届けてもらった分だけ
小説家の京極夏彦さんの講演集「『おばけ』と『ことば』のあやしいはなし」を読みました。タイトルの通り、妖怪に関することと、言葉に関することに関する2012年から2019年に行われた講演を収録している本です。
京極夏彦作品の特徴としては、難しいことを分かりやすい言葉やたとえで伝えてくれることが挙げられます。脳の認識に関することや哲学に関して、僕みたいな無学な人間にもなるほどなあ、と納得できる表現で作中では説明されています。何故、彼は我々に難しい内容をするりと伝えてくれるのでしょう?
講演集の中にある「世界の半分は書物の中にある」という東京ビックサイトで行われた講演の中で、京極夏彦は言葉と文化の関係について語ります。
びっくりするほど、雑に説明すると、日本では虹の色というと7色を思い浮かべますが、国によっては5色で表すそうです。
中間色が見えていないわけではないんですが、それを表す言葉がないんだそうです。
日本も本来は、伝統色といって紫ひとつでも20以上色の名前が厳密にあるそうなんですが、今は「紫」と表すことが多いですよね。
色の数は言語圏によって異なってきます。だから、言語というのは文化なのであると。
語彙が減れば減るほど、世界を表現する手段、伝える手段が減る、ないしは文化が減ってしまうということになります。
じゃあ、語彙を増やすためにはどうすれば良いのか、本を読もうぜ、となってくるわけです。
そこから、世界を自分の頭に取り込んで、概念に置き換えて言葉として出力する本というものの話に展開していくんですが、面白いので気になる方は是非是非読んでみてください。
この講演集を読みながら、ふと鎌田菜月さんについて思い出しましてね。
以前、鎌田菜月さんと言葉の受け取り方について考えてきましたが、今回は鎌田菜月さんとコミュニケーションについて考えてみたいと思います。
思えば鎌田さんは読書家であり、様々なサブカルチャーをインプットしているので、当然ですが、ブログでの表現や映画の感想を語る時の言葉でも語彙力の高さを感じさせられます。
たとえば、こちらのブログを読んでみましょう。
(鎌ºωº田)<地元の味。 #うま屋 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)
まず、写真の力も大きいんですが、麺やスープじゃなくて九条ネギやニラ辛子といった脇役たちにフォーカスして書いている着眼点も素敵ですが、おいしさが伝わってきそうな文章が素晴らしいですよね。
でも、そんな鎌田さんでも伝えることについて、モヤモヤを感じた経験があります。
こちらのブログを読んでください。
(鎌ºωº田)<まず日本語って難しいよね #手話 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)
僕らが当たり前だと思っている発語による会話、でも手話を知ることでもっと多くの人とコミュニケーションを取ることが出来るようになる。言葉は文字だけではなく手話でも増えていくんですね。
鎌田さんレーンに来てくださった手話の方とのコミュニケーションの様子を思い浮かべると、僕らが見ている虹の色の数はひょっとするともっと多いんじゃないか、そんなことを考えさせられます。
そういえば、「SKE48と100万円」の企画の時にも耳が聴こえない方のためのコンサートについて彼女は語っていましたね。振動と光の明暗で音楽を表現する方法だったと思います。彼女の伝える為の方法への探求力には驚かされます。
彼女はリアルでのコミュニケーションだけではなく、ファンの方々からの手紙も大事にしています。自分の言葉だけでなく、もらった言葉も大事にしている。
(鎌ºωº田)<ただいま〜。 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ameblo.jp)
「手紙の言葉」を身近に感じるという言葉は、直接の会話とは違う手紙の時間ならではのコミュニケーションですね。
以前のブログでも取り上げましたが、彼女はインプットだけではなくアウトプットも密かに続けています。
(鎌ºωº田)<秘密の書きもの。 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)
ちなみに、3000文字と書いていますが、これはなかなか凄い量だと思います。
皆さんも試しに3000文字のエッセイを10本書いてみると、どれぐらい大変なことか分かるかと思います。語彙力を増やすだけでなく、きちんとアウトプットをしながら言葉を磨いている姿勢は本当に素晴らしいです。
そして、鎌田さんについて信用できるな、と思うのが今の自分に納得せずに初心を忘れないところです。
(鎌ºωº田)<烏滸がましくも。 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)
常に自分を客観視して、過去の先輩たちと照らし合わせて行く。
その姿勢は本当に素晴らしいです。
未だに自分に対して戸惑う時もあります。
(鎌ºωº田)<言葉より行動。 | SKE48オフィシャルブログ Powered by Ameba (ampproject.org)
「人と感じ方や考え方がズレてるというのも時々感じます
そしてそれを伝えるのも下手くそです」の辺りからは、自分の秘めている心をなんとか組もうとしてくれるファンの方々とのコミュニケーションについて、もっと成長したいという彼女の意志も感じます。
先ほどの京極夏彦の公演の後半で彼は、本を読んで面白さを感じない時は、もう一度読んで面白いところを探すそうです。決して断定せずに探求していきます。
凄く個人的な体験になって申し訳ないですが、僕はよくyoutubeで色々な大学の公式チャンネルで様々な学問の講義を寝る時に聴きます。面白い講義だと段々目が覚めてしまうのが難点ですが、共通していえるのはみんな断言しない、ということなんです。現時点ではこうである、今の研究ではこういう答えが出ているという言い方をします。一つの答えが出て来ると次の疑問が出て来ると大学教授で小説家の森博嗣も著作の中で語っていましたね。
逆に勉強をしなくなった人は、断定形で語ることが多いな、と個人的に思います。
そういう人のする話は浅いことが多いですし、想像力のリーチも短かったです(あくまで僕の経験ですよ)。
鎌田さんは、一見器用なように見えますが、常に自分の中にある「秘めたい心」を胸に進化を続けています。そこにあるのは、大事なファンの方とのコミュニケーション、そしてまだ会っていないけれど、これから会う人たちとのコミュニケーションもあるのかも知れません。
ううむ、ここまで書くと鎌田さんとコミュニケーションをしてみたいという欲求にかられますが、どれがベストなんでしょうね。配信なのか、文通なのか、トーク会なのか。いずれにせよ、今日も新しい本を読んで、知らなかった映画に親しみ、自分の考えていることを言葉に変えて、遠くにいる誰かに伝えたい、と鎌田さんのことを調べていると刺激されました。
まだまだ虹の色を増やしていく鎌田さんについて、来月も考えていきたいと思います。