ではないのかも知れないし、もしかしたらどちらとも本当のねがいちゃんなのかもしれないけど、もししんどいことやつらいことがあるならば、おすまししておとなしぶることなく頼ってくれたら嬉しいです。

 こんな私が後輩にしてあげられることは限られているけど、一人一人の悩みに少しでもっ寄り添ってあげたいと最近強く思います。

 誰しも一人で頑張ろうなんて難しくて、せっかくグループとしてチームとして一緒の時間を過ごしているのだから迷惑の一つや二つぐらかけたって構わないって思います。

 皆で助け合って、支え合って大きくなっていこうね。

 年頃の女の子は日々変化するものとよく言いますが、ねがいちゃんの変貌ぶりには本当に驚かされました。

 以前とは見違えるほど美してたくましく立派な姿に出会うたびに感動している私です。

 

 『髪型変えた?メイク変えた?痩せた?』って会うたび毎日のように言ってるから、そろそろしつこいかな?

 でも『真木子さんから褒められると顔が真っ赤になっちゃう』って言うてたもんね。でも本当に綺麗になりました。

 TGC静岡の出演が終わってもウォーキングに励んだり、ダイエットをして努力し続ける姿はとても素晴らしいと思うし、尊敬しています。

 きっとこれからもまだまだたくさん悩んで迷って吸収して、ねがいちゃんの思う『なりたい自分』になってほしいです。

 自分の夢に向かって胸を張って毎日キラキラ生きて欲しい。その姿を近くで見ていられたら、と思います。

 これからもよろしくね。

 誕生日おめでとう。

 斉藤真木子より」


 ねがいちゃんは、手紙の後のスピーチで16歳の1年を「悩んだ」1年であると語ります。本気で卒業を考えたことや人前や舞台に立つことが怖くなったこともあると。
 また、弱音を吐くことに関してもナイーブになって悩んでいたこともあると語っていました。それでも、「自分を客観的にみれた有意義な1年だった」とも語ります。その中には、TCGしずおかでランウェイを歩くための練習や実際の経験は、観られる自分を意識することになったのかもしれません。勿論、自分という一番厳しい審査員もいます(いつかのなるぴーがスクランブルで出演した時の自分への評価とかもそうですが)。

 TCGしずおかの経験はねがいちゃんにとって、「幸せな1日」だったそうです。
 女優と言う夢が少しだけ見えなくなったとしても、彼女は「ファンの皆さんに恩返しがしたい」ということを語ります。
 夢や仕事に真面目な彼女だからこそ、先輩も力になりたくなります。
 3年の間に不安や悩みと向き合いながら進んでいくねがいちゃん。それは全部消えることはないですが、昔と違って成功体験が彼女にはもうあります。それが迷った時や諦めそうになった時の道しるべになるのではないか、と思っています。
 

 映画「ペイフォワード」の最後は、最初に始まった誰かの「次に回せ」が、きちんと連鎖して他の人の優しさになったことが示されて終わります。
 僕もねがいちゃんからもらった、思いを「次に回す」ためにこの記事を書きました。
 きっとねがいちゃんも、なるちゃんから受け継いだ思い、みいぽぽから受け継いだ思い、今、真木子を始めとするメンバーたちと紡いでいるものがあると思います。ファンの方々からもらったものも。

 「恩返し」として次はどんな「ペイフォワード」を、ねがいちゃんが魅せてくれるのか。
 もう、彼女が元気に帰ってくるだけで、充分「ペイフォワード」なんですけど、真面目な彼女のことだから、きっと明るい笑顔で新しい姿を見せてくれんじゃないか、と期待しています。
 

2021年6月12日、「僕だけのvalue」を聴きながら。