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2021年10月9日土曜日

「作る」ことで繋がるもの

 「コト」→「モノ」→「?」

 2010年代はSNSの広がりから「コト消費」が広がった10年間だったと思います。
 ハッシュタグによる動員は、政治だけでなく、音楽のフェスやアイドルの握手会と様々でした。
 そこからコロナ禍により、「コト消費」は一旦ストップします。
 人が少なくなった街を「モノ」がどんどん動いていた季節がありました。
 AmazonやUberEATSを始めとする宅配サービスで「モノ」だけは自由に動いて行く。
 かといってそれは、ブランド物を身に着けることで、自分のステータスを上げる「モノ」消費とは少し違う気がしていました。それまで自分が買っていたものを誰かに持ってきてもらう、或いは、こういう機会だから誰かに作ってもらっていたものを自分で作ってみようという欲望からかも知れません。
 それは、ブランド品を身に着けることが、自分のステータスアップにつながるという旧時代的な考え方とは違う「消費」の仕方だと思います。自分の好きなものを買って所有するという「消費」は皆さんもされると思いますし、僕もします。でも、この2年間ぐらいで他の「モノ」との向き合い方があるんじゃないか、と僕は近頃考えています。
 それは、「推しのグッズ」という非日常的なものの所有以外の選択肢を増やせるのでは、とも。
 そして、そのヒントになるメンバーとして挙げたいのが、9期生のひめたんこと、荒野姫楓さんです。

 彼女がTwitterで発信している「#ひめ家庭調理部」では、彼女が様々な料理を作ってアップしています。




  

 

 
 いやいや、アイドルが料理の画像をSNSに挙げるなんて普通でしょ、と思われる方もいるでしょう。この「#ひめ家庭調理部」の面白いところは、「部」ということで、ひめたんが作り、ファンの方々も同じ料理を作るという流れがとても興味深くてですね。
 ひめたんという推しとファンである自分の間に料理という「モノ」を挟んで、楽しむということが凄く面白いです。大袈裟に捉えられるかも知れませんが、もしかして、これは新しい「推し事」の可能性ではと思っています。
 これまでは、所有することが推しとの繋がり方でしたが、次は自分で作るという推し事もありなのかもしれません。
 そして、「コト」、「モノ」と続いた後で、次は何が来るのかも楽しみです。再び「コト」に戻っていくのか、「モノ」がもっと深くなるのか。推しとのコミュニケーションを面白くする方法のヒントがあるのでは、と僕は思っています。
 
 ひめたんが作るものは料理だけではありません。
 たとえば絵。


 


 たとえば、写真。

 


  

 僕の9期の推しメン(なんて、便利な言葉なんでしょう)なーやんのこんな表情を撮ってくれるなんてありがたすぎる。
 
 こう見て行くと、かなり器用なメンバーのように映りますが、内面はどんな感じなんでしょう。2020年1月12日に行われた彼女の生誕祭の手紙を読んでみましょう。

「姫楓、18歳の誕生日おめでとう。
 

 おかあちゃんです。

 今ではすっかり大きくなって、背だって追い抜かされたけど、生まれた日のことは今でも昨日のことのように思い出せます。

 いつだって、どこへ行くのも一緒で、小学校へ通い始めて最初のお友達の家に遊びに行った時、帰り道がわからくて「遭難した」と泣きながら帰って来た子供が、あっという間に名古屋で夢のきっかけを掴んで、一人暮らしまで始めるなんて。去年は展開の早さに周りの誰もがビックリしたね。

 激動の1年間、改めてそこから見える景色はどんな風に目に映っていますか?

 小学生の頃からアイドルになりたくて48さんや坂道さんのオーディションにチャレンジしたね。
 

 それまでは家から遠いと言っても東京でやっているオーディションだったので、高2でSKE48の9期生を受けてみると聞いた時はめちゃくちゃ驚きました。

 二次審査で初めて一人で新幹線に乗って県外へ出て、審査に通った直後、名古屋からLINEで飛んできた二次合格のお知らせと「産んでくれてありがとう」って言葉を見た時、もしかしたらこの子はここでお世話になるかもしれないなって予感がしました。

 それからは本当にあっという間だったね。

 目立つことや人前に出ることが苦手で、ちょっと飽きっぽいとばかり思っていたのに、中学校では演劇部、高校では友達に誘われてダンス部。チャレンジする部活動は人前に出るものばかり。

 ダンス部ではフォーメーションダンスのチーム練習で毎日朝早くから遅くなるまで参加をして、大きな大会で関東2位に入賞したね。

 途中でバイトも初めて、時々くじけそうになりながらも頑張って諦めずに続けたこと、今言えば一つも無駄じゃなかったね。

 アイドルになる以外に他の道は考えていなかった中3の時、進路がなかなか決まらず、高校に通わないなんて選択肢もあって、結局滑り止め受験なしで公立に挑んだでしょう。あの時は担任の先生もお母ちゃんもヒヤヒヤしたものでした。


 これまで縁もゆかりもなく遠いようで意外と近かった名古屋。離れた土地で一人暮らしをさせるのも心配でしたが、友達作りはいつも少数精鋭の姫楓がたくさんのメンバーさんの在籍する中でうまくやっていけるだろうかとても心配で、とにかく心配だらけで。

 でも新しい世界へ飛び込む本人はもっと不安だったよね。

 すぐに泣いたり、自分はいいやって人の後ろに隠れてしまう子が、仲間たちと楽しそうにステージで立っている姿を最初に見た時はビックリしました。きっと、とても頑張ったんだと思います。

 素敵な仲間にも恵まれたね。本当に良かった。

 この1年充実していただろうし、その分悔しい思いもいっぱいしたね。

 去年の今頃だったかな?まだまだ寒かった時期に初めて参加させてもらう公演の「シンデレラは騙されない」という曲でマイクを任せてもらえるポジションではないことがわかった時、悔しそうだった。

 それからしばらく経って、曲の雰囲気に合わせて気合い入れて踊ってみたら自分なりの手応えがあったことを教えてくれたね。

 悔しいことを悔しいままで終わらせていない、今まで見たことなかった成長した姿に感動しました。

 自分を超えることは、周りと自分を比べるよりも大事なことだよね。

 私たちがいつも仕事優先で姫楓にたくさんの我慢をさせてきてしまったことがこれまでずっと心に引っかかっていました。今まで協力してくれて本当にありがとう。

 これからはずっと姫楓のターンです。

 お父ちゃんお母ちゃんが引き続きサポートしていくので、周りへの感謝の気持ちと尊敬の念を忘れず、自分らしく目一杯楽しんで挑戦しておいで。いい1年にしてね。

 応援してくださるファンの皆様、メンバーの皆様、スタッフの皆様、そして今回娘のために貴重なお時間を使って準備してくださった生誕委員の皆様、今日はいつも温かいお力添えもありがとうございます。

 不器用で言葉足らずで誤解されてしまうこともあるかと思いますが、親孝行の気持ちが優しい子です。本人がのびのびと活動できる場を作っていただいていること、本当にありがたく思っております。

 18歳になったSKE48の荒野姫楓をこれからもどうぞよろしくお願いいたします。」


 ううむ、 これまであまり触れてこなかったですが、ひめたんのダンスと向き合う姿勢が素晴らしいですね。
 小学生の頃からアイドルになることを目標に、努力し続けることも本当に凄いです。
 「悔しいことを悔しいことで終わらせない」というお手紙の言葉が印象的でした。
 目の前の課題から目を逸らさずに向き合う姿勢、周りではなく自分を超えること。
 この辺りは、料理や絵のような自分と向き合う分野との関連もありそうな気がします。
 

 ティーンズユニットでの自己紹介動画でも彼女の誠実な性格が伝わってきます。 

 


 最近は麻雀にも興味がある彼女。
 「ちょっと飽きっぽい」と手紙にはありましたが、「飽きっぽい」ことは好きと出会うチャンスを沢山作ることが出来ます。
 次はどんなものに触れて、どんなものを作るでしょう?
 ひめたんの「作る」ものに20年代の「推し事」が楽しくなるヒントが隠れていると僕は最近考えています。